大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 9月30日 子供の靴

2014-09-30 19:22:43 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 9月30日 子供の靴



 私は設備関係の仕事をしていて、仕事柄他人の床下に入ったりする機会も多い。
先日、電気工事であるお宅の床下に入ったら、狭い隙間をいくつか越えた先に、何故か子供の靴が片方落ちていた。

“ 何でこんなところに?”

と不思議ではあったけれど、

“ 新築の時にでも紛れ込んだのかな?”

と気にしないようにして、触れずに置いておいた。
 それで、作業の途中でふとその靴が目に入ったら、近付かないようにしていたはずなのにさっきと位置が違っている。

“ あれ?何でだ?電線でも当たったのかな?”

と思って、今度は靴には絶対触れないように気をつけて作業して、作業終わってから靴見たら、更に位置が変わっていた。
深くは考えないようにしてそのまま出てきたけど、微妙に怖かった。
 それから、私の仕事上の方針としては、工事の元請からの依頼書の備考欄に、

“ 宗教的な理由で庭にある石には絶対に触れないように。
動かした形跡等あれば、工事がストップするので注意するように。”

とか、

“ 敷地内の井戸には、決して近付かないように。”

なんて書いてあることがたまにあるけど、経験上そういうのは理由も聞かないようにしている。











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日々の恐怖 9月29日 女の笑み

2014-09-29 10:41:26 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 9月29日 女の笑み


 奄美のある海岸でビデオ撮影をした時の話です。
俺の家族、全員が思い出に残るようにって、ビデオカメラをスタンドに固定して撮った。
それで、兄弟とかで海で遊んでいた。
その時は奄美に住んでる叔父とか従弟達も一緒だった。
 その後、叔父の家に帰ってから、夜にみんなでそのビデオを見た。
最初から身の毛がよだつ映像だった。
映像の真ん中ぐらいに女の人がぼんやり映っていた。
髪が滅茶苦茶長くて、でも顔ははっきり表情まで見えた。
 ぼんやり映ってたのに表情まではっきり見えたって矛盾してるかもしれないけど、マジでそう見えた。
それが、心霊映像とかであるような睨んでるっていう表情じゃなくて笑っていた。
あまりのことに、家族全員何かに憑りつかれたように固まってテレビに見入っていた。
 それで、数分ぐらいしてからだった。
その女の人が徐々にカメラに近付いてきてるって分かった。
もう、全員顔が真っ青になった。
 でも、ある瞬間におかしな事に気付いた。
ビデオで、その女の人の前を従弟が通り過ぎたのだ。
しかし、通り過ぎたはずなのに、女の人はビデオに映ったままだった。
 分かりにくいかもしれないけど、従弟が女の人の前を通り過ぎたら普通、従弟の影に隠れて女の人は見えなくなる。
それがなくて、女の人はずっと映り続けていた。
 その時に少なくとも俺と叔父は気付いた。

“ ビデオに映ってるんじゃなくて、テレビの画面に映っている。”

つまり、それは“そいつは俺達の背後にいる”ことになる。
 俺は怖くて振り向けない。
しかし、叔父は思わず振り向いた。
叔父の悲鳴が突然聞こえて、その声に俺達は一斉に散り散りに逃げた。
テレビの横がリビングと廊下を繋ぐ扉になっていて、そこから脱出した。
当然、後ろは怖くて見なかった。
 外はもう暗かったが、叔父の家の前に、もう全員飛び出した。
みんな顔が真っ青だったが、叔父が一番顔色が悪かったと思う。
 親父が叔父に、

「 何がいたんだ?」

って聞いても、震えて口を開こうとしない。
結局、問い詰めても叔父は口を開かなかった。
 今となってはアレが何だったかは分からない。
後にあのビデオを再び見たが、女の人は映らなかったからだ。
 でも、あのときの叔父の怯え方は女の人を見ただけとは思えなかった。
何故なら、叔父はこれまで心霊体験はあったのだが、そういうのにはたいしたことないと全く怖がっていなかったからだ。
 その叔父が何故あそこまで怯えたのか、それも今となっては分からない。
叔父はその二週間後、釣りに出て足を滑らし海で亡くなった。
ホントに突然の死だった。
 そして、もう一つの疑問は、どうやって女の人はテレビ画面に映ったのか、である。
俺達は全員、そのときテレビの前に座っていた。
つまり、後ろにいたらしい女は俺達に遮られてテレビの画面に映ることが出来なかったと思う。
 これは、昔、俺の身に起きた実話です。
俺は未だにあの女の笑みを忘れることが出来ない。











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四枚の写真 9月28日 P6

2014-09-28 20:30:26 | _7,四枚の写真
四枚の写真 9月28日 P6 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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しづめばこ 9月27日 P324

2014-09-27 12:43:15 | C,しづめばこ
しづめばこ 9月27日 P324  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 9月26日 冬の駅

2014-09-26 17:37:26 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月26日 冬の駅



 高校生の頃の冬の日の話です。。
電車通学で始点駅で乗って終点駅で降りる、この間一時間ぐらい。
普段は本とか読んで過ごしてたけど、その日はどうしようもなく眠くて寝てしまった。
ガッツリ寝てたみたいで、ふと目が覚めたら横の人に思いっきりもたれ掛かってた。

「 すみません。」

って慌てて起きようとしたら、

「 いいよ、学生さん疲れてるんでしょう、そのまま寝てな。」

って、おばあちゃんが優しく言ってくれた。

“ 超優しいよ、おばあちゃん。”

って思いながらそのまま寝た。
 次に目が覚めた時は、知らんおばさんが思いっきり肩揺さぶってた。
寝ぼけてるせいで反応が悪かったのかもしれないけど、尋常じゃないほど揺さぶられた。
おばさんは俺が起きたことに気付いたのか、ほっとしたような顔して、

「 こんな所で寝てたら死ぬよ、気をつけなさいね。」

って言ってきた。

“ いや、電車の中で寝たぐらいでは死なないよ。”

って思ったら、何故か無人駅のホームの長椅子に座ってた。
 雪は積もってるし、知らない駅だし、冷え過ぎて体は動かないし、で怖かった。
それも、隣の県の駅にいたみたいで、その後、三時間近くかけて帰宅した。
お小遣いをはたいて、やっと家に帰ったはいいけど、

“ 起きたら、隣の県の駅で寝てた。”

なんて話が親に通じるわけがなくて、話は信じてもらえないし、怒られるし、お金なくなるし、で辛かった。
 何故そこにいたのか今でも分からない。
帰りのコースは階段あり乗り換えありだったから、誰かが運んだにしてもだいぶ苦労したと思う。
 そのまま定期で帰れたらよかったが、無人駅対策で、電車に乗ったらすぐに車掌さんが来て乗車券見せてって言われてしまった。
だから、無人駅から定期券の駅まではお金が必要だった。
痛い出費だった。













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日々の恐怖 9月25日 引っ越し

2014-09-25 19:19:03 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月25日 引っ越し



 中古住宅をリフォームして、家族(両親、当時オレ小学6年、妹小学3年)で引っ越した時の話です。
 引っ越しして暫くは大丈夫だったんだけれど、その後、金縛りがあったり、廊下でヒタヒタ素足で歩く音がしたり、居間と廊下の戸のガラスに赤い影が張り付いてたり、怖い話にでてくるような怪現象がたくさん出始めた。
 しかし、その当時はあまりの非現実感から“うわっ、幽霊かっ!”とか思いはしたが、かと言って引っ越すほどの余裕も無く、せっかくリフォームもしたので、なんとなく怪現象を気のせいにして放置していた。
 すると、その後、丈夫だった妹が体調を崩したり、母親までパートを休みがちになって、家に籠るようになってしまった。
俺と父親はなんともなかったけれど、それでも母妹の状態を見るとかなりマズイので、神社にお祓い頼んだり、お札貼ってみたりしたけど、まったく効果が無かった。
それで、原因が何か分からなかったので、俺が学校とか近所で家の噂とか調べたんだけれど、死人がでたりとか、特に曰くのある家じゃなかった。
 父親は父親で対策を考えていた。
それは、父親の懇意にしている同僚に恥ずかしながらと訳を言って、こんなのはどうすればいいんだと相談したようだ。
 すると、持つべきものは友人と言う訳で、その同僚の知り合いの知り合いみたいな人が、

「 霊能者を紹介する。」

と言って、若いにーちゃんを連れてきた。
 その若いにーちゃんは、だるだるのパーカーを着て、変なテンションのにーちゃんだった。
俺はこの人で大丈夫なんだろうかと普通に疑問に思った。
 それで除霊開始。
にーちゃんは、俺ら家族をチラッと見て、家の中を一回りして、家の外をフラっと歩いてから言った。

「 赤い女がいて、それが女に祟ってる。」
「 本筋から別れた道ができてしまっていて、そこから入ってきてる。」
「 さっき道を元に戻したから、もう大丈夫だと思う。」

それだけ言うと、お茶だけ飲んで、

「 なんかあったら、ここ電話して。
それじゃ!」

それで、電話番号のメモだけ残して、にーちゃんはさっさと帰ってしまった。
 そのとき、お金とかも要求されなかったし、一応用意はしてたらしいんだけど、渡す前に帰っちゃった。
お祓いとか儀式とか呪文とかそういうモノもなくて、すごくあっさりしていた。
 俺は何か拍子抜けして、

“ こんなので大丈夫なんだろか?”

と思った。
 ところが、その晩、家鳴りどころじゃなくて、屋根から何か落ちるんじゃないか、ってくらいのすごい音が一晩中鳴った。
パチッ、キシッてレベルじゃなくて、ズドン!バキン!みたいな音だった。
 家族四人みんな居間に固まって、ギャーギャー叫んで、もう夢だか本当だかわかんないくらい怖かった。
何かが家に入ろうとしてるってのが、見えないけど壁の向こうから伝わってきた感じだった。

“ これはお祓い失敗だろ!”

って父親が半泣きで、にーちゃんに電話をかけたら、

「 最後の抵抗をしてるんだよ。」
「 夜が明けるまでには、全部連れていくから。」

と言ったので、ビビリながら夜明けまで待つと、本当にピタっと音が止んだ。
 次の日から霊現象もなくなったし、徐々に妹も母親も元気になっていった。
それで、父親がにーちゃんにお礼の電話をして、後日謝礼を持って行った。
あの夜にみんなで固まってガクブルしたのは、今でも忘れられない思い出です。











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四枚の写真 9月24日 P5

2014-09-24 20:58:39 | _7,四枚の写真
四枚の写真 9月24日 P5 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 9月24日 溝の蓋

2014-09-24 11:47:01 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月24日 溝の蓋



 実家の村では、数ヶ月に一回、集まって地区の道路の掃除とか酒飲んだりする日がある。
それで、その日は昔からありすぎてもう何を奉ってるかも分からない神社を掃除する日だった。
村の爺ちゃん婆ちゃんは何故かそこには近付かないので、その息子たちの世代(俺の親父の世代)が掃除をする。
 でも、その神社の特定の場所にある溝の付近は曰く付きと言うか、近づいたら死人が出るって言われていた。
それでも、親父達の世代は、そんなの年寄りの迷信だと思って構わず掃除していた。
すると、昼間は元気だった近所のおじさんがその夜突然亡くなった。
そのときは、自宅の風呂場で亡くなっていたから警察とかも来たんだけれど、死因は脳梗塞と言う話を聞いた。
 ただ、昼間凄い元気で健康そのものだった人が急に亡くなったし、その人が溝を掃除してた人だったから、暫くはその噂で持ちきりになった。
その後、何故かその家は一家離散で幽霊屋敷状態になった。
 それからは掃除は暫くは無かったんだけれど、数年後に順繰りでやっている順番で、またそこの掃除が来た。
年寄りたちは反対だったらしいけど、一応神聖な場所ではあるだろうから、溝を避けてやることに決まった。
だけど、やっぱり迷信だと気にしない人もいるわけで、溝を掃除してしまった人がいる。
その時は、時代が進んで、まあいいかと言う状態だった。
 でも、次の日の昼間、掃除した人が農機具に巻き込まれて亡くなっだ。
吸い込まれるように刃に潜っていって亡くなったそうだ。
そんなこともあってさすがに何かあると思ったけれど、知ってるかもしれない年寄り衆もみんなもう亡くなってたし、この科学の時代に怖いとは思っても本気で信じる人はいなかったらしい。
 同世代が二人も亡くなって、流石にあそこは避けようってことになり、次の掃除の時は近づく人もいなかった。
掃除も順調に進み、伸びてきた木をうちの親父がチェーンソーでが切ってたら、足場にしてた太い木が急に倒れ木から落ちそうになったとき、近くにいた親父の友達が下から支えてくれて事なきを得た。
でも、親父の友達が親父を支えた場所が問題で、その場所は掃除しないようにと蓋をした溝のちょうど蓋の上だった。
 そこにいたみんなが、

“ これは不味いぞ・・・。”

って空気になったけど、蓋の上からだったし大丈夫だろうと思った。
 でも次の瞬間、下から叩いてるような音と共に溝の蓋が二、三回上下に動いたそうだ。
大人二人を乗せたまま溝の蓋が上下に動いたもんだから、みんな動揺して掃除はそこまでにしてもう解散ってことになった。
その帰りは、みんな無言だった。
 親父の友達が亡くなったのは、次の日の昼間だった。
釣りに行って海に落ちたそうだ。
一緒に行った人達は、普通に会話してたのに急にフラつきながら倒れ、海に落ちたからびっくりしたそうだ。
親父は一緒に行った人達に様子を聞くと、病院の診断では倒れた段階ですでに亡くなっていたようで助けようが無かったようだ。
親父曰く、今後掃除があってもあそこには行きたくないとのことだ。


 俺は高校のときそれを知らずに、その周辺でタバコ吸ったり、昼寝してサボっていました。
ただ、そこでサボってた理由が、大人が来ない、山の中なのに何故か生き物がいない、だったので、今思うとやはりなんかあったんでしょうか。
年寄りたちはボケたり死んだりで、もうほとんどいないので分かりません。
このとき、その周辺と言っても、神社近辺ですから溝の場所は分かりますが、直接溝に触れたりはしていません。
 最近、当時のことを親父に聞いてみたら、

「 蓋には乗っていたと思う。」

らしいです。
木が急に折れ倒れそうになったとき、表現しにくいのですが、鉄棒の逆上がりの横バージョンみたいな感じで木を中心にしてグルンって回ったのを、下からトスみたいな感じで友達が支えてくれたところ、そこが溝の上だったそうです。
 親父は木から落ちた時には分からなかったけれど、支えてくれた友人に近づいた時には確かに蓋に乗っていたし、下から叩かれた感覚も覚えてるとのことでした。
 親父は今も元気です。
親父と友人の差はどこにあったのでしょうか。
親父に聞いても親父は余所の土地から婿養子で来たので、地元の歴史とかは分からないそうです。
亡くなった親父の友人は、排他的な田舎で婿養子で来た余所者ということで冷たい扱いされてた親父に優しくしてくれた人だったので、親父もやりきれなかったみたいです。
 あと、田舎だからか分かりませんが、自分の家の裏にも誰のか分からない墓があったり、何人かの幼馴染みの家の裏にも祠があったりとか、由来の分からないものがあります。
多分年月と共に廃れた信仰みたいなの有ったのかも知れません。
残念ながら、今回の震災でその場所にはもう行けなくなったことを付け加えておきます。











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日々の恐怖 9月23日 タバコの香り

2014-09-23 14:21:28 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月23日 タバコの香り



 駅の構内の喫煙スペースで、私はタバコを吸っていました。
喫煙スペースと言っても田舎の駅なので、ホームの端っこにぽつんと灰皿が設置してあるだけの簡易的なものでした。
 暫くすると、小奇麗な老紳士といった出で立ちの男性がやって来ました。
軽く会釈をすると、彼は懐からタバコの箱を取り出して、タバコを口に咥えました。
 手を滑らせた男性の手から落ちた箱が、蓋の開いたまま私の足元に落ちたので、私は拾い上げて蓋を閉めて返そうと思ったのですが、奇妙なことに気付きました。
確かに男性はその箱からタバコを取り出しました。
しかし、20本入りのその箱の中にはぎっしりタバコが詰まっており、一本も取り出した形跡が無いのです。
妙だなと思いながら、男性に箱を返そうと男性の顔を見ると、どこかで見覚えのあるような顔の気がします。
 不躾に彼の顔を見ながら、

「 どこかでお会いしたでしょうか?」

と尋ねました。
男性は、

「 私も歳なもので、最近は咄嗟に人の顔を思い出せないのです。
でもこの狭い片田舎ですし、どこかでお会いしたのかもしれませんね。」

と、にこやかに返してくれました。
 それから妙に話しやすい雰囲気の彼に、私は世間話から普段誰にも言わないような仕事の愚痴まで、自分でも私はこんなにお喋りだっただろうかと思うほどいろいろな話をしました。
彼はそんな私の話を嫌な顔一つせず、にこにこ笑いながら、時折うんうんと相槌を打ちながら聞いてくれました。
 先にタバコを吸い終わってしまった私は、彼に、

「 また、どこかで会えたらいいですね。」

とお決まりの文句を口にして、彼に背を向け改札に向け歩き始めました。

“ 不思議と懐かしい気持ちにさせてくれる人だな・・。”

と思いながら2,3歩進んだ辺りで、ふとあることを思い出しました。
幼い頃、よくタバコをふかしながら遊んでくれた叔父のことです。
しかし、彼はもう私が小学校に上がる前に他界しています。
 私が反射的に彼の方を振り返ると、まるで私が振り返ることが分かっていたように目が合いました。
そして頭に乗せた帽子を軽く持ち上げ、お元気でとにこやかに笑いました。
人違いかもしれないということもあり、私はそのままホームを後にしました。
 駅のホームは小高い場所にあり、改札を出て喫煙スペースのある辺りに目をやると、彼はもういませんでした。
田舎のホームなので改札も出入り口も一つしか無く、電車もその間入ってきていなかったと思います。
しばらく出口で彼が出てくるのを待ってみたのですが、やはり一向に出てくる気配もありません。

“ きっとあれは叔父だったのだな。”

と自分の中で納得して、駅を後にしました。
 後日、叔父の墓参りに行きました。
彼の大好きなタバコをお供えして、不謹慎と解りつつも墓前で一本タバコに火を付け、幼い頃の話をしました。
私はなんだか満たされたような気持ちになりました。
タバコの煙が、懐かしい叔父の香りを思い出させます。
 あれからも毎日私はあの喫煙スペースで、彼にまた会えないだろうかと思いながら、懐かしい話を仕込みタバコを吸っています。










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日々の恐怖 9月22日 木瘤

2014-09-22 14:43:15 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 9月22日 木瘤



 母が里帰りした時に、実家から木でできた置物をもらって帰ってきた。
母方の祖母はすでに他界しており、祖父は痴呆が始まっていた。
 置物は握り拳くらいの大きさのもので、何かを形取った彫り物ではなく、自然にできた木の瘤を切り取って磨いただけのもののように見えた。
欅っぽかった。
凹凸の加減と木肌の濃淡から、見ようによっては崩れた人の顔に見えないこともなかった。
 変だったのは、田舎の誰もその置物が誰のものか知らなかったことだ。
誰がどこで買ったのか、あるいは戴いたのか、伯母達も従兄夫婦も誰も知らなかった。

「 誰のか分からないし、持って帰っていいよ。」

と言われて母はもらって帰って来たのだが、物に執着のない祖父が珍しく、

「 それはだめだ、置いて行け。」

と繰り返したらしい。
だが周囲は痴呆の症状だろうと思って、適当になだめて母にそれを持たした。
 帰ってから、毎晩母の夢枕に祖母が立つようになった。
祖母はとても温厚な人で、子供である伯父伯母、母の誰も叱られたという記憶がない。
叱られないのだが、“こんなことをしたら母さんが悲しむだろうな”と言う気持ちが沸いて来て、自然と悪いことから遠ざかるようになったそうだ。
だが、夢枕の祖母は般若のような恐ろしい形相で母を睨み付け、見下ろしていたそうだ。
 祖父がその置物に執着していたことを思い出し、さすがに気持ち悪くなった母は、伯母に電話して、それを宅急便で実家に返した。
その日から祖母が母の夢枕に立つことはなくなった。


 気味悪がるといけないと思って母には話さなかったが、母が実家から戻ってから、私は毎晩金縛りに遭っていた。
 当時、私は部屋を借りて一人暮らししていた。
日中の仕事は極度の緊張状態が続き、夜になると体はヘトヘトだが、脳が興奮していてなかなか寝付けない。
 やっと、うとうとし始めたと思ったら、不意に全身総毛立ち、血流のゴーッという音がし始め、体が動かなくなる。
複数の子供がスリッパをはいて布団の周りを走り回るような音がし、

「 ○○ちゃん?○○ちゃん?」

と私を呼ぶ小さな子の声が聞こえる。
 布団の両端を何かが異常な力で引っ張って、体が掛け布団と敷布団に挟まれて苦しくなる。
そのうちに胸の上に何か(イメージとしては大型犬くらいの大きさのもの)がドスッと落ちて来る。
 記憶はいつもそこで途切れ、気が付くと朝になっていた。
同僚に話したら、疲労が原因だろうと言われ、自分もそうだと思っていた。
それがある日パタリと止んだ。
 次の日、母から電話があり、置物の話を聞かされた。
関連あるかどうかまったく分からないが、時期を同じくして起きたことだった。










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四枚の写真 9月21日 P4

2014-09-21 20:08:35 | _7,四枚の写真
四枚の写真 9月21日 P4 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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しづめばこ 9月21日 P323

2014-09-21 19:08:17 | C,しづめばこ
しづめばこ 9月21日 P323  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 9月20日 そのテの物

2014-09-20 18:10:55 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月20日 そのテの物



 大学のとき、某大型スーパーの警備員のバイトしてたけど、何回かそのテの物を見た。
一番はっきり見たのは、夜勤で管理室でポテロング食いながらマッタリしてたとき。
 同僚にいきなり、

“ バンバン!”

て肩叩かれて、

“ なんだよ!?”

と思って同僚が指差す先を見たら、監視カメラのモニターに男の子の顔がドアップで映ってた。
しかも、満面の笑顔。

“ 閉店のときに子供が紛れ込んでいてイタズラしてるんだな。”

と、当然のようにそう思った。
 同僚とダッシュして問題の監視カメラのところに行ってから、それがそのテの物だと気づいた。
それは、3Fをブチ抜いた吹き抜けの天井に設置してあるカメラだったから。
 業務日誌に見たままを書いて報告したら、翌日、

『 そういうこともあるでしょう。』

って室長からのコメントが付いていた。
実話です。









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日々の恐怖 9月19日 童謡と涙

2014-09-19 14:25:08 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 9月19日 童謡と涙



 娘にせがまれてよく童謡を歌う。
タッチパネルに可愛い絵が描かれており、ボタンを切り替えると、歌入りとカラオケの2パターンを演奏してくれる優れ物だ。
全部で20曲程度収録されており、これまでにすべての歌を何度も歌っていた。
 ある晩のこと、“大きな古時計”を歌ってあげていたのだが、

「 天国へ昇るおじいさん、時計ともお別れ・・・・。」

の部分を歌っていると、これまでに感じたこともないほど強烈な悲しみに襲われ、涙が溢れ出してきた。
 それを見て、呆然とする妻と娘。
これまでに何度も歌ってきたのにこんなことは初めてで、自分でも訳が分からなかった。


 それから数日経ったある日のことだ。
我々の住んでいるアパートの2階の角部屋で、お年寄りが孤独死していたことが判明した。
警察が訪ねてきて、数日前に亡くなっていたらしいのだが何か気が付いたことはなかったか、と妻が問われたらしい。
 詳しい時間を聞くと、どうやら俺が感情を爆発させて涙が溢れ出した日の時間帯とほぼ一致した。
誰にも看取られることなく天国へ旅立ったおじいさんの悲しみが、歌を歌う俺の心に作用したのかもしれない。
それ以降、娘に童謡を歌っても、こうしたことは一切起こっていない。










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しづめばこ 9月18日 P322

2014-09-18 16:18:50 | C,しづめばこ
しづめばこ 9月18日 P322  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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