大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月28日 病院関連話(18)  バーコード

2023-01-28 18:12:48 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 1月28日 病院関連話(18)  バーコード






 別に禿頭の患者さんの話ではありません。
ある入院患者さん、スケッチブックに何かを描いている。
別に全然問題ないし、むしろ健全な趣味だなと思ってたんだけれど、ただ向かいのベッドを見ながら描いている。

” 空のベッド描いて面白いか・・・・・?”

 ちらっと見ると、びっくりした。
全然絵じゃない。
縦の線をひたすら並べているだけだ。
太い線、細い線、まるでバーコードみたいだ。

「 少し待ってください。」

と言うので待っていると、ページをちぎって、

「 あげます。」

” なんですか、これ・・・?”

と聞きたかったんだけれど、もう既に別のベッドのスケッチを始めている。
 凄く気になったので、

” まさかね・・・・。”

とは思いつつ、下のコンビニに行って、

「 これ、ちょっとスキャンしてくれませんか?」
「 何ですか、これ・・・??」

しかし、

” ピッ!”

反応した。

「 何これ・・・?」

すごく気味悪そうにしている。
 プリントしてもらって見たら、

" 平成〇〇年2月14日 山本〇〇 ¥0"

鳥肌が立った。
知っていた患者さんだったから。

「 今スケッチしているベッドは患者さんいるんだけど・・・・。」

泣きそうな顔で彼女は言う。











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日々の恐怖 1月22日 病院関連話(17) 5億年ボタン

2023-01-22 11:12:36 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月22日 病院関連話(17) 5億年ボタン





 一部のネットで一時はやった質問系のネタです。
目のまえにボタンがあってこれを押すと100万円貰える。
ただし、5億年間何もない空間で過ごさないといけない。(餓死とかは無い。)
5億年経過すると現時点に戻り、その間の記憶は全て消えている、ってやつ。

「 絶対無理!」

彼女は言う。

「 5年でも無理、5日なら考えるけど・・・。」


 交通事故にあった入院患者さん、いわゆる植物状態になってしまって、脳波はあるんだけど意識が戻らない。
数日後ナースコールが鳴って駆け付けると、件の患者さんが目を開いてぼろぼろ泣いている。

「 ここは・・・・・、ここですよね・・・・。」

何を言っとるんじゃ。
意識が混濁しているのか?
何にせよ意識が戻って良かった。
 話を聞くと、衝撃を受けたような気がした後、真っ白な空間に放り込まれたそうだ。
彷徨い歩いても何もない。
疲れもしないし、腹も空かないし、眠くもならない。

「 アルフォンス(鋼の錬金術師)って、ああいう気分だったんかなあ。」
「 でも、あっちにはストーリーがあった分救われるよ。」

 時間の感覚もおかしくなり気が狂いそうになった頃、突然肩を叩かれてびっくりして振り返ると知らないおっさんがいる。

「 悪かったなあ。」
「 わしのせいやから、わしが代わるわ。」

そして、目が覚めたんだって。









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日々の恐怖 1月18日 病院関連話(16) 採血

2023-01-18 20:21:25 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月18日 病院関連話(16) 採血





 採血するのはたいてい看護師の仕事です。
ある患者さん、なかなか血管が見つからない。
右腕も左腕も。
 仕方がないので、手のカバーを外して脈動を探しても見つからない。
それに異様に手が冷たい。
 患者さんの方が恥ずかしそうに、

「 あの~、いつも首から取ってもらってるんです。」

見たところ、極端なガリでもデブでもない。
むしろアスリート体形。
首から採血なんて初めてなんで慎重に準備しながら、気紛らせに話しかけた。

「 あの~。
余計なお世話かもしれませんが・・・・。
腕、診てもらったほうがいいんじゃないですか?」
「 ああ、よく言われますし、自覚症状もあります。」
「 そうなんですか・・・・。」
「 なんていうか、血が届いていないんですね。」

びっくりして、

「 じゃあ、なんで動いてるんです?」
「 気力で。」










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日々の恐怖 1月16日 病院関連話(15) 死神

2023-01-16 12:28:26 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月16日 病院関連話(15) 死神





 若い娘さんで、心臓が悪くって入院していた。
彼女には彼氏さんがいて、まめにお見舞いに来ていた。
微笑ましい話だ。
 でも、状態が悪くなって緊急手術になった。
ちょうど彼氏さんも来ていたんだけど、さすがに入ってもらうわけにはいかない。
じりじりした表情で、椅子に座って待ってる彼氏さんを見るのは正直切なかった。
しかし、結果的に彼女は短い生を終えた。
切ない。
 で、後日その彼氏さんを見かけた。
もうここに用は無いはずだ。
新しい女性の患者さんで心臓が悪くて入院している患者さんがいて、そのお見舞いだと受付の人から聞いた。
ぞっとした。
あいつ死神か?










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日々の恐怖 1月9日 病院関連話(14) 時代劇

2023-01-09 11:17:10 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 1月9日 病院関連話(14)時代劇





 あるおばあさん、よくテレビを見ている。(6人部屋はテレビはカード購入必要なのが心苦しいんですが。)
そして、他の患者さんを気遣ってイヤホンをつけて音を消している。
気配りの良いおばあさんだ。
 が、ある時見てびっくりした。
イヤホンジャックがテレビにささっていない。
つまり、無音で画面だけ見ていた。
それによく見ると番組がなんか古臭い時代劇だ。
 この時間に地上波でそんな番組やってたかなあ、と新聞のテレビ欄見ても報道系ばっかりで地方局にもそんなものはない。
すごく気になったんで、

「 なんの時代劇なんですか?」

って聞いたら、

「 わたしゃ見てないよ、この人が見てるんだけど、うるさいから耳栓代わりにこれ付けてんの。」

この人ってどの人だよ。









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日々の恐怖 1月7日 COFFEE

2023-01-07 10:03:22 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 1月7日 COFFEE





 彼女は、金婚式を目前にして夫を亡くした。
長患いで覚悟はしていた。
 五十年近くも一緒にいたが、お世辞にも仲睦まじい夫婦ではなく、はっきり言って腐れ縁だった。
しかしそれでも、長年連れ添った伴侶をなくすというのは、彼女が思っていた以上のショックだったようだ。
 そんなつもりはなかったのに、彼女はすっかり元気をなくし、家に閉じこもりがちになった。
これではいけないとは思うのだが、どうしても気持ちが外へと向かず、亡くなった夫のことばかり考えてしまう。
 そんな風に数ヶ月が経った時、ふとあることに気がついた。
夫の愛用していたマグカップが、出した覚えもないのに一つだけカウンターに出ているのだ。
何度直しても、気づけばカウンターに出ている。
最初は自分の認知症を疑った彼女だったが、やがて思い直した。
 夫のマグカップは、温度変化で色が変わる素材でできたいた。
温かい飲み物を入れると、黒いカップが白く変わるのだ。
彼女の目につくときはいつも、中身は入っていなくてもマグカップは白に変わっていた。
 夫は、生前よく好きなコーヒーを淹れて一人で飲んでいた。
自分には見えないが、きっと夫はまだこの家にいて、ありし日のように行動してあるのだ。
彼女はそう思った。
 恐怖はなく、むしろ嬉しかったという。
それからというもの、彼女は毎日のように現れるマグカップを見守った。
 時間はまちまちだったが、一日一回、一つだけ現れるカップは、十分ほどで徐々に色が白から黒に戻り、完全に黒くなると最後に、余韻のように一瞬だけコーヒーの香りがしたそうだ。
やがて彼女は、家に閉じこもることもなくなり、元のように外に出かけることも増えたという。

「 きっとご主人も、あなたのことを見守ってくれたんですねぇ。」

ほのぼのとした気持ちで私が言うと、彼女は笑いながら、

「 違うわよぅ~!」

と手を振った。

「 ある日ね、私気づいてしまったのよ。」
「 気づいた?」
「 あの人ね、前から自分の分のコーヒーしか淹れなかったの。
私も好きなの知ってるのにね。
いつも自分のことばっかり。
死んでからもそんなだと思ったら、なんだかあの人のことを思ってメソメソしてるのが、馬鹿馬鹿しくなったのよ。
あとそんなに長くないんだから、外に出て楽しまないとね。」

彼女はガハハハ、と清々しく笑い、私は普段の自分の行動を振り返った。
マグカップはまだ出現しているが、相変わらず一つだけのようだ。









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