大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月22日 ソレ

2014-07-22 20:20:02 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 7月22日 ソレ



 俺の家は祖父の代から自営業を営んでて、今は父が店を継いでいる田舎にありがちな地域密着型の小さな店だ。
 金曜の夜、いつものように帰宅した俺は、店の後片付けを手伝うべく、家から200mほど離れたところにある店に向かった。
裏口から店に入ると、父親がPCで事務処理をしていた。

「 ただいま、お疲れ。」

と声をかけると、

「 お、○○おかえり。こっち手伝ってよ。」

と返された。
いつものように適当にあしらいつつ事務所を出て、店の中でテーブル等の片付けを行う母に声をかけつつ、そちらを手伝う。
 後片付けをしていると、母の実家から従兄弟がやってきた。
いろいろとおすそ分けを持ってきてくれたらしい。
父はまだPCでの仕事が終わりそうにないというので、俺・母・従兄弟の三人は、しばらくの間片付けの手を休めて、会話に花を咲かせていたんだが、さすがに店をずっと開けておくわけにもいかないので、兄には店裏のスペースに車を移動してもらい、店の扉を閉めることにした。
 自販機でみんなに飲み物を買おうと思った俺は、母にそのことを告げて店の扉から出た。
母は了承すると、俺が出た後そのまま鍵を閉め、店の奥へと向かう。
俺は、裏から入ればいいわけだから、閉めてもいいとはいえ、さすがにすぐそこなんだから、待ってて欲しかったなーと思いつつ自販機に向かった。
 自販機の前で何を買おうか迷っていると声が聞こえた。
喋り声だが、一人分の声しか聞こえない。
辺りを見回すと、夜道を誰かが歩いている。
どうやら独り言のようだ。
 この辺りは障害を持った人がよくフラフラと歩いている。
家が何処にあるのかは知らないが、ずっと独り言を言いながら近隣の店やスーパーをただ巡る人や、一日中公園にいる人もいる。
たまに、わいせつな行為で捕まる人もいる。
 基本的には昔から同じ人の顔を見てきているため、不審な人を見ても、

「 ああ、またあの人か・・・。」

といった程度の認識だった。
 俺がいるのとは車道を挟んで反対側の、歩道の少し先に人影があった。暗くて顔までは見えない。
さらに、そこから少し先の交差点にも誰か居る。
自転車に乗ってるが、さすがにあの人に話しかけてるわけじゃないだろう、距離がありすぎる。

“ だとすれば、やっぱり独り言か、またあの人達の誰かだな・・・。”

そう思っていると、不意に下から、

「 にゃあ。」

と声がした。
少し驚きつつ即座に顔を下に向けると、足元に猫がいた。
小さい。
子猫のようだ。
可愛い。

「 なんだ猫か。お前どこからきたの?」

と声をかけつつ、当初の目的を遂行した。
お茶やコーヒーを適当に購入して、取り出そうと手を伸ばすと、

「 にゃぁお。」

と甘えた声を出して子猫が擦り寄ってきた。
全ての飲み物を取り出して立ち上がっても、立ち去るどころか一歩も動く様子はない。

「 野良ちゃんかな?ごめんね、今何も食べ物ないんだ、またね。」

と、逃げ出さないように優しく投げかけ店に戻ろうと歩き出す。
 すると何故か、その子猫がついてくる。
止まると止まる。
振り返ってその子を見ると、その子も振り返る。
 裏口から店に戻ると、すぐに母が、

「 やだ何この猫ちっちゃーい、可愛い!」

と言った。
 自販機のところで出会ってついてきたことと、道すがらの猫とのやりとりを説明すると、母と従兄弟は子猫に夢中になった、飲み物のことなんて忘れて。
 事務所の中に入れたことで、子猫の容姿がはっきりした。
生後4ヶ月ほどくらいの大きさ。
灰色の長毛で、手触りの良いふわふわの毛並み。
金の瞳。
首輪は無いが、野良という感じではなかった。
 子猫と遊ぶこと2時間ほど。
時間も時間だということで、従兄弟が帰っていった。
 父はまだPCに向かっている。
まだ終わらないのかと問うと、

「 あと少しだから待ってて。」

とのこと。
 従兄弟が帰るまで遊んでいたためか、子猫は俺の膝の上で眠っている。
母は事務所のテレビを見ている。
俺は、この子猫をどうするか考えていた。

“ 毛並みや佇まいから迷子になった子猫だろうし、とりあえず張り紙作って貼って、近所の人に聞き込みして・・・。
迷子の子猫拾った場合でも、警察っていくべきなのか?
飼い主が見つかるまでしっかり面倒を見るけど、もし見つからなければそのまま飼い続けてもいいな。
でもこんな可愛い子猫だし、飼い主も心配して探してるだろ。”

そんなことを考えていると、子猫が目を覚ました。
顔を擦って、伸びをして、それから俺の指を舐める。
あまりにも可愛くて頭を撫でていると、急に子猫が膝の上から飛び降り裏口の方へ向かった。
裏口の扉をカリカリと引っ掻いているところを見ると、外に行きたいのだろう。

「 どしたー?ちゃんと飼い主さん探してやるから、見つかるまでうちにいような?」

子猫を抱き上げてソファに戻ろうとする。
が、暴れて俺の手から抜けると、再び裏口の扉をカリカリ。
どうしても気になると言わんばかりにカリカリ。
俺は、

“ 外に何かあったっけ?”

と思い、確認のために子猫を抱いたまま裏口の扉を開けた。
 何も無い。
畳んだダンボールと掃除道具があるだけで、駐車場として使っている小さな空きスペースには父の車が一台、それ以外は何もないし、誰も居ない。
生ごみの匂いもしない。

“ 何も無いよな・・・。”

そう思っていると子猫が暴れだした。
先程よりも無我夢中というか、鬼気迫る勢いで暴れだした子猫の爪が俺の手を引っ掻いた。

「 痛ッ!」

と声をあげたときには、子猫は俺の手から逃れて、夜の闇の中に消えていった。
 心配になった俺はすぐに追いかけようかと思ったが、見つかるはずもない。
父と母に説明して、一応その辺を回ってくると言うと、

「 心配だがどうにもできないよ。
父さんもう少しで終わるから、それまで後ろの扉を少し開けて戻ってくるのを待ってみよう。」

と言うので、渋々同意した。

 それから15分ほどして、外で物音がした。
子猫が帰ってきたのかなと思った俺は、ソファから立ち上がり裏口の扉のほうへ歩いて行った。
確かに下の方から物音がする。

“ なんだ、帰ってきたなら入って来ればいいのに・・・・。”

と思いつつ、さらに扉へ近づいた。
俺は扉を開けようと手を伸ばした、その瞬間、

「 ○○!!!!!!!!」

後ろから母が、ものすごく大きな声で俺の名前を呼んだ。
初めて聞くくらい大きな声だった。
 その場でビクッと動きを止めた俺は、その瞬間なにか嫌なものを感じて扉のほうを見た。
正確には、子猫が戻ってきたとき、入ってこられるようにと開けておいた隙間を見た。
扉がもうちょっとだけ開いた。
よくわからない、人の形をした、でも顔が無い、というか顔のイメージが今でも思い出せなくて、頭があったのかどうかさえわからない、灰色のソレがいた。
 俺はそれを見た瞬間、頭の中も心の中もわけがわからなくなって、そのただわけのわからない恐怖から、

「 うわぁぁぁあああああああああ!!!!」

と叫んで、扉を閉め後ろに飛び下がった。
 父と母を店のほうに連れて逃げようと思った。
そして母と後ろに引いた瞬間、猫の鳴き声が聞こえた。
「にゃあ」とか「にゃぁお」じゃない、それ以前に子猫というより大人の猫のような、「フギャァァアオッ!」とかそういう喧嘩をしているときの猫の声がした。
それも、噛み付いているような鳴き声だった。
 しばらくして、猫の威嚇の声もしなくなった。
いつの間にか後ろに来ていた父が、青ざめた顔をしながら扉を開けた。
何もないし、誰もいないし、子猫の姿もない。
あるのは畳んだダンボールと掃除道具。
空きスペースには父の車と自転車が止まっていた。
 母がポツリと言った。

「 なんなの、あれ・・・?」

 次の日、店の近くの神社の神主さんが来て、父と少し話した後、県内で一番でかい神社に連れて行かれました。
その社殿の中でのことは控えさせてください。
とにかく、ソレと関わることはいけないと言われました。
 父と母は、急におかしくなっちゃった子の話とか、ダメなものがいることとか昔から聞いていたらしい。
でも、地元に伝わる子供を怖がらせる類の話だと思ってたようだ。
 母は最初は不審者が扉の前にいると思ったようだった。
でも異様に背が高いから、すぐ違って気づいたらしい。
母も、顔覚えてないと言うことだった。















    ☆7月23日から7月31日まで休みます。
               by 大峰正楓

      










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日々の恐怖 7月21日 うさぎ

2014-07-21 20:13:54 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 7月21日 うさぎ



 去年の夏、飲み会の帰りに、柴犬くらいの大きさの半透明のうさぎが、私を追い抜いてピョンピョン跳ねていった。
酔ってたからか怖くはなく、

「 あれーもしかして不思議の国のアリス的な?
うふふ、うさぎさん待って~!」

とか、むしろワクワクしながらアホみたいに追いかけていった。
 そしたら、私が住んでるアパートの部屋のドアをすり抜けて入って行った。
慌てて鍵を開けて入ろうとしたら、

“ あれっ、鍵開いてる?
閉め忘れたか?”

とりあえず中に入ると、リビングでうさぎがこっち振り返ってる。
私が部屋に入ったのを確認して、今度は押し入れの襖の中に消えていった。
 襖を開けるとうさぎはいなかった。
かわりに、見知らぬ男性が汗だくで寝ていたというか気絶していた。
気が動転して隣の部屋の女性に助けを求めて、要領を得ないながらもうさぎのことも含めて何とか説明した。
女性が警察やら救急車やら手配してくれて、警察に事情を聞かれる前に、

「 うさぎのことは言わない方がいいかも・・・。」

と言ってくれた。
警察には、

「 家に帰ったら鍵が開いてて、押し入れに知らない男の人がいた。」

とだけ言った。
 後日、警察の人が、

「 あの男の人は私が仕事から帰る時間を以前からチェックしていて、その少し前に鍵を壊して部屋に忍び込み、押し入れに隠れていたが、熱中症になって気を失っていた。
救急車を呼ぶのがもう少し遅かったら命に関わっていたかも・・。」

と教えてくれた。
やっぱり怖いので、実家に戻って暮らすことにした、会社からは遠くなったけど。
 あの日、私が帰るのが遅れて、男性が亡くなっていたらもっと厄介なことになっていたと思う。
大きなうさぎはそれを教えてくれたのかわからないけど、それから一度も見ていない。











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日々の恐怖 7月20日 ストーカー

2014-07-20 19:38:17 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 7月20日 ストーカー 



2010/03/18

 近所に住んでる老カップル。
55歳婆さんが75歳ボケ爺さんを献身的に介護してるんだが、実は婆さんは40年前から一方的に爺さんのストーカーをしていただけの人で未入籍のようだ。
15年くらい前に爺さんが病気で倒れたのを機に、勝手に介護を始めたらしい。
婆さんが「この人は私の命なの。」と爺さんの頭を撫でるのを見て、前は微笑ましく思っていたが、事実を知ってからすげー怖くなった。


15歳の少女が35歳の中年をストーカー?
両方、結婚してないんだろうか?


家の裏に住んでるばーさんの話では、二人は高校教師と教え子らしい。
両方独身かどうかは知らない。


40年もひたすら一方的に好かれるって怖くね?
しかも体の自由が利かなくなったら、もう一生逃げられないとか怖くね?


他に介護してくれる人がいないんなら有り難いのかもよ。
爺さんに聞いてみれば?


爺さん喋れないよ。
車椅子に座ってアーウー言いながらヨダレ垂らしてる。
そんな爺さんにいまだ夢中だと言う婆さんが怖い。



2010/07/06

 もう誰も憶えてないと思うけど続きです。
先月例の爺さんが亡くなり、その後お骨をめぐるトラブルがあったと聞き、好奇心を抑えられず、婆さん本人にいろいろ聞いちゃいました。

 まず二人が出会ったのは、前に書いたとおり15歳と35歳の時。
年は離れていたが二人は愛し合い、卒業後に結婚しようとしたが、爺さんの先妻(死別)の親族が、婆さんの実家に押しかけて怒鳴り散らして反対し、もともと外聞を気にしていた婆さん親も反対し始め、破談に。
 しかし、どうしても許せなかったのか、先妻の妹がしつこく婆さんをつけ回し、職場に押しかけてみたり、さまざまな嫌がらせをし続けた。
もともと結婚を諦め切れなかった二人は、遠い他県に引っ越したが、何ヶ月かすると妹があらわれて嫌な噂を流され、住み辛くなって引越さざるをえなくなった。
 あまりの妨害に何度か別れもしたが、爺さんがもともと病弱だったのに心労で体を壊してしまい、早くに病気になってしまったため、この街に引越し、腹をくくって自分(婆さん)が、近所からの冷たい目や妹の妨害など全て引き受けるつもりで身を落ち着け、介護生活に入ったそうだ。
50代なのにどう見てもおばさんでなく婆さんにしか見えないのは、苦労を積み重ねたせいらしい。


 それで、分かった怖いこと。
おれに、あの婆さんはストーカーで怖ろしい女、って吹き込んだ裏のばーさん、なんとそいつが爺さんの先妻の妹だったんだよ。
 ただただ姉の元夫の再婚が許せないがために、何十年も二人をつけまわし、結婚もせず、ひたすら監視と嫌がらせの毎日を送り、そして爺さんが死ぬと、二人の家に上がりこんで骨壷を奪おうとするという恐るべきストーカー。
おれ、よくそのばーさんからやけに親切にされて、野菜や煮物もらったりしてたのに。
 好きな人の若い頃に似ている、と言われたこともあったが、婆さんにも同じ事言われてまじで震え上がった。
つまり、爺さんに似てるんだろ?おれ。
すぐにでも引っ越したい。
怖すぎる。












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日々の恐怖 7月19日 搬送車

2014-07-19 18:35:16 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 7月19日 搬送車


 私が生まれる前、確か兄も生まれていなかったので、30年ほど前のことだと思う。
当時、父は葬儀関係の仕事をしていた。
私が中学の頃も、バイトと言って斎場の設置などは手伝っていた記憶がある。
 物心ついたころには、父はタクシーの運転手になっていた。
葬儀関係は休みが不定だったので、子供のために転職したそうだ。

 葬儀全般いろいろとしていたようで、帰りが遅い日もあったようだ。
まだ新婚だったから、仕事の合間に夕飯だけ食べに帰ることが多かった。
 ある日、父が仕事用の車で、夕飯を食べに帰ってきた。
仕事用とは、病院などで亡くなられた方を自宅へお送りする車だ。
ちゃんと名前があるんだろうけれども、名称は知らない。
見たことがある人はイメージがつきやすいと思うけれど、車の後ろにストレッチャーを差込、そのまま故人を車に乗せることができたり、中は特殊な構造になっている。

 夕飯のときに、その車で帰ってきていることを聞いた母は、見てみたいと言ったそうだ。
まぁ、当時まだ20台前半だったらしいし、興味があったわけだ。
なんか、乗り込んで「へぇ、こうなっているんだ」と見学した。
 それで、その夜、母は金縛りにあった。
もともと、そうした霊感があるらしい。
母の祖父の通夜の時、グイッと髪を引っ張られたことがあったり、ああ、これ以上進めないな、と言う感覚を受けたり。
その娘である私は、一切霊感なんてないんだけれど。
 それから、毎日は起こらず、たまに金縛りにあうようになったそうだけれども、さすがに続くので、

“ おかしい、怖い。”

と思ったそうだ。
なぜなら、いつも一人の時ばかり金縛りにあう。
 父は葬儀関係と言う仕事上、夜勤になることがあった。
先ほども言ったが、それでも夕飯は家で取れる場合は取っていたようだ。
そして、ふと気づく。
父が夕飯を家で取って夜勤になった夜は金縛りにあう。

母「 もしかして、あの車で夕飯食べにきとる?」
父「 あの車?」
母「 仕事の車さ。亡くなった方ば運ぶ。」
父「 ああ、それで帰ってきよるばい。」

 父は母が見学した日だけでなく、毎回仕事用の車で夕飯食べに帰ってきていたらしい。
父は霊感皆無だから。
母は、

“ それだ!
興味本位で覗いたから、きっと怒ってしまったんだ!”

と気づいて、反省したと言っていた。
 それからは父には自家用車で帰ってくるようにお願いし、金縛りにもあわなくなったそうだ。
この場合、車に憑いていたみたいで、父が自家用車で帰るようになってからは何もない。
今も同じところに住んでいる。











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日々の恐怖 7月18日 電話

2014-07-18 18:52:29 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 7月18日 電話



 昔勤めていた会社での話です。
中途採用で採用されたAと言う人がいました。
勤め始めて2カ月たった頃、変な電話がかかってきた。

『 御社に在籍してるA、人殺しですよ。』

最初の電話はイタズラかと思って流してたけど、何度も何度もしつこく電話がかかってきて、

『 話を聞いてください。』

と言うので聞いてみると、かなり残虐な殺人事件の犯人とのこと。

『 新聞の切りぬきを送ります。
後は御社の良心に任せます。』

 後日、送られた新聞記事の切り抜きコピーを元に本人に尋ねると、あっさり認めた。
もちろんAはクビ。
 ちなみに、自分の会社に電話をかけてきたのは興信所で、遺族からの依頼で、Aが出所してから10年ほど、同じ手口で嫌がらせを行っているらしい。
法で裁くなんて綺麗事。
怨みは怖い。












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日々の恐怖 7月17日 神社

2014-07-17 17:49:58 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 7月17日 神社



 神社が好きなため色々な神社を見て回ったりするんだが、あるとき訪れた比較的大きく歴史もある神社のこと。
 賽銭箱にお金を入れお参りし、境内をマジマジと見ていたんだが、ふと俺は神社の縁の下を覗き込んだ。
すると、多数の基盤の柱の中の一つに、五寸釘で打ち付けられたお札付きの藁人形を発見した。
 だいぶ前に打ち付けられたのか、お札はボロボロ釘は錆びている。
なのに、藁人形だけは全く風化していないように見えた。
 しかし、それを見て俺がゾっとした対象は藁人形ではなく、その位置にあった。
俺が立っているところからそこまでは、2m半以上はある。
その距離を、猫位の大きさでギリギリ通れる高さの狭い縁の下を、這いつくばって進み打ち付けたということ。
それを想像した瞬間、いてもたってもいられなくなり退散した。
 俺が知らないだけで、意外と神社の縁の下にはそういったものがあるのかもしれん。
それがもとで何か起こったわけではないが、それを見たとき人の執念って怖いと思った。











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日々の恐怖 7月16日 絵

2014-07-16 18:07:40 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月16日 絵




 俺がまだ小学生、多分、3年か4年の頃だった。
校外学習だったかなんだかで、バスに乗って美術館に行った。
美術館について一通り順路を回った後、指定された時間まで各々自由に見て回って良いと言われたので、仲の良い友人数人(確か自分含めて4人ぐらい)で回ることにした。
 最初の内は楽しかったんだけど、俺は正直途中で飽きてきて、「早く帰りてー」なんて言ってた。
他のヤツらも大体同じみたいで、お互い帰りたい帰りたい言い合ってた。
だけど友人の一人、Aと書くことにするが、そいつだけは真面目に絵を見てた。
何だかんだ言っても美術館から出ることは出来ないし、みんなしてAの見たい所をついて回る形になってた。
 俺達がだべりながらなんとなく絵を見てたら、Aが立ち止まって動かなくなった。
それまでは立ち止まってもまたすぐに歩き出して、他の絵の所に行ってたのに。
確か、なんとかの烏ってタイトルだったと思う。
烏って部分だけ覚えてたのは、その時は烏って字が読めなかったって言うのと(友人の一人が読み方を知っていて教えてくれた)、その絵に烏が描かれていなかったから。
 そりゃ絵のタイトルに入ってるものが、必ずしも絵にそのまま描かれている訳ではないと思う。
だけど、その絵は明らかにおかしかった。
風景画みたいに湖とその周りの景色が描かれている端っこに、奇妙なものが描かれている。
一本の木から紐のようなもので吊されている、黒いもの。
何なのかははっきりしないけど、なんとなく人の形をしてるようにも見えた。
少なくとも烏には見えなかった。
 俺は、なんか気持ち悪い絵だなぁぐらいにしか思ってなかったし、他のヤツらはちゃんと見てすらいなかった。
Aはずっと動かない。
声をかけてみても生返事。
ちゃんと絵を見てないとはいえ、いつまでも同じ場所に止まってるのは余計に退屈だ。
そう思って、Aに声をかけた後、他の友人達と別の場所を見ることにした。
 しばらく見た後、座れる所があったので座って時間を潰すことになった。
その場ではしょうもない話しかしなかったと思う。
 そろそろ時間だという頃に集合場所に向かってると、Aの姿を見つけた。
なんと、Aはまだあの絵を見ていた。別れてから10分くらいは経ってたはずだ。
Aにそろそろ集合場所だと告げると、またも生返事だったものの絵から離れて、一緒に集合場所まで向かった。
 その日はそれで終わった。
帰りのバスの中でAはいつも通りだったし、俺は大して気にしてなかった。
校外学習が終わった次の日。作文用紙を渡され、昨日の感想を書けと言われた。
俺は『とても楽しかった』だのありきたりなことを書いて、適当に仕上げた。
一緒に美術館を見た友人はみんな書き終えたが、Aだけは時間内に書き上がらず、家でやってくるように言われた。
 次の日、昨日書き終わらなかった人たちが作文を出した。Aは出さなかった。
また次の日、この日は締め切りとされていたが、Aと不真面目な生徒何人かは出さなかった。
 この時点で俺は違和感を感じていた。
Aは普段から真面目で宿題を忘れたこともなかった。
普段の態度もおかしかった。なんだかボーっとして、いつものAとは程遠かった。
そんな状態が一週間くらい続いた。
 そんな時、Aが俺に相談してきた。
なんでも、あの日見た烏の絵が頭から離れないのだという。
俺は正直そんな絵のことは忘れてたし、Aがあまりに深刻そうにしてたので、どうしたらいいのか分からなかった。
結局、その時どうしたかはあまり覚えてない。
月並みな言葉を掛けただけだと思う。
 それからまた数日経つうちに、Aはどんどんおかしくなっていった。
授業中一人でブツブツしゃべったりしていた。保健室に行くことも多くなった。
俺も友人達も、Aとはあまり遊ばなくなった。
 そして、ある日それは起こった。
授業の途中、Aは急に倒れた。椅子から転げ落ちて、体をガクガク震わせていた。
教室がざわつく中、俺とAの目が合った。
すると、Aが叫びだした。
ほとんど聞き取れなかった。
その後、Aは先生に運ばれて保健室に行った。
授業は自習になった。
 しばらくすると、救急車が学校に来た。
窓から、Aらしき人が担架で救急車に乗せられるのが見えた。
それきりAは学校に来なかった。
病院に入院したとも聞いたが、詳細は分からない。
学年がかわる頃、先生がAの転校を告げてからは、何も耳にしていない。












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日々の恐怖 7月15日 狸

2014-07-15 19:46:11 | B,日々の恐怖


     日々の恐怖 7月15日 狸


 仕事中に体験した話です。
仕事は列車の運転士をしています。
その日は大雨の中、最終列車の乗務をしていて駅に停車中でした。
 やがて出発時刻となり、信号が青に変わった瞬間信号が消灯してしまいました。
おいおいこのタイミングで球切れかよと思いながら、無線で指令に連絡しました。
こういう場合、赤信号とみなすという決まりなのでしばらくその駅で足止めになりました。
 指令から指導通信式(赤信号で列車を出発させるやり方)で列車を出す準備をすると言われましたが、お客さんが2人とも家族に迎えに来てもらうと告げに来たのでその方法は取らず復旧まで待つことになりました。
 1時間後信号は復旧し回送として終点を目指し運転を再開しました。
原因は信号ケーブルを動物に噛まれたからでした。おそらく狸と思われます。
 しばらく走り峠の急勾配を登りきったところで駅の灯りが見えてきたのと同時に、ホームに人影がみえました。まさか、最終に乗ろうとしてた客だろうかと思いましたが、この駅から最終に乗る人なんていまだ見たことがありません。
 だんだんホームに近づくと、その人影は線路に身を投げました。
言葉も出ず非常ブレーキを掛けただひたすら止まるのを願いました。
ホームを少しハミ出たところで列車は停止しました。
完全に轢いてしまったと思いましたが、衝撃が全くありませんでした。
 台車回りを確認していると3匹の動物(たぶん狸)が線路と台車との隙間から出てきて走り去って行きました。
その姿を目で追っているとヘッドライトに照らされた進行方向の線路が少々歪んでいるのが見えました。
ん?と思い近づいてみると、バラストと枕木が流出していました。
大雨で山からの水に耐えきれなかったのだろうと思います。
 もしあのまま走っていたら確実に脱線していたことでしょう。
もしかしたら狸がなんとかして列車を止めようとしてくれたんじゃないかと思っています。
ちなみに人影はもわーとした感じで背格好は人間って感じです。













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しづめばこ 7月14日 P318

2014-07-14 19:40:59 | C,しづめばこ
しづめばこ 7月14日 P318  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 7月14日 自転車

2014-07-14 19:40:00 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 7月14日 自転車



 友人Aの話です。
Aには愛用の自転車がありました。
それを飛ばして学校へと来ていましたが、ある日派手に転倒してぶっ壊れたそうです。
それからと言うもの、しばらくAは早起きして、歩きで登校していました。
この間、Aは相当愚痴っていました。

 それからまた、幾日か経ったある日のことです。
自転車で登校してきたAと、校門で鉢合わせになりました。
Aは新しい自転車に乗っていました。
私は、

「 ついにあの自転車捨てたのか!」

と言い、茶化しました。
しかしAはちょっと嫌そうな顔で、

「 捨てたのは捨てたけど、お前が思ってるような理由じゃない。」

と言いました。
気になった私は、詳しく話を聞きました。


 Aは、壊れた自転車を家まで持って帰っていました。
その自転車が壊れてしまってから数日後に、修理されている事に気付いたそうです。
それはかなり荒っぽい修理で、

『 機械には弱いけど、頑張って直したよ!』

というような仕上がりだったらしく、辺りには部品のような物も落ちていました。
 無論、Aの知る人物でそれをした者はいません。

“ 一体誰が・・・?”

と思いました。
 A曰く、

“ その時、もう、かなり嫌な感じがした。”

そうです。
それは、夜、自分の自転車置き場から妙な音が聞こえてきた事で、確信へと変わりました。
Aは彼の父親に説明し、2人で恐る恐る見に行ったそうです。
 そこにいたのは、手が血だらけになった中年の女性でした。
女性は、こちらに気付く様子も無く、Aの自転車を一生懸命直しています。
手の怪我は、慣れない工具を扱ったためだろう、とAは推測していました。
とにかく訳が分からず、

“ はあ・・・?”

と思った2人が近付こうとすると、 女性はそれに気付いたようで、

「 えええええええエーーーーーーっ!?」

と、ものすごい驚いたような声を上げ、工具をほっぽり出して、小走りで走っていったそうです。
 残されたのは、血が所々に付着した自分の自転車。
不気味すぎて追いかける気にもならなかったそうです。

 その後、Aの父親が調べた所によると、Aの自宅から少し離れた所に、小さな自転車修理屋を経営している夫婦がいたそうです。
夫が亡くなってからは店を閉めたそうですが、その後の妻の行方がわからない。
実家に帰ったのだろうかは分かりません。
いずれにせよ、その2人はとても仲が良かったそうです。
もしかしたら彼女ではないか、という事でした。

 新しい自転車に買い換えてからは、何も起きなくなったようです。
Aは言いました。

「 だから捨てたんだよ、俺の気持ちも分かるだろ?」

私は、妙に納得して頷きました。











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日々の恐怖 7月13日 女社長

2014-07-13 18:44:17 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 7月13日 女社長



7~8年ぐらい前のことです。
SEの仕事で小さな旅行会社に派遣されました。

社長は女性で経理と内勤の女性、営業の男性二人の会社でした。

女社長は40過ぎぐらいでしたが、背が高く、かなりの美人で面倒見が良く、出張に行ったぐらいでも社員全員にお土産を買って来たリ、高級料理店などに良く連れて行ってくれるような人でした。

私の仕事は新しく入れ替えるパソコンの設置と使い方指導で契約は3カ月。

旅行業務に関してはノータッチでした。

仕事について、一週間ほどした頃、不思議さを感じ始めました。

電話は日に数えるほどしか無く、営業が出てしまうと私以外は暇で女性だけでお茶を飲み、雑談しているサロンのようなんです。

社員の話しでは、女社長の旦那さんが急死し、奥さんが社長を引き継いだとのこと。
その時、会社で掛けていたものと、個人で掛けていたものとで女社長は億単位の保険金を手にして、会社は道楽でやっているようなものと。

旅行のお客なんて、週に1件あるか無いかです。

1カ月ほど過ぎたころ、ツアーで行ったお客さんが旅行先で亡くなりました。

死因はもともと持っていた持病が悪化してとのことで、旅行会社に責任は一切ありませんでした。

しかし、もしものことのために旅行会社では旅行に行く人に保険を掛けているんです。

保険金が下りたことで、遺族にお見舞金として、旅費全てを返しましたがそれでも会社が儲かるほどです。

そんなことが、1カ月間の間に3件も起こりました。

全て旅行会社の責任では無く、病気がちなのに家族が反対しても無理して行ったとか、自由行動で現地の屋台で食べたものに当たって食中毒で死亡とか。

その度に会社は潤います。

女社長も自ら見舞金を持って行くぐらい、人柄の良い人でした。

一番恐かったのは2カ月目に入ろうとした時です。

出張でケニアに行った40代後半の営業マンが脳梗塞で倒れ、現地の医療では間に合わず帰らぬ人となってしまいました。

取締役をしていた方だから会社としてかなりの保険金が掛けられていて、会社としてはウホ状態。

保険金殺人を疑いましたが、パソコン管理は全て私がやっていて、そのような現地とのやり取りも一切無いし、出来ることも無い。

社員たちも恐がってしまい、辞めようとする人たちも出て来ました。

お客さんが現地で死亡も相変わらずあるんですから。

以前の旦那さんの時代にはこんなことは一切起こらず、奥さんが女社長になってから連続しているそうです。

私も恐くなり、派遣会社と相談して3カ月の契約でしたが2カ月で辞めました。

優しい顔をして、知らず知らず人の生き血を吸っている人は本当に存在するんだなと実感した体験です。













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日々の恐怖 7月12日 そいつんち

2014-07-12 19:16:57 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 7月12日 そいつんち


 今でもトラウマになっている話です。
小学生の時、いつも遊んでるグループの中で、ある日ちょっとした喧嘩をしてしまって孤立した。
 放課後一人で本屋で立ち読みをしてると、同じクラスの全然目立たない男の子も立ち読みしてて、話しかけると一緒に遊ぶことになった。
公園行こう、と言って本屋を出たけど、暫くしたら雨が降ってきて、そいつんちが近いからって、そいつんち行った。
普段は誰も遊びにこないらしく喜んでた。
家は古い平屋で狭くはないけど、掃除してんの?ってくらい散らかってた。
 それで、そいつの部屋行ったんだけど、玩具とかゲームとか何もない。
俺が結構テンション下がってたらトランプ持ってきて、まあトランプでいいわって、ポーカーとかおいちょカブとかやってた。
 暫く遊んでると、そいつの母ちゃんが麦茶持ってきた。

「 あら~お友達?○○君って言うの?○○と仲良くしてあげてね。」
「 はい、ありがとうございます。」

そう言ってお茶貰うけど糞不味い。
苦いしょっぱいとろみつき。
何これ麦茶?何か変な味するわって飲まなかった。
 つーか気がついたら、やたら小蠅が多い。
ブヨみたいに飛んでる。
麦茶のグラスにも入ったので、麦茶いらんって良い言い訳になった。
 外は雨なのに電気代をケチってか家は薄暗いし、なんだかな~みたいな感じでトランプしてた。
で、何となく家族の話になって、父ちゃんは何でも仕事で遠いとこにいて、家には母ちゃんと妹、あと寝たきりの爺ちゃんって話になった。

「 あー母ちゃん以外に人居たんだ~。」
「 妹はまだ学校だけど、爺ちゃんがね。」
「 へ~。」

それで、暫く遊んで夕方、雨も止みつつあるし帰るかな?ってなって、帰る前に、

「 トイレ借りていい?」ってた。
「 うん、いいよ・・・。」って、しぶしぶ的な感じ。

 トイレがちょっと長い廊下の突き当たりで、右手が襖の部屋。
んで、そこら辺がまた強烈に臭い。
何ていうか、超足が臭い人が雨の日に1日履いて熟成されてマイスターな仕上がりの靴下に、全身包まって寝るくらい臭い。
 鼻押さえながら、まじかよこれって感じで雨上がりの廊下を歩いてたら、脇の襖の中からコツッコツッって、何かぶつけるみたいな音する。
何だろう?ここが爺ちゃんの部屋?何か呼んでる?って思って、しゃがんで細く襖開けて覗いた。
悪戯心もあったんだけど。
 部屋の中は明かりもなく、襖の隙間から漏れる明かりで薄ぼんやり見えたんだけど、奥に布団敷いてあって誰か寝てた。
でも、変なの。
顔に布がかぶせてある。
死んだ時みたいに。
 で、蝿がいた。
小蠅じゃなくて大きな蝿がすごい数ブンブン飛び回って、小さな虫も這い回ってた。
コツコツ音を立ててたのは、そいつらが襖にぶつかる音だった。
 中がまたさらに臭い。
ゲロともウンコとも区別つかないような匂いが充満してた。
 子供心にヤバいって思って直ぐ閉めたんだけど、立ち上がってトイレ入ろうとしたら、直ぐ横におばさんが、さっきと違ってなんか凄い怖い顔でこっちを睨んでる。
「トイレこっちよ。」って言うから、「あ、はいすいません。」ってトイレ借りて、そそくさ退散した。

 それだけの話なんだけど、この時を強烈に思い出したことが今までに二度ある。
一度目は、何だったかの宗教で、死人が生き返るからって、ミイラをずっと家の中に寝かしてたってニュースを見た時。
そして、死人年金受領詐欺がニュースになった時。

 その日家に帰ったら、母ちゃんに「何処行ってたの?臭いよあんた。」って言われて、「○○君のうち。」って言ったら暫く無言になって、「○○君とはあまり遊ばない方がいいかも。あそこのお母さん宗教熱心だから・・・。」みたいなことを言ってて驚いた。
俺が普段遊んでる、超がつく悪ガキどもには何も言わないのに、ど~して・・・・?って。









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日々の恐怖 7月11日 ポーカー

2014-07-11 19:36:01 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 7月11日 ポーカー




 俺が学生の頃、賭けポーカーがはやったことがあったんだが、Nという友人が異常なほどポーカーに強かった。
こっちがフラッシュを揃えても、その一段上の役のフルハウスを出してきたりと、相手よりひとつ強いくらいの役がポンポン出る。
その上、絶対に勝てる役をこちらが揃えると、すんなりとゲームを降りてしまう。
 あんまりにも強いから、これはおかしいという話になり、カードを新品に変えてみたりしたが、相変わらず強い。
 これは賭けにならないということになり、早々にポーカーは廃れてしまったんだが、俺は気になって、友人に勝利の秘訣を聞いてみることにした。

「 なあ、N、お前って賭けになると強いけど、なんで?」

するとNは困ったような顔になって、ぽつりとこういった。

「 勝ちたい勝ちたい言うヤツは、なんていうかな、雰囲気にでるんよ。
逆にあかんこれは負けるって時は、表情に出る。
それがなんとなく分かるんよ。」

“ そういうもんかな・・・。”

と思ったが、今考えるとそれが不思議なんだ。
そもそも、そんな理由だけで常に勝利し続けることが可能なもんなのか。
 ちなみに、ある日Nが友人の家に行ったときに、友人のじいちゃんを見て、

「 あのじっちゃん死ぬぞ。
はよ病院に連れてった方がいい。」

しかし、数日前に俺が見たときはどこも異常な様には思えなかった。
それでも、友人に助言をした何日か経った後、そのじいちゃんの病気が発見された。
Nについては、今でも不思議でならない。










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日々の恐怖 7月10日 記憶

2014-07-10 19:54:19 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 7月10日 記憶


 私は普通に社会人で、結婚もしてますし子供も二人、今年30歳になります。
そして、正気です、いたって健康で脳の病気などもありません。
 1月24日。
この時期非常に忙しく、私は疲れ果てて家路につきました。
 午後8時30分頃、駐車場に車を止めて、玄関のドアを見ながら歩を進めます。
頭の中は、早くメシ食って風呂入って寝たい、これだけ。
家族には疲れていることを見せたくない私は、玄関のドアを開け、テンション高めに、

「 ただいま!」

と言います。
 その瞬間、ガキン!ともバチン!とも言えないような衝撃が両耳の鼓膜を襲い、あまりの痛さに目をつぶり、立っていられなくなりました。
天と地が入れ替わったような、世界が反転したような感覚があって、頭がガンガンして、

「 ぐあぁぁっ!!痛ってえぇ!」

と、久しぶりに腹のそこから声を出しました。
 しばらく目をつぶってしゃがみ込んで、脂汗かきながら耐えてたんですが、嫁も子供の声もしないので、変だな、ちょっとは心配してくれよ、とか思ってたら、フッと痛みも眩暈もなくなったので目を開けると、布団の上に立ってました。
 だけど、私の家じゃない、いや、私の実家?
混乱しました、ものすごく。

「 やっとおきたの~?早くご飯食べちゃって!」

となんだか懐かしい声。
母ちゃん?
身長デカイ、というかすごく若い、声もなんだか違う気がする。

「 えっ?母ちゃん!?なんで?!っていうか・・・!!」

“ 目が見えづらい!
床が近い!体がうまく動かない感じがする、縮んでる?
手がムチっとしてるし、というか子供!?
昔か!!
そんな馬鹿な、夢か!?
いやどっちが!?どうしよう!
そんで、心臓バクバク。
なんだか勝手に涙が溢れてきて、いい年こいて、イヤこいてないのか?”

とにかく大声で泣きました。
ものすごく怖かった、理解出来なくて。

「 どうしたのよ~、急に泣かないでよ~。」

と近づいてくる母ちゃん。
 涙でいっぱいの目を手でこすって、前を向くと嫁がいました。
家族で普通に飯食ってました。

「 うええええええ~!?」

と、突然奇声を上げる私。
びびる嫁。

「 なに?どうしたの?」
「 えっ!?今、何月何日?」
「 2月・・・6日。日曜日でしょ、なんなの?」

固まる私。

「 今年って何年だっけ?」
「 20○○年。」

よかった、マジで良かった。
 でも、その間の約13日間の記憶がまったく無いんです。
私の記憶では、ガキン!と衝撃を受けてから体感で恐らく10分程度。
でも、実際には13日間も経過している。
 嫁の話だと、私の様子はいつもと変わらず。
普通に会話もしてたし、飯も食べてたし、寝てたし、子供と遊んでいた。
会社の仲間に聞いても、いつもと変わらずに仕事してたし、飲みにも行ったじゃん、と言われました。
 一応病院に行って、(変な経験したとは言ってないが)頭痛くなってからの記憶が無い旨を伝え検査もしましたが、異常はありませんでした。

「 恐らく、ストレス性の一時的な記憶障害でしょう。
日常生活にも支障は無いようですし、そのうち治りますよ。」

って言われました。
その後は何も起こらず、今に至っています。











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日々の恐怖 7月9日 コンビニ

2014-07-09 18:36:05 | B,日々の恐怖



      日々の恐怖 7月9日 コンビニ



 都心部も少し外れたところはコンビニが少ないので、行きつけのコンビニが自然と決まってくる。
当時、高校生だった俺は一箇所をよく利用してて、ほとんどの店員と知り合いになっていた。
 その日はたまたまレポート用紙が足りなくなって、夜に買い足しに行った。
その時のレジも馴染みのバイトの姉ちゃんで、年は25って言ってたかな。

「 こんな遅くに珍しいね。」
「 あー、レポート用紙なくなって。」

とか、まぁレジで当たり障りのない会話をしたりしてた。
すると清算してる最中に、姉ちゃんがいきなり頭痛に襲われたようで、

「 大丈夫ですか?」

と聞くと、数秒もないうちに、

「 ええ、なんとか。」

痛みはすぐに治まったようだったから、さほど気にせずに帰路についた。
 それで、家に帰ると、何も言わずに出てたもんだから親に問いただされて、

「 あぁごめん。レポート用紙を買いに・・・。」

って袋を掲げようとしたら、どういうわけか俺は何も持ってない。
確かに買ったはずなのにって財布を確認しても、レシートや小銭が減った形跡がまるで残ってなかった。
 それでも一応、帰り道に落としたor店に置き忘れた可能性を考えて、道を注意しながらコンビニまで逆戻りする羽目になったんだが、結局落としたのは見つからず、コンビニまで戻ってしまった。

“ 店に忘れるなんて有り得ないしなぁ・・・。”

とか色々悩みながら店に入ると、夜の時間帯にはめったに見ない店長が、スーツ着て来ている。
話を伺うと、その姉ちゃん、バイト入る前に自室で倒れていたらしくて、これから人員補充して、容態確認しに行くとのことだった。
 結局、姉ちゃんの倒れていた原因は脳溢血で、手当ての甲斐なく亡くなってしまったんだが、その時の何でもないやりとりをした記憶と、買い物が綺麗さっぱりなかったことになった経験が、今でも忘れられない。
恨みや未練で人に憑くような性格ではなかったから、怖くはなかったけど、ちゃんと成仏できたのかなと、しばらく心配だった。
その後、変な噂は一切立たなかったし、身の回りで怪現象が起こったわけでもなかったから、今では大丈夫と思う。

 実を言うと、気になっていたので、お葬式が一段落した頃合を見計らって、線香を上げに伺った時に、このことを家族さんに話しました。
 小さな菓子折りを香典として持っていきましたが、学生がそこまで気を遣うなと怒られてしまいました。
そして、

「 こんな話は初めてだけど、あの子ならおかしくない。」

と、神妙な顔をされてました。
思い返すと切なくなってきました。











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