日々の恐怖 7月13日 気のせいだと思うけどね
昔、バイトしていたころ知り合ったKさんから聞いた話です。
Kさんは小学生の頃怖い話が好きで、読書も好きだったようでした。
Kさんは当時30代後半で、子供の頃は夏休みのお昼に“あなたの知らない世界”みたいな心霊番組をよくやっていた時代だった。
霊感に関しては、
「 ないない、そんなのないよ~。」
と笑って言うが、霊らしいものはたまに見えたような気がしたと言っていた。
それで、“見えたような気がした”って、なんなんだと聞いてみると、ドライブ中の山道で首吊ってるスーツ姿の男が道端にいたとか、自転車ですれ違った女性の肩におっさんの顔だけ乗っかってたとか話し出した。
それでも霊感が無いと言い張るのは、
「 だって、見えたものが霊なのか気のせいなのか、どっちかわかんないから・・・。」
それで、基本的に気のせいかもで済ませているようだ。
自転車で肩におっさんの顔がのっかってたのは、
「 二人乗りしてて、後ろに乗ってたのかも・・・・。」
と自分に言い聞かせていた。
そして、振り返って確認したりはしない。
それも、確認するのは絶対にしないとのことだった。
不思議に思って、
「 どうして?」
と聞いてみたら、
「 過去に確認しようとして、怖かった経験があったから。」
と言うことだった。
それで、その確認して怖かったときの話を教えてもらった。
小学生の頃のKさんは、怖い話の本をよく読んでいた。
子供向けの本で小説の文庫サイズだけど、ものすごく分厚い○○大全集みたいなヤツだ。
もしかしたら、今でもそういった大全集的な本は古本屋で売ってるかもしれない。
10年位前にあったライダー大全集という本が置いてあったのを見て、
「 こういう感じの本で、恐怖大全集みたいなのがあったんだよ。」
と教えてくれた。
当時は夏休みにあなたの知らない世界とかやっていたから怖い話がはやってたからなのか、その手の怖い話シリーズがいくつかあった。
内容はオーソドックスな怖い話や都市伝説、芸能界ネタのレコーディングスタジオでの怖い話や録音したものに声が入ってるとか言ったもの以外に、一般人の恐怖体験や不思議な体験等が書いてあるものだった。
その中に金縛りになったとき霊を見る方法だか、金縛りになった原因になる霊を見る方法が書いてあった。
その方法は金縛りになったら、部屋の四隅を順番に見ると最後にみた隅っこにその霊がいるというものだった。
Kさんがある日、寝ていると金縛りになった。
それで、そのときその方法を思い出して試してみることにした。
ただ、自分が寝ている近くに霊を見るのは怖いから、一番遠くを最後に見るようにした。
そのときは、6畳の部屋で寝ていた。
部屋の入り口から見ると正面に窓がある。
右側は壁で左側も壁である。
部屋の出入り口から対象になる窓際にベッドがあった。
それを図示すると、だいたいこんな感じである。
入り口__________ 押入れ
| |
| |
| ______|
| | |
| | |
| | |
| | |
 ̄ ̄窓窓 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Kさんは、窓側を頭にベッドに寝ていたので、見る順番は、
1、まずは足下の先にある押入れ付近を見る。
↓
2、自分の枕元の隅をみる。
↓
3、頭側の壁づたいの窓際の隅を見る。
↓
4、自分から一番遠い出入り口のある隅を見る。
にした。
本に書いてあるように確認できるのなら、最後に見た入り口に霊がいるはずだが、いなかった。
“ あれは嘘だったのか。
な~んだ、やっぱ見えないのか~。”
と考えながら目線を自分の真上の天井に戻した。
そこにも何もいなかったが、天井を見ていたとき、視界の端に何かが見えた。
ベッドは壁に片面がピッタリくっついた状態で置いてあったのに、自分の顔の右横に何かが見えた。
体は相変わらず金縛りで動かないから視線だけをそちらに向けると、自分が寝てる敷き布団から女の人が生えていた。
自分の顔の真横に、漫画とかで水面から人が出てきてるような感じで布団から、頭のてっぺんから目の辺りまでの女の顔が出てきていた。
そして、その女と目があった。
“ 本には最後に見た場所って書いてたのに、二番目に見た場所なんて!
本の嘘つき!”
と思いつつも、目をそらそうとするがなぜか目が離せない。
そして、女は目までだったのが、鼻が見えるまでゆっくりゆっくり布団から上がってきた。
「 それからどうなったの?」
と聞くと、
「 気付いたら朝だった。」
と言われた。
Kさんは、
「 気を失ったのかもしれないし、夢だったのかもしれない。」
と言う。
「 だって、シングルベッドで顔のすぐ近くだったから、超怖かった。
だから、確認とかは二度としない。
怖い話ばっかり見てたから、夢にまで見ちゃったけど、もし本物だったらいやだもん。」
Kさんの言いぶりから、もう夢と決め付けている。
他にも話しかけられたとか、もしかしたら霊だったかも、というのはいくつか聞いたけれど、すべて、
「 気のせいだと思うけどね。」
のセリフで話は終わってしまった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ