大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 1月31日 昼の少年

2016-01-31 23:09:59 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月31日 昼の少年



 我が家は1階で両親が寝て、2階の一室で俺、妹、兄が3人で一緒に寝てた。
毎晩寝室で兄妹三人で騒いでて、時折、

「 あんた達、早く寝なさい!」

って親が叱りに来るんだけど、そういう時は階段を上ってくる音が聞こえてくるから、俺等は、

「 やばい!寝たフリ!」

って言って一斉に静かになる。
でも数秒前まで騒ぐ音が聞こえてるわけだからそれは通用せず、親はドアを開け怒ってくる。
 そして、その日の夜も例の如く騒いでたら階段を上ってくる音がしたから、急いで電気とテレビ消して皆布団に潜り込んだ。
 足音は止んでドアを開く音がした。
でもいつもの様にドアが開いたと同時の叱り声が聞こえない。
 一番ドア側にいた俺は、そーっと布団から覗き込むと、ドアは開いてるものの誰もいない。

“ 隠れて驚かそうとしてんのかな・・・?”

なんて思いながらドアをずっと見てると、開いたドアから見える隙間の暗闇に目が慣れてきて、誰かがドアの後方に立ってるのが見えてきた。
 でも何か立ち方というか、シルエットがおかしい。
手足が明後日の方向を向いてる。
 その瞬間、俺の頭に昼間の事故が思い浮かんできて、得も云われぬ不安に襲われて、無言で布団に潜り込んだ。
 一人でブルブル震えてる内に兄と妹が、

「 誰もいないじゃん。」
「 お母さん下降りていったのかな?」

ってまた話し始めて、明るい雰囲気になったので、俺も布団から顔を出した。
 ドアは開きっぱなしなものの、もうその向こう側には誰もいなかった。
あの時俺が見た人影は事故の少年と関係があるのかわからないけれど、今思い出しても凄く気持ち悪い。









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日々の恐怖 1月30日 我が家が心霊スポット相談会

2016-01-30 20:08:48 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 1月30日 我が家が心霊スポット相談会




・相談会の参加者4名
大学生Sさんと、そのネット友人Kさん、Mさん、Yさんです。



・相談開始。

(S)ちょっと意見を聞かせてくれ。
どうやら我が家が心霊スポット扱いされて一部で盛り上がっているようなんだが、“それ心霊と違いますよ!”とやんわり指摘してやるべきか、それとも夜な夜な訪れる若人どもにうんざりしながらも放置して風化するのを待つべきか、みんななら、どうする?

(K)なんで心霊と間違われるの?

(S)話すと長いんだが聞いてくれ。
半分愚痴みたいなもんだ。
 我が家の敷地内にはちょっとした林があってその中に小屋を作ったんだ。
______
  _____ ←A道
| |林林林林▲
| |林□林林■ ←家
| |林林林林   ※□=小屋

B道

 で、数年前に台風の被害でちょっと外装がやられているんだけど、内装には問題ないからそのままにしているのね。
 そこへメルヘンなガーデンに憧れているおかんが何を思ったのか、甲子園球場のような蔦っていうのか知らんけど、植物を植えて小屋に絡ませたのはいいんだけど、飽きっぽい性格のため、生やしっぱなしで手入れもしないもんだからもう汚いわけよ。
 で、小屋に曇り硝子の窓がB道側と家側についているんだ。
これだけならただの放置されたボロ小屋ですむんだけど、服飾やってる姉ちゃんが、小屋の中にマネキンとか変な仮面みたいの置いてるのですよ。
 それが我が家からの薄明かりと林の揺れ方次第でどうやら林の中に人がいるように見えるらしく、そこへ恐らく我が家のわんこのクーンクーンいう声だと思うんだが、女の泣き声が聞こえるらしく、更には仕事に追われている姉ちゃんがボロボロの姿のまま真夜中に我が家から小屋間をフラフラと行き来しているのがA道側から目撃されたらしく、男に捨てられた女が自害した林だとか、暴行されて死んだ女の怨霊がいるとかで、地元の若人どもがちょいちょい見物しに来ては、林の中に勝手に入って肝試しするわけですよ。
 林のまわりに柵がなかったんで、一見我が家の敷地には見えないのがいかんのかと思って柵つくって注意書き置いたら、それが余計に『ここマジやばいんだ!』みたいなあおりになってしまったようで。

 それで、この先愚痴の方が長くなるんでここでやめておくけど、心霊に間違われる理由は今の話の通りなんだと思う。


(S)
 今ふと思ったんだが、このような場合、警察呼んでもOK?
というか法的に罰することは可能?
 因みに役所の方には既に、

「 柵つくったらどうですか?」
「 札つけたらどうですか?」
「 それでも入るなら見つけた時に注意したらどうですか?」

という大変ありがたいアドバイスを頂戴しております。


(M)
 呼んでOKじゃないかな。
敷地内なら不法侵入。
ただ、不法上等で侵入して来てるし、カップルの男なんかは見栄で逆切れしたりする事もあるから、直接注意するのは避けた方が良いかもしれない。
 酒飲んだ高校生が事故とか怪我とか、バカがタバコ捨てて火事とか、そういう事態だって有り得る訳だし、調子づいたアホの小屋への不法侵入だってあるかもしれない。
カッコつけてライターを明かりにするバカも多いし。


(K)
 俺の知ってる空き家は、心霊スポットの噂がたってしばらく後、不審火で焼失した。
ライターを明かりに侵入、物音にビビってライター放り出して逃走、火事になったと見られてる。
役所じゃなくて警察に相談してみたらどうだろう。
パトロール増やしてくれるくらいはしてもらえると思う。


(S)
 不審火で焼失って、夏に花火やってぼや起こしたまま逃走した連中がいるんで、正直いまめちゃくちゃ鳥肌たったわ。
おとんが防犯カメラとかセンサーつけようとか言ってるんだが、それだと金がかかってしょうがないんで、やっぱり警察に通報する。
我が家を心霊スポットとして紹介しているサイトへの対処も、とりあえず警察に頼んでみる。


(Y)
 小屋を整理して、“一般的な人間が日常的にここを使用している雰囲気”を出せばいいんでね?
マネキンや仮面に可愛い柄のカバーをかぶせて、作業場を女性っぽくコーディネートしておけば、ここには何も出ないこと、居住者がフツーに生活していることは示すことが出来る。
肝試しするような輩に効くかどうかはわからんが、興ざめはすると思う。
あとは立入禁止の札に、女子高生が描くようなキャラでも描くとか。


(S)
 おとんの達筆な、私有地につき云々いう赤筆文字のがいかんかったのかな?
ちょっと今からドラえもんでも描いてくる。


(M)
 頼まずに、

“ これこれ入ってきた!”

って、確実だったら即通報しちゃえば?
普通常識があれば、誰のものか分からない小屋なんか入らない。
それくらいの制裁が必要。


(S)
 予定していたものと違うけど、とりあえず札に心をこめた絵を添えてきた。
小屋には鍵が二つ付けてあるんで、簡単には侵入出来ないと思うけど、とりあえず表札みたいの付けてみた。


(S)
 常に監視できるわけでもないんで、明日にでも警察に行こうかと思っていたんだが、様子見したほうがいいんかな?
ちょっと、朝、家族会議も開いてみる。









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しづめばこ 1月29日 P418

2016-01-29 20:26:25 | C,しづめばこ


しづめばこ 1月29日 P418  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


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日々の恐怖 1月28日 古都の暗闇(3)

2016-01-28 19:34:23 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月28日 古都の暗闇(3)



 京都のタクシーが運転が荒いのは知っていましたが、乗客に死の恐怖を感じさせるほどではありません。
このときは、本当に死ぬかもしれないと思いました。

“ おろしてくれ!”

と叫びたかったですが、情けないことに、人間本当に怖いと声が出てこなくなるようです。
 なにより、運転手に下手な刺激を与えたくなかったので、俺はただただじっと石像のように固まっていたのでした。
 そして、恐ろしいことに車は○○通りへはあきらかに行けない方向へ進路を変えだしたのです。
もう限界でした。
 俺はやっとのことで、

「 あ・・・、お、おろしてください!
ここで、ここで大丈夫ですから!」

となんとか声を出しました。
 すると、意外にも運転手は、

「 あれ、そうかい?ここじゃ遠くないかい?」

と、ごくごく普通なトーンでしゃべりながら車を脇に寄せました。

「 話相手にしちゃって、ごめんね~。」

などと言いながら、さきほどと比べると自然な普通の対応で運転手は俺に金額を告げました。
 俺は、

“ さっきまでの恐怖心は、自分の思い過ごしだったのか?
俺が神経質に感じ取りすぎていたのか?”

と、いったい何が現実だったのか分からなくなるような、白昼夢を見ていたような気分でした。
 解放されたということで、少し放心状態でもありました。

“ とにかく、外に出よう・・・。”

そう思い、急いで金額を渡し、運転手の、

「 ありがとうございました!」

という声を愛想笑いで受けながら、ギターケースをひっつかんで外へ足を踏み出そうとすると、運転手が、あの張り付いたような笑顔で言いました。

「 お客さぁん、もしかして○○大の学生さん?」


 そのあと近くの友達の家に駆けこんでこの体験を話したんですが、うまく伝わりませんでした。
体験した俺以外は怖くないのかもしれません。
 ですが、あの異常な運転手は今でも京都の夜を走っているかもしれないと考えると、得体のしれない恐怖がよみがえってきます。
京都の方はくれぐれもお気を付けください。
ちなみに俺は、そのときは四条大宮で乗りました。










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日々の恐怖 1月27日 古都の暗闇(2)

2016-01-27 18:44:26 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月27日 古都の暗闇(2)



 その後は、

「 ○○通りの近くはいいですよねえ、あ!○大の学生さんでしょう?」
「 あの近く、ボーリング場があるでしょう?
私ボーリングがすきでねぇ、社のボーリング大会でも結構いいとこまで行ったんですよ。」
「 ○○大の学生さんっておっしゃいましたよねぇ、え?」

こんな感じで、会話がずっと同じ内容でループし始めたのです。
 物忘れがひどい年齢には見えませんし、そういった類のものとは違う、なにか得体のしれない不気味さを感じました。
 俺のうつろな返答にかまわず、運転手は延々同じ話題を繰り返しています。
密閉された真夜中の車内は暗く重く、いやな汗が背中から吹き出し、効かせすぎた冷房に冷やされて寒気さえ感じていました。
ミラー越しには、さきほどと同じ笑った目元が張り付いたままでした。
 突然、会話がふっと途切れました。

“ この奇妙な会話から解放されたのか?”

と思った瞬間、

“ ドンッ!!”

という衝撃音が車内に響きました。

“ ビクッ!”

と身体を硬直させながら見ると、運転手が左足を、まるで何かを踏み殺すかの勢いで床に打ち付けているのでした。
それも一回ではなく何度も何度も、ドン!ドン!ドン!と。

「 ああ!あああ!!あああああ!!!」

さらにはこんな唸り声まで上げ始めました。
 運転手は足を、今度は貧乏ゆすりのようにゆらしているのですが、力いっぱい足を上下しているので車がグラグラ揺れるほどでした。

“ なぜ・・・?
前の車が遅かったのが気に障ったんだろうか?
それとも、俺が何か怒らせることを言ったんだろうか!?
ていうか、この人ちょっとおかしいんじゃないか!?”

俺は完全に混乱してうろたえていると、

「 お客さぁん、○○通りに住んでるってことは、もしかして○○大の生徒さん?」

と、また同じことを俺に聞いてきたのです。
グラグラと貧乏ゆすりをしながら、目元にはあの笑顔を張り付けたままです。
 この時俺は、もはや違和感や不気味さなどではなく、はっきりとした恐怖心を抱いていました。
自分の命を、明らかに異常な男の操縦に預けている。
 これを意識した時の恐怖は、今でもはっきりと思い出せます。
しかも運転は明らかに荒くなっており、曲がるたびに右へ左へ体がふられ、前を走る車にはクラクションを鳴らして強引に前に割り込んで行くのです。










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日々の恐怖 1月26日 古都の暗闇(1)

2016-01-26 17:55:31 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月26日 古都の暗闇(1)



 これはまだ俺が京都で大学生だったときの話です。
当時バンドを組んでいた俺は、週末の夜になるとバンドメンバーとスタジオに入り練習をしていました。
 その日練習が終わったのは夜の一時でした。
季節は夏で、京都特有のけだるい、のしかかるような蒸し暑い夜でした。
 そのスタジオは家から遠く、いつもはバスで帰るのですが、時間的にもうバスも走っていなかったので、仕方なくタクシーを拾いました。
 背中に背負ったギターケースをおろし、

“ あー、無駄な出費だなぁ、次のライブのノルマもきついのになあ・・・。”

なんて思いながらタクシーに乗り込みました。
 50代くらいのどこにでもいそうなおじさんが運転手でした。
ガンガンに冷房の効いた車内が、汗をかいた体にありがたかったのを覚えています。

「 ○○通りまで。」

と行き先を告げると、運転手さんが話しかけてきました。

「 ○○通りに住んでるってことは、○○大の学生さん?」
「 はい、そうです。」
「 あの近く、ボーリング場があるでしょう?
私ボーリングがすきでねぇ、社のボーリング大会でも結構いいとこまで行ったんですよ。」
「 へえ、そうなんですか。」

 正直そのときは練習のあとで疲れていたので話したくはなかったのですが、気さくに笑った目元がミラー越しに見えたので、話し好きのいい運転手さんなんだなと思い、しばらく相槌を打っていました。
 そうして話し込んでいると、妙な違和感を感じはじめました。
こちらの返答とまったく関係のない話が急に出てきたり、なんとなく話の前後が合っていないのです。

“ まぁ、そういう話し方をする人はたまにいるよなぁ・・・。”

と気にも留めていませんでした。
 が、しばらくすると、

「 ところで○○通りに住んでるってことは、もしかして○○大の学生さん?」
「 あ、はい・・・?」
「 あの近く、ボーリング場ありますよね?私好きなんですよ。
こう見えてうまいんですよ。」
「 ・・・・・。」
「 ○○大の学生さんっておっしゃいましたよねぇ?」
「 あ、はい・・・・。」
「 ボーリング場の近くですよね?
いいなぁ。
実は私ボーリングが趣味でして・・・。」
「 あの・・・。」











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日々の恐怖 1月25日 深夜の音

2016-01-25 20:03:53 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月25日 深夜の音



 学生時代に体験した奇妙な出来事です。
当時、週末になると友人Kの家で夜通し遊ぶことが多かった。
 友人宅は一戸建てで結構広く2階にもトイレがあるような家で、私と共通の友人でその家に行き3人でよく遊んでいた。
 Kの部屋は2階にあり、深夜2時を回っても1階からドアの開け閉めのバタンという音や足音などがよくしていた。
大体4時頃まで、その物音は不定期に鳴る。
 Kは両親と同居しているので、当然Kの親が立てている音だと思っていた。
1年ほど経った頃、相変わらず物音がするので、ふとKに尋ねてみた。

「 Kの親って、結構寝るの遅いんだな。」
「 いや、とっくに寝てるよ。」
「 え?でも1階からよく物音するよ?」
「 知ってる、けど両親じゃない。」

私は冗談かと思ったのだが、Kはいわゆる怪談の類が大嫌いな人で、とてもこんな冗談を言うはずがなかった。
 さらに、Kの家に来ている共通の友人Tは、何故かその物音がまったく聞こえていないと言う。
私とKははっきりと聞こえているのにTのみが聞こえていない。
 それも冗談かと思い、Tとは軽い口論になったほどなので、恐らく冗談ではないのだろう。
ただ、物音だけがする程度なので、不思議だとは思いつつも恐怖を感じるほどではなかった。
 しかし、ある日、いつもの3人でK宅に集まった夜のことだった。
深夜になると例の物音が始まった。

“ また始まったなぁ・・・。”

と思いつつKの顔をチラリと見ると、Kも私の顔を見て頷いている。
そしてTは全く気づいてないようだった。
 ところがなんとなくだが、普段と雰囲気が違う。
言葉では説明できないが、いつもの物音とは何かが違っていた。

“ 何か変だなぁ・・・。”

と思っていたところ、ゆっくりと階段を上がる足音が聞こえてきた。
 流石にこれには肝を潰し、意識を足音に集中した。

“ ミシ、ミシ・・・、ミシ、ミシ・・・。”

と、明らかに誰かが階段を上ってきている。
 そして、そのあたりから3人の会話が完全に途切れた。
聞こえていないだろうTも何故か話をしようとしなかった。
 ゆっくりと階段を上がって来る足音。
そして、その足音はとうとう階段を上がりきったようで、今度は2階の廊下から聞こえてきた。

“ トン・・・、トン・・・・。”

と歩く音がする。
 そして、その足音は私たちのいる部屋の前で止まった。
瞬間、物凄い緊迫感が走った。
何者かがふすま越しにこちらを見ている気がする。
その視線と気配に圧され、激しい恐怖に襲われた。
 様子を窺っていると、やがて気配が突然フッと無くなり、妙な圧迫感も無くなった。
流石にこれは本気で怖かったので、Kに、

「 何か、いたような・・・?」

と聞いてみても、

「 さあ・・・、分からないけど・・・。」

と言うだけだった。
 Tは私たちの会話の意味は分かっていなかったと思う。
それで、Tには後日、このことを話してみたら、やっぱり何も感じてはいなかったとのことだった。
会話が途切れたのは、たまたま偶然だろ、と言っていた。
 やがて社会人になり、互いに忙しくなかなか集まる機会が無くなったのだが、たまたまばったりKと会ったので、物音はどうなったか尋ねてみた。
 実はKの部屋のカーテンレールにピエロのマリオネットがいつもかけてあり、フリーマーケットで買ったものだそうだが、それを捨てたところ、件の怪現象はパッタリ無くなったと言っていた。
 なんとなくだが、物音の主は子供だったような気がしていた。
あの人形に憑いていた何かだったのかなと思っている。










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日々の恐怖 1月24日 2006年お盆東北 ドリフコント夏

2016-01-24 19:57:48 | B,日々の恐怖


 
  日々の恐怖 1月24日 2006年お盆東北 ドリフコント夏



 去年のお盆直前に、父方祖母が90超えで大往生だった。
祖母は田舎の本家の隠居だったので、親の世代までは、亡くなった日から祖母宅というか父方本家(農家の日本家屋)に泊り込みだった。
 だけど、お盆という時期柄、お坊さんの都合がなかなかつかない。
結局、お通夜まで4日ほど日にちが開いた。
 私は仕事の関係でお通夜から合流したのだけど、そこそこ広い家とはいえ夏場に20人以上の合宿はきつかったらしく、駅まで迎えに来た両親は既に軽い躁状態だった。

「 おばあちゃんがね、夜になると外廊下走ってるの~。
死に装束の白いの着てね、猛ダッシュしてるの、可笑しくて・・・・。」

やら、

「 おじいちゃん、もう亡くなって30年経つでしょ?
おばあちゃん来るの待ちきれないみたいで、夜になるとそこら中フラフラしてるし・・。」

やら、出てくる話がずっとこんなのばっかりだった。
 本家で合流した親戚も、ほとんど目が軽く逝ってる。
最初はやばい雰囲気を感じてたけど、疲れきってる一同に代わり用事で走り回ってるうちに自分も同じ状態になってしまった。
 寝ずの番してる最中は普通に、

「 あ、おばあちゃん走ってるね~。」

とか酒飲みながら話してた。
 お葬式も無事終わったあと、自宅に帰ってから落ち着いて考えたらかなり怖くなった。
その場では白装束で全力疾走な婆さん見ておかしかったんだけどね。
 今から思えば、たぶん暑い盛りに喪服でバタバタしなきゃいけなかったので、集団ヒステリーだったんじゃないかと思う。
ただ透けてたし、目の前で棺に入ってるおばあちゃんが振り向くと猛ダッシュしてるしで、もう笑うしかなかった。
 ちなみに、おじいちゃんは私が生まれる前に60代で亡くなってる。
だから写真でしか顔を知らなかったんだけど、夜にトイレに行く途中に廊下でぶつかりそうになったおじさんが、そうだったようです。
普通にその辺歩いてたみたい。

“ 見知らぬ親戚がいるな・・・。”

ぐらいに思ってたけど、後で親に確認取ったら、

「 あ、それじいちゃんだわ。
今日泊まってる親戚で、つるっぱげはいないし。」

と言われました。











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日々の恐怖 1月23日 鏑矢

2016-01-23 19:33:58 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月23日 鏑矢



 俺の生まれ故郷は中国山地の近くの山村で、じいちゃんもばあちゃんもその村で生まれて知り合ったらしい。
それで、ばあちゃんの家系は神主で神社を持っている。
 毎年秋には、その神社は昔からの言い伝えにならって、ある祭りを行う。
去年の秋もその祭りをやった。
 その内容は、武者姿をした若者が、神社の境内から鬼門の方向にある木のてっぺんに向かって弓を射ると言ったことで、去年はその弓矢を射る役目は俺がやった。
 その矢の鏃は鏑で、ブ~~~ンって音が出る。
そして、その矢を拾った人は一年を無病息災で過ごせるって言い伝えがある。
 それで、去年の祭りのときだった。
鎧着て、烏帽子を被り、境内の真ん中で鬼門に向かって弓を射た。
ブ~~ンって感じの音がして、鬼門の方向にある巨木の上を超え、境内の外にまで飛んで行った。
 みんなが矢を拾おうと走って行くも、戻ってきた人が言うには、誰も拾った人はいなかったと言うことだった。
 それで、なかには、

“ 巨木の上を超えた辺りで消えてなくなった。”

って言う人も出てきた。
子供の頃から祭りには行ってるけど、弓矢が消えたのは初めてだったから、俺も驚いた。
 なんともよくわからなかったが、着替えのため社務所に行くと、その神社の神主をしている叔父が出てきて言った。

「 木の上を矢が通ったとき、見えない何かに当たってドガって音を立てて消えたんだ。
きっと良くないものがいたんだろうな。」

それで、とりあえず祭りは無事に終わって、夜の打ち上げのとき総代の人から、

「 来年も弓取りよろしく!」

って言われた。
 ちなみに、俺は地元の祭りで神楽やったり笛を吹いたりしてるから、神様に好かれてるのかもなって年寄り連中には言われる。
なんか、これからは毎年弓取りを任せられそうになってしまった。











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日々の恐怖 1月22日 顔の無い人

2016-01-22 19:24:11 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月22日 顔の無い人



 Kさんが以前勤めていた会社で、年配の女性社員の方から聞いたと言う話です。
その人が若い頃のことなので、数十年も前の話です。
 Kさんは休暇で友人と旅行に行ったときに、ある登山グループの一行と出合ったそうです。
一行は7人の若い大学生のグループで、そのうち女の子が1人だけいたそうです。
 登山グループと女性社員のグループは電車の席が隣り合わせになったので、しばらく楽しく談笑したり、お菓子を上げたりして過ごし、降りるときには、

「 じゃあ気をつけて行って来てくださいね。」

と、明るく手を振って別れたようです。
 それから1週間ほど過ぎたとき、テレビで大学生の登山グループが山に入ったまま予定日を過ぎても帰って来ない、連絡も取れなくて、遭難した模様だというニュースが流れました。
女性はニュースを見て、すぐに、

“ あの子達だ!”

と思いました。
グループの構成人数も、日にちも、向かった山も全部一緒です。

“ 電車で一緒になったあの子達が遭難したなんて・・・。”

と信じられない気持ちでした。
 どうか無事に帰ってきて欲しいと願ったようですが、残念ながら2,3名がかろうじて救助されましたが、他の方たちは全員山で亡くなりました。

「 それが妙なのよね・・・。」

とその女性が言うのが、どうしても亡くなった人たちの顔が思い出せないのです。
 電車では1時間半ほど隣り合わせて座って、見知らぬもの同士だけど、ずっと楽しく会話していたのに、まったく顔が思い出せない。
 7人グループで女の子が1人、そのうち大人しそうな子が1人いて、その人が女の子のリュックを網棚に上げてあげてたら、他の子たちからヒューヒュー言われて真っ赤になってたとか、些細な事もみんな覚えているのに、なのに顔がどうしても思い出せない。
女の子も、その子も亡くなったそうなのですが、髪が長かったか短かったかさえ思い出せない。
 それが自分だけじゃなくて、一緒に旅行に行った友達も同様で、まるで顔が無いように、どうしても亡くなった人たちの顔が思い出せなかったのです。
 年配の女性社員はKさんに、

「 たいして日にちも経ってないし、1時間半も隣り合わせていたんだから、1人くらい顔を覚えていても良さそうなもんなのに、誰の顔も覚えてないのよ。
友達とも、

“ どうしてだろう・・、不思議だね。”

と言ってたんだけど、あんなこと初めてだった。」

と、話してくれたと言うことです。











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日々の恐怖 1月21日 外飼い猫♂

2016-01-21 18:39:40 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月21日 外飼い猫♂



 夫の単身赴任で自分が一人暮らしだった頃、近所のとある外飼い猫♂に異様になつかれた。
高価そうな首輪をした子猫だったが、エサもやらない我が家に、夜毎に来ては爆睡していった。
 そんなある冬、泊まりがけの出張中に予想外の大雪が降った。
猫が心配で心配で、大急ぎで家を目指した。
 家に着いたのは薄暮れ時、ドアノブは氷のように冷たい。
向こうに待つのは、一人きりの暗い部屋だった。

“ 猫は・・・?”

と見回したら、早くも、

「 にゃ。」

と後ろで待っていた。
 地面の雪に、一直線の足跡があった。
撫でようと伸ばす手を待ちきれないかのように、猫は目一杯伸び上がって手のひらに頭をゴッチンスリスリした。
 不意に幼児の姿が浮かんだ。

「 おかーさん帰ってきた!」

と、つないだ温かい手を嬉しくてブンブンする幼児。

“ 子供、いいかもなぁ・・・。”

何かがフッと灯ったように感じた。
 選択子無し夫婦だったのだが、夫に、

「 子供をもってみないか?」

と相談してみた。
そこから亀裂は始まった。
 夫は、

「 契約違反だ、そんな人間は信用できない。」

と言った。
休まず働き続けて家に収入を入れる条件だったと。
 私は、件の猫を連れて家を出ることになった。
猫も成猫となって、飼い主の引越しに置き去りにされたのだ。
 一人と一匹の暮らしはうっすら温かで、この大柄な猫はとても賢く優しく、決して私に怪我をさせなかった。
しかし外飼い時代に猫白血病と猫エイズに感染しており、そう長くは生きなかった。
 猫を送った頃には、私もさらに年齢を重ねていた。

“ ああ、また一人だ。
これからも、多分・・・。”

そう思った。
薄暮れの道を、一人で歩いていくのだ、と。
 その頃、動物好きな今の夫と出会った。
望外の妊娠。
 夫は、

「 おお、生き物が増える!」

と素朴に喜んだ。
無事に息子が生まれ、夫がつけた名前は、さきの猫の名とよく似ていた。
 夫は猫の名前までは知らず、

「 画数で・・・。」

と言った。
 タクマはもう幼稚園児になった。
お迎えにいくと、

「 おかァ~さん。」

と大きな体で腕にぶらさがってくる。
 先生によると、タクマはお友達にも決して乱暴せず、誰かが泣いているとそっとついててあげるそうだ。
タクマがタマの生まれ変わりというのは無理があるし、そうすると不思議な話でも何でもないのだが、薄暮れの道に、

「 にゃ。」

と現れた温いものが人生を変えた、そんな話。











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日々の恐怖 1月20日 月明かり

2016-01-20 21:12:18 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月20日 月明かり



 妹が結婚して新婚旅行へ旅立った後に、妹の新居の中庭で呻いている女が救助された事件がありました。
その女は妹の亭主の同僚でした。
 妹の旦那を好きだったとか、付き合っていたと言うわけではなく、ただの独身女の妬みで、窓ガラスでも割ってやろうとしての侵入でした。
 しかし、マンション1Fのベランダに侵入したら、月明かりに照らされた畳の上に、振り袖の日本人形がポツンと立っており、恐怖のあまりベランダの柵乗り越えに失敗して転落したそうです。
 今も、その日本人形は実在しています。
両親が私と妹が産まれたときに、それぞれに日本人形を買ってくれました。
妹はそれを新居に連れて行き、まだ家具などが揃っていなかったので畳の上に置いていました。
 ただ一つ不思議なのは、妹夫婦は用心のため、カーテンも雨戸も閉めておりました。
そのため月明かりに照らされた日本人形を、侵入に失敗した女が見られるはずがありません。
 そもそも、人形が月明かりに照らされるはずもありません。
なんとなくその疑問に関しては、妹夫婦も他の家族も触れないようにしています。










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しづめばこ 1月19日 P417

2016-01-19 21:41:19 | C,しづめばこ


しづめばこ 1月19日 P417  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 1月18日 祠の横

2016-01-18 19:28:57 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月18日 祠の横



 夜の11時に仕事が終わって車で帰ってる途中のことなんやけど、家の少し手前の直線道路にさしかかったとき、いっつも点いてる街灯が全部なぜか消えてたんですよ。
そこでまず気味が悪くなって、ライトをハイビームにしたんです。
そしたら、道路の左側になんかあるんです。
 もともとそこには中くらいの祠みたいなものが建ってて、毎日そこを通ってるから見慣れてるんですが、その日はその祠の横になんかあったんです。
 で、だんだん近づくにつれて、それがどうやら人だってことがわかったんですね。
それで、なんかうちはホッとしたんですよ、

“ なんだぁ~、人か・・・。”

みたいに。
 でも、いよいよその人がはっきり見える位置に来て、正直背筋がゾゾゾってしました。
ピクリとも動かんのです。
道路に背中を向けた状態で、両腕が脱臼したみたいにブラーンと下に垂れてて、頭もガクッと垂れて前のめりで。
 顔がまったく見えんのです。
髪が長くて頭を垂れてるから髪が顔全体を隠してしまって。
 通り過ぎた後、3回ミラーで確認して、4回目見ようとすると街灯が全部点いたんですよ。
で、ミラー見たらそこには何にも無かったです。
 もっと詳しく言うと、その格好も異様な感じだったんよ。
夏だったのに、

“ いまどき着ないだろ!”

みたいなトレーナーにロングスカート。
 なのに素足にスニーカー。
全体的に汚れてるの。
 しばらくは思い出して夜寝れなかったが、

“ こっち振り向かれなくて良かった~。”

と思っています。


 いや、どんなときに現れるなんて分かりませんし、知りたくないです。
そんなの調べて、こっちが興味を持ってるってアレに知られて、憑いて来たらどうするんですか、家近いんですから・・・。
あれから後、そこは夜には通らないで、遠回りすることにしてます。









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日々の恐怖 1月17日 空席

2016-01-17 18:46:48 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月17日 空席



 数年前に気付いて以降、ずっと気になっていることがある。
頻度は数カ月に一度ほどだ。
それは、乗客の誰も関心を示さない空席がたまにあるということ。
 他の座席はすべて埋まっていて、車両の中でそこ1席のみ空いている。
立っている人は相当いるが、誰も座ろうとはしない。
 その席の間隔は充分にある。
狭すぎるわけではない。
シートが汚れているわけでもない。
毎回確認したわけではないが、近くに臭う人がいるわけでもなさそうだ。
 不思議に思うが、1人で電車に乗り、車両内の誰もが押し黙ってスマホいじり等する中、

「 ねぇ、どうしてあそこ座らないんですかね?」

と隣で立つ人には聞けない。
 一番不思議なのは、自分自身が“そこに座ろうと考えていなかった”ということに、ついこの前まで気づいていなかったこと。
普段は優先席でも空いてれば座るのに。
小さな不思議でひっかかっていた。
 この週末、友人たちに話してみたら、ひとりだけ同じようにその空席を訝しんでいるヤツがいた。
自分自身が座らないのはなぜかと尋ねたら、

「 そういえば、なんでだろう・・・?」

どうだろうか、経験ないかな?










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