大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月27日 曰く付き物件の日常(8)

2021-10-27 20:10:11 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月27日 曰く付き物件の日常(8)





(10)入居して2年半と3ヶ月と少し

 帰った時に、ガムテープでビッチリ貼った家内安全の札が、外れかけていた。
視線を感じるようになり、ハッキリと自宅の雰囲気が暗いと分かるようになった、夏なのに。
エアコンも調子が悪い。
ガタガタ言う。
 明日になったらお参りに行こうとベッドに倒れ込んだ。
しばらくして薄目を開けると、枕元で満面の笑みの人影が見えた気がして飛び起きる。
 慌てて神社に行き、新しいお守りを買って財布に入れる。
帰りに財布を落としたのに気付く。
財布紐(代わりの財布のストラップ)が切れていた。
 以降、退去するまでの3ヶ月間、高熱が続いた。
餡子入りの食品を中毒のように買い占めて食べる。
新しいお守りも、家内安全の札も、もう効果は無いようだった。
 病院でも原因不明で薬も効かず、熱が下がらず、気分が滅入り、何故か死にたいと思う日々が続く。
吐き気も酷く、急激に痩せた。
 風呂や収納のドアは、

” キィッ・・・・・。”

と触れてもいないのに少し開く。
 窓を開けると近所の犬が吠え出す。
置いた食器が並行にズレて、何かに押されるように落ちる瞬間も、ついに目撃した。
 食料だけ何とか買って帰るとすぐポストがパタンと閉まる音がするが、覗いてみても真っ暗だ。
今さっき明かりを付けたはずの廊下は、もう真っ暗だった。
 誰かが覗いている気がした。
視界の端に人影がチラつき、家内安全どころか家内不安だった。
そして、とにかく急いで退去することを決めた。









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日々の恐怖 10月23日 曰く付き物件の日常(7)

2021-10-23 09:37:19 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月23日 曰く付き物件の日常(7)




 寝込んでいる間に、色々調べた。
ネットもネタじゃないかもと思って、怖いながらも曰く付き物件に住んでるかも、の記事を読んだ。
 和菓子が嫌いだったんだが、家にいるときは餡子入りの和菓子しか美味しいと感じられなくなった。
3食餡子入り。
幽霊が見えるようになるには、陰の食物を取れって記事にも行き着いた。
餡子入りの和菓子とか有効らしい。
見たいわけでも、好きなわけでもないのに俺はその頃から餡子入りじゃないと食べられなくなっていた。
 動けるようになって、昼食を共にする同僚達に思い切って曰く付き物件に住んでるかもしれないと相談した。
餡子嫌いなのに和菓子が主食になったこと。
都内に引っ越してから色々あったこと。
洗濯機のような騒音。
 大家や同僚への証拠代わりにと思って深夜の騒音(洗濯機音)をスマホで録音しようとしたのだが、時々ノイズが混ざるだけで基本的に無音だった。
 笑った。
あれだけドコドコ鳴っているのに、天井付近でも録音できない。
しかし友人が来た時には確かにうるさいと言っていた。
同じ音なのに。
 深夜、毎日毎晩続くのでベランダから上の階を見上げてみた。
部屋の明かりは消えていたし、洗濯機は動いてないようだった。
そもそも1時間以上、脱水し続ける洗濯機なんて無いと、後から話してて納得した。
webカメラのマイクでも録音できないはずだ。
 最初はみんなネタだろと笑って半信半疑だったが、真剣な悩みだとわかるとお祓いを勧められた。
お参りもロクにしたことが無いのに、初めて神社にダッシュで(半月でやっと歩けるようになったので)携帯用のお守りと、1000円の家内安全のお守りを買ってきた。
ちょっと高いゴキブリ対策?(失礼)だと思って、台所の天井に貼った。
 初めて視線が弱まったように感じた。
洗濯機音は止んだ。
 それから3ヶ月、週末は必ずお参りに行った。
徐々に和菓子を食べなくても大丈夫になった。
顕著に効果が現れたと言っていい。









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日々の恐怖 10月17日 曰く付き物件の日常(6)

2021-10-17 15:19:57 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月17日 曰く付き物件の日常(6)




(9)入居して2年半

 部屋の配置がいけないかもと思って、手伝ってもらって模様替えをした。
泊まりに来た時、いつも妹が寝ていた場所にベッドを移した。
台所と放置バイクを直線で結んだ中間点だ。
 何がいけなかったかわからないけど、多分それがマズかった。
自宅で起き上がろうとした時に、ぎっくり腰になり、歩けなくなった。
起き上がることもできない。
 しばらく絶対安静で、動けないまま家にいた。
痛みで長時間眠れず、少し動いただけで激痛に目を覚ますくらいだった。
深夜の洗濯機の音は毎日毎晩続いているのだと、初めて気がついた。
 生まれて初めて間近で、幽霊としか表現できない焦点の合わない白い人が台所にいるのを起き抜けに見た。
目が合ったことに驚いている雰囲気が向こうからも伝わり、しばらく目を瞑った後、目を開ければいつも通りの、視線を感じる台所だった。
 その後、診察を受けてレントゲン撮影時に、視界の隅から黒い影のようなものに包まれて、激しい嘔吐感と悪寒が駆け上がり気絶した。
 風景だけの正夢を見ることは日常茶飯事だったが、霊感は無いと普通に思っていたし、心霊写真なんて信じてなかった。
怖がりだから、曰く付き物件はヤラセでも絶対に嫌だし、幽霊は見間違いであってくれと切に願った。
 最近、曰く付き物件に関して、何か有益な情報がないか探している。
わかったのは、曰く付き物件にいると、普段見えない人でも徐々に見えるようになる場合があるらしいことだ。
 年末年始に置いた塩を確かめてみると、握りこぶし大の岩塩が見事に溶けていたが、湿気のせいだと思いたかった。
慌てて妹に告げると、多分同じものを何度も見たと話していた。
つまり入居時からずっといたんだろう。










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日々の恐怖 10月13日 曰く付き物件の日常(5)

2021-10-13 20:05:54 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月13日 曰く付き物件の日常(5)




(7)入居してもうじき2年


 視線を感じるのやシャワーの際の気配くらいは気のせいしてきたが、終電で帰って、寝ていると明け方4時にドアチャイムを鳴らされて起きた。
不審がって覗いてみると、真っ暗で何も見えない。
ドアを開けても誰もいない。
それより足音やドアの開閉音もなかった。
 色々あったので、曰く付きほど酷くないにしてもと友人からのすすめで、初詣のついでに天然岩塩の塊やパワーストーンとやらを買っておいてみた。
お守りも見かけたら買ってつけるようにしているが、笑ってしまうほどよく無くす。
 朝、駅前の線路沿いの脇道を走っている時に、踏切の前でお守りの紐が音を立てて切れた。
買った大きめのアメジストが一週間でまっぷたつになっていたのは笑った。
 近所の踏切を夜中通ると、引っ張られたりつまづいたりする気がする。
近隣住民も避けているようだ。
 買い物帰りにビニール袋が裂けて中身が飛び出すことも何度かあり、それ以来はエコバックにしたが、何となくタイミングの悪さを感じて、踏切を避けて遠回りして帰るように帰り道を変えた。




(8)入居して2年少し


 友人が遊びに来て、徹夜でゲームしていると、

” ドンドン・・・、ゴンゴン・・・。”

とドラムか洗濯機のような音がする。
時刻は深夜2時過ぎ。
夜だから音は小さくしていたが、ゲームしている自分たちより大きな音だ。

『 こんなうるさいのよく平気だな~。
何の音だ?
洗濯機?
引っ越し?』
「 いや、うるさいなって思ったこと無いよ、深夜帰ってきても。
たまたま、今日はうるさいみたいだけど・・・・。」
『 ふ~ん・・・・。
コレ、毎日だったら大変だな。
やっぱ都会は住みにくそうだ。』
「 だね。
できれば早く引っ越したい。
まぁ耐えられないわけでもないし、夜洗濯は俺も申し訳ないと思いながらたまにするし・・・。
深夜じゃないけど。」

音は1時間近く続いたが、たまにはそういうこともある、と済ませていた。
 その頃から、正直、家にはいたくなくて休日は外にいることが多かった。
疲れが取れなくて仕事で大変なことも多かったが、家にいる時のような不安感はなかった。
心底、早く引っ越したいと思っていた。
しかし、色々問題もあって金銭的に余裕がなかった。








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日々の恐怖 10月9日 曰く付き物件の日常(4)

2021-10-09 13:51:22 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月9日 曰く付き物件の日常(4)




(5)入居して一年

 定期的に食器が割れ続け、引越し前から持ってきた食器が全て割れたため、プラスチック製になった。
今でも何故かよく落ちるが、食器はプラスチック製なので問題はない。
立て付けにも問題はないし、電車が通らない夜中のことだから、何が原因かわからない。
 年末なので大掃除も兼ねて、気になっていた台所の上の空間を開けることにする。
換気扇の配管が通っている部分、ツマミも特に無いハメ殺しになっている部分の板を外す。
絶句した。
 なぜか湿布等が壁に向けて並べてあり、前の住人(数年住んでいた独身中年男性)の持ち物と思われる、古びた書類やらゴミがけっこうあった。
入居前に全部掃除したと聞いていたのに、ずさんな管理に呆れる。
 以前の持ち主は退去も問題なく、部屋も荒れてなかったとのことだった。
とりあえず一切合切捨てる。
今まで家の風呂(台所が隣)に入るのが何故かイヤで、ジムのシャワーばかりだったことに妙に納得した。
台所の上になんかあったからだ、と。




(6)入居して一年半

 職場の同僚から、事故物件サイトの話を聞く。
自宅は該当していなかったが、通りを挟んだ向こう側やら、周囲にはそれなりにあった。
見なければよかったが、自宅が該当していないのには安堵した。
やたら神社や、庭の小さな稲荷やら、霊園や墓地が目に付く。
 やはり線路沿い、特に踏切近くはあまり良くないのだろうか。
色々つけていた財布や鍵や携帯のお守りストラップが全部どこかに行ってしまった。
千切れた紐だけが残っている。
 おみやげで貰ったお守りのストラップをつけてみた。
3日で無くなった。
 気付いたこと。
廊下の明かりが入居時からいつも誰かに消されている。
ゴミ捨てに行って帰ってくる数分で消されたりする。
朝、明かりがついていたことがない。
が、誰も消してないらしい。
 携帯で話していると、時折ノイズで聞こえないと言われたり、

「 いま部屋に一人?
妹さん来てる?」

とたびたび聞かれる。
からかわれているのかと思ったが、そうではないようだ。
 携帯が壊れたので、スマホにする。
LINEやSkypeで友人と話していると、室内のwifiを使っているのにノイズが酷く、仕方なく通常の通話にする。
 引っ越してからPCがよく、

” ブツッ!”

と電源ごと落ちて再起動する。
修理が必要かと思って見てもらったり、電源コードも変えた。
しかし故障ではないとのことだった。








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日々の恐怖 10月5日 曰く付き物件の日常(3)

2021-10-05 20:26:47 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月5日 曰く付き物件の日常(3)




(4)入居して半年

 仕事で会社に泊まりがけになることが多くなった。
都内で遊びたいということもあり、妹は留守がちな家主に代わって泊まりに来るが、それでも連泊は嫌がる。

「 アレさえなければいい立地の部屋なのに・・・・。」

と、よく言っていた。
俺はそんな夢や幽霊は見ないので、あまり深く考えないことにする。
 仕事面では評価されて、新しい職場で徐々に上向いてきたように思う。
技術職なので、オカルトとは無縁だ。
しかし職場のビルが古いからか、度々守衛さん達の怪談を耳にする。
 食器は相変わらず割れる。
置き方が悪いようには思えない、平置きしているのだ。
来客には謝りながら皿一枚、コップ一枚なので紙皿と紙コップを使って貰っている。
そういえば、食器少なくなった。
 風呂場の換気扇たまにつけ忘れてるのかな・・・・?
いや、消した覚えも無いぞ。

 放置バイクは相変わらず庭にある。
問い合わせてみたが、依然持ち主は名乗らず。
住人の誰かの持ち物だとは思われるとのことだ。
 共有玄関の自動ドアが、いつも開きっぱなしになっていることに今更気づいた。
スイッチをオンにしようとしたところ、珍しく同じマンションの住人に会う。
たまに開かなくなるのでOFFのままにしているとのことだった。
たまに開かないってなんだよ。
翌日、財布を無くす。









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