日々の恐怖 8月29日 識別 (2)
流石に名前予測は無理だった。
ああいう離散的な物はコンピュータには理解できない。
だが驚くことに、学歴推定(中卒・高卒・大学卒・一流大卒の4パターンだったが)は、6割近い正答率を誇った。
また出身地も、北海道から沖縄までの連続的な値としてコンピュータに認識させると、(都道府県レベルで)10%近い正答率だった。
なんだ10%か、と思うなかれ、これは結構衝撃的だった。
年齢の推定は人間でもおおよそアタリは付けられるが、出身地の推定を10回に1回もピッタリ当てられる人はそうそういないだろう。
要するに、十分量のサンプルがあればコンピュータの推論は割りとアテになる、ってこと。
それで、本題はここからだ。
ある日、チームでも結構マッドなサイエンティストAが、
「 余命推定やってみようよ。」
と言い出した。
当時全盛期だったデスノートの影響でも受けたのだろう。
しかし、個人情報サンプルには当然ながら余命なんて欄は無い。
Aは言った。
「 撮影年・没年が分かっている歴史上の人物の写真でも使えばいい。
白黒でも認識精度に大きな影響は無かっただろう?」
もちろんカラーのサンプルに比べると精度は落ちるが、顔認識のメカニズム上、ほとんど問題はない。
「 しかし、それではサンプル数が足りないのでは?」
「 要は顔と撮影日と死んだ日がわかりゃいいんだ。
天災やら事故やらの被害者を使えばいい。」
「 ちょっと待て、それじゃ外発的な要因で死んだサンプルが混ざることになるぞ。」
「 それでいいんだよ!」
そこには、ニヤニヤするAがいた。
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