大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)

2023-09-29 20:41:44 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)






 しかし、それから二週間ぐらいが経って、またKさんから以前と同じような事が起きたと言う連絡を受けた。
俺はただ事ではないと思い、彼に直接会って話を聞きくことにした。
それによるとKさんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。
すると突然、どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。
足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。
 男は、

「 いい加減にしろ!」
「 もう俺に付きまとうな!」

などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということだった。
 霊とかオカルトが平気なKさんもこれには参ったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。
警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかもしれないので、その時に通報して現行犯で捕まえてもらうことにした。
 そしてさらに二週間後に、また男が来たのだ。
夜中の一時過ぎあたりに俺の携帯電話が鳴る。
Kさんからで、電話に出るとKさんが興奮気味に、

『 来た来た!聞こえるでしょ!』

そう言うと携帯電話を玄関に向けたらしく、コツ、コツと革靴が地面を叩く乾いた足音が聞こえる。
足音はだんだん大きくなっていき、しばらくして突然止まった。
少し間をおいて、

” ドンッ!ドンッ!”

とドアを激しく叩く音が、それと共に男の怒鳴り声が聞こえた。

『 ひぃっ!
やっ・・・・・、やばい!』

Kさんの押し殺した悲鳴のような声が携帯を通して聞こえてくる。

『 こっ・・・、これはもう警察でしょ!』
「 わかりました警察に連絡してください。
俺もそっちに行きます。」

電話を切り、部屋着であるジャージ姿のままで俺は自宅を出た。











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日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)

2023-09-19 19:49:56 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)





 興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。
その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。
実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。
 部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、
以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。
その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。
 アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。
以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、
不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない。
 目的の部屋は、道路から入って一階の一番手前の場所だ。
ドアを開けて中を見たのだが、何の変哲も無いワンルームの部屋だった。
Kさんからも特に意見がなかったのでその日のうちに契約が成立し、次の週には入居した。
 しかしKさんが部屋に住んで一週間ぐらいが過ぎたとき、突然彼から苦情の電話が来た。
Kさんの話によれば、彼が夜中に寝ていると突然、

” ドンッ!ドンッ!”

という大きな音で起こされたという。
飛び起きてドアのほうに向くと、部屋の外で男が何か怒鳴ったりドアを叩いたりしていたそう。
こういった苦情は良くある事で、

「 どこかの酔っ払いが騒いでいるのだろうから大丈夫ですよ。」

と彼をなだめるように説得した。
Kさんもしぶしぶ了承してその場は収まった。










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日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)

2023-09-12 11:08:26 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)





 俺は一年前から不動産の仕事をしている。
主な仕事は部屋の紹介など。
そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。
 ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。
その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。
突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。

「 お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」
「 後は俺がやるから大丈夫だ。」

と代わってくれた。
 Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。
Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。
目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。
Kさんは後者だった。
 この仕事をしていれば、いわくつきの部屋というモノにいつかはぶつかるのだと思っていたが、まさかそこに自ら住みたいという人がいることに驚いた。
しかしMさん曰く、Kさんの様に自らすすんで部屋に住みたい人は少なくないのだという。

「 霊とかオカルトを信じない人には、ただの格安物件だからな。」

とMさんは笑いながら話していた。









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日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)

2023-09-05 18:21:31 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)





 それからは見知らぬ人達が家を出入りするようになった。
たぶん霊媒師だと思った。
その頃から家の中は変なお香の匂いと、訳の分からない念仏みたいのが聞こえ続け、近所から苦情が来る毎日だった。
 俺の高校の入学式にも両親は顔も見せず、家族バラバラで部屋で過ごす日々が続いた。
夏頃に異音と泣き声は無くなった。
どっかの霊媒師が成功したみたいだと俺は思ったが、誰も居間に寄り付かなかった。
 その後、俺は高校3年になり東京の大学に進学が決まり、母とオッサンと縁を切りたかったので
新聞奨学生の手続きをしてた2月の終わりに、また異音が鳴り始めた。
しかも今度は家中で聞こえるようになった。
 俺は話すタイミングはここしかないと思って、卒業式の次の日に弟と妹に兄から聞いた話をした。
当然、その夜に母とオッサンに呼ばれさんざん怒られた。
その頃、兄は連絡がつかなくなっていたので素直に兄に教えてもらったと話し、オッサンが母に言ってなかった前妻への暴力、
この家を出るために自分がタイミングを見計らっていた事などすべて話した。
母は前妻への暴力とかは知らなかったらしく激しく狼狽していたが、これ幸いに全て吐き出し、
そのまま家を出て友人の家に泊まり上京した。
 その後の顛末は、弟から聞いた話しでは母は実家に詫びを入れ、家に離婚届を置いて、実家に帰り家業の手伝いをしている。
弟と妹はそのまま母について行き、祖父の元で暮らす。
母が置いていった離婚届が提出されていなかったらしく、事後処理は弟がして大変だったようだ。
自分は大学入る際に、先輩に手伝ってもらいオッサンの戸籍から抜け、実父の姓に戻り何事も無く暮らしている。
 今回話そうと思ったのは、祖父が先日105歳で大往生し葬儀で実家に帰った際に、
オッサンが例の家の仏間で自殺したことを知らされたからだ。
ただ自分を含め家族はあの家から逃げ出したので、オッサンが一人でどうしていたかは分からない。









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日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)

2023-09-01 12:07:55 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)





 ある日、オッサンが納骨も終わって落ち着いたぐらいに、

「 今夜は帰らん。」

と言ってどっかに行った。
 兄が夜1時過ぎにトイレに行ったら、オッサンが血相変えて帰ってきて、仏間に飛び込んで念仏みたいのを唱えてた。
それで、また母親が出たんだなと理解したそうだ。
さらに、兄が中学に上がる頃から異音が鳴るようになり、赤ちゃんの鳴き声がするようになった。
家の中でしか寝れないし、原因不明の物音と赤ちゃんの泣き声にいたたまれなくなったオッサンは、霊能者にすがりまくったらしい。
 兄は、

「 ガキだったから分からないけど、親父は凄い大金使ったと思う。
効果が無ければ霊能者に電話でがなりたて、また新しい霊能者を探す。
そんなのが1年間ぐらい続いたよ。」

と言った。
ちなみに、兄はその頃から非行に走って家にあんまり帰ってなかったそうだ。
 そんなこんなでなんとか霊媒師を見つけ鎮める方法を教わり、今に至るらしい。
そしてオッサンは仏間から離れるように寝所を増築して、少しでも仏間から距離を取ろうとした結果、歪な増築を繰り返した家になった。

「 じゃあ供養されたんじゃないの?
まだ聞こえてるよ。」

と聞くと、

「 お祓いしてからかなり時間が経ったから、効果が無くなったじゃね?」

と無表情で兄は答えた。

「 とにかく、こんな家に関わった以上、長くいるとオマエまでなんかあるかも知れないから、高校でたらこの家を離れろ。
大学でも就職でも良いから家を出ろ。」

と言われた。
 最後に、

「 弟と妹にこの話をするかどうかはお前に任せる。
まだ2人とも子供だから慎重に時期を見計らって話せよ。」

と言って、再び鍵をかけた。










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