大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道122

2008-09-30 18:51:29 | E,霧の狐道
 軽トラックはヘッドライトを点灯して疾走する。
ガタガタ道は徐々に細くなって来ている。

“ このまま進んで、大丈夫なのかな・・・・。”

俺は段々心細くなって来た。
進む先には、薄く明るさのある空をバックに真っ黒な山々が聳えている。

“ あの山に突入するのかな・・・・。
 何か、ヤダなァ・・・。
 もう、何が何だか分からない・・・。”

俺の心配を他所に、軽トラックは田圃を抜けて山道に突っ込んで行った。
小さな川に沿ったカーブだらけの山道だ。

“ キュッ、キュッ、キュッ、ズズズズッ!”

軽トラックのタイヤが軋み、車体が横滑りする。
車を斜めにスライドさせながら、体勢を立て直し尻を振りながら加速する。

「 うおォ~~~~!!」

俺は、生きた心地がしなかった。

「 うおぉぉぉ~、爺さん、緩めてくれ~!
 スピード、スピード!」

婆さんが、爺さんに言った。

「 爺さん、爺さん、スピードだって!」
「 なに、もっと急げってかァ~!
 よっしゃ、分かったァ。
 昔、暴走していた頃を思い出すなァ~!」
「 そうですよ、爺さん!
 昔は、爺さんを見て、ワクワクしましたよ!」
「 そうじゃ、おまえをオートバイの後ろに乗せて、ぶっ飛ばしてたのう。
 あの頃は、青春の血が騒いでよぉ!」
「 爺さん爺さん、わたしゃ何だか、ワクワクしてきましたよ!」
「 おう、婆さん、久しぶりに興奮して来たぞ!」
「 イヤですよ、爺さん、うふふふふふ!」




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霧の狐道121

2008-09-28 19:49:08 | E,霧の狐道
 爺さんは、叫んだ。

「 ワシに任せるのじゃ!
 隣町の総合病院に運んでやるからのっ!」

俺は、叫んだ。

「 隣町じゃ、ないィ~~!!
 駅前の近くに外科があるぅ~~~!
 病院は、そっち、そっち!」

爺さんが言った。

「 そうじゃ!
 そっちじゃ、そっちじゃ!
 急いで隣町の総合病院に連れて行ってやっからのっ!」

軽トラックは、速度を速めた。

「 よ~し、急ぐぞ!
 人を助けるのは、気持ちがいいのう!」

俺は爺さんの声を聞いて思った。

“ やっぱ、いい人たちだったんだ・・・・。”

軽トラックは、ガタガタ揺れながら走っている。

“ でも、ううう・・、話が通じない・・・・。”

俺は荷台の枠にもたれながら、周りの景色を見た。

“ あらっ、これは・・・・。
 これは、何処かで見たような・・・。”

軽トラックから見える景色がどうも見たことがある。

“ うわっ、大変だ!
 もとの道を戻っている!”

俺は、運転席に向かって絶叫した。

「 止めてくれ~!!
 橋に戻るのは、止めてくれ~っ!!」

絶叫したのが良かったのか、軽トラックは途中で急に左に曲がった。

“ ズザザザザァ~~!”

軽トラックが横滑りして砂を巻き上げる。
体が外に振られる。

「 うわっ!!」

 俺は体制を立て直し、振り返って、運転席の方をチラッと見た。
爺婆は進行方向を見ながら、何か話をしているようだ。
後姿で表情は分からない。

“ ちゃんと、聞こえたのかな・・・?
 向きが変わったから、ま、いいか・・・。”

でも、向かって行くのは、真正面にある山だ。
もう日は沈んでしまった。



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霧の狐道120

2008-09-26 19:35:42 | E,霧の狐道
 軽トラックはスピードを上げて走る。
夕日に照らされた橋が段々小さくなり、道なりに右にカーブしたら橋は左の方にス~ッと見えなくなった。
橋が視界から消えて、ようやく俺はホッとした。
涼しい風が、顔に当たる。

“ ここまで来れば、もう大丈夫だ。
 でも、あの女の子と男の声は何だったんだろう?
 それに、橋には行き倒れもいたようだし・・・・。
 あ、ひょっとして、この爺婆も、あの橋で何か見ているかも知れないな。
 ちょっと、聞いてみようかな・・・。”

俺は、首を右に回して運転席に声を掛けた。

「 誰か、橋の辺りで見なかったですか?」

助手席の婆さんが、俺の声に答えた。

「 うにゃ、聞こえんがな。
 エンジン、うるさいがなァ。」

俺は、もう一度聞いた。

「 だ・れ・か・い・た・か!!」

婆さんは言った。

「 えっ、掻いたかってかァ?
 ああ、畑で蚊に刺されたわな。
 ホンに痒いわな。」

婆さんは、顔をポリポリ掻いた。
俺は、言った。

「 掻いたじゃなくて、誰かいたか!」

婆さんは、言った。

「 えっ、歯イタってかァ?
 おまえ、歯も痛いのかのォ?
 爺さん、爺さん、歯が痛いって言ってるがの。」
「 なんじゃと、婆さん。
 そりゃ、大変じゃ!
 外科と歯科の両方ある医者は、総合病院じゃのう。
 分かった、じゃ、こっちだ!」

軽トラックは、急にUターンして、さらにスピードを上げた。

「 うわ~~っ!」

俺は、振り落とされそうになって、軽トラックの荷台の枠にしがみ付いた。

「 うがっ!」

体中に激痛が走る。



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霧の狐道119

2008-09-24 19:15:13 | E,霧の狐道
 爺さんがハンドルを握り、婆さんが助手席に乗って出発だ。
爺さんが婆さんに言った。

「 んじゃ、行くがのォ~!!」
「 おう、爺さん!!」

軽トラックは、軽快にエンジンを始動した。

“ ブルン、ブルン、ブルン・・・、ガタンッ・・・・。”

そして、ゆっくり走り出し、橋を離れ始める。

“ ホントに誰も居ないな・・・。”

俺は軽トラックの荷台から、再度、橋の周りを見回した。


 橋を離れた軽トラックはガタガタ揺れながら農道を走る。
遠ざかる橋は、セイタカアワダチソウの黄色の中に、夕日に赤く照らされていた。

“ よし、脱出だ、脱出だ、とにかく脱出・・・。
 橋に集まって来た妖怪は、俺が居ないことに気が付いてきっと悔しがる
 ぞ、ムフフフフフ・・。
 それにしても、爺婆が現れなかったら大変なことになっていただろうな。
 案外、口は悪いがこの人たち、いい人かも知れないな。
 文句を言いながらも助けてくれたし・・・。”

舗装していない農道は揺れが激しい。

“ ガタ、ガタ、ガタ、ガタ・・・・・。”

ダンボールの畳はクッションが悪くって、タイヤの振動がモロ伝わって来る。

“ 座り心地が悪いなァ~。
 ここ、死体があったんだろ・・・・。
 気味が悪いなァ~・・・・。”

俺は、ダンボールに血の跡が無いか確かめた。
特に、それらしいものは無い。

“ ・・・・・・。”



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霧の狐道118

2008-09-22 19:22:53 | E,霧の狐道
 俺は爺さんに喚いた。

「 イデデデデデデ!!
 病院、病院!
 早く、早く!!
 早く行かないと死んでしまう、早く早くっ!!」
「 ほんにウルサイガキじゃ。
 そこで死んどれ、ボケ!」
「 うううう、死ぬぅ・・・・。」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 病院・・・・!」
「 ウルサイ、黙れ!
 連れて行ってやるから黙れ、アホッ!!」
「 イデデデデデデ!!」
「 黙れちゅうとんじゃ!」
「 ・・・・・・・・。」

俺が黙ったので、爺さんは婆さんに言った。

「 んじゃ、このバカを乗せるがのォ~。」
「 あいよ、爺さん!」

 俺は爺婆に抱えられて、軽トラックの荷台に引き摺りあげられた。
そして、ダンボールの上に転がされた。

「 あらよっと!!」
「 イデデデデデデ!!」
「 そこのダンボールに転がっておれ。
 この前の行き倒れも、そこに転がっておったのじゃ!」

俺はビクッとして言った。

「 えっ、ここに死体が・・・。
 あの~、ちょっと、気持ち悪い・・け・・ど・・・・。」
「 黙って、そこに居れ、バカチン!」
「 うう・・・、俺は死体じゃない。」

 俺は足を投げ出し、トラックの運転席の方に背をもたれ掛けて、ダンボールの上に座った。
体を動かすたびに、足と肩の痛みが頭に響いて来る。




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霧の狐道117

2008-09-20 18:03:18 | E,霧の狐道
 爺さんは俺の表情を確かめながら話を続けた。

「 それがな、おかしいんじゃ。
 死んでから、半日ほど経っていたようなんじゃ。」
「 ええっ、半日?」

爺さんは婆さんの方をチラッと見て言った。

「 あれって、朝早くだったよなァ、婆さん。」
「 ああ、爺さん、まだ、薄暗かったよ。」
「 畑に行くとき見つけたんじゃがなァ。
 そいつ、前日の夜には、すでにお陀仏さんだったらしいんじゃ。
 わしゃ、確かにそのとき声がしたと思たんじゃがのォ・・・・。
 婆さんも聞こえたよなァ。」
「 そうだよ、爺さん。
 私も確かに聞こえたがなァ・・・。」

婆さんは爺さんの話に頷いた。
俺は爺さんに聞いた。

「 どうして死んだの?」
「 分からん、原因不明の変死じゃ。
 警察が慌ててやって来て事情聴取。
 ホントに面倒くさい。
 それに、警察があちこち電話を掛けて、えらい待たされたがな。
 ま、免許証から身元は分かったんじゃがな。
 そいつ、前の日までは普通の生活をしとったようじゃがなァ。
 警察でも訳が分からんと言っとったがの。」
「 ううっ!」
「 ま、生きてると思って、病院に大急ぎで運んだんじゃがなァ~。」
「 その死体、ここ・・!?」
「 そう、ここ。」
「 ・・・・・。」

俺が黙って爺さんを見ていると爺さんは俺に言った。

「 また、拾った、てとこかな・・・。」
「 俺は、行き倒れじゃないよ。」
「 ま、一応、生きとるのう。」
「 一応、じゃなくて生きてるのっ!」
「 ウルサイガキじゃ。
 死んでた方が静かで良かったわい。」

 俺は、腹立つ爺さんと思ったが、助けてもらったのだからあまりブツクサ言うのは止めておこうと思った。
そして、さらに、“その行き倒れは、何で死んだのか?”が非常に気になったが、取り敢えずここを離れるのが先決だと思った。




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霧の狐道116

2008-09-18 19:14:18 | E,霧の狐道
 俺は現場である足元を見てから、爺さんに尋ねた。

「 いつ頃?」
「 最近じゃな。
 それで、ここで声がしたので、またかって思ったんじゃ。」
「 行き倒れ・・。」
「 そう、行き倒れ。」
「 あの~、それって生きてた・・・?」
「 ああ、生きてたと思うたんじゃ。
 声がな、聞こえた。」
「 声?」
「 うつ伏せに倒れてたんじゃがな。
 女の子のような声でな。
 おじ~ちゃんってな。」
「 女の子・・・・?」
「 いや、男じゃ。
 男の声にしては変じゃなとは思たんじゃが、ま、声がしたら一応生きと
 るじゃろ。
 じゃから、うつ伏せのまま、婆さんと二人でトラックの荷台に乗せたん
 じゃ。
「 顔は見た?」
「 いや~、顔は見てないがのォ~。
 そりゃ、顔見たら気持ち悪いがな。」
「 で、助かった?」
「 いや、ダメ。」
「 ダメ?」
「 病院に着いたときは、もう、死んどった。」
「 ええっ!」
「 病院で看護婦がそいつを運んで行くとき、チラッと顔見たけど、凄い
 形相だったがの。」
「 ゲゲッ!」
「 首なんかとれそうで、ブランブランしとった。」
「 とれそうな生首・・・。」
「 いいや、とれてはおらん。
 とれそうなちゅう感じじゃよ。」
「 生首、生首、生首、とれそう・・・・・。」

俺は、橋の上で転がって来た女の子の鞠が、一瞬生首に見えたことを思い出した。

「 何を考えてるんじゃ?」
「 生首、生首、コロコロ・・・・。」
「 アハハハハ、おまえ、気持ち悪がっておるな。
 じゃ、もうちょっと続きを話してやろうかのォ~。」



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霧の狐道115

2008-09-16 19:28:04 | E,霧の狐道
 爺さんが戻って来て、俺は爺婆に引き摺られて荷台の前に立った。

「 イデ・・・・・・。」

俺は、爺さんに睨まれて我慢して黙った。
爺さんが婆さんに言った。

「 そんじゃ、乗せるかのォ~。」
「 あいよ。」
「 この前の“行き倒れ”を乗せた要領じゃ。」
「 ガッテン、爺さん!」

俺は“?”と思って、爺さんに尋ねた。

「 あの、今、行き倒れって言った?」
「 言った。」
「 行き倒れって・・・?」
「 ああ、この前な。
 倒れとったんじゃ。」
「 誰が?」
「 30才くらいの男じゃ。」
「 何処で?」
「 ここ。」
「 ここって、ここ?」
「 そう、ここ。」
「 ここ?」

爺さんは、俺の顔を見ながら足元を指差した。

「 この橋のここ。」
「 ここ!?」
「 そう、ここで、倒れとったんじゃ。」



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霧の狐道114

2008-09-14 19:00:05 | E,霧の狐道
 俺は川から引き摺られながら、なんとか脱出した。

「 イデデデデデデ!!」
「 もう、うるさいガキじゃ!」

そして、土手の上まで上がった。

「 イデデデデデデ!!」
「 もう、黙れ、バカチン!」

橋の手前には軽トラックが止まっていた。

「 イデ、イデ、イデ・・・・・。」

俺を支えていた爺さんが言った。

「 ほんに、ウルサイガキじゃのう。」
「 イデデデデデデ!!」
「 黙れっ、ちゅうの!
 あんまりウルサイと放って置くぞ!」

俺は仕方が無いので黙った。

「 お、ようやく黙りおった。
 ほんじゃ、ま、乗るとこを、こさえてやるがの。」

 爺さんは、俺を婆さんにもたれさせておいて、軽トラックに進んだ。
そして、荷台の留め金を外し、鍬などの農機具を荷台の横に移動させ、ダンボールを何枚か重ね合わせて、臨時の畳を作り始めた。
俺は、婆さんに支えられながら、橋の上の女の子を探した。

“ 居ないな・・・。”

橋の上には、予想通り女の子は居なかった。

“ ・・・・・・。”




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霧の狐道113

2008-09-12 22:24:40 | E,霧の狐道
爺さんの方が俺を指差して言った。

「 お~い、おまえ、落ちたのか?」

見れば分かるだろう、と思ったが質問に答えた。

「 落ちた、落ちた。
 そこから落ちた。」

爺さんが婆さんの方を向いて言った。

「 やっぱり落ちたようじゃな・・・。
 川に落ちるなんて、ホンに馬鹿なガキじゃのう・・。
 アハハ、馬鹿じゃ、馬鹿じゃ。
 なあ、婆さん。」
「 ああ、爺さん。
 かなりな馬鹿じゃて・・。
 ホラ、爺さん、ここに自転車も引っくり返ってるし・・・。」
「 アハハ、馬鹿じゃ、馬鹿じゃ。」
「 アハハ、馬鹿じゃ、馬鹿じゃ。」

爺婆は向かい合い、お互い納得してウンウンと頷いた。
 この際、俺は何を言われても文句は言わない。
目ん玉いっぱいあるヤツに、長い舌でペロッと舐められるよりマシだ。
それに、俺は木々の切れ間に見えたものを思い出した。

“ あ、そう言えば、山の手前に軽トラックが止まっていたな・・・。
 そうか、畑に見えた農家の夫婦だ。
 むふふふふふふ。
 よし、これでここから脱出だ!”

俺は、二人に救助を求めた。

「 助けてくれ、動けない!」
「 ホント、馬鹿なガキじゃのう・・・。」
「 病院、病院、急いで病院!!」
「 もう、うるさいガキじゃ。
 仕方が無い。
 助けてやるがな。
 婆さん、下に降りるぞ。」
「 あいよ、爺さん。」

 爺さんと婆さんが土手から川に降り来て、俺を両側から抱えた。
動かされると体のあちこちが痛む。

「 イデデデデデデ!!」
「 死にはせん、死にはせん。」



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霧の狐道112

2008-09-10 19:05:09 | E,霧の狐道
 俺は目玉を見ながら、昔読んだマンガを思い出していた。

“ うっ、あの白髪とハゲ頭は・・・・・。
 ま、まさか、救助隊じゃなくて・・・・。 
 砂掛け婆と子泣き爺・・・!?
 俺を食いに来たのか、うう・・・。
 長い舌でペロッと舐められるの、ヤダな・・・・。”

俺は、ゲゲゲの鬼太郎の世界にかなりビビッた。
でも、少し変な気がした。

“ あいつ等って、自動車で来たよな。
 妖怪が自動車の免許証を持ってたら、おかしいよな・・・。
 それに、運転とか出来ないよな・・・・・・。
 でも、最近、教習所に通って免許を取っていたり・・・とか・・・・・。”

俺が色々な妄想を浮かべていると二つの頭に動きがあった。

「 ん・・・・!?」

橋の上から話し声が聞こえる。

「 ガキじゃな・・・・。」
「 うん、ガキじゃ・・・。」
「 この前と違うな。」
「 そうじゃな。」

そして、欄干の上に、ニュッ~と爺さんと婆さんの顔が現れた。

“ 何だ、普通の爺さん婆さんじゃん!”

 俺は、ホッとした。
そして、続いて、欄干の上に爺婆の上半身が見えるようになった。
二人とも麦藁帽子を背中に引っ掛けている。
傘を被ったタヌキが二匹並んでいるように見える。

“ やっぱ、妖怪じゃ無い!”

俺はチョットの失望と共に、爺婆に向かって愛想笑いをした。

「 デヘッ・・・!!」



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霧の狐道111

2008-09-08 22:31:13 | E,霧の狐道
 俺は、上を向いて叫んだ。

「 おォ~~い!
 ここだァ~~!
 かわァ~、かわァ~!
 川だァ~~~~~!!」

自動車のドアの開閉する音が聞こえた。

“ ギッ、バタン!”

どうやら、聞こえたらしい。
誰かが自動車から降りて来る気配がする。

“ おっ、助かった!!”

 俺は河原から上を向いて橋の欄干を見詰めた。
でも、声を掛けて来るでも、川を覗き込んで来るでもない。

“ ありゃ・・・、誰も覗いて来ないぞ。
 どうしたのかな?”

俺が上をしばらく見上げていると、橋の欄干からゆっくりと二つの頭の先が見え始めた。

“ ・・・・・・・・?”

乱れた白髪の頭と、その横には両側が白髪のハゲ頭だ。

“ 爺婆のようだが・・・?”

 二つの頭はせり上がり、欄干から徐々に額が見えて来る。
俺は眼を凝らしてそれを見た。
ゆっくりと、額の次は両目が現れた。
そして、そこで頭の動きは止まった。
二組の目玉は、欄干の上で並んで、こちらの様子を窺っている。

“ な、何だ、あれは・・・・?”

目玉にじ~っと見られているのは、かなり不気味だ。



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霧の狐道110

2008-09-06 23:21:35 | E,霧の狐道
 と、そのとき、突然、俺の耳に幽かな音が聞こえたのだ。

“ おやっ・・・!?”

俺は耳をそばだてた。

“ 音が聞こえるぞ・・。”

小さな音が遠くから響いて来る。
川上の方からだ。

“ パタ、パタ、・・・・・・、パタ、・・・・・・。”

音は風に吹き消されて、切れ切れだ。

“ 機械音かな・・?”

少なくとも、妖怪の足音では無さそうだ。

“ パタ、パタ、・・・、パタ、パタ、・・・・・・。”

音は徐々に大きくなり、こちらに近付いて来ている。

“ パタ、パタ、パタ、パタ・・・・。”

そして、その音は自動車のエンジン音だと分かるようになった。

“ お、おおっ!
 自動車のエンジン音が聞こえるぞ!
 やったァ、助かった!!
 これで、長い舌でペロッと舐めらずに済むぞ!”

俺は生き返った。
そして、橋の上に向かって必死に叫んだ。

「 おォ~~~い!
 おォ~~~い!
 おォ~~~い!
 おォ~~~い!」

俺が下から橋を見上げていると、自動車の音は橋の袂で止まった。

“ パタパタパタ、プスン!”




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霧の狐道109

2008-09-04 22:47:51 | E,霧の狐道
 俺は、薄暗くなり始めた辺りを見回した。
この位置からは、川の両側の土手で視界は遮られ、外の景色は見えない。
川底は、人気の無い殺風景な河原が広がっているだけだ。
上には曇った空しかない。

“ ヤバイな・・・。”
 
俺は、このまま闇夜に吸い込まれて行くのだ。

“ もう、日が暮れる・・・・。
 日が暮れたら、絶対、何かがやって来るんだ。
 歌だ、歌だ、えっと・・・・。
 きっと、今は、仲間を呼びに行っているのだ。
 いや、今は、歌う歌を考えなきゃ・・・。
 そのうち、得体の知れないものが、ワンサカ、ワンサカ・・・・・・。”

俺の頭の中では、ゲゲゲの鬼太郎の妖怪がいっぱい現れる。
そして、手を繋いで輪を作り、俺の周りを笑いながらグルグル回る。

“ ううっ、ヤメろ、ヤメろ、このォ~!!
 ここで、俺の人生終わってしまうなんてヤダな・・。
 あ、“人生いろいろ”とか、どうかな・・・・。
 目玉いっぱいあるヤツとかも来るかな・・・?
 えっと、確か名前は“百目”とか言ったかな・・・。
 えっと、出だしは何だったかな・・・・?
 えっと、あ、思い出した!

ヽ( ・∀・)ノ
   チャラララ~、チャラララ~♪
   チャラララ~、チャラララ~♪
   チャラララ~、チャラララ~♪
   チャラララ~、チャラララ~♪ ヽ(´∀`)ノ

♪ 死んでしまおうな~んて・・・・・・♪ Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン!

 うっ、これ、ヤバイヤバイ、マジヤバイ。
 出だしからヤバイ。

 えいキックじゃ! ヽ(#゜Д゜)ノ┌┛Σ(ノ´Д`)ノゲシッ!

 俺は、まだ、死にたくないぞ。
 止めだ、止めだ。
 短い人生だったなんてとんでもない。”

河原の冷たい風が俺の頬を舐めて行く。

“ 百目の長い舌でペロッと舐められて、うまそうだとか言われたら、どうし
 よう。
 どうしよう、どうしよう・・・・。
 マズイぞ、とてもマズイぞ・・・・・。
 そうだ、俺はとても不味い、それに、便所で手を洗っていないし、バイキン
 だらけだって言わなきゃ・・・・。
 えっと、歌、歌・・・・。”

俺は、支離滅裂な状態で、歌う曲を考え続けていた。





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霧の狐道108

2008-09-02 22:30:02 | E,霧の狐道
 俺は、さらに周りをキョロキョロ見回した。
そして、モロ、途方に暮れて困った。

“ うぐぐぐぐ・・・・・・。”

黙っていると怖くなって来る。

「 くそ~っ!
 よし、歌でも歌うぞっ!!」

俺はヤケクソになって、カラ元気をあげた。

“ 大声で歌ったら、誰かが聞き付けて来てくれるかも知れない・・・。”

そして、大声で歌い始めた。

「 ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲ~♪
 夜は墓場で運動会♪
 楽しいな、楽しいな・・・・・♪
 あらっ・・・・!?」

俺は、途中で気が付いた。

“ う、俺って、何て歌を歌ってるんだ。
 これじゃ、得体の知れないものがドンドン集まって来るぞ・・。
 曲を変えなきゃ・・・・。”

 俺は泣きそうになりながらも、辛うじて堪えながら歌う歌を考えた。
辺りは薄暗くなって来る。

“ ううう、思い付かない・・・・。”



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