大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月29日 お守り(3)

2022-05-29 14:08:34 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月29日 お守り(3)





 その晩、私は付属してるお風呂場のほうから変な気配を感じて、薄目を開けました。
私はあんまり感覚のあるほうではないのですけれど、そこに何かいるとか、気配を読むことが稀にあるので、

” あ~、何かいるんだなぁ・・・・。
まあ古そうなお宿だし、いてもおかしくないよね・・・・。”

と特に怖がりもせず結論付け、一応母の方を確認しようと寝返りを打ちました。
 母は私のバックを何か大切な宝石箱でも守るような形で横抱きに抱え込み、私のほうを向いて(左半身を天井に向けて)寝ていました。

” 何かおかしい、どうしたんだろうこの母は・・・・?”

そもそも何で私のバックなんか抱えるなんて言い出したんだろうと、このときになってようやく考え出しました。
 母が抱きしめている私のバッグは、外行き用の小さめのバッグで、(母から言わせれば、ずた袋だそうですが)母の友人の小物屋さんから母が買い、私にくれた物でした。
 特に何かいわれがあるとかいうものではありません。
中に入ってるものも、特にこれといったものは入っていません。
お財布にお化粧品とスケジュール帳と、実家の方でいつもお世話になっている天狗様のお守りと、お伊勢さまの鈴守りと、那智大社で買ったお守りと、那智の滝の杯。
 そこまで考えてから、母はもしかしてこの大量のお守りに用があったのかもしれない、と思い至りました。
それから、そういえば母がこの部屋に持ってきた荷物には、母がいつも持ち歩いているお守りの類が一切なかった、ということも思い出しました。
何かあったことは明白なのですが、対処法に疎い私には何もすることが思いつかず、とりあえず明日も早いだろうから、そのまま寝ることにしました。










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日々の恐怖 5月22日 お守り(2)

2022-05-22 20:11:11 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 5月22日 お守り(2)






 母は特定疾患の関係で少々膝を傷めていましたが、山岳用の杖を駆使して那智の滝と那智大社をすべて回り、(私は翌日筋肉痛で泣きました)那智大社すぐ下の熊野古道の看板のところで記念撮影をしてから、お宿へ行きました。
メインの道路からはずれたところにあるその宿、いや、宿というよりホテルに近い感じでしたけれど、とにかく泊まる予定の場所は、リアス式港のすぐ横をせり出た感じに立っている古めのお宿でした。
 本来なら16時にはチェックインできる予定でしたが、那智大社の階段を下りるのに思ったより時間を食ってしまったので、ついたのは18時をまわっていました。
 7月ですからちょうど夕暮れで、山間に沈む夕日が赤々と綺麗でした。
案内された宿は本当にオーシャンビューで、2人で泊まるにはちょっともったいないような、トイレとお風呂のついた和式のお部屋でした。
 ここでかなりテンションのあがった私と母は、お泊り荷物セットの片付けもそこそこに写真を撮り始めました。
とにかく部屋のいたるところを私は撮り、母は窓から見える景色をしきりに撮っていました。
 ちょうど夕日が完全に沈み込んで、母が夕日と海の写真を、

「 綺麗綺麗!!」

と、はしゃぎながら撮っていたときです。
突然ピタッと不自然に母は喋るのをやめました。
 不審に思って、

「 どうしたの?」

と声をかけると、母は突然カーテンをシャッと閉めました。
無言で反対側のカーテンもシャッとしめて、母はニコッと笑いました。

「 ん、ああ、ちょっとはしゃぎ疲れちゃったから、温泉行こうと思って!」

 母にしては奇妙な笑い方だった気がしますが、まあ確かに歩きつかれたこともありましたし、一応曲がりなりにも虚弱体質な母を思えばそうなんだろう、とそのときは納得して、一緒に温泉へ浸かりに行き、布団も敷いて就寝の運びとなったのですが、電気も消してさあ寝るぞ!となったところで母が突然、

「 Mさん、ちょっとあなたのバッグ貸してくれない?」
「 なんで?」
「 添い寝するから。」

意味がわかりませんでした。
けれども母はしきりに私のバッグと添い寝したがってましたので、まあ、そういうこともあるかもしれない、と無理やり私自身を納得させて、私のバッグを母に貸し与えて就寝しました。












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日々の恐怖 5月17日 お守り(1)

2022-05-17 17:01:48 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月17日 お守り(1)





 これは私Mが、いや、正確には母が2010年の半年前から9月の終わりごろまでに経験した話です。
その年の7月某日、もろもろの事情で、私は結婚を前に実家へ一度帰省するため、アパートから引越しすることになりました。
 父は仕事の繁忙期でこれませんでしたが、母が有給をもらって代わりに来てくれました。
母は前年から体の調子が芳しくなかったのですが、とにかく外で遊ぶのが大好きな人で、その年の5月にトルコ旅行なんぞに行くような、本当に活力あふれる虚弱体質の人です。
 さらにいうなら、何もないような場所でよく転ぶ、おっちょこちょいな人でもあります。
荷造りのときも、10センチの段差しかないアパートの玄関で派手にスッ転んでました。
 私のアパートがあった某所は、海と山に囲まれた比較的のどかな場所で、高速を走らせれば、すぐに熊野やお伊勢さんに行けるような立地の場所でした。
そんな場所ですから、旅行好きで観光大好きな母親が行動を起さないはずもなく、

「 Mさん!お母さんちょっと熊野古道めぐり行きたい!」

ちょっと熊野古道めぐりってアンタねぇ、なんて思いもしましたが、言い出したら聞かない人ですし、

「 行かない!」

なんて私がごねて後からネチネチ文句言われるのもイヤだしなぁ、という思いもあり、とてもすごく遠回りですが、引越しの荷物(クロネコさんの単身パックからあぶれ出た荷物)をひっさげて、熊野古道と那智大社、周辺のお社へ行くことになりました。
旅なれた母はあれよあれよと言う間に宿を確保し、行きたい社と観光スポットをググって決め、出だし快調に出発しました。












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日々の恐怖 5月15日 箱(4)

2022-05-15 19:18:27 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 5月15日 箱(4)





 Sさんは半泣きの弟に、言い聞かせた。

「 あれは自分が受け継ぐと決まっているものだから、お前は心配しなくていい。
自分が受け継いだら、すぐに処分する。
それまでは、できるだけ近寄らないように気を付ければいい。」

その後、Sさんは結局地元へ戻り、そこで就職した。
確かに働ける職種は少なかったが、就職するにあたって女性が特別不利ということでもなく、また就職後はセクハラ被害にあうこともなかった。

「 たまたま、運が良かっただけかもしれないけどね。
でも、少し疑っちゃうよね。
兄さんが私を疎んで、嘘を言ったのかなって・・・・。」

 実際のところ、どうだったのかはわからない。
もはや、確かめようのないことだ。
 弟は大学進学を機に家を出て、そのままそちらで就職した。
帰省はめったにしないが、それなりに連絡は取っているという。

「 箱は、受け継いだんですか?」
「 まだです。
今は、母が健在だから。」
「 もしよかったら、一度見せてください。
外見だけでいいので。」
「 いいよ。
処分する前に、連絡するね。」

最後に、そんな話をして別れた。
 この数年後、一通のメールを送ってきたきり、Sさんとは音信不通になった。
最後のメールは、箱を受け継ぐことになったと知らせるものだった。









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日々の恐怖 5月9日 箱(3)

2022-05-09 20:28:08 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月9日 箱(3)





 葬儀の後、高校生だった弟からこんな話をされた。
兄は、自分こそが家を継ぐべきだと両親に主張していた。
長男なのだから、と。
 両親は相手にしていなかったようだ。
女系というものについて、よく調べなさい、と母が兄を叱っていた、と弟は言った。

「 兄貴、箱を盗んだんだよ」

 倒れた兄を見つけたのは、弟だった。
夕食の時間になっても顔を見せない兄を、部屋まで呼びに行った。
 半開きのドアから中を見ると、兄が倒れていた。
その傍らには箱が落ちていた。
弟が目を向けたのと、箱がぱたんと閉まるのが、ほぼ同時だったという。
 弟は、すぐに両親を呼んだ。
やってきた父が救急車を呼ぶ間、母は部屋に入ると真っ先に箱のもとへ向かい、慎重に拾い上げた。
そして開かないかどうかを確かめた。
 箱は、開かなかった。
取っ手を引いても、カチャカチャと鳴るだけだった。
母はそれを確かめると、ほっとしたように息を吐いたという。

「 兄貴より先に、箱の心配をしたんだ。
変だよな。
それに、あの箱、開かないって話だったのに・・・・。
 俺が部屋に行った時は開いてたんだ。
それが、ひとりでに閉まった。
絶対、変だよ。
箱も、母さんも。」

弟は何度もそう繰り返した。

「 兄貴の顔、凄かったんだ。
化け物でも見たような顔で・・・。
俺、怖いよ。
なんなの、あの箱・・・。」









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日々の恐怖 5月4日 箱(2)

2022-05-04 14:51:25 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 5月4日 箱(2)




 それから数年後のことだ。
都内の大学に進学していたSさんは、就職先を地元で探すか、首都圏で探すかで悩んでいた。
家族に相談したところ、両親は地元での就職を希望したが、兄は首都圏での就活を勧めた。
 地元は田舎で、仕事が少ない。
土地柄、肉体労働の割合が高く、女性が正社員で働ける場所は競争率が高い。
それに田舎はセクハラが未だに横行している。
だから働くなら都市部のほうがいい。
両親のことは、兄である自分が世話するから気にするな。
兄は、そう言ったそうだ。
 Sさんはその言葉に背中を押され、都内で就活を始めた。
当時は就職難の時代で、なかなか内定は得られなかった。
 四年生になり、いよいよ焦りだしたころ、訃報が届いた。
兄が死んだ。
心不全だった。









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