大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆日々の出来事
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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月31日 こもる

2015-08-31 18:56:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月31日 こもる



 俺は実家で一人暮らしで引きこもりをやっている。
俺が20歳前後の時に両親が相次いで亡くなり、それ以来16年になる。
 怖い話は、こないだの金曜日の深夜2時くらいに起きた。
いつも通り二階の俺の部屋のベッドで携帯で記事を読んでいると、窓の外で、瓦屋根を踏むような音がした。
猫が時々来る事もあるけど、その時の音はもっと重い感じだった。

" まさか泥棒か!?”

と怖くなったが、マグライトを握って窓を開けると同時に点灯した。

「 うわッ!!」

と二人とも声を上げてしまった。
 やっぱり人間だった。
俺もビックリして尻餅をついたが、ヤツも同様だった。
 ヤツは、そのまま屋根から庭に転げ落ちて行った。
すぐに警察に電話して来てもらうと、ヤツは庭で気を失っていたらしい。
 それで、そいつ泥棒じゃなかった。
ウチは両親が亡くなって以来なにも手入れをしていない。
壁をツタが覆い、屋根も半分以上隠れている。
 そして俺は昼夜逆転の引きこもり。
午前4時半くらいに出掛けて牛丼かラーメンを喰い、24時間営業のスーパーで買い物をして5時半くらいには帰る。
近所付き合いもほとんどしていないので、子供達の中には、人が住んでいない廃屋だと思っている子もいたらしい。
 それで、ヤツもそんな高校生の一人だったらしい。
廃屋探検に行って自慢話をしようと思ったとかなんとか。
庭も雑草やら木やらでジャングル状態だったので怪我も無かったようだ。
 家は築25年の木造・和風でも洋風でもない普通のボロな家です。
外観は廃屋だけど中は普通です。
昔から住んでるそのままだから全然怖くはない。
 収入は親が残してくれたアパートの家賃収入で生活している。
ニート悪循環生活を続けていると、怖いとか孤独とか、あんまり感じなくなってきている。
むしろ外で人に会う方が怖い。









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日々の恐怖 8月30日 下心

2015-08-30 20:37:51 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月30日 下心



 この前、間違いメールが届いた。
件名は“この前の写真です”。
内容はどうやら何かの集まりの時に撮った写真を一緒に写ってる知り合いに送るってことだった。
 ダメだとは思ったんだが、添付されてる写真を開いてみた。
何かの建物の前で2人の女性が写ってる。
どっちも美人だ。
 とりあえず、差出人へ間違いメールである旨をメールする。
すぐに絵文字一杯のかわいいメールが届いた。
どうやら送り先と俺のメアドが1文字違いで、初めて送ったので入力ミスしたらしい。
 俺は、

“ 気をつけて下さいね。
メールは削除しときますね。”

と返事した。
メールは確かに削除した。
写真は保存しちゃったけど。
 その翌週、また同じ人から間違いメールが来た
内容はまた写真。
服装は違うが美女2人が同じ建物の前に立ってる写真だった。
 間違いメールのメールをすると、またあのかわいい絵文字一杯のメールが来た。
アドレスの登録方法が分からず、手打ちでアドレスを入力してるらしい。
携帯の機種を聞き、アドレス登録方法をメールしてあげた。
非常に感謝された。
 その翌週、また間違いメールが来た。
と思ったら、俺宛の携帯の使い方を教えてというメールだった。
彼女はかなりの機械オンチなんだそうだ。

“ まあ、美人だし・・・。”

俺は下心丸出しで丁寧にメールで教えてあげた。
 彼女からは感謝の意と、メル友になって色々教えて欲しい、そのうち機会があれば食事でもどうですか、とのメールが来た。
俺は小躍りしながら二つ返事で了解した。
それから2、3日置きに、彼女からメールが来るようになった。
 先週のこと、仕事の途中で俺はあの写真の建物を見つけた。
ある宗教の教団支部だった。
今日、彼女から週末に食事のお誘いメールが来た。
どう返事を書けばいいのか、迷ってしまっている。









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日々の恐怖 8月29日 ヨタヨタ

2015-08-29 18:05:05 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月29日 ヨタヨタ



 あまり怖くもないし、もしかしたら不思議でもないかもしれませんが、先日体験した話をします。
 免許を取って数年になりますが、普段ほとんど車を運転しないこともあり、未だに運転に慣れません。
 たまにやむを得ず車を運転する時は、法定速度をほぼ守ってヨタヨタ走っています。
後ろに大名行列を作ることはザラですし、原付に追い越されることもしばしばです。
はっきり言って迷惑なドライバーだと思います。
 先日、お仕事の都合で仕方なく車を使いました。
何とか仕事を終え、後は帰るだけ。
もう夜中近くなっていましたし、疲れてちょっと眠かったこともあるので、いつにも増して安全運転で帰路につきました。
 田んぼや林、小さな山などが続く田舎の県道です。
交通量もほとんどありませんでした。
 しばらく走っていると、前方にジョギングしている人がいることに気づきました。

“ こんな夜中に頑張るなあ・・・。”

と思いながら、少し右に寄って追い越しました。
 ところが、確認のためサイドミラーを見ると、追い越したと思ったジョギングの人(多分中年男性)が、私の車のすぐ後ろを走っています。

“ あら・・!?”

と思って振り返ったら、男性はみるみる車に追いついて、助手席のすぐ外を併走し始め、私に向かってニヤっと笑いました。

“ あんた、随分ゆっくりだね。よっぽど運転下手なんだね。”

そんな感じの笑いに思えたので、

“ ああ、私はついに原付どころかジョギングの人にも追いつかれたのか・・・。”

と思って、愛想笑いを返しつつお辞儀しました。
 その後、何度か外を見ましたが、そのたびにおじさんが私を見てニヤっとしてきました。

“ 随分頑張るおじさんだなあ、すごいなあ・・・。”

と思いつつも、蔑むような笑いにちょっとムッとしたこともあり、あとは無視して運転に集中しました。
 市街地に入り、信号待ちの時にチラッと横を見ると、おじさんはいなくなっていました。
家についた後、父にこの話をしました。

「 失礼な話だよね。」

と何気なく言ったつもりだったんですが、父の顔色が変わります。

「 確かにお前の運転はノロいが、さすがにジョギングでずっと併走は無理だろ。」

言われてみれば、たしかにその通りです。
 おそらく40キロくらい、いくら私でも20キロは出していたでしょう。
ちゃんとスピードメーターを見ていないあたりがダメなんでしょうが・・。
おじさんは、少なくとも5分以上は併走していたと思います。
 私がボヤッとしていてずっとノロノロ徐行していたとか、おじさんがマラソン選手級のスピードと持久力を持っていた、という可能性もゼロではないのですが・・・。
今になって不気味だなと思いました。









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日々の恐怖 8月28日 あと3ヶ月

2015-08-28 17:55:01 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月28日 あと3ヶ月



 俺の誕生日は母方のおじの命日だ。
そのおじは、俺が生まれる前、おじが24歳の時に大腸癌が見つかり、その時には既に手遅れだったそうで、発見から3ヶ月で死んでしまったそうだ。

 だから、俺は生まれてからずっとおじの生まれ変わりだと言われ続けていた。
頭がいい人だったから頭がいいはずと学習塾を幾つも掛け持ちさせられたり、ヒジキが好物だったからとヒジキがしょっちゅう食卓に並んだ。
おまけに俺は生まれつき腸が弱く腹を壊すことも多かったから、余計におじの生まれ変わりだと、母親やその兄妹のおじおば、祖父母にも言われ続けてきた。

 おかしなもので、言われ続けてると次第にそうなるもので、ヒジキは好きになったし、勉強もそこそこいい成績を上げて、そこそこの大学へ進学もした。
 成人式の日、母親が恐い顔をしてこう言った。

「 あと4年だからね。」

確かにあと4年すれば、おじの死んだ歳になる。
俺はそのおじのこともあって、高校卒業以来毎年、健康診断を病院で行なっている。

「 検査結果は問題無いし、大丈夫だよ。」

俺は母親にそう告げた。

「 それならいいんだけどね・・・」

と母親は言って台所へ戻った。
その後ろ姿はなんだか寂しそうだった。
 それ以来、母方のおじおば、祖父母、いとこまで俺にカウントダウンをしてきた。
あと4年、あと3年、あと2年、あと1年・・・。
俺が大丈夫と答えると、皆寂しそうに去って行った。

 そして今度の9月、俺は24歳の誕生日を迎える。
今朝方、母親が笑顔で言った。

「 あと3ヶ月だね。」

今、家出を考えている。









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しづめばこ 8月27日 P392

2015-08-27 18:23:51 | C,しづめばこ


しづめばこ 8月27日 P392  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




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日々の恐怖 8月26日 古い旅館(2)

2015-08-26 19:25:04 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 8月26日 古い旅館(2)



 Bが、

「 喉渇いたから、ジュース買うわ。」

と言って販売機の方に一人で行きました。
 ジュースを取る瞬間、Bが、

「 わ”っ・・!」

みたいな声を出して尻餅をついてたので、Aと俺はBの方へ行きました。
 販売機の隣にびしょ濡れの父、母、6歳ぐらいの女の子3人(家族?)が

「 いらっしゃいませ~。」

と不気味な笑みを浮かべながら言ってきたのです。
 なので俺はとっさに、

「 あ・・の・・・、お体拭いたほうがいいんじゃないですか?」

と言いました。
ですが、沈黙・・。
 そこで変な間が空いてしまったのですが、もう相手してられないと思ったらしいAが、俺とBの手を無理矢理引っ張って部屋へ向かいました。
 部屋は普通に古い旅館という感じで、時間も遅いので交代に風呂に入ってすぐに寝ました。
寝てる間、Aのいびきがすごくて俺だけ起きてたんですが、いびきじゃない変な声が聞こえてきました。
それで耳を澄ますと、男性のうめき声のような声です。

「 う・・・うう・・・・うおぉお・・・。」

俺は、気味が悪いので布団に潜ってビビッていました。
 それでも、

“ 寝たふりをしてても、起きてること気づいてるんやろなぁ・・。”

とも思っていました。
 するとAが小さい声で、

A「 きこえるやんな?」
俺「 うん。」
A「 やばいな、どうする?」

 時計を見れば3時過ぎです。
警察か誰かに助けを求めようとして携帯を見れば圏外でした。
 Aは震えながら目をぎょろぎょろさせて怯えてました。
俺は聞きたくなかったけれど、小さい声で聞いてしまいました。

俺「 どうなん?」
A「 お風呂の入り口、見て・・・。」

黒い影が何かをぶつぶつ言いながら少しずつ少しずつ近づいて来ます。

俺「 あれ、なんなん?」
A「 ヤバいヤツちゃう?
  もう無理、どうしたらええん?」
俺「 帰ろ!
  Bを叩き起こして、そのままダッシュで車な!」

それで、Bの布団をバッとまくり、

「 B!!このままダッシュまで車や!起きろっ!」

急いで部屋を飛び出てロビーに着くとカウンターのおじさんが、こちらを真顔で目で追ってました。
 旅館を出ようとした瞬間、ドアの前でびしょ濡れの家族3人が急に左から出てきて、

「 あ・・、ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ!!!!」

と狂ったような声で叫んでいました。
 車まで急いで走り、エンジンを掛けようとしたら、ホントにお約束のようにエンジンが掛からないのです。
 なかなかエンジンが掛からなくて、

「 もうアカン、死んでまう。」

と思いました。

A「 俺たち、死ぬんかなぁ・・?」
B「 なんか黒い影みたいなん、そこ近づいてきてない・・・・?」

だんだん俺は、

“ なんでこんなとこで死ななあかんねん!なんで俺が死ななあかんねん!”

と思いつつ、

俺「 くそッ、腹立つわ!なんやねん!!」

と言った瞬間、一瞬シーンとなり、何故か普通にエンジンが掛かりました。
 それでダッシュで真っ暗の道を抜け、○○旅館という看板を通過したとき、あのびしょ濡れの家族3人が道路脇で見送ってくれました。

「 ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ!」

恐怖で、もう声も出ず、アクセル踏んでダッシュで脱出しました。
 その後は、何処にも寄らず、一目散に帰りました。
帰った後、3人とも普通の生活に戻り、普通に過ごしています。
 不思議なことに、何故か旅館名は3人ともハッキリした記憶がありません。
それも、3人とも主張する旅館名の○○が違っていて、そのそれぞれを千葉県内で調べても該当する旅館は分かりませんでした。
あの旅館から宿泊の請求書が届いたら旅館名が分かるかとも思いますが、ホントに来たら怖いので考えないようにしています。








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日々の恐怖 8月24日 古い旅館(1)

2015-08-25 16:49:51 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月24日 古い旅館(1)


 4年前の12月の話なんですが、田舎に住んでる俺は友人A、Bと3人で東京へ弾丸ドライブ旅行へ行くことになったんです。
 運転約8時間、東京観光に男3人で回ってた訳なんですが、日帰りの予定だったんですが知らない土地なのもあって3人すごく疲れてたんです。
もう夜23時回ってるしどこかに泊まろうと思い、温かいお風呂に入ってぐっすり眠りたいという事でマン喫やカラオケではなく、ちゃんとしたホテルや旅館に泊まりたかったんです。
 しかし、土日なのもあって都内じゃ駐車場料金も高いしホテル代も高いので、たまたま千葉付近にいたので千葉で探そうという事になりました。
 晩ご飯食べたのもあって、深夜1時は回ってたと思います。
○○旅館という看板を見つけました。

A「 お!
  ここええやん!
  やっと寝れるわ~。」

という事で行き掛けたのですが、行先の道は真っ暗で明かりなし。

B「 ここホンマに営業してんの?
  なんか向こう真っ暗やん。
  潰れてんちゃうん?」
俺「 ま、とりあえず、行ってみようや。」

という事で看板の指示している方向へ向かう事にしました。
 街灯一つなく、車のライトがなければまったく見えないくらい真っ暗な道に入りました。
両側に木が茂った感じの道が1kmはあったような気がします。
 すごい不気味だったんですが、やめとこうという気持ちよりも、疲れてたので早く寝たかった気持ちの方が大きかったんです。
 なんか薄暗い電球切れかけの看板が見えました。
玄関には小さい電気がぽつり。
 やっと着いたとホッとした俺らは、駐車場を探したのですが駐車場がなかったので、旅館の裏に少し空き地みたいなところがあったので、そこに駐車する事にしました。

B「 めっちゃ暗いやん。」
俺「 勝手にここ車とめていいんかな?」
A「 とりあえず、中はいって聞いてみよ。」

という事で旅館の中へ入って行きました。
 旅館の中は真っ暗。
すごく気味が悪かったです。
販売機の光でロビーを照らしている感じ。
 夜中なのもあって受付時間が終了しているんだなと思い、スタッフを説得して泊めて頂こうと思って、

「 すみませーん!」

と声をかけたんですが、誰も来る気配はありません。
 なんどか声をかけたあと、背筋が凍る程変な光景を目にしました。
真っ暗なカウンターを見ると、何者かが振り向いたのです。
 人間が歩きながら振り向くように上下にゆれず、ロボットのように一定の立ち位置で、

“ うぃーん。”

というような感じで振り向いたんです。
 よく見ると、背が低めの腰の曲がったおじさんがいて、低く暗い声で真顔で、

「 何か?」

と言いました。
すごい不気味で3人びびりすぎて硬直しました。

A「 い・・、一泊いくらですか?
  3人同じ部屋でいいです。
  車、裏に泊めたんですが大丈夫ですか?」
おじさん「 ・・・。」
A「 今日泊まりたいんですけど!
  素泊まりで良いので部屋空いてますか?」
おじさん「 3000円。」

あまりもの安さにビックリしながらも、おじさんに部屋の鍵を渡されました。










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日々の恐怖 8月23日 霞草と小菊

2015-08-23 19:46:45 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 8月23日 霞草と小菊


 先行上映の前券買いに、近所の映画館へ行った。
たった5分、眼を離していた隙に、チャリ紛失。
 あちこち探し回ったが見つからない。

“ やられた!”

と思ってその足で交番へ届けてきた。
 チャリ泥棒にやられたのは、大学入学以来これで2度目だった。
前のは盗まれたきり、ついに戻ってこなかった。
 お巡りさんに、

「 見つかり次第連絡するが、すぐにというのは難しいねえ。」

と言われた。
この前と同じだ。
とりあえず、安い中古品でも見繕ってみようかと思った。


 2週間後、届け出た交番から思いがけず電話があった。

「 見つかったから取りに来てください。」

とのことだった。
 盗難現場の最寄り駅から、6駅も離れた町だという。
チャリ泥棒のヤツ、随分と遠乗りをしたもんだ。
そこまで自分で引き取りに行くのは面倒だったが、何はともあれこれ幸いと、電車に乗って行った。
 駅名は知っていたが、降りるのは初めてだった。
駅舎は旧国鉄の雰囲気を残す寂れた建物だった。
駅前にも煉瓦の旧い倉庫が残っていた。
昼下がりの町に殆ど人通りは無かった。
 教えられた駅前交番を訪ねると、入り口にあったあった、可愛いMyチャリが。
早速手続きをしてもらおうとすると、中年のお巡りさんが言った。

「 盗難自転車がこんなに早く見つかるなんてねえ。
普通はまずありませんよ。」

俺は言った。

「 届けを受けて、方々探して下さったんでしょう?」

お巡りさんは首を振った。

「 いや、我々が見つけたんじゃないんです。
住民の方たちから通報があったんです。
こういうことは珍しいんですよ。」

ちょっと様子が変だった。

「 通報?
これ、一体どこで見つかったんですか?」

お巡りさんは答えなかった。
 黙って俺を見ていたが、

「 ちょっと待っててください。」

と奥へ引っ込んだ。
 俺が訝しく思って待っていると、お巡りさんは何だかえらくかさの張った紙包みを抱えて戻ってきた。

「 これに心当たりがありますか?」

包みを開けた。
すっかり萎びて色あせた、霞草と小菊のものすごく大きな花束だった。

「 前籠にぎっしり詰め込んであったんですよ。
これを見つけた近所の人たちが何人かね、余りに気味が悪いっていうんで、それぞれ通報してきたんです。
持ち主が無事かどうか、とにかく確かめてくれって。」

気味が悪いのはこっちの方だった。
 チャリの籠に花束なんて、訳が分からない。
大体これは、この町のどこで見つかったんだ?
持ち主が無事かどうかを、複数人が警察に訊いてくるなんて、どう考えてもおかしいだろ。
 思わずチャリに眼を遣った。
前籠の縁が裂けて針金で留められていた。
 お巡りさんが言った。

「 あのねえ、もう一度訊くけど、あなた本当に何も心当たりないんですか?」

心当たりなんてまったくない。









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日々の恐怖 8月22日 傘(4)

2015-08-22 20:13:28 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月22日 傘(4)



 家に帰って1時間ほど経ちました。
既に部屋の電気は消し、布団に入っていました。

“ ピンポン。”

 インターホンが鳴りました。
自宅はワンルームだったのですが、玄関が1階でドアを開けるとすぐに階段があり、部屋は2階という造りでした。
 備え付けのインターホンがカメラ付きだったので、人が来たときは階段を降りずに確認ができます。
モニターを見るとさっきの女性が映っていました。
手で顔を被っていました。

“ ピンポン。”

手で顔を被ったままなのに、インターホンが鳴ります。

“ おかしい・・・。”

私はモニターを見つめたまま固まってしまいました。
 1分ほどするとモニターの画面が消えました。
インターホンの仕様で呼び鈴に出ないと勝手に画面が消えます。
その瞬間、ドアが、

“ ガチャガチャガチャガチャ!”

もう泣きそうでした。
布団をかぶり、震えつつもじっとしていました。
 5時なると店長が退勤の時間なので、電話をしました。
店長はまだ店の中にいて、帰る準備をしていたそうです。
 店長に電話をしたのは、傘の件を話しているのが店長だけだったからです。
この時は、携帯を取りに戻って本当に良かったと心の底から思いました。

「 さっき傘を貸した女性が、家のドアをガチャガチャしてくるんです。」
「 それって、危ない人かもね。」
「 どうしたら、いいんでしょうか?」
「 そうねえ・・・・。」

店長が、そう言った直後、

「 わっ!」

と声を上げ電話が切れました。
 これは後から聞いた話なのですが、私と話している途中に、

“ ゴン!”

という音が店のドアから聞こえたそうです。
 店のドアはガラスでできていて外が見えるのですが、そこには手で顔を被った女性が立っていたそうです。
悲鳴をあげ目を一瞬逸らすと女性の姿はなくなっており、ドアの外にはバキバキに折れた傘があったそうです。
 その後、住んでいるところがバレているのはヤバいと思い引っ越しましたが、バイトは卒業まで続けました。
 今でも店には客として通っていますが、あれ以来奇妙な出来事は起きていません。
店長を含めて良く飲み会をしますが、何回もこの話が話題にでてくるほど怖い体験でした。









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日々の恐怖 8月21日 傘(3)

2015-08-21 18:34:34 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月21日 傘(3)


 女性はベンチに座り、自分の膝に肘をついて顔を手で被っていました。
傘を持っていないのか、ずぶ濡れでした。
 一瞬驚きましたが、このまま見て見ぬ振りをすることができず、

「 どうしましたか?」

と声をかけました。
しかし、返事はありません。
 私はバイト先の傘をベンチに立てかけて言いました。

「 もう1本傘を持ってますので、これを使ってください。」

それでも、返事はありませでした。
 正直、不気味でした。
傘を残しその場から離れ、家を目指しました。
 公園内の階段を上る途中で、やはりあの女性が心配になり、警察に連絡しようとしましたが、携帯がありません。
バイト先で充電をしたまま忘れてきてしまったようです。
ホント、最悪でした。
 でも携帯電話は必要なのです。
その日は確か木曜日で、月・火・水・木というバイトスケジュールだったので、どうしても取りに行きたかったのです。
バイト先へ戻るために、仕方なく来た道を引き返します。
 傘を貸してからほんの2、3分しか経っていませんでしたが、ベンチに女性はいませんでした。
その後小走りで公園の駅側の出入口まで行きましたが、女性は見当たりませんでした。
公園内にはトイレがあるため、そこに行ったのかと思い深くは考えませんでした。
 バイト先へ戻り、携帯を回収しました。
寒かったので、ホットコーヒーを飲みながら店長には傘の件を簡単に説明しました。
 店長は傘を見知らぬ女性に渡したことよりも、そこに女性がいたことについて怖がっていました。
さらにはその状況で近寄るとかありえないし、そもそも公園のルートで帰るとかアホじゃないのかと言われる始末です。
ちなみに店長は女性です。
 怖がらせたくは無かったので、女性が無反応だったことや、終始手で顔を被ったままだったことは伏せておきました。
 店長にアホ呼ばわりされましたが、少し出来事を振り返りました。
深夜24時過ぎに大雨の中、ひと気の無い公園でずぶ濡れになっている女性です。
しかも話しかけても返事は無く、顔も手で被ったままです。
たしかに不気味です。
だから、その後は公園を通らずに遠回りして帰りました。








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しづめばこ 8月20日 P391

2015-08-20 19:18:51 | C,しづめばこ


しづめばこ 8月20日 P391  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 8月19日 傘(2)

2015-08-19 19:46:10 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 8月19日 傘(2)



 それで、4年前の11月でした。
その日は午後から天気が崩れてしまい大雨でした。
私のその日のスケジュールは、授業とバイトです。
授業を終えた頃に雨が降り出したので、持ってきた折りたたみ傘を使い移動します。

 バイトもいつも通りにこなし、夜24時に仕事を終えました。
まだ雨は降っていました。
 雨が激しかったため、持っていた折りたたみ傘では防ぎきれないと思い、バイト先で傘を借りることにしました。
バイト先の傘とは、急な雨の際にお客さんに貸す傘で、雀荘名と管理番号が書かれたテプラが貼ってあるものです。
 大きめのビニール傘で、番号は1~10番まであります。
お客さんに貸す際に、誰にいつ貸したかを控えておくために番号がついています。
私は店長に了解を得て、7番の傘を借りて店をでました。

 当然ですが、辺りは真っ暗でした。
さらに大雨ということもあり、寒かった記憶があります。
 公園へと続く細い道へと入りました。
電灯が無いため細い道に入るとすぐに、それまでよりもさらに暗くなります。
 こんな日だし遠回りでも車通りのある道で帰れば良かったと思いましたが、いつもの癖で公園まで来てしまいました。
ここまで来てしまったら、さすがに引き返すのは面倒なので、そのまま帰ろうと足を進めたのを覚えています。

 公園内は階段で分けられていますので、ここでは仮に階段を上る前にある広場を1階とします。
1階には遊具の他にトイレと電灯とベンチがあります。
トイレにも電気があるため、入り口の細い道よりは少し明るく感じますが、それでも夜は暗く寂しい場所となっています。
 普段から歩き慣れていますが、人とすれ違ったことは数えるほどしかありません。
さらには雨ですので、人がいるなんて全く考えていませんでした。
でも、赤い服を着た女性がベンチに座っていました。









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日々の恐怖 8月18日 傘(1)

2015-08-18 18:37:21 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 8月18日 傘(1)


 4年前、私が大学生の頃の話です。
当時、都内で一人暮らしをしていました。
麻雀が好きで最寄り駅近くの雀荘でバイトをしていました。
ちなみに男です。
 大学もこの最寄り駅から通学しており、学校帰りにそのまま行けるので立地にも満足していました。
問題はこの最寄り駅やバイト先から自宅へ帰るルートなのですが、普通の道路を通って帰ろうとすると、長い上り坂を緩いカーブを描いて登って行かなくてはいけません。
 これは自宅から離れていくような曲がり方になっており、非常に遠回りとなってしまいます。
そこで、普段から自宅と駅のちょうど間にある公園を突っ切っていました。
 この公園ですが、駅側から行くとお寺の横の細い道が入り口となっております。
細い道の両側は2mほどの高さのコンクリート塀が立ち、左手はお寺、右手は墓地となっています。
細い道を100mくらい進むと公園が見えてきます。
 公園はイチョウや桜の木で囲まれており、少し進むと開けたところに砂場やブランコがあります。
道は続いており、さらに木々が茂った道となり、右手には昔は看護師の独身寮となっていた建物があります。
 といっても独身寮の入り口は公園とは反対側にあるので入ることはできません。
さらに、今は使われなくなり窓には板が打ち付けられています。
この建物のベランダが公園側に向いていますが、ボールよけの網があるため敷地に入ることはできません。
 先に進むと階段があり、登るといくつかの遊具がある広場へと出ます。
こちらも周りはコンクリートの塀と木々に被われています。
 さらに進むと分かれ道となっている場所へ出ます。
右に曲がると隣接する神社の境内へ(お寺とは別に神社があります)、まっすぐ行くと道路へと出ます。
自宅がこの公園の出口からすぐの所にあるため、このルートを使用していました。









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日々の恐怖 8月17日 零戦

2015-08-17 18:18:47 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 8月17日 零戦


 大往生した母方の祖父ちゃんは、零戦乗りだった。
戦中予科上がりだけど、特乙や特丙よりも前に出たので、それなりに操縦士の中でもエリート意識はあったらしく、飛行時間をよく自慢していた。
 昔、こっちから聞けば積極的に当時の話を聞かせてくれた。
その中で印象に残った話が一つある。
 1944年、祖父ちゃんは台湾海軍航空隊に所属していて、台湾に住んでいた。
本土から呼ばれて宿舎に空きがなかったので、基地近くの台湾人の人の家に下宿していた。
 その家には台湾人の老夫婦が住んでいて、いつもとても良くしてくれるので、小さい頃に母親を亡くしていた祖父ちゃんも嬉しくて、奥さんの方を台湾のお母さんと呼んで、親孝行の真似事なんかもしていたらしい。
 そしたら夏の暑い盛り、いつも元気なお母さんが寝込むようになった。
祖父ちゃんも心配して、薬を工面して渡していたりしたらしいんだが、なかなか回復しない。
ある日枕元に座っていたら、お母さんがこんなことを言った。

「 実は飛曹(祖父ちゃんは他の人から○○飛曹と呼ばれてた)さんが撃ち落されて戦死する夢を見たことがあった。
夢見が悪いだけかとも思ったが、もし正夢だったら大変だ。
折角できた息子が死んでしまう。
なので神様にお願いしたら、代わりがいると言われたので、私と代えてもらうようよくよく頼んだ。
私はもうすぐ死ぬが、これで飛曹さんは大丈夫だ。」

祖父ちゃんは、きっと病気で気弱になったのだろうと思って、

「 大丈夫ですよ。」

と答えたそうだ。
 旦那さんに聞いてみると、

「 敵をたくさん撃墜できますように、のようなお願いの方が軍人さんらしいが、うちの神様は、敵を殺したい、のような悪いお願いはしてはいけない。」

と答えた。
 それで10月の台湾沖航空戦になった。
台湾海軍航空隊も米軍迎撃のために出撃した。
 結果は壊滅だ。
祖父ちゃんの同期もほとんどが未帰還になった。
 祖父ちゃんも撃墜されたが、機が火を噴かず落ちて、幸運にも着水脱出した。
とはいえ、島影も見えない海のど真ん中にプカプカと浮かんでる状態で、このまま漂流して死ぬのか、と思っていると、なんと台湾から出漁していた漁船が通りかかり、

「 日本人だ、助けてくれー!」

と叫んで、引き上げてもらい、無事生還した。
 下宿に帰ってみると、お母さんは亡くなっていた。
旦那さんに尋ねると、ちょうど祖父ちゃんが出撃して飛んでいる時に亡くなったそうだ。
何の神様に祈ったのかは分からない。










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しづめばこ 8月16日 P390

2015-08-16 22:46:17 | C,しづめばこ


しづめばこ 8月16日 P390  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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