日々の恐怖 6月26日 コールセンターの事件(3)
3)おばさん
これは直接俺が関係したわけじゃないんです。
コールセンターはフリーダイヤルなのを良いことに、頭のおかしいヤツが電話をかけてきたり、長時間ねばったりするヤツがいた。
例えば、女性向けの下着の通販で、女性に対して付け心地を聞いたりサイズを聞いたりする変態から、出ると突然歌いだすおばさんとか、とにかく色々でブラックリストみたいなものがあった。
その中で一人、ある男性に執着したおばさんがいて、他のやつがとると、
“ Aさんに変わって!!”
と指名する。
いないとそこからギャーギャー喚いて1時間くらい粘る。
変わったら変わったで、そこからAと世間話をしようとする。
一応客商売なので無碍にできず閉口する。
ある日、いつものようにAが対応していたんだが、Aの様子がおかしい。
目が泳いでいて、こっちに助けを求めているように見える。
リーダーに伝えて交替したらまたギャーギャー喚いていたが、とりあえずリーダーが適当に対応していた。
Aにどうしたのか聞いたら、
「 おばさんがいきなり、
“ あんまりコンビニ弁当食べちゃだめよ。
昨日も仕事帰りに買ってたでしょ。
三日連続で同じお弁当買うのはやめたほうがいいわ。
サラダも買いなさい。
自転車通勤はやめて歩いたほうが健康に良いわよ。
最近少し太ったみたいだし。
そろそろ、去年着ていた茶色のピーコート出したら?寒くなってきたし・・。”
とか、言ってた・・・。」
と、Aの私生活に突然口出ししてきたらしい。
しかも、すべて当たっていて、茶色のピーコートも当然持っている。
Aがおばさんの電話の対応をしだしたのは半年ほど前からなので、ほぼ1年前に着ていたコートを知っているわけがない。
それ以外にもAの私生活を知っている話を一方的に繰返して(2年前に別れた元カノの話とか)、Aが驚いて挙動不審になった。
たまたま近所だった可能性もあるけど、そんな偶然ってあるか?
その後、Aは仕事を辞めておばさんからの電話も途絶えた。
未だに謎の事件だった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ