大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 3月31日 青い袖(3)

2016-03-31 19:51:50 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月31日 青い袖(3)



 その後のことですが、弟が小学校4年生のときの担任が私を呼び出して話してくれたことを話します。
 前に話した死体遺棄事件の後も、不思議なことが沢山あった。
排気ガスで自殺しようとした人や、産気づいた叔母さんを助けたりと、気が付いたら人助けというのが幾つもあったけれど、これはその中で私が一番怖いなと思ったことです。
 遺体発見の噂はすぐに学校中に広まって、弟は薄気味悪いヤツというレッテルを貼られて、それがイジメに発展して、弟は丸一年ほどイジメられた。
悔しかった私は、二ヶ月くらい毎朝弟のクラスへ行って、イジメているヤツに文句を言っていた。
私なりに弟を守っているつもりでいい気になっていた。
 でもそれは全く逆効果で、弟へのイジメはエスカレートしていて、私が自分でそれに気が付いたときは既に遅くて、弟が鼻骨を折って帰って来たとき、ついに母が担任に猛然と抗議した。
 しかしその時の担任は事なかれ主義で、知らぬ存ぜぬでイジメられる方が悪いと言って、後で母に聞いた話では、母はそのとき訴えるつもりでいたらしい。
だが、弟がいきり立つ母をなだめて、裁判沙汰にはならなかった。
そして学年が次に進み、イジメはクラス編成でおさまった。
弟の新しい担任はとても若い女の先生で、家庭訪問のとき最初に、

「 ○○君はもう絶対イジメられませんから、安心してください。」

と言って、母と私はとても驚いた。
 イジメは去年からわかっていたのだが、他所のクラスことなので、なかなか口を出せなかったと言った。
 先生は絶対イジメを許さない熱血先生だった。
私と母は良い先生に巡り会ったと、すっかり安心した。
 そして、一学期、弟はイジメにあうことも無く学校生活を送っていた。
私はイジメに対しては安心していたのだが、それは7月18日の午後のことだった。
 私はクラブ中に、何故か弟の担任に呼ばれ、

「 家で変わったことはない?」

と尋ねられた。
 私は、

「 特に変わったことは無いです。」

と答えると、先生は信じられないことを話し出した。










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日々の恐怖 3月30日 青い袖(2)

2016-03-30 21:11:19 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月30日 青い袖(2)



 それが泣く程悲しかった私は、母に弟の様子を話したことを後悔した。
私は怪我や事故以外、弟が何をしようと今後一切母に話さないと心に誓って、弟に全部話して泣きながら謝った。
 弟は笑って、

「 気にしないで。」

と言ってくれた。

 その次の日、一緒に神社に行った時、神社の裏の林で犬が二匹地面を掘り返していた。
私達に気が付いて犬が逃げて、弟にくっついて恐る恐る行ってみると、土から骨が出ているのが見えて、みんなが悲鳴をあげて逃げてしまった。
 私は弟の服を掴んで無理矢理逃げようとしたが、弟は私の手を振り払ってその骨を土からひっぱった。
弟に手を払われた事の方がショックだった私は、どうしてかその光景を鮮明に覚えている。
 骨には青い布がついていて、弟が持ち上げるとポロポロと小さい骨が土に落ちた。
直ぐに家に帰って弟が電話で通報して、すぐにパトカーが家にきた。
 母もすぐに会社から帰ってきて、私は母にしかられると思ったが、全く逆で母はやけに優しかった。
その夜は物騒だからと母が叔父さんを呼んで、私と弟は母の布団で三人で一緒に寝たのを覚えている。

 これは後で知ったことだけど、青い布を見て、

“ 多分、あれは袖だ。”

とあの時思った通り、そこには二人の人が埋められていた。
母親らしき女性と、幼い女の子だった。
 当然のように私達は神社で遊ぶことを禁止されたが、一ヶ月後にはまた神社でかくれんぼをしていた。
ふと弟がお地蔵様の所を避けないで歩いている事に気が付いた私は、それを思いきって弟に尋ねてみた。
 弟は何でもないことのように、

「 いつも親子がそこにじっと座ってたから。」

と言った。
 ゾッとした私が恐る恐る、

「 幽霊?」

と尋ねると、同じ調子で、

「 よく知らないけど、たぶん生きてる人じゃないと思う。」

そして微笑みながら、

「 もういないから、怖いのはもうこれで終わりだよ。」

と私の手を引いてくれた。











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日々の恐怖 3月29日 青い袖(1)

2016-03-29 17:41:00 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月29日 青い袖(1)



 最初に気が付いたのは、私が小学校4年で弟が小学校2年のときだった。
一緒にガンダムを見ていたら、普段めったに口を開かないおとなしい弟が、ふいに後ろを振り返って、

「 聞こえない・・・。」

と言った。
 私と母は目を丸くして、母が、

「 どうかした?」

と尋ねたが、

「 なんでもない。」

と、弟にしては珍しく慌てた様子だったのが余計怪しかった。
 その日の寝る前、母に、

「 弟に何か変わったことがあったら報告するように。」

と言い付けられた。
 それは割とすぐに起きた。
当時毎日のように近所の神社で遊んでいたが、そこへ向かう途中の出来事だった。
前を歩いている弟が何もない道なのに、まるで何かを避けるように弧を描いて歩いた。
 そこは道路の脇にお地蔵様の祠がある場所だった。
いままで前を歩いてばかりいた私は気が付かなかったが、弟はそこを通り過ぎる時、必ずそうしていた。
 母に話すと、母は弟を病院に連れて行った。
最初は眼科で、次は精神科だった。
弟は黙って母に従っていた。
 帰ってきた母に、

「 どうだったの?
○○ちゃん病気なの?」

と尋ねると、詳しい検査の結果は明後日に出るが、特に異常は見あたらず、至って健康だと言われたらしい。
 医師の質問にもはきはきと答え、賢い息子さんだと褒められたようだ。
幻聴と幻覚については、現時点で生活に支障がなければ様子をみてみましょう、ということになった。

 後日、私と母が検査結果を聞きに行くと、怖い病気が潜んでいる可能性はなく、視覚や聴覚にも異常はなく、知能指数が平均よりずっと高いと言われ、母が何故かとても嬉しそうにしていたことを覚えている。
それは、私も嬉しかった。
 しかしそれから弟は、私と神社に行かなくなった。
そればかりか、遊びに誘っても、違うグループに行くようになってしまった。








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日々の恐怖 3月28日 電波な人(2)

2016-03-28 17:34:25 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月28日 電波な人(2)



 でもここは3Fで、外にベランダはありません。
窓のそばにも誰もいないので、何がおきているのか理解できず、全員ただ硬直して顔を見合わせていました。
 窓を叩く音は続き、

“ 早く終われ!”

という自己逃避の中で、K君を見ると、彼は自分の携帯電話で何かを話しています。
あまりに非現実的な光景に何やら怒りすら込み上げてきたその時、K君が言いました。

「 白髪で右目の上にイボみたいなのがあって、餃子耳なおじいさんに心当たりのある人いる?」

 私は驚きました。
それは私の叔父の特徴そのものなのです。
 私がK君にその事を告げると、彼は、

「 ちょっと・・・・・。」

と私だけを台所に呼ぶとこう言いました。

「 もう間に合わないけど、今日は急いで帰った方がいい。
こっちは大丈夫だし、帰りも変な事はおきないから大丈夫、保障する。」

 言い方から、

“ あぁ、叔父が亡くなったんだな・・・。”

と理解しました。
実は、叔父は三か月前からガンで入院していたのです。
 その後は自宅に帰り、予想どうりの訃報に改めて呆然とし、ガクブルしながら朝を待ちました。
その後、K君は本格的に職場での居場所がなくなってしまい、残念ながら自主的に退職して行きました。
 今にして思うと彼の奇行は、私達には理解できなくても、彼には何か見たり、聞こえていたのかも知れないと思います。









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日々の恐怖 3月27日 電波な人(1)

2016-03-27 20:14:41 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月27日 電波な人(1)



 私のバイト先にはK君という変わり者で有名な人がいた。
かなり奇行が目立つ人なんだけど、性格的に明るく人懐っこいせいか職場のムードメーカー的な位置付けにいる人だった。
 どんな事をするか例をあげてみると、誰も呼んでいないのに、

「 ん?何?」

と突然振り返る。
鳴っていない携帯電話に出て、まるで通話中かのように話し出す。
本人いわく、不幸があった人がわかる。
まぁ電波な人なんだと言ってしまえばそれまでなんですが、冗談交じりにそういったことをするので、なかなか楽しい人だった。
 去年の丁度今頃、忘年会を兼ねてK君の家で鍋を囲もうという話が出ました。
何せ奇人変人としての評価が高い彼のこと、口には出しませんが、彼がどのような生活をしているのか皆興味津々でした。
 K君は嫌がりましたが、結局押し切られてマンションへと向いました。
部屋は3Fにあり、予想と反して普通の部屋です。
皆で、

「 ツマラネ~~~!」

とか文句を言いながら鍋を突き、酒も飲み、時間も深夜の2時を回った頃に事件は起きました。
いい感じに皆お酒が回り、下戸で運転手の私はテンションについて行けず、食器や鍋を片づけつつ、台所で洗い物をしていました。
そこに、

“ ばぁーーーーん!!!”

と物凄い音がしました。

“ 近所迷惑を考えろよ・・・。”

と思いつつリビングに戻ると、みんな青い顔でお互いを見詰めています。
ただ、K君1人だけが窓越しに外を見ているようです。

“ あんまり騒ぐと迷惑ですから・・・・^^;”

と私が注意すると、みんなが、

「 ・・・いや、・・・う~ん・・・・・。」

と要領を得ない生返事を返して来ました。

“ 誰か悪酔いして喧嘩したのかな?”

と思った瞬間です。

“ ばぁーーーーーーーーん!!!!”

 分かりました。
誰が鳴らしたのでもなく、K君の家の窓が叩かれているのです。










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日々の恐怖 3月26日 蒸発

2016-03-26 21:45:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月26日 蒸発



 賃貸業者です。
中野で首吊り自殺した高級マンションがありまして、家主が今後の相談に来てたんですね。

「 現状のまま借りてくれるなら、3万でいいんだけど・・・。」

その話を聞いていた同僚のK君が即答しました。

「 じゃ僕借ります!」

会社全体で反対したけど、なにせ通常の賃料は30万です。
K君は、いそいそ引越しして住んじゃった。

「 何もないっすよ~!」

と言っていたK君だったけど、第三者が見ても顔つきが段々変わってきた。

「 やばくない?」

と聞いても、

「 大丈夫。」

の一点張り。
 結局、入居から半年後、K君は会社を辞めました、というより来なくなりました。
蒸発したって会社からは聞いてます。









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日々の恐怖 3月25日 凝視(2)

2016-03-25 22:12:34 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月25日 凝視(2)



言われた通りの順に目線を動かして行けば、その手は明らかにベットを目指して移動している。
 そして、彼女は、

「 手話で会話してる映像があったんだけど、ちょうどこんな感じで手があったと思う。」

と言いながら、手の形を私に見せた。
 実際に見たわけでも無いのに、背筋がぞわぞわした。
彼女は、

「 それでね。」

と強張った顔で言う。

「 それでね。
昨日ついに、ベットの縁に手首があったのよ。
だから、もしかしたら、今日、何か起こるかもしれない。」

力無く続けられた彼女の言葉に、色々と思うところが無いではないけれど、結局何も言えなくなってしまった。
 そのまましばらく、私が無言でいると彼女は急に笑い出して、

「 嘘よ!」

と言った。
 彼女が、とても楽しそうに、

「 誰か泊まりに来たときに、驚かそうと思って考えた話なのよ。
どう、怖かったでしょ?」

と言うので、私は少し困ってしまった。
 実は私も、さきほどから彼女に言えていないことがあった。
手首の話を彼女が始めたとき、黒く透けた男が彼女の背後に見え始めた。
 そして、その男は徐々に前のめりになり、話が終わる頃には彼女に覆いかぶさって、ずっと笑う彼女の顔を凝視し続けているのだけれど、果たしてそれを告げるべきなのか、どうか・・・。
 私はゆっくりと布団の中へ潜り込み、何も見えないよう固く瞼を閉ざした。
いつの間にか外では、雨が降り出していた。












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日々の恐怖 3月24日 凝視(1)

2016-03-24 20:10:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月24日 凝視(1)



 女子大時代の友人から、

「 うちに遊びに来ない?」

と電話が入った。
 私は、

“ 声を聞くのは半年振り、実際に会うとなれば1年ぶりにもなるのだなァ・・・。”

と、仕事明けのぼんやりした頭で話半分に聞いていた。
すると、いつの間にか2週間後の週末を彼女の家で過ごすということになっていた。
 当日は急な仕事が入ってしまい、夜、仕事が終わるとそのまま彼女の家へ向かった。
着いてすぐに手料理を振舞われ、彼女の仕事の愚痴を聞き、土産にと持って行った酒やつまみを空けきるころには日付を越えてしまっていた。
 それではもう寝よう、と気分良く横になりまぶたを閉じたのだが、落ち着かない様子で寝返りを打つ彼女が気になってうまく眠れない。
 私が、

「 どうしたの?」

と聞けば、

「 実は言っていないことがあるの・・・。」

と気まずげな様子で彼女が言い、

「 2週間前からなんだけどね、手首が出るのよ。」

 私が、

「 よくわからないけど・・・・?」

と首を傾げると、彼女はベットから離れた、正面反対側にあるクローゼットを指差した。
 そして、彼女は続けた。

「 一番初めは、クローゼットの隙間から指が出ていたの。
そのときはただの見間違いだろうと思って、気にしなかったのよ。
でも次の日、今度は本棚の影に指を見つけて、また次の日はテーブルの横に手が見えた。」









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日々の恐怖 3月23日 ←ココ(2)

2016-03-23 19:33:12 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月23日 ←ココ(2)



 俺は怒られるのが怖くてヤダといったんだけど、K君が、

「 ここ、見ろ!」

と言うので見たら、剥がれ落ちた中の壁から色の違う部分が見えている。
 灰色の壁に、黒い太い線で横断歩道のような模様が描かれてるのが、はがれ落ちた部分から確認できた。
 K君が、

「 これの続き見たいだろ?」

と言う。
 K君はカッターを持って崩れた壁の部分をカリカリやり始めた。
面白いように塗装が剥がれていく。
 すると、壁の中から組という文字が現れた。
さっき横断歩道のように見えた模様は、組の右側だったわけだ。
 もうこの後ろに何かあることは間違いない。
クラスの男子の半分近くが一緒になって壁の塗装を崩し始めた。
コンパスの針でつついたり、定規の角で削る者、彫刻刀を持ち出す奴までいた。
ちなみに俺は崩すのをまわりから見ていた。
 大抵こういう場合、壁のうしろに死体が埋まってただの、文字がびっしり書かれてただの、お札がいっぱい貼ってあっただのがよくあるパターンで、俺も当時すでに怖い話としてそういった話をいくつか知っていた。

“ この壁の向こうにあるものも、まさにそういうものなのか?”

そのドキドキと、先生に見つかったらどうするんだと言うドキドキで、心臓がきりきり締め上げられるような気がした。
 昼休みが半分たたないうちに、壁の塗装はあっという間に崩れた。
中から出てきたのは、お化けでもなんでもない、子供たちが描いた絵だ。
 平成2年 6年2組と書かれてる。
当時の卒業生が描いたものなんだろう。
 30人くらいの男子女子の似顔絵が集合写真のように並んで描かれている。
ただし、異様なのがその顔一つ一つ全てが赤いペンキで×と塗られていたこと。
特に、上の段の右から3番目の子は×どころか完全に赤く塗りつぶされ、その下に書いてあったはずの名前も彫刻刀かなんかで削り取られていた。
 俺たちは先生に怒られるだろうと覚悟を決めていたが、5時間目に先生が来ると、いきなり、

「 よし、5時間目は体育館で自習だ。
ランドセルに教科書とか全部入れて、5時間目が終わったらそのまま家に帰っていいぞ。
掃除もしなくていい。
教室に戻らずに、そのまま帰れ。」

と、全く怒られなかった。
 そして次の日、学校に行くと1階の教室が全て立ち入り禁止になっていた。
俺たちは急遽建てられたプレハブで6年の残りの学校生活を送るハメになった。
 この間13年ぶりに小学校の同窓会があって、当然のごとくその事件が話題に上がった。
当時の担任も来ていたので、

「 先生、あの事覚えてますよね?
あれはなんだったんですか?」

ときいてみたが、

「 いや、そんな事あったか?
覚えてないなあ・・。」

とか超すっとぼけてた。
だが、俺たちは全員、あの事件を覚えている。









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日々の恐怖 3月22日 ←ココ(1)

2016-03-22 19:25:05 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月22日 ←ココ(1)



 このあいだちょうど小学校の同窓会があったんで、そのときに当然のごとく話題に上がった俺たちのあいだでは有名な事件をひとつがある。
俺が通っていた小学校はちょっと変わっていて、3階建ての校舎のうち、最上階の3階が1・2年の教室、2階が3・4年の教室で、一番下の1階が5・6年の教室になっている。
別の学校に通ってた従兄弟にこの話したらびっくりしてたんで多分俺の学校が特殊なんだと思う。
 校舎自体はコンクリート造りで、相当というほどでもないが、そこそこ年数がたってたらしく廊下の壁とかは薄汚れていて汚いな、と子供ながらに思ってた記憶がある。
 それで、6年になるまで気がつかなかったんだが、1階の6年2組の教室の前の廊下だけ壁が綺麗に塗りなおされている。
下級生の時代に6年のフロアになんか怖くて行けないから、知らなくて当たり前だ。
 もともとのコンクリートの壁と似たような色のペンキで、隣りの6年1組との境目から6年3組の境界まで、きっちりと塗られている。
そこだけ汚れてないからすぐわかる。
 ある日、6年3組寄りの、その塗りなおされた壁の右下に近い部分に薄ーく鉛筆で、

←ココ

って書いてあるのに気がついた。
←ココと指された部分を見ても、まあ何の変化もない、ただの壁だ。
 その当時、学校では校舎の至るところに、

左へ○歩進め
真っ直ぐ○歩進め
上を見ろ
右を向け

などと書いてその通りに進んでいく、という遊びが流行っていたので、←ココもその類のものだろうと気にも留めなかった。

 2週間くらいしてからかな、友達のY君が教室の外で俺を呼んでいる。
行ってみると廊下の壁の←ココの矢印の先に青いシミが浮き出ていた。
 5cmくらいの小さなシミだったけど、ちょうど矢印が指している先に出たもんだから、俺とY君で、

「 すげー、不思議だね。」

とか言ってた。
 次の日、そのシミはいきなり倍くらいの大きさになってて、←ココの文字の部分にまで広がってて、もうその文字は見えなくなっていた。
その代わりに、シミの形が人間の手のように見えた。
 さすがに俺たち以外の生徒もそのシミに気がついて、形が形ってこともあって、瞬く間にクラス中に、

呪いのシミ

として話題になった。
 その話が先生の耳にも入ったらしく、その日の帰りのHRでは、

「 何でもないただのシミだから、気にするな。」

と半ば強制的に家に帰された。

 その週が空けて次の月曜、教室に行くと、なんと廊下の壁の、シミがあった部分が丸々はがれ落ちてて、しかもそこを中心に上下に細い亀裂と言うかヒビが入っていた。
俺が教室に行くと、すでに廊下で数人が騒いでたので見たらそんな状態だった。
 朝のHRで先生が来るまでは俺のクラスと、両隣のクラスの何人かも含めて大騒ぎで、

“ 絶対この壁のうしろに何かあるよ、死体が埋められてる。”

なんていう話にもなって、クラスのお調子者K君がカッターでその亀裂をガリガリやろうとしたところに先生がきて、ものすごい勢いで怒られてた。
申し訳ないけど、俺はそのとき知らない振りしていた。
 その昼休みに、K君が懲りもせず、

「 朝の続きやろうぜ!」

と言い出した。
壁を削る続きをやろうぜと言うわけだ。










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日々の恐怖 3月21日 街の案内

2016-03-21 19:47:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月21日 街の案内



俺の住んでいる地区では徘徊老人や迷子が出ると、役所が街頭拡声器で放送を流す。

「 ○○歳の男性が、××時から行方がわかりません。背格好は・・・・。」

とかそんな感じ。
見つかると、

「 先ほど放送した男性は、無事発見されました。」

というような放送が流れる。

冬になると毎年風物詩のようにこの放送が流れる。

今朝も、黒っぽい服を着た67歳の男性の行方が朝九時からわからなくなっているという。

“ この寒いのに、よく出歩く気になるもんだ。”

と、思ったら夕方になってまた放送が流れた。

「 先ほど放送した男性は、発見されました。」









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しづめばこ 3月20日 §28 幻影 P423

2016-03-20 16:52:36 | C,しづめばこ


しづめばこ 3月20日 §28 幻影 P423  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


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日々の恐怖 3月19日 店宛のメール

2016-03-19 19:59:43 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月19日 店宛のメール



 3年前の話だが、その頃色々ストレスがあって自営してたんだが店をたたんで家で休養していた。
暇だったんで、数か月前の店宛のメールを読んでいると、何か違和感がある文章を見付けた。
メールの発信者の記憶は無い。
 昔、暗号をちょっとかじったことあったから、それを当て嵌めるといくつかの言葉があった。

タクシー
左後ろにへこみ
青いランプ
ようこそ

文にはなってなくて、言葉だった。
あと1つか2つあった気がするが思い出せない。
 それを紙にメモって、嫁と子供が車で出かけるって言っていたから、駐車場まで見送りに行ったら、うちのマンションの前にタクシー止まっていた。
よく使うタクシー会社だから、特に気にすることもなく嫁と子供と車に向かっていた。
 歩いてると、タクシーの左後方部が見えてへこみがあるのに気付いた。
夜で暗かったが間違いなくへこみがあった。
 そして、窓の部分が青いLEDか何かで照らされていた。
よくある足元を照らすような光だ。
 ちょっと怖くなって、俺は出かける予定なかったけれど、家族と一緒に自分の車に乗り込んで事情を説明し、嫁と子供にちょっと待ってくれないかと言った。
しかし、いくら待っても、そのタクシーに人が乗り込む様子がなくてしばらく待機していた。
 それでも、気になって仕方なかったからしびれを切らして車を降り、タクシーに向かって歩いて行ったらドアが開いた。
 運転手が、

「 ようこそ。」

とか言うんだ。
 もう、どうしたらいいかわからなくて、周りキョロキョロしてたら数人のスーツ姿の男が向こうの道角から、こっちを見ていた。
 普通の住宅街だから、普段、夜のその時間に人を見かけることは少ない。
何かやばいと思って、俺が乗らなきゃ嫁と子供も危ないかもとか、変な危機感が出てきて、とりあえずタクシーに乗ってみたら、タクシーは無言で出発した。
 タクシーの中でラジオが流れていたけど、桃太郎の話をしていた。
ただ、どこかストーリーが遠くて、恐怖が増したのは覚えている。
そのときの記憶が曖昧でよく覚えてない。
 訳の分からないまま10分くらい走り、そのラジオから、

「 桃太郎が大泣きしてる。」

って聞こえた。
すると、子供の顔が頭に浮かんで涙が出てきた。
 運転手がそれまで無言だったのに、

「 戻りますか?」

って聞いてきたので大きく頷いた。
 結局、何事もなく家の前まで辿り着いて俺を下ろした後、タクシーは金も請求せず、どこかに走り去った。
 駐車場を見るとうちの車がなかったから慌てたけど、そのタクシーとすれ違って戻って来るうちの車が見えた。
どうやら俺を探しに行っていたらしい。
 俺が心配だから家族は出かけるのを中止して、一緒にいてくれることになった。
家に戻って解読したメモ見せると嫁も不思議な顔をしていた。
 ただの奇行にしたくなかったから、確認のため俺が乗ったタクシーの会社に問い合わせてみたら、

「 その時間にそちらには配車してないし、付近にうちのタクシーはいません。
それに、へこみがあるようなタクシーは、すぐに修理に出すので勘違いではありませんか?」

って言われた。
 ストレスで店をたたんで休養していた最中の出来事だったので、危ないヤツと思われるかも知れませんが、回復した今から思うと意味不明だったと思います。
今は店も復活しています。











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日々の恐怖 3月18日 商業科棟の鏡(2)

2016-03-18 20:41:49 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月18日 商業科棟の鏡(2)



 俺は担任に聞きました。

「 コレ、使いますか?」
「 そんな古いの使わんから捨ててくれ。」

他の不燃物と共に危険物置き場へ捨てにいき、その鏡のことはすぐに忘れてしまいました。
 その後、何日か過ぎたあと体育の授業中転んでしまい、消毒してもらうために普通科棟の1階の保健室へ向かいました。
治療してもらいついでにトイレもすまそうとトイレへ。
小便をすまし手を洗うと、同じ物が俺を映しています。
先日、廃棄物として捨てた古い鏡です。
 物事を深く考えない俺は、同じ鏡だとしか思いませんでしたが、次の授業中、妙に鏡のことが気にかかりはじめました。

疑問「理科室にあった鏡は何処の鏡?」 
答え「古くなった校舎で使われていた鏡。多分準備室があった校舎。」

疑問「準備室のある普通科棟Ⅱは、普通科棟とは違う時に建てられた校舎では?」
答え「同じ時期に立てられた校舎は商業科棟のみ。」

疑問「商業科棟の鏡はすべて割られたのでは?」
答え「割れていなかったのでは?商業科4階*男女=8枚の鏡。」

疑問「割れてもいないもをなせ取り付けないのか?」
答え「映ってはいけないものが映し出されるから????」

 休み時間、親友に相談し、クラスのみんなにも話しても半信半疑で、クラスがざわついてる中で次の授業が始まりました。
その時の教師は、商業科のクラスのベテラン教師でしたので、疑問をぶつけてみると、

「 幽霊出るからつけないのも、おまえら知ってるだろ?」

さも当たり前のように話します。
クラスの何人かが、不良が鏡を割るから取り付けなかったのではないのかとつめよると、

「 いまどき鏡を割る馬鹿がいるか?」

たしかにそんな時期がこの学校にもあったが、校内暴力がおさまったあと転落事故があり、その後映るようになった、と認めました。
 なぜ理科準備室なんかにあるのか聞くと、商業科準備室ではトイレでもなく映ってしまうから。
あと、職員室や用具置き場だと生徒に見つかりやすく、好奇心で設置されると困るから、目のつかない他の校舎で保管したほうが確実だからだそうです。
現在、十数年の月日が立ちましたが、○○県立○○高校商業科棟には、現在鏡はついているのでしょうか?












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日々の恐怖 3月17日 商業科棟の鏡(1)

2016-03-17 21:38:08 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月17日 商業科棟の鏡(1)



 出身高校の商業科棟のトイレにはすべて鏡がありません。
正確にいうと、鏡を取り付けていた跡は残っています。
もちろんその他の『普通科棟』『普通科棟Ⅱ』『普通科棟Ⅲ』『体育館』『図書館棟』には通常通り鏡はあります。
 鏡が外された訳は在学中の兄から聞きました。
その時は普通科の特進クラスに通っている兄からの話のため正確な情報は聞けませんでしたが、噂によると、卒業を前にした商業科男子生徒が、学校の風景を心に残すため校内を回っているうちに、商業科棟の屋上から転落死したそうです。
それ以来、商業科棟の鏡に映し出されるようになったためだそうです。
 その後、俺は商業科へ進学し、トイレを3年間使うはめになり、入学式後、同校出身の女子にトイレに鏡があるか聞くと無いとのこと。
坊主だった我々には鏡などは無用の長物だったのですが、女子トイレにも無いとはホントに出るとしかいえませんでした。
 しかし意外と早く真相を聞くこととなります。
他校出身の友人が別の話を教えてくれました。
その友人には10歳以上年の離れた兄がいて、70年代後半に盛んだった校内暴力時代の学校の卒業生だそうです。
その時代は器物を破壊することやガラスを割るのは当たり前で、一番破壊の激しかった商業科棟は何度入れ替えても鏡を割られるので、最後には鏡を商業科棟には設置されなくなったそうです。

「 結局、学校の怖い話とは、勝手に話に尾ひれがついて別のものになっていくものだよ。」

と話を締めくくったてくれました。

昭和から平成にうつり、校内暴力など化石と同じ平成元年入学生の私から見たら、
いまだに鏡をはめないのもおかしいと疑問に思ったのですが、坊主頭に鏡は必要ありません。
それで納得してしまいまい、2年生になるまではその話が真実だと信じていました、実際鏡を手に取るまでは。
 2年生になり、何度目かの掃除区画が割り当てられました。理科準備室です。
何日か過ぎたあと、放課後私のクラスの新人の理科担当から呼び出しをうけました。
 机を新調したので模様替えを手伝ってほしいとの依頼で、売店のパンとコーヒーで手伝うと手をうったのですが、割の合わない仕事でした。
 机の中身やロッカーの中身を別室に移し、そのあとまた入れなおす単調な仕事が続きました。
そのとき、上段が本棚、下段がロッカーの二段に分かれたロッカーの、上に積んであったものの中からから、古い鏡が8枚出てきました。









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