大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 11月30日 足音

2013-11-30 18:10:40 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 11月30日 足音




 大学4年の春休みに、当時の彼女(現在は嫁)が車を購入。
そこで俺、彼女のN、そして一つ下の後輩Yの3人で泊まりの旅行を計画。
桜のシーズンだったので、それに見合った候補地をいくつか挙げていった所、Nの田舎が桜の名所と言うことが判明。
そこで物は試しとNがその田舎に住む祖父母に連絡を取ったところ、コレがあっさり宿泊OK。

 俺とN、Yの3人は親同士がすでに昔からの友人同士。
なのでつきあいも長く、3人での旅行は初めてではない。
最終的には、俺たち3人に加えNの妹、中学生のAちゃんを加えて4人で行くことに。


 当日はNの車だが終始運転は俺と後輩Y。

俺「 な~、Nのお爺さんの家ってやっぱデカイん?」
N「 や~、普通やないかな~?古いけどええ感じの所よ~。」

と 前の座席で俺とNがだらだらしゃべり、後部座席では190近い巨漢のYに小柄なAちゃんが小猿のごとくギャーギャーと絡んでいる。

 所々で休憩を挟みつつ、5時間ほど車を走らせ、ようやくNの祖父母の家に到着。
辿り付いたNの祖父母の家は、中々に大きな日本家屋。
白壁の頑丈そうなつくりで、予想よりもかなり立派な家だった。

 穏やかな物腰で出迎えてくれたNの祖父母に挨拶と感謝の意を伝え、早速自分たちが泊まる座敷部屋に通された。
家の中も予想とおり広く、良い意味で年季の入った本当に素晴らしいと家だと思った。

 が、明らかに無視できない所が一つあった。
それというのが一階の縁側にそった、長い廊下。
そこには人形や剣玉、おはじき等、今では中々お目にかかれない、懐かしいおもちゃが廊下に沿ってずらっと並べて置いてあった。
 出しっ放しというわけではなく、明らかに意図的に並べて置いてある。

Y「 ・・・ズラッと並んでますね。」
俺「 ・・・N、あれなんぞ?」 
N「 あ~、・・・お供え?」

何故か疑問系で返された。
 見ると廊下の突き当たり右手は仏間。
亡くなった人の中に小さな子供でもいたのかと思ったが、あまり立ち入ったことを聞くのは失礼だろうと、深く詮索はしなかった。

 夕飯をいただいた後は、4人とも俺とYが寝る2階の座敷部屋に集まりのんびりしていた。
俺はNと一緒にTVで映画鑑賞。
YはAちゃんに捕まり、マリオカーを延々としてた。

 異変が起きたのは、夜も更けた頃だった。
閉めた襖を挟んだ長い廊下から、トタタタタと誰かが走る音が聞こえた。

「 んえ・・・・?」

とおもわず俺は変な声をあげた。
 この家にいるのは俺たちとNの祖父母を含めて6人。
俺たち4人は部屋の中に全員いるし、時刻は午前12時過ぎ。
Nの祖父母はすでに一階で就寝済み。
 足音は軽めで、少なくとも大人のものではないと思った。
この家に猫等のペットはいないし、何よりその走る足音は間違いなく人のそれだった。
これが俺だけが聞いたのなら、無理にでも空耳だと無視することも出来た。
が、足音がした瞬間、全員の視線が襖に集中したので、間違いなく4人とも足音を聞いている。

Aちゃん「 いま廊下走ってたの・・・誰?」
俺「 さあ・・・?」
Y「 ネズミとかじゃないっすね。足音的に。」
Aちゃん 「 ・・・うえ、初めて聞いた。姉ちゃん何、もしかしてアレ?」

とAちゃんは怖がりながらも、何か知っているのか今の足音についてNに聞いている。
しかし聞かれたNは襖を見るも、すぐに映画の方に目線を戻し、

「 ま~、古い家だから気にせんでよ。」

と、アハハと笑って特に慌てた様子もない。
しかも怖がるどころか、微妙に喜んでいるように見えた。

“ ・・・いや、古い家だから何よ・・?”

と、俺がそのあたり詳しく聞こうとすると同時、Yがのっそり立ち上がり、

「 見てきましょうか?」

と聞いてきた。
空き巣の可能性もあると思ったのだろうか、この武闘派のガチムチはこういうとき非常に頼りになる。
これ幸いと、

「 よっし、連れション行こか!」

と俺が怖くてトイレに行けなくなる前にYをつれ、小便を済ますことにした。
 この家はトイレが3つ(男用1、男女両用2)あるのだが全て1階にある。
俺等が寝泊まりするのは2階なので当然階段を下り、長い廊下を歩いていかなければならない。

俺「 ええか?Y、何ぞ幽霊とか出てきたら張り倒してな?」
Y「 いや、人ならともかく幽霊は・・・。すり抜けません?」
俺「 いやいや、気合いよ気合。」

などと気を紛らわす為にYと馬鹿話をしながら、気合いを入れてトイレに向かう。
 が、特に変なことも起きず。
そのまま二人で小便を済ませ、多少肩すかしに思いながらも、すっきりして帰ってきた。

 そして俺達が部屋に戻ると、そこにはAちゃんが姉であるNに、一緒にトイレへ行ってくれ、と必死に懇願している光景が。
しかし、映画が佳境に入っていたのか、えーあー言うだけでNの腰が中々上がらない。
 一向に立つ気配のない姉に、背に腹は変えられないと判断したのか、

「 ・・・Yちゃん、ちょお、一緒にお願い。」

とAちゃんに依頼され、おう、と再びYが同行。

 しばらく時間が経った後、いつも通りなYがのっそりと、そしてそのYにピッタリと張り付きながら、何故か先程よりも怖がっているAちゃんが帰ってきた。

「 いや、どした?」

と話を聞くと、なんでもAちゃんがトイレを済ませ、階段を上がる途中で今度は一階から走る足音が聞こえたらしい。

「 え、マジ?」

と俺がYに聞くと、

「 あ、はい。トトトって音だけでした。姿は見えんかったです。」

と、真面目な顔で報告。
こういうことで、Yは悪ノリしないので信憑性はかなり高い。

 が、その話を聞いてもNは、

「 二回目か~、今日はええね~。」

と、これまた暢気に笑っている。
しかも、コレはもう間違いなく喜んでいる。
茶柱が立った、とかそういったときの喜び方だ。
 人様の家にケチつけるのもはばかられたので聞かずにいたが、さすがに説明が欲しかった。

「 いい加減に教えれや!」

と詰め寄った所、そこでようやくNから説明がされることに。

 それによるとNが子供のころから、この家ではこういう事(誰かの気配とか足音とか)は割と良くある事らしい。
一年に数回の頻度で起こるらしいが、このことは身内全員が知っており、(Aちゃんも話は知っていたがあまり祖父母の家には来たことがないらしい)、今ではもう慣れてしまったのこと。
 このように足音等は時々聞こえるが、しかし実害は全く『0』とのこと。
というか、信じがたいことだが、この足音が聞こえると、近いうちに身内の誰かに降って湧いたような「良いこと」が起こるらしい。
 例えば捜し物が見つかるとか、疎遠だった友人に再会するとか、思わぬ朗報が届いたとか、 そういった類の予期せぬ幸運良縁が高確率で転がり込んで来るんだとか。
それがこの足音のおかげかどうかは定かではないが、実際、この家に住んでいた家族一同は皆健康で、目立った悪い話を今まで聞いたことがないそうだ。
そして、この足音の正体だが、家族の中でもほとんどその正体を見たことが無いんだとか。
 ただ唯一の目撃者がこの家に住むNの祖父。
30年以上前に、見知らぬ小さな女の子がこの家の中を歩いているのを見かけた事があるそうだ。
その女の子を見た所というのが、まさしく俺達が気になった、例のおもちゃが大量に並べてあった廊下。
 その女の子は、廊下の突き当たりまで歩いて行くと、そのまま右手にある仏間に入り、祖父が慌てて後を追ったが、女の子が入ったはずの仏間には誰もいなかったんだとか。
 その唯一の目撃情報と、足音の後に高確率で起こる「幸運」からか、この家ではこの足音を、半ば座敷童のようなものとして丁重に扱っているそうな。
一階の廊下にズラッと置いてあったおもちゃの類は、まさしくその感謝と持て成しの証だった。


 翌日、昨夜の足音をNの祖父母に報告したところ

「 そりゃあよかったなあ~。」

と、2人ともとても喜んでくれ、素晴らしいエビス顔を見せてくれた。

 その後2泊ほどしたが、結局足音が聞こえたのはその初日だけ。
その後は特に何もなく無事帰宅した。
 足音が幸運のサインというのは未だに半信半疑だが、実際に自分自身がそれを聞いて体験した事なので、強く否定が出来ない。
また、その後も自分自身に目立ったトラブルも無く、健康そのものなので、今でもこの家には長期休暇の度に好意でお泊まりさせてもらってる。
身内の中では、もはや恒例行事みたいな扱いでです。














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日々の恐怖 11月29日 ドイツ

2013-11-29 18:55:19 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 11月29日 ドイツ



 10年くらい前、ドイツ・オーストリア国境あたりを旅していた。
あるホテルに泊まったときに、夜、外がうるさかった。
窓から見るとナチスドイツの旗と、軍隊の行進。

“ やばいコスプレ集団?映画の撮影?”

なんて思ったんだけど、なんか様子が変。
 そのうち一人と目が合ってしまった。
白人だから青白いのか、別に理由があるのか、やたら生気のない顔だった。

“ これはやばい!”

と思ったが、咄嗟にナチスの敬礼(ハイルヒトラー!ってあれ)をして、

「 深夜にご苦労様です!」

と言ったら無視してくれた。
端から見たら、あまりにも間抜けだったであろうと思う。
 気付いたら朝だったので、

「 な~んだ、夢か・・・・。」

と思ってその時は終了した。



 日本に帰国後、自称霊感のある友達に会うなり言われた。

「 なんか軍人の霊みたいなのがいるけど、お祓いした方が・・・。」

“ 目が合うとついてくるってどこの野良猫だよ!”

と憤慨するも、別に困ったことはない。
そのまま放置中で10年たつけど大丈夫みたい。
 友達は、

「 まだいる・・・・。」

って言うのだが、もしかして迂闊についてきて帰れなくなってるのではないかなと、たまに心配になる。
でも、自分にはさっぱり見えないし感じないので、このまま放置する所存。












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日々の恐怖 11月28日 雨

2013-11-28 17:52:06 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 11月28日 雨



 その日は雨だった。
俺はスーパーに勤めてるんだけど、雨だと客の入りは半減。
加えて、今日は特売日でもないので暇な一日になるんだろうな~、等と考えながら出勤。
 案の定、開店後数時間が過ぎても客足はまばら。
その日に届いた商品を出し終えると、完全に手持ち無沙汰になってしまった。
 しょうがないので、明後日からの特売の準備をする事に。
倉庫から大量の商品を引っ張り出し、正面入口前に黙々と積み上げていく。

“ ガー、ざっざっざ・・・。”

自動ドアが開き、客が入ってくる。
入口に背を向けたままではあるが、客が来れば声を出す。
商品を積む。
自動ドア。

「 いらっしゃいませ。」

このサイクルがしばらく続いた。
強い陽射しのせいか、うなじのあたりがチリチリする。

「 おい、どうした?」

怪訝な顔をした店長がやってきた。

「 いえ、あんまり暇なんで明後日の・・・・・。」

そこで、はたと気付いた。
店内に客はほとんどいない。
客が入ってくる気配はあったが出ていく気配はなかった。
 振り向けば外は雨。
陽射しなどあろうはずがない。
いったい何が来店したんだろう。














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日々の恐怖 11月27日 赤い風船

2013-11-27 18:11:17 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 11月27日 赤い風船




 某有名家電メーカーのS課長の体験です。
十年程前の社員旅行で宿泊先の出来事です。
S課長は、当時は課長じゃなかったそうです。
 宴会後、課長の他、Aさん、Bさん、Cさんの4人は二次会にも出ないで三階の自分達の部屋で雀卓を囲んでいました。

“ ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ・・・。”

課長 「 おい、今の、何の音だ??」
Aさん「 あぁ、水の音がしたな。」
Bさん、Cさん「 いや、何も聞こえなかったぞ。」

“ ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ・・・。”

課長、Aさん「 ほら、今、水の音!、中庭から。」

 課長とAさんが立ち上がり窓を開けると、中庭の池が淡い照明に浮かび上がっています。
そして、3~4才の女の子が赤い風船を持って走って来たかと思うと、何かにつまづいて転び池に落ちたのです。

“ ドボン!!
バチャ、バチャ、バチャ、バチャ・・・。”

周りに大人のいる様子は無く女の子はそのまま池の中に沈んで行き、赤い風船は空に向かって漂っていきます。

課長「 大変だ! 助けに行かないと。」

そう叫んだ次の瞬間、池に落ちたはずの女の子が、また赤い風船を持って走って来たのです。
そして、またドボン。
 呆気にとられて見ているとその女の子は何度も何度も繰り返し、風船を持って走ってきては池に落ちるのです。

課長 「 おい、A、見えてるか、アレ・・。」

Aさん「 おう、赤い風船が飛んで来たかと思うと、水の音がして・・・。」

課長 「 女の子は??」

Aさん「 いや、お前、女の子が見えるのか?」

そこに、Bさん、Cさんもやって来て、

Bさん、Cさん「 何が見えるって???」

課長 「 赤い風船を持った女の子が池に落ちて・・・。」

Aさん「 赤い風船が飛んできて、大きな水音が・・。」

Bさん「 えっ?、風船は飛んでるけど、水の音なんかしないぞ。」

Cさん「 どこに風船が飛んでるんだ? 池しか見えないし、音もしないぞ。」

課長、Aさん、Bさん「 C!、お前、何にも見えないのか??」

Cさん「 ・・・・・。」

 翌朝、ホテルを発つ前、四人が中庭に出てみると、そこには花壇があるだけで、池などは何処にも無かったそうです。















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日々の恐怖 11月26日 腕

2013-11-26 17:59:47 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 11月26日 腕




 以前、夜中にサイクリングに出ました。
夜中と言っても出発は10時頃です。
 適当に走ったら坂の多い住宅地に出ました。
筋肉がないので上りはノロノロしか進みません。
坂の上から道を照らす街灯の電球は切れかけで、いかにもだなぁ~という風情でした。
 なんとなく

“ 今お化けに逢ったら、逃げられないな・・・。”

と思いました。
早歩きより遅いかもしれない速度でしたからです。
 一度それを思ってしまうと怖くて、さっさと行こうと諦めて自転車から降りました。
ちょうどそのとき、スッと横をジャージのランナーが走り抜けていきました。
恥ずかしいのですが、ホントにそのとき腰がぬけるかと思いました。
それで、急いで自転車にまたがり、今来た坂をブレーキ無しで逃げました。
 ランナーの背中からは、はっきり腕が生えていました。
何かをつかもうとするように広げられた手のひらを、もう一度でも見たくありませんでした。
そいつがお化けなのか、腕だけがお化けなのか、偽物なのか、あまりにはっきりしていたのでわかりません。















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日々の恐怖 11月25日 遺影

2013-11-25 18:30:06 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 11月25日 遺影




 かなり昔の話ですが体験談を書きます。
私は夏休みのバイトで、旅館で住み込みで働いていました。
 仕事が面白く感じる頃に、その客はやって来たんです。
人数は4人、皆さんの顔からは重苦しい感じが伝わってきました。
そしてそのうちの一人は遺影を持っていたんです。
笑顔で撮られてる女性です。
正直怖かったです。
遺影を見ないようにし、客を部屋へ案内しました。
その後、部屋は妙に静かで会話も通路からは聞こえてきませんでした。
 次の日、お客様が帰った後に布団をたたみに行きました。
そしてそこでゾッとしました。
遺影が置いてあるんです。
こっち見てるんです。
触るのも怖くてその場で固まってしまいました。
すると、後ろから誰かが歩いてきて部屋に入ってきました。

私「 おお~、取りに来たんだ、てか忘れんなよ!!」

なんて心の中で愚痴を零しましが、本当の恐怖は目の前にありました。
遺影を取りにきた方が遺影に写ってる方なんです。
 一瞬でパニックになり声も出ませんでした。
普通にダッシュで逃げましたよ。
 下のロビーに戻りこのことを伝えると二階には誰も上がってないとのことでした。
3人くらいで恐る恐る例の部屋に行き確認すると、そこには遺影がありました。
それを見て、俺も含め皆無言になりました。
 結局、宿帳の住所には連絡が付きませんでした。
その後、それは誰も取りに来る者も無く、仕方無く寺に供養してもらいに持って行きました。

















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日々の恐怖 11月24日 誘い

2013-11-24 18:34:02 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 11月24日 誘い



 サークル仲間に無理やり参加させられた合コンは、予想通り人数合わせの様で、仲間の二人は合コンというより初めからカップルで参加していて、相手の男が連れて来たのもさえない人数合わせの様で、全くK子さんの趣味に合わなかった。
 カラオケでも行こう、という二人の誘いを断ったK子さんは居酒屋を出て、駅へ向かおうとしていると、

「 二次会は行かないの?」

と声を掛けられた。
同席していたSだった。
 同じ大学の先輩だと名乗ったSはかなりの美人で、男たちの注目を集めていたのを思い出した。
Sの誘いでもう少し飲んでいこうという事になり、駅前の居酒屋に入った。

「 K子さん、T県出身なんだって?」

合コンの失敗をネタに盛り上がっているとSが言った。

「 さっき自己紹介で言ってたでしょ。夏休みはT県に帰るの?」

 二日後からは夏休みだった。
どうしようか未だ決めていない、旅費が結構掛かるから、とK子さんが答えると、SはT県のハイキングコースのゴミ拾いのボランティアが有るので参加しないか?と言った。
 Sが所属しているアウトドア愛好会グループはバーベキューキャンプを予定しており、T県のそのハイキングコースにあるキャンプ場のオーナーと契約して、ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアを行う代わりにキャンプ場を無料で使用させて貰える。
しかも、バーベキューの食材も提供してもらえるとの事だった。

「 どう?ボランティアだからバイト代は出ないけど、行きは私の車で一緒に行けば旅費も掛からないしね。
ただ、私達はその後の予定があるから、帰りはK子さん、自分で何とかしてもらわなければならないけど。」

 実家には2年くらい戻っていない。
かなり旅費が掛かるので今年も行かない予定だった。
確かに片道分の旅費で済むし、野外でバーべキューというのも楽しそうだ。

「 じゃあ、行こうかな。」

K子さんが答えると、Sは言った。

「 そう。
じゃ、明後日の朝7時に学校の前で待ち合せしましょう。」

K子さんは携帯番号を教えてもらい、Sと別れた。
 翌日、部屋の掃除と洗濯を済ませて、明日の準備をしていると携帯に電話が掛かって来た。
実家からだった。
 久しぶりの帰省に喜ぶ母親に、明日は近くのキャンプ場で友達と泊まってから、翌日に家に向かう事を告げるとキャンプ場なんて有ったかしら?と言う。
ハイキングコースのゴミ拾いのボランティアの事を説明して、その近くだと言うと、ハイキングコースなんて無いだろうと言う。

「 お前、忘れたの?
あそこはセメント工場のハゲ山だったでしょう。」

そう言われたK子さんは、子供の頃に電車から見えた、木のない削り取られた灰色の山々をハッキリと思いだした。
 Sに電話して問い合わせるのもためらわれたK子さんはサークル仲間に電話して、Sの事を聞いてみた。

「 ああ、あの合コンのきれいなお姉さん?」

 サークル仲間によると、みんなSとはあの時が初対面で幹事役が聞いたところだと、都合が悪くなった女の子の代理で来たと言っていたという。
じゃ、その都合が悪くなった女の子は?と聞くと、友達の友達とかいう人で、良くは知らないし、携帯とかの番号も聞いていない。
 翌日の待ち合せにはK子さんは行かなかった。
Sから電話が有ったらどうしようか?と怖かったが、電話は掛かって来なかった。
友達と一緒にSの携帯に電話してみると、何度掛けても呼び出し音が鳴り続けるだけで、二日後には通話不能となった。
 調べてみると、Sの言っていたハイキングコースなど無く、キャンプ場も存在していない事がわかった。
学校に問い合わせると、Sという生徒は在籍していなかった。
都合が悪くなったという女の子も未だに見つかっていない。















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日々の恐怖 11月23日 猫

2013-11-23 19:22:42 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 11月23日 猫




 霊や妖怪、その類は誰にでも見れるものではないと言う。
かく言う自分も幼児期以降は一度も見た事はない。
それでも幻覚や脳の錯覚などのもの以外でも見えてしまう事があったり、不可解な体験をする事もある。


 自分の知り合いにミサさんという女性がいる。
彼女から聞いたお話しです。
 ミサさんがまだ小学生の頃の夏休み。
友達数人と公園で遊んでいた。
 その時にクラスメイトのよっちゃんが、その両親とどこかからの帰りだったみたいで自分たちに気付いた。
よっちゃんは、公園の近くに住んでいた。

よっちゃん「お母さん、アタシ歩いて帰るから、先帰ってて。」

遅くならないように言われ、両親は笑顔で手を振って車は公園を後にした。

 よっちゃんも交えて遊ぶ事になった。
彼女はデパートの帰りで、ちょうど風船を持っていた。
遊ぶのには邪魔になるので、近くのベンチに括り着けておいた。
 二時間くらい遊んで解散になった。
よっちゃんとミサさんは一番の仲良しだったので、二人は残ってベンチで他愛のない会話をしていた。
 話し始めてしばらくすると子猫の鳴き声がする。
二人はやはり女の子だけあって可愛いものには目が無い。
しかし、声のすると思われる方へ行っても猫はいない。
 諦めてベンチに座って話しを続けると、また鳴き声がする。
何度か繰り返しても見つからない。
二人は意地になってきた。
 公園には人はいなくて他の音はない。
雑音がないから二人して耳をすまして探すけど、小さな「ミャア」としか聞こえない。
 見つからないから帰ろうとしたその時、風船が揺れている。
風はほんの少しだけあるので不思議ではない。
 でも、複数ある風船のひとつだけが他の風船と逆に靡いている。
そして、そのオカシイ風船を見ると微かに振動しながら、

「 ニャア。」

と聞こえた。


 ミサさんは生まれた時からずっと霊感がある。
よっちゃんは寺の孫。
二人共に全く怖がる事なく認識していたようだ。

よっちゃん「 子猫の声だけだね。」
ミサさん「 見えないね、声だけだね。でもいるね。」

 ミサさんは、普段親から“ちょっと変わって子供”と判断されていたようで、霊感があるとは全く信じてくれなかった。
というより、こういった事言うのは恥ずかしいし、いじめられるからやめるよう常々言われていた。
よっちゃんだけは理解者だった。
 ミサさんは思いついた。
この風船の声を両親に見せれば、きっと理解して貰えるだろうと考えて親を呼ぶ事にした。

ミサさん「 よっちゃん、これお母さんに見せたいから、呼んでくる!」

ダッシュでミサさんは面倒臭そうにしている母を呼んで来た。(近所らしい)
風船が微かに振動しながら「ニャア」と鳴く。

“ やった!”

ミサさん「 どぉ?母さん!子猫おるでしょ?」
ミサ母「 あら、猫の声するねぇ、近くにいるの?
    これがあんたの言ってる霊っての?」
ミサさん「 うん、これで信じて貰えるでしょ?」
ミサ母「 もう、下らないイタズラしないで、さっさと宿題しなさい!
    明日学校でしょ!さあ帰るよ。」

ミサさんは、その後証明しようとしてムキになって泣きながら訴えたが信じて貰えない。
よっちゃんも同調して泣きながらミサ母に言うが無理だった。

ミサ母「 よっちゃんのお爺ちゃんはお坊さんでしょ?
    変な事言ってたらお爺ちゃん困るでしょ!」

二人して怒られて、全く話にならなかったようだ。
結局貴重なチャンスを逃してしまい、しばらく母をちょぴり恨んだとミサさんは語った。


 ミサ母に会う機会があった。
ミサさんが学生時代から世話になっていて、さらに今現在こういう関係の仕事をしているばあちゃんの所でだ。
その時に、このエピソードを聞いていたので当時の事を尋ねてみた。
すると、ミサ母が答える前にばあちゃんが言った。

ばあちゃん「 あんたも分かってないねぇ。
     このミサ母さんはね、ちゃんと見える人だよ。
     ミサを、こういう世界には絶対近付けたくないからそう言ったんだよ。」

ミサ母「 あの時は焦ったわ。
    これは認めさせられるし、これ以上興味を持たれるのは嫌だったし、
    必死でごまかしたのよ。」

ばあちゃん「 見たくてしょうがない人とかもいるのにね。
    実際見える事ではマイナスの方が遥かに多いからねぇ。」

その後もこんな話しが続いた。
 よっちゃんの寺の檀家でもあるミサ母は何度かよっちゃん寺に相談してた事、なんとか見えなくして貰おうとした事、最近になってこの話の内幕を話した事、あとは世間話をしていた。
 帰り際に、ミサ母は言った。

「 これからも娘の事をよろしくお願いします。」

ミサ母が行ってしまった後、ばあちゃんが言った。

「 ミサはね、天才なの、こういう分野では。
だから見えなくするってのは出来なかったらしいの。
かわいそうに、これも運命だからね。」

 かわいそうというばあちゃんの言葉が耳に残っている。
猫は、よっちゃんの爺さん住職がミサ母に言われて、すぐにお経を読んで貰ってお祓いみたいな事をして声はなくなったようだ。













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日々の恐怖 11月22日 招待状

2013-11-22 17:47:28 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 11月22日 招待状




 学生の時のバイト先が弁当屋だったんだけど、その弁当屋の2階は休憩室と資材とか置いてたんだ。
けど、誰も2階で休憩しない。
デカイ窓あるのに、昼間でも薄暗くてしめっぽい感じで、資材取り行く時も絶対みんな一人で行きたがらない。
 俺のだいぶ後に入った美大生の自称霊感持ちのかわいいけど、ちょっと変な女だけよく2階でタバコ吸ってた。
だから重くない資材とかはその女に頼むようになって、かわりに休憩時間外の一服黙認みたいな感じにしてた。

 店の資材在庫チェックのときも、当然その女面子にいれて、あと社員さんA、B二人とシフトだった俺とバイトのチーフの先輩五人でやる事になった。
社員さんBと先輩が電車の事故で遅れて三人で始めた。
 俺がチェック表とか下でコピーしてたら、上から悲鳴が聞こえたので、あわてて階段をのぼってったら突然頭がびしょびしょに濡れた。
触ったら全然痛くないのに大量の血が出てた。
驚いたけど、女がぎゃあぎゃあいってるが聞こえるので、とりあえず2階に上がったら、女は壁の方向いて分けのわからない事を叫んでいて、社員さんAは座りこんで漏らしてた。
 女の指差してる方を見たら、これまで壁だと思ってたとこが引戸だった。
中は畳横に二枚並べたくらいの部屋で、小さな虫の死骸が2cmくらい積もっていた。
1カ所の角だけ三十センチくらい丸く、なにもない。
壁はパッと見、普通の和室っぽい壁に見えたけど、土に長い黒い髪の毛みたいなのを混ぜて塗り込めてあった。
引戸の裏もおなじ感じになっていた。
 訳わかんなくてぼーっとしてたら、遅れてた先輩が来て、血まみれだった俺は即救急車呼ばれて病院連れていかれた。
病院ついたら、もう一人の社員さんBがそっちに来ていて、有給と見舞金出すから棚から物が落ちて怪我した事にしろと言われた。
 正直金が欲しかったのと、怖くて、もうバイト先に行きたくなかったので言う通りにした。
傷は、そんなに深くなかったから縫うだけで済んだ。

 バイトは2週間くらい休んでいい事になっていたけど、どうしても気になったから10日目くらいにのぞきに行った。
そしたら、先輩は居たけど社員さんAは体調崩して長期休養、女の方は学校も辞めて実家に帰るからって親と挨拶に来たっていっていた。
女は店に一歩も入って来なくて全然しゃべらなくて、薬が効いてぼーっとしているみたいな感じだったらしい。
 先輩が社員さんBを問いつめて聞いた話を聞かせてくれたんだけど、店はもともと普通の古い民家だったのを、人が居着かなくて困った所有者から格安で借りていた場所らしい。
社員さんBも詳しい事は知らなかったけど、『絶対いつか何か起こると思っていた』と言っていたらしい。
 引戸見つけて開けたのは女の方で、中から頭がぐるぐる回る人形?が出てきたと繰り返していたらしい。
社員さんAは何も話さなかったけど、ショックを受けた状態になっていて、内臓が弱っているのでまだ入院していて、家族の希望で多分近々退社するという事だった。
 2階を見せてもらったら、その部屋は綺麗に掃除されて引戸も外されて、壁も塗り直されていた。
けど、2階の雰囲気は全く変わってなかった。
ものすごく嫌な気分になって、その日でバイトを辞めた。
大学のある駅近くの店だったが、その日から卒業まで一度もそこを通らなかった。

 しばらくして仕事でその駅に降りたとき、なんか思い出して店を見に行った。
そしたら弁当屋は無くなって、今風のカフェになっていて、驚いた事に先輩が店長をしていた。
 弁当屋は俺が辞めたすぐ後ボヤを出して潰れて、同じ系列チェーンのカフェになった。
社員さんBが最初そこの店長をしていて、違う会社に転職する事になった時に、先輩が店の権利を買い取ったということだった。
 どうしても気になっていた2階の事を聞くと、先輩はちょっと困ったような嫌そうな顔をして、やっぱり嫌な雰囲気があるので改装とお祓いをして倉庫にした、といってから“これ多分あの子が見たって言っていたやつだよね”と言いながら、俺にハガキを見せてくれた。
 あの女からの絵画展の招待状だった。
宛先が昔の弁当屋の名前になっていて、表側に、頭が変な風に横に潰れたでかくてのっぺらぼうで口だけが裂けて、手足が異様に細い白いぬいぐるみが踊っているみたいな絵が書いてあった。
 ハガキは二年くらい前に来たもので、場所が遠いので行けないし、と思いながらも、記載してあった画廊に問い合わせたところ、そんな展示の予定は無いと言われたそうだ。
“なんか捨てるに捨てられなくてさあ”、と言いながら、先輩はそれを引き出しに仕舞い込んだ。

 その後、先輩とはしばらく連絡し合ったりしていたけど、今年の春、店が老朽化で立て替えになるので、この機会に両親の面倒を見るためいなかに帰る、という電話が来た。
 それから後は、何度か連絡しようとしたけど携帯変えたらしくて通じない。
暑中見舞い出したけど、宛先不明で戻ってきた。
結局、なんだったのかわからないままだけど、俺はもうあそこには絶対行かない。















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日々の恐怖 11月21日 一人暮らし

2013-11-21 19:31:57 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 11月21日 一人暮らし





  新入社員のNさんは、就職と同時にアパートを借りて念願の一人暮らしを始めた。
チョッと古めのアパートだが、風呂とトイレは別になっており6畳くらいの部屋だし、駅から少し遠い事を除けばまあまあの物件だった。


 一人暮らしを始めて一か月ほど経った日だった。
日曜の昼ごろ、ドアをコンコンと叩く音がする。

“ なんだろ?”

Nさんは、ドアを開けると郵便局の配達員が立っていた。

「 いらっしゃったんですか?すいません、インターホン鳴らしたんですけど・・。」

 全くインターホンなど鳴らなかったので、電池切れかな、と思って電池を入れ替えてみた。
試しに玄関からインターホンを押してみた。
部屋の中ではチャイムは鳴らない。

“ くそ、壊れてやがる。”

Nさんは管理会社へ連絡しようと思ったが、ついつい忘れてしまってそのままになっていた。


 インターホンが鳴らないという事の不便さを思い知ったのに時間は掛からなかった。
管理会社へ連絡すると、有料での修理になると言われたのでムカついて放っておいたのだ。
 又、日曜日にドアがノックされるので、開けてみると新聞の勧誘だった。
かなりしつこい男で、追い出すのに相当疲れた。
 インターホンなら相手と対面せずに、追い払う事が出来る。
しかし郵便とかピザの出前とかと、不要な相手とを区別するにはインターホンが使えない以上、覗き窓で見るしかない。
 ただし玄関のこちら側に居て、覗き窓から見ている事に気付かれるのは嫌なので、自然とNさんは忍び足で玄関へ向かう様になった。
そして招かれざる客には、そっと居留守を使うようになった。


 ある夜の事だった。
トイレに行こうとしたNさんは、トイレのドアを開けようとしてふと気が付いた。
ドアの外で靴音がするのだ。
 覗き窓で外を見ると、男が歩いてくる。
男はNさんの部屋の前へ来るとインターホンを押した。
男は宅急便の制服を着ていないし、荷物を持っている様子も無い。

“ こんな夜に面倒な勧誘などお断りだよ。”

息を殺して見ていると、男は2度3度とインターホンを押していた。

“ 早く帰れよ。”

 男は、インターホンを押すのを止めたと思ったらポケットから何かを取り出し、カギ穴へ差し込んだ。

“ え? え?”

Nさんは、瞬時には目の前の出来事が理解出来なかった。
見知らぬ男はカギ穴に何かを差し込んで、カチャカチャとやっているのだ。
 状況に気が付いたのは、目の前でカギがターンしようと動き出したのを見たときだった。
ゆっくりとターンしている。
ハッとして手を伸ばし、まわり始めたカギをカチンと元に戻した。
慌てて覗き穴を見ると、男が走り去って行くのが見えた。













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日々の恐怖 11月20日 爺さん

2013-11-20 18:40:57 | B,日々の恐怖





      日々の恐怖 11月20日 爺さん





 俺の爺さんは十年ぐらい前に、認知症ってヤツになったんだが、最初は物忘れ程度だったものの、そのうち明らかに言動がおかしくなってきた。
で、時々“自分は別の人間だと思い込んでしまう”症状が出始めた。
その“別の人間”ってのが、なんとあの江戸川乱歩の怪人二十面相だった。
 爺さんは昔どっかの劇団に入ってて、二十面相の役を演じた事があったらしいが、医者が言うには、どうもその頃のイメージが強く出てしまった結果という話だった。
しかも爺さんは、親父=明智小五郎、俺=小林少年だと完全に思い込んで、何かにつけ俺と親父を相手に、困ったイタズラを仕掛けるようになってしまった。
 初めの頃は、俺を便所に閉じ込めて、

「 ははは、どうだね小林君。」

とか言ってみたり、親父の腕時計をコッソリくすねて、冷凍庫の中に隠しておいたり程度の話だったんで、まぁ困るっちゃ困るけど、俺も親父も爺さんを責めたりしないで適当にあしらってた。
いつも二十面相状態ってわけでもなかったし、また始まった~みたいな感じで。
でも、そうやって調子に乗らせてたのが、今思えば良くなかったのかもしれない。


 しばらくして、事件が起きた。
その頃はもう、朝のウンコ中に便所に閉じ込められる事は日常茶飯事だったから、いつものように、

「 参った二十面相!」

って呼びかければ、開けてくれるはずだった。
しかし、その日は何度呼びかけても反応がなかった。
 通常、ドアを爺さんが押さえて閉じ込められてたんで、思いっきり蹴る事もできず、俺はただ大声で、

「 参った!もう降参だよ!」

と叫び続けるだけだった。
 すると外からゴソゴソと音がして、やっとドアが開いたと思ったら親父だった。
ドアの前に脚立が突っ張り棒みたいに仕掛けてあったそうだ。
親父は、

「 その日着て行くスーツが見当たらなくなった。」

と、方々探し回っていた。
そこへ突然、お袋の悲鳴が・・・。

「 キャー!泥棒ー!」

急いで台所へ駆け付けてみると、窓に男の足がぶら下がって見えたと言う。
 どうやら、屋根の上に誰かが登って行った途中を目撃したようだった。
俺と親父はその瞬間ピンと来た。

「 まさか、爺ちゃんじゃねーか?」

 慌てて裏口へ出てみると、案の定それは屋根に登ろうとしている爺さんだった。
なぜか親父のスーツを着ている。おそらく親父に変装しているつもりなのだろう。
何か風呂敷包みを小脇に抱え、1階屋根から2階屋根へとさらに登ろうとしている。

 俺達はもう青くなって急いで2階へ駆け登り、部屋から屋根へと出てみた。
しかし、その時点でもうすでに爺さんは、2階の屋根の上に登り切ってしまっていた。
 焦る俺達を尻目に、爺さんはヨタヨタと立ち上がり、何か言い始めた。

「 わはは、明智君に小林君。
今頃気付いても遅いよ。
これは確かに頂いたからな。」

そう言った瞬間、爺さんの足がズルッと滑り、そのまま俺達の方へ転がって来た。
 ウワッ!と思ったがもう遅い。
爺さんは俺達を巻き込んで1階の屋根の上に落下。
そのまま3人で屋根を転がり、その勢いで親父が弾き飛ばされた。
 俺は何とか爺さんを食い止めようと思ったが、意外に勢いが強くて回転が止まらない。
アッと言う間に屋根の縁まで転がり、とうとう下に何もなくなってしまった。
 俺はその瞬間、死ぬ!ってマジで思った。
だが同時に爺さんを守ろうとも考えた。
結果、俺は爺さんを抱くような形のまま、爺さんもろとも地面に落下。
爺さんは軽いかすり傷程度で済んだが、俺は腕を強く打ち骨を折るハメになった。
 その後わかった事だが、爺さんが屋根の上で「確かに頂いた」と豪語していたのは、床の間に置いてあった、北海道土産の木彫りの熊だった。


 爺さんはその事件の衝撃のせいか、以来完全に二十面相と化してしまった。
言動もますますヤバく、また騒動起こされたらたまったもんじゃないって考えもあり、さらに爺さん自体にガンが発覚したので、それから入院生活を送る事になった。
 入院後の爺さんは、見る見る内に弱っていった。
だが二十面相のプライドなのか、見舞いに行くといつも大げさな口ぶりだった。
それから3ヵ月の間、俺はいつも小林少年として爺さんと付き合うようにした。
 ある晩、容態が悪化したと連絡を受け、夜中に家族3人で病院へ駆け付けた。
爺さんは呼吸器のような物を付けられ、すでに意識朦朧とした状態だった。
俺が、

「 爺ちゃん!爺ちゃん!」

といくら呼びかけても、何の反応もなかった。
もうダメなんだ、と思った。
 すると親父が何を思ったか、

「 おい二十面相!情けないぞッ!」

と叫んだ。
 俺はともかく、親父は普段のらない人だったんで、ちょっとビックリした。
親父は泣きながら、

「 明智小五郎の勝ちでいいのかッ!いいのかッ!」

と叫ぶ。
俺もボロボロと涙を流しながら、

「 にじゅうめんそぉーーー!」

と一緒に叫んだ。

 爺さんは意識を取り戻さないまま、それから30分後くらいに逝ってしまった。
だが、最後の最後で俺の頬を軽く撫でてくれた。
“明智のような名探偵になれよ、小林君!!”とでも言っているように思えた。


 爺さんが亡くなってから、今まで霊感の無かった俺が幽霊を見るようになった。
ある時は若い男、ある時は年増女。
最初は気付かないが、何となくカンでわかる。
すると霊は、ニヤッと笑って消えていく。
“よく気付いたね”とでも言うかのように。
さすが変装の名人、怪人二十面相は懲りずにあの世で張り切ってるようだ。











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日々の恐怖 11月19日 地味男と俺

2013-11-19 18:02:04 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 11月19日 地味男と俺





 どの世代にも共通することだと思うんだけど、ガキってオカルティックなこと大好きだよな。
何でだろう。
俺にも軽い肝試しやらまじない紛いのことやら、休み時間の度にやってたアフォな時期があったんだが、その頃に起こった俺的に怖い話です。
 当時、俺はすごい目立ちたがり屋で、馬鹿やっては笑い取ろうとしたり、劇とかやらされる度に主役狙ったり、とにかくテンションが高かった、そんな小学3年生。
 女子の間でオカルトが流行りはじめた頃、友人引き連れてベートーベンの絵とか、女子トイレとか見に行ったのは憶えてるんだが、いつからか俺は霊感があると自称するようになってた。
きっかけは憶えてない、ただ単に目立ちたかっただけだと思う。
朝礼中に、

「 教頭の後ろに白い女が立ってる!」

とか言って楽しんでた、アフォス。
 そんな折、常々噂になってた幽霊団地に数人で行くことになった。
結構な大人数で計画してたんだが、実際に行けるヤツは結局5、6人。
確か、女子2、3人、男子3人。
人数曖昧ですまん。
 女子は普段から中心になって騒いでた子達で、男子は俺と、俺みたいなアフォもう1人と、あと何で誘ったのかも憶えてない地味なヤツだった。
そこはちゃんと人は住んでたんだけど、コンクリートには蔦が這ってて柵とかも錆びてるし、まさに出ますって雰囲気だった。
 でも『出る』って話だけで、具体的にどこがヤバいとかは聞いてなかったんだよな。
ガキだったから、珍しいことしてるってだけで興奮してたんだと思う。
よって計画性ゼロ。
とりあえず、

「 入って、階段でも上ってみよう!」

ってなった。
 階段といっても、普段住んでる人が使う団地の中心にあるヤツじゃなくて、端についてた非常用の鉄筋造りのヤツ。
住人に見つかったらヤバいと子供心にも思ったのか。
 何階建てだったかは憶えてないが、真ん中あたりまできたあたりで、

「 カン、カン、カン!」

って、鉄の手すり叩くような音が聞こえてきた。
 俺は別に怖いとも何とも思わなかったんだけど、誰も音につっこまないから、踊り場に来たところで、リズムにノって、

「 ポリンキー♪ポリンキー♪」

とか踊りはじめた。
周りはたぶん“いつもの馬鹿”って感じだったんだろうけど、地味男だけは反応が違った。

地味男「 何やってんの?」
俺「 踊ってんだよ、何も起こらねーし、つまんないよなー。」
地味男「 音、聞こえてる?」
俺「 ・・?、だから踊ってるんじゃん。」

そういう会話してたら、他のヤツらが、

「 音?何?」

みたいにざわついた。
そしたら女子が盛り上がりはじめて、俺質問攻め。

女子「 え、俺君何か聞こえるの?見える?」
俺「 え?え?」
女子「 見えてるんでしょ!?何?教えてよ」
俺「 え?え?」

その間もずっと、カン、カン、カンって音は聞こえてた。
俺も最初は、

「 誰か手すり叩いてるじゃーん。」

とか呑気に言ったのが、マジで聞こえてないらしいってのと、女子の教えての熱狂ぶりに押されて、さすがにビビりはじめた。
 そこで、いきなりアフォ男が、

「 ああああああああああああああああああああああ!」

って絶叫した。
そしてものすごい勢いで階段下りて行ったもんだから、その場にいた全員一瞬硬直して、同じく叫びながら駆け下りていった。
 一同落ち着いたところで、その日は解散した。
でも帰るのも怖くて、地味男と一緒にうろうろしてた。
アフォ男は走りすぎてどこかへ行った。
正直、地味男はすごい無口だったもんで、話題も続かず楽しくなかった。
だけど帰り際に、

「 聞こえてたんだよな?」

って聞いたら、

「 大丈夫だよ。」

って返してくれたのがすげー安心して、嬉しかったのを憶えてる。
 それからいきなり仲良くなった訳ではないが、何か秘密を共有みたいな感じで仲間意識が芽生えた。
学校でも地味男とはちょくちょく話すようになり、そこからは腐れ縁。
地味男は中学辺りからいきなりモテだして、今ではあいつの方が数倍リア充です。
 まあ、これで終わればよかったんだけど、後日、一緒に行った女子とアフォ男が、

「 変な音が聞こえるんだけど・・・・。」

って言いはじめたのには参った。
しかも、俺が霊感あると思われてるから、助けてよ、とか縋られる。
当の俺は、親にべったりくっついて寝てたりというビビり。

「 相手が強いから、とりあえず拝んでおくけど、効果あるかはわからない。」

と、適当なことを言ってかわしていた。
これ以上関わりたくなかった、というのが本音のところ。
 そしてある日、移動教室で階段を上ってるとき、アフォ男が、

「 鳴ってる!鳴ってる!」

と俺のとこにやってきた。
そして俺にも、確かに階段でカン、カン、カンと鳴ってるのが聞こえてしまった。
 俺はクラスメイトが集まってる中で、急いで地味男の姿を探した。
地味男は集団の後ろの方で、無表情にぼーっと立っていた。
でも、俺には仏の顔だった。
また階段を駆け下りようとするアフォ男を、すぐさま寄って来た地味男が落ち着いた声で、

「 俺君が除霊するから大丈夫、先行ってて。」

といった感じでなだめた。
 アフォ男とその他クラスメイトが去って、俺と地味男だけになったときも、しーんとした踊り場で音だけはずっと響いていた。
すでにガクブルな俺にとって、やたら冷静な地味男だけが支えだった。

俺「 ど、どうすんの、俺、霊感とかないんだけど・・・・。」

いつ地味男に嘘をバラしたのかは憶えてないが、地味男はとっくにわかってたみたいだった。
俺は地味男にしがみつきじっと上を睨んでいたが、音だけで姿はチラリとも見えなかった。

俺「 上、行ってみんの?俺無理なんだけど・・・。」

と言うと、地味男はさらりと言った。

地味男「 何言ってんの?アレ、下にいるよ。」
俺「 ・・・・え。」
地味男「 俺君、リコーダー貸して。」

俺の手からリコーダーを取り、自分の荷物を押しつけると、地味男は、

「 あ゛―――――っ!」

と奇声をあげた。
そして、リコーダーで手すりを滅茶苦茶に叩きながら、階段を駆け下りていった。
もう何にビビっていいのかわからなくなって、俺は唖然とそこに突っ立っていた。
 地味男の立てる音が聞こえなくなったとき、例の音も消えていた。
地味男が戻ってこなかったから、恐る恐る踊り場から下を見ると、地味男がニヤニヤしながら立っていた。
そしてそのままニヤニヤしながらまたこっちに上ってきて、リコーダーを手渡された。

地味男「 もう大丈夫だよ。」

よくわからなかったが、地味男が何か凄いことをしたのはわかった。
地味男は俺の手から教科書と自分のリコーダーをとり、

「 行こう。」

と言った。
というか、自分のリコーダーあるなら自分の使えよ。
 それから更にDQN化していった俺の尻拭いを、何度か地味男に頼んだことがある。
まあ、俺は本当に霊感ないし、恐ろしい体験とかはないんだが。
 ガキの頃から、

「 俺君、地味男と友達なの?」

と女子に言われることは何度かあったが、地味男がモテはじめるにつれ、そのニュアンスが着実に変化していったのがとても虚しい。














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日々の恐怖 11月18日 自転車

2013-11-18 17:36:32 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 11月18日 自転車



 今から3年前に、友人からGIANTのマウンテンバイクをもらった。
それは2004年バージョンのモデルのやつだった。
俺のミスで、自宅に帰宅した時チェーンをするのを忘れてしまい、朝起きると盗まれてしまってた。
警察には届け出を出したけど、

「 防犯登録のシールは剥がされてしまうので、たぶん戻ってこないだろう。」

と言われてあきらめていた。
 それがほんの1週間前に、警察から、

「 見つかった。」

との電話があった。

「 ただ見つかった場所が場所なので、現場まで確認しに来てくれないか。」

と言われ、言われた所に向かってみると、そこは自宅から約20キロ程離れた新興住宅街で、道路の下(つまり地中)から見つかったのだった。
その住宅街に新たに都市ガスの配管をするために道路を掘っていると、自転車が出てきたそうだ。
 工事の人達が言うには、新興住宅街などを造る時、悪徳業者が地中に不法投棄をしていったり、一般の人でも掘り返した所にゴミを不法投棄する事があるそうで、俺の自転車も不法投棄された物と思ったらしい。
でも洗ってみるとかなり状態が良く、防犯登録のシールも貼られてあったので、これは盗まれた物が放置されたんだろうと思い、警察に届けてくれたそうな。
 そして実際に自転車を目にすると、確かに俺の自転車だった。
でも警察の人が、

「 君が盗難届を出したのは、2005年の4月だよね。
自転車はいつ盗まれたの?」

と聞いてきた。

「 2005年の4月ですよ。」

と答えると、

「 ここの住宅街の工事の完成は、2000年に終わっててね。
いま掘っているこの区画は、2008年以降初めて掘る場所なんだよ。
そうすると、君の自転車がここにあるとは考えられない。」

と言われた。
 しばらく言っている意味が分からなくて、何度か聞き返して意味が分かった。
2000年にアスファルトが敷かれた道路で、2008年まで掘り返されなかった所に、2005年に盗まれた自転車があるはずない。

“ じゃあ俺のじゃないのか?”

と思ったが、そもそもこの自転車は2004年モデルだから、2000年に存在するはずがない事を伝えると、その場にいたみんなが気味悪がってしまった。
 結局、でも、まあいいかと思って自転車を引き取って帰った。
最後に工事の人が、

「 人骨を掘り当てた事はあるが、こんなケースは初めてだ。」

と言っていた言葉が印象的だった。












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日々の恐怖 11月17日 ドライブ

2013-11-17 18:41:13 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 11月17日 ドライブ





 私は関東のT県U市(県庁所在地)に住んでいて、高校生と中学生の二人の娘を持つ40歳の普通の会社員です。
趣味は特に無いけれど、深夜寝付けない時など時々一人でドライブをする事があります。
今回その時に経験した事を書こうと思います。

 その事があったのは先週5月23日の土曜日、深夜の事です。
その日は早朝からゴルフ仲間とB市にあるカントリークラブに出かけ、適度に疲れて帰ってきたのが夕方前の3時過ぎでした。
 朝早く起きてのラウンドだったので、帰ってきてからひと眠り。
夕食だと起こされたのが19時で、その後は居間で妻と二人テレビをみて過ごしました。(上の娘はバイトで下の子は塾)
21時に下の子を塾に迎えに行き、家に帰った時に丁度バイトから帰った上の子と同じく帰宅しました。
 久々に家族皆で揃ったので(僕たち夫婦は夕食は済ませました)皆でダイニングで暫しの団欒をして、23時頃にお休みを言って皆解散になりました。
一度は寝室のベッドに入ったのですが、夕方に寝てしまったので中々寝付けず、一人深夜のドライブに出かけることにしました。
お気に入りの曲を聴きながらの夜のドライブは、やはり良いものだなっと思いながら、いつもは空いた環状線を走るのですが、今回は少し遠出をしてN市まで足を運んでみる事にしました。

 N市は関東地方では有名な場所で、家康公縁の地でもあります。(猿でも有名)
N市まで到着しましたが、流石にI坂峠には上る気が起きずにそのままUターンして帰路につく事にしました。
今回の事はその帰り道で経験した事です。(前置きが長くなってしまいました。)

 いつもはN市の帰りは有料道路を使って帰るのですが、その日は何となく下道を通って帰りました。
そして下道を通って帰る途中にKトンネルというのがあって、そのトンネルの脇に旧道の小さな峠道があります。
 普段は全くそんな峠道を使う事はないのだけれど、本当に馬鹿げた話だけれど、丁度聞いていた音楽がとても居心地が良く、もう少しだけ聴きながら運転したいと思って、少し遠回りしたくなってしまいました。
そんな時、丁度トンネル手前の旧道が目に入り、何気にハンドルをその方向に向けていました。
 その峠は今では日中も誰も通らない道になっていて、道路半分以上に渡り草が生い茂る状態でした。
その道に入ってから“この道はちょっと失敗したかな”と思ったのですが、街頭も何も無い道でもUターンも面倒で、そのまま荒れ果てた草の生い茂る道を走って行きました。
 その道は丁度峠の頂辺りに男根の形をしたご神体が祭られていて、この道は地元民からは金○峠と言われていました。
真っ暗な道を走る事10数分、ようやくそのご神体に差し掛かり、過ぎようとしたその時、

“ ドン・ドン・ドン!”

間違いなく私の車の屋根を叩く音が聞こえました。
 一瞬、聴いている音楽から出る音ではないかと思いましたが、更に、

“ ドン・ドン・ドン!”

そして、

“ ド・ド・ド・ドン・ドン!”

今まで何も感じずに運転していたのが、一気に背筋に冷たいモノが走り、全身爪先から頭てっぺんまで鳥肌が立つのが分かりました。
 それまで荒れた道を慎重にゆっくりと走っていましたが、一気にアクセルを踏み込みもの凄い勢いで車を走らせました(おそらく80キロ以上)。
猛スピードで車を走らせている間にも屋根を叩く音は止まりません。
それどころか音はドンドン大きくなって、さっきまで聴いていた音楽よりも大きな音となって車の屋根を叩いている様に感じます。
 余りの恐怖に音楽のボリュームを最大音量にして、その音が少しでも聞こえない様にして、 漸く旧道を抜け反対側トンネルの出口に続く新道に差し掛かりました。
 丁度新道に出る時に同方向の車を確認でき、少し気持ちが落ち着いて、今まで最大音量で鳴らしていた音楽を下げたその時、今度は間違いなくリア窓後方トランクから、

“ ド・ド・ド・ド・ド・ド・ドン!ドン!ドン!”

と、もの凄い音がしました。
 そして、私は咄嗟にバックミラーを見てしまいました。
バックミラーに映っていたモノは、紛れもなく後ろの窓から中を覗き込む様に見ている髪の長い女でした。

「 うわああああ!!!!!!!」

多聞、今まで生きてきた中で一番大きな叫び声だったと思います。
 その後はバックミラーは一切見れず、可動式の自動ドアミラーも折りたたみ、ひたすら先程の倍近い猛スピードで新道を走り続けました。
そしてコンビニの明かりが見えた時、本当に助かった、と心から思いました。
 コンビニの駐車場に車をとめ、恐る恐る車外に出て車の周りをみてみましたが、何処にも叩かれた様な傷や凹みはありませんでした。
 ガタガタ震える足でコンビニに入り、暖かい缶コーヒーと煙草を買い、少し心を落ち着かせて今あった事を考えましたが、確かにバックミラーには女が覗き込んでいました。
顔はハッキリとは見れなかったけれど、確かに女はそこにいた。
 私は今まで幽霊の類も見たことはなかったし、信じてもいませんでした。
でも確かに、それはいたんです。
家に帰ってからもその夜は寝付けず、朝方まで一晩中テレビをつけていました。

 そして、一昨日25日の夜22時過ぎの事です。
2階の自室の書斎で仕事のデーター整理をしていた時、PCデスクから向かって後ろの窓を、

“ ドン!”

と叩く音に驚かされました。
背筋に先日と同じ恐怖を感じつつ、恐る恐る後ろを振り向きましたが窓には何もありませんでした。
 それで、書斎から見下ろせる国道線を見下ろした時、私の家を窓を通りから見上げる女が立っていました。
薄暗い街頭とかなり離れた距離から、その女の顔は見えませんが、間違いなくこちらをじーっと見ている様に感じました。
 その日の夜から私は窓を閉め切り、カーテンも閉じたままです。
もう暫くは夜のドライブどころか、部屋のカーテンを開けるのも怖い状態です。
家族は皆、この手の話は大の苦手なので話していません。
仲の良い信用おける会社の仲間にこの話をしましたが、お祓いを受けた方が良いと言われました。
冗談無しで今週末に神社でお祓いを受けようかと思っています。














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日々の恐怖 11月16日 因縁

2013-11-16 17:21:40 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 11月16日 因縁



 自分らの地域で実際にあった出来事なんだけど、落ちも何もないが書くことにする。
自分の住んでるところは田舎の中核都市で、田んぼはなくなってくけど家はあんまり建たず人口は増えも減りもせず、郊外に大型店はできるものの駅前の小売店は軒並みシャッターを閉めてるようなところだ。
自分の家のまわりも田んぼだったんだが、県立大学のキャンパスが分かれて移ってくるってんで、そのあたりだけ急にバタバタと建物ができた。
学生めあてのアパートが多いんだが、その他にも飲食店とかいろいろだな。

 で、田んぼの中に一枚だけ地元では蛇田と呼ばれる一枚があって、そこは田んぼの南の隅に竹と藁で作った簡単な祭壇が設けられてあった。
ちょうど盆送りの棚みたいな感じで、月に何回かお供物があがっているのを見たことがある。
これがアルミホイルにのせた鶏肉なんかで、そんなことをすればカラスが来るだろうと思うだろうが、自分が見たかぎりでは荒らされている様子はなかった。


 興味深かったんで小学校の行き帰りに遠回りしてのぞいてみたこともあったが、お供物は次の朝にはなくなってる。
野犬が食べたような汚らしい様子はないから、その家の人が夜にかたづけてるのかもしれない。
この話は家族にもしたことがあるけど、遠くからムコにきた親父はまったく要領を得なくて、母親のほうはその話をしたくないらしくすぐに話題をそらしてた。

 その田んぼの持ち主は専業農家で、かなり広大な耕地を持ってて人に貸したりもしてたんだけど、その蛇田だけは当主の老夫婦が手植えで毎年稲を植えていた。
かなりの重労働なんだけど、ここだけは近所でもだれも手伝わず、みなそうするのが当然みたいな雰囲気だった。
収穫したここの米も卸には出さず自分らで持ち帰っていたようだった。

 ところがその老夫婦が相次いで亡くなって、大学のキャンパス移転にかかって売りに出された。
で、その田んぼも含めた敷地に大きなスーパーマーケットができることになった。
老夫婦の子どもは数人いたんだけども地元には残っていなくて、家屋敷をすべて売って遺産分けしたという話だった。

 ただこの蛇田を売ったことについては地元での評判はよくなかった。
特に古くからの人たちは町内会でいろいろ批判も出てたらしい。
母親も、田んぼをやめるならせめて死に地にしておけばいいのにみたいなことを言っていた。
例によって理由は教えてくれなかったけど、蛇田は建物本体ではなく駐車場の一部になった

 スーパーは大資本のチェーンではなく、県内の別の市からきた夫婦が自分らで経営する小さな店だった。
自分も何回か会ったけどどちらも50代初めくらいで、旦那さんの早期退職金と、あとは銀行からかなりの借金をして始めたらしい。
気さくでやる気にあふれた人たちだった。
ただし、それは初めのうちだけだった。

そのスーパーで開店セールをやるってんで、母親に連れられて行ったんだが、母親はその蛇田の駐車場に車を停めず、近くの道に路上駐車した。

「 今どき何も起こらないだろうけど、近寄らないにこしたことはないから。」

と言って
 で、学生も来るようになって初めの一ヶ月はけっこう繁盛してたと思うけど、すぐに事故が起きた。
駐車場に停めてあった車が車両火災になった。
タバコとかが原因ではなくて電装関係のトラブルらしい。
その車は全焼して隣の車にも影響があったが幸いケガ人はなかった。

 そしてそれから2週間ばかりして、深夜その駐車場で焼身自殺があって、大学の男子学生だった。
ガソリンをかぶって火をつけたんだ。
その夜は救急車や消防車のサイレンがやかましくて、起きて野次馬をしにいった母親が事情を聞いてきた。
原因はノイローゼだとも失恋だともいろいろ言われてたんだけど結局は不明。

 その現場が蛇田で、祭壇があったすぐ近く。
自殺の跡は黒いシミになって後からその上にさらにアスファルトをかぶせて段になった。
で、当然ながら気味悪がってその近辺には誰も車を停めない。
 この事件以来、スーパーの人の入りががくっと悪くなった。
最初は数人いたパートの店員も一人やめ、二人やめって感じで、できて二ヶ月後には夫婦二人だけで切り盛りするようになった。
夜の仕入れとかもあるため、スーパーには旦那さんが泊まり込んでたけど、開店の当時からするとげっそりと痩せて笑顔がなくなった。

 その頃、自分は中学生になってたんだけど、日曜日に友達が家に来るから菓子類を買おうとそのスーパーに入ってみたんだ。
そしたらレジに油気のない髪の奥さん。
そして生鮮食品売り場に旦那さんがいてガラス戸の奥で魚をさばいている。
 商品は仕入れが少ないらしく開店時よりだいぶ減ってスカスカの状態で客は自分一人だけ。
で、店の中は少ない商品が中央に集められて、店の片側に段ボール箱が天井あたりまで積まれている。
それはちょうど駐車場のほうが見える窓で、まるでそちらの方を見たくないってふうに感じた。

 自分がポテチとかを選んでると、ダン、ダンという音がする。
旦那さんが奥で魚を切ってる音なんだけど、やけに強くて力が入ってる。
それで生鮮品売り場の方に見に行ったんだけど、そこらはひどい嫌な臭いがする。
 腐った臭いとはまた違って、何というか自分はタバコは吸わないんだけど、吸い殻のいっぱい詰まったバケツに水を入れたときのような臭いがする。
見れば並べある肉も魚もなんだか乾いてぱさぱさした感じで、古いのかと思ってパックの賞味期限を見れば仕入れたばかりのものだ。


 旦那さんがガラス越しに魚を切ってるのが見えるけど、こっちの方を見もせず下を向いて包丁に力を込めてる。
切ってるのは魚だと思うがガラスの下でよく見えない。
 ただその魚が動くのを片方の手で押さえてるような動きで、すると旦那さんが「あちっ」と叫んで押さえていたものが伸び上がって、それが見間違いだと思うけど大きな蛇の頭に自分には見えた

「 うわっ!」

と思って走ってレジにいき、買った物を投げ出すようにレジに置くと、奥さんが無愛想な顔で精算して、レシートを渡すときにじろっと自分の顔を見て、

「 あんた○○中学校の生徒だね。
学校行ったら、他の生徒にうちで万引きしないように話してくれる?
あんたらの校長に電話かけても、らちがあかないんだよ。」

と、ものすごく無愛想な声で言ってきた。

 そんな感じでいやーな気分で店を出たんだけど、飲み物を買い忘れたことに気づいてもう店にもどるのはいやだったんで、外の自販機でペットボトルを何本買った。
そのときに横にあったゴミ箱のビン・カンのほうだけ中身があふれてたんで、ペットボトルのほうをのぞいてみたら、シマヘビだと思うけど、うねうねと何匹もからみ合って中で球になっていた。
あわてて後ろに飛び退いて、何で買い物するだけでなんでこんなお化け屋敷のような目に遭わなければならんのか、と思いながら帰った。

 夕食の時に母にその話をすると、

「 やっぱり蛇田だから、そろそろ準備しとかないと・・・。」

みたいなことを言った
 それから2週間してスーパーの夫妻が首を吊った
それが駐車場のあの祭壇があった場所、焼身自殺の場所のすぐ近くに物干し台を持ち出して二人並んで。
ただ物干し台だから両足とも地面に引きずるような形になってたって噂だった。

 それからそのスーパーは後を継いで経営する人もなく、取り壊されもせずに心霊スポット化したが、事情を知ってる地元民は絶対に近寄らない、特に駐車場は。
大学生が肝試しにいくらしくていろいろよくない話が聞こえてくるが、人が死んだりはまだしていないと思う

 蛇田についてはよくわからないけども、田んぼの持ち主だった老夫婦の先祖が何か蛇と約束をして、そこで獲れる米とお供えを捧げる約束があったという日本昔話みたいなのは聞いた。
だけどそれだけではなく聞かせてもらえないことがまだあるような感じがする。


 後日、自分でも妙に好奇心がわいてきて由来を調べてみた。
で、わかったことがあるんで書くことにする。
うちの母親は教えてくれないし近所でも聞きにくい感じがあったんで、この隣町に住んでる中3のときの担任の先生を思い出して話を聞きに行った。
 先生は男で社会科担当、数年前に教頭で退職して、今は市史編纂室というとこで嘱託で仕事をしている。
地元の新聞社から郷土史の本も出してるんで、もしや何かわかるかと思ったんだ。

 久しぶりに会った先生は自分から要件を聞いてかなり驚いていたが、スーパーの件は耳にしてたらしく、それほど嫌な顔もせず昔のことをいろいろと話してくれた。
自分の住んでる町内は旧道と呼ばれる一本道沿いの家が昔からの集落で、その一帯はほぼ同族だったために今でもある同じ名字の家が並んでる。

 旧道はずっといくとだんだん山に登るようになってて、突き当たりが集落の氏神だった小さな神社、その手前に蛇田の持ち主だった老夫婦の家があった。
ただ老夫婦の家はその昔は分家で、そこは本家だったということだが、本家に養子に入るという形で何代か前に移ってきたらしい。

 その本家は名主格で、かなり広い田地があってそのほとんどを小作人に貸していた。
分家は蛇田のあった場所にあり旧道からはだいぶ離れてる。
で、分家はわずかな田もあったが家業は薬屋で、マムシから取った強精剤のようなものを 製造して行商の薬売りに卸していた。

 そして薬を絞った後の蛇の死骸を大きな穴に投げ込んでいたのが、蛇田の祭壇のあった場所。
それだけではなくて集落の拝み屋のようなこともしていたという。

 で、ここからは昔話だと思って聞いてくれ。
時代はたぶん江戸から明治に変わるあたりだと思う。
分家は食うに困らない暮らしではあったものの、親戚の中では殺生をする賤しい家業ということで、親戚付合いではいろいろと差別されていたらしい。
で、あるとき分家の10歳くらいの女の子が、本家筋の子らといっしょに川に遊びに出かけて、本家の長男坊がその子が川に流されたと大声で叫びながら村に走ってきた。

 村人たちが行ってみると女の子の姿はなく、何日か後に下流で裸で引っ掛かって見つかった。
男の子らは裸で川で泳いで、女の子数人が河原で石拾いをやってた。
それがいつのまにか川に入っていて、見ている前で流されていったと子供たちは口をそろえて言う。

 当時はもちろん巡査などもいない混乱期で、それは不幸な事故としてけりがついたんだが、分家の主人は納得できなかった。
臆病な子で自分から川に入るなんてまず考えられないと思った。
 それで他の子供らの様子をうかがっていると、村で主人に会うと非常にばつの悪い顔をしてこそこそ逃げていく。
で、思いあまってある日同じ分家格の子を一人家に呼んで問い詰めたらしい。
すると女の子は男の子らに嫌がるのを無理矢理川に入らされて流されたのだと白状した。

 それから分家の主人は夜になると蛇穴の前に祭壇を築いてなにやら儀式をする。
すると親戚の子らが死んでいくんだ。
何も不自然な死に方ではなくて当時ありがちな急な病気で、2年で3人目の男の子が死んだあたりで本家でも事情を察して掛け合いにきた。

 分家の主人を威したりすかしたりして呪詛をやめさせようとするんだが、主人の恨みは強くて村を叩き出してもやめそうもない。
官憲に突き出しても、子供らははっきり病死で何の証拠もないし、文明開化の時期で呪詛の話など相手にされないだろう。
そうしてる間に今度は女の子が1人死んだ。

 で、親戚中で話し合って分家の主人に流されて死んだ女の子の弟、その子は5歳くらいだったんだが、これを本家で養子にもらって跡取りにするからもうやめてくれと詫びを入れて泣きついた。
すると主人は硬い顔で、

「 わかった、そうしてもらおう。」

と言って引っ込んでいった
 次の朝、蛇穴の中で無数の蛇の死骸の上に、うつぶせに顔を埋めるようにして死んでるのが見つかったという

 それから本家では分家の家を取り壊して田地にし薬作りもやめてしまったんだが、分家の妻が蛇穴のあったところに新しく祭壇を築いて供養をする。
そのうちに男の子が本家の跡を継ぎ、ずっと何代も老夫婦が亡くなるまでこの供養が続いていたということなんだ。

 この話は明治の中頃に東京から偉い学者が来て、聞き取り採集していったのが学術雑誌に残ってたんだが、

「 こんな陰惨な話はとうてい市史には載せられない。」

と、先生は話し、

「 蛇田の場所は、とにかく土地が悪い。
スーパーの顛末も、人に学問を教えるものがこんなことを言ってはいかんのかもしれんが、昔からの因縁に関係があるんだろう。
だから、お前も近づくなよ。」

と言ってくれた。














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