大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 4月30日 白狐(10)

2023-04-30 20:53:59 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月30日 白狐(10)






 巫女さんは処女が務めるものだと思っていたし、生贄なんかも基本は生娘という知識があった。
処女じゃなくとも清廉潔白な人間が、神仏と関わるものだと。
 当時の仕事も清らかなものではないし、生活は自堕落極まりない。
欲望と損得勘定で成形された私に、神様が付くとは到底信じられなかった。
 小豆さんに、

「 情を寄せたからだよ。
綺麗、悲しい、寂しい、悔しいってそのお狐さんに向けて長年情を寄せた。
そこまで思われて悪く思う神さんはいない。」

と言われた。

「 それなら、他の神社とかには余り行かない方がいいんですかね?」
「 日本の神さんは結構大雑把だから大丈夫だよ。
でも大雑把で大らかだけど基本は嫉妬深いものだから、他所に信仰を向けるのはやめた方がいいと思う。」
「 そういうもんですか。」
「 君のお狐さんは、君と色んな所に行くのを楽しんでるように思う。」

その時点で日本中色々なところに行っていた。
そのすべてが同伴状態だったと思うと、なんだか少し恥ずかしくなってくる。
 小豆さんに霊感があるのか聞いてみたけれど、

「 見える事も感じる事もないよ。
ただそう思うんだ。
その感覚はあんまり疑わないようにしてるだけ。」

と返された。
 確かに小豆さんは見えるとかそういう言葉を使っていなかった。
一貫して、思うだった。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月25日 白狐(9)

2023-04-25 15:59:56 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 4月25日 白狐(9)






 おっさんから貰った缶コーヒーを飲みながら、縁台で話をした。
おっさんと書くには少々失礼なので便宜上、小豆さんとする。
ここは代々小豆さん家が管理している神社で、一応神職の資格は持っているけれど本職の方がメインだから最低限の管理しかしていない。

「 御朱印でも始めれば参拝客も増えて金になるんかね~。」

と言う小豆さんはとっても俗っぽい人だった。
 それでも神田様の事は何一つ話してないのに、小豆さんは神様と断定する。

「 最初に見た時、白い狐がやってきたと思った。
よく見たら人間だったけど、神さんが来るなんてどういうことかと混乱した。
信仰しているところのお狐さんかな?」

 私自身、特に神田神社を信仰しているわけではない。
どちらかといえば限りなく浅ましい欲求のみで神田神社のことを思っている。
執着以外で表せる言葉が思い浮かばない。
その事も含めて、ざっと小豆さんに説明した。
 子供の頃の神田神社への思い入れ、放火されたこと、焼け落ちた外壁が悲しかったこと。
あの白さがどれほど美しく寂しいものなのか。
 私の話を聞き終えた小豆さんは、

「 探してるんかな・・・・?」

と呟いた。

「 君に付いて回って犯人を探してるんじゃないかなぁ。」
「 取り憑かれてるってことですか?」
「 そこまで大層なことじゃなくてね、社が燃えたなら修復されるまで居心地悪いだろうし、君を仮宿にしてるって状態だと思う。」
「 私処女じゃないですよ?」

思ったことを口にすると小豆さんは大爆笑した。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月22日 白狐(8)

2023-04-22 12:16:17 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月22日 白狐(8)





 話は変わるが、私はとあるバンドが好きで割と全国を歩き回っている。
所謂おっかけだ。
 実家に帰ってからというもの生活に回す出費が減ったので、以前よりも遠征が多くなった。
開場時間までの空き時間、会場の近くを歩き回るのが常だ。
全国各地の御朱印を貰うのも好きなので、基本は神社を見て回るようにしている。
 その活動の中、東北のとある県に行った。
霧雨が降る中、いつも通り近くの神社に行った。
寂れた神社だった。
 参拝客もいない神社なので朱印がない可能性が高かったけれど、一応念の為に社務所らしき建物に訪いを入れた。
おっさんが出てきた。
小豆色のジャージを着たおっさんだった。
 おっさんは私の顔を見ると凄い驚いた顔をしてから、上から下まで全身を眺め回す。
失礼なおっさんだった。

「 御朱印頂けますか?」
「 うちはそういう面倒なのやってないんだよね。」

ジャージだもんな。
期待してなかったのもあって早々に立ち去ろうとすると、

「 まぁお茶でも飲んでいきなよ。」

と軒下に置いてある木の縁台を勧められた。
 ジャージのおっさんにナンパされる日が来ようとは。
この県が嫌いになりそうになる。
 私は相当嫌そうな顔をしていたんだと思う。
おっさんは慌てて、いやそういうんじゃなくてと取り繕う。

「 白い狐に心当たりはないか?」

” 神田様だ!”

すぐにそう思った。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月17日 白狐(7)

2023-04-17 15:33:52 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月17日 白狐(7)





 話を聞いた次の日、姉と一緒に以前住んでいたところに行ってみることになった。
駅から歩き、変わったところや以前通りのところを見かける度にわくわくした。
以前住んでいた家も、あーちゃんの家の立派さもなにも変わっていなかった。
小学校も殆ど変化がなかった。
 しかし、神田神社だけが、変わっていた。
大鳥居も御神木もそのまま。
本殿もぱっと見は以前通り。
なのに子供の頃からあんなに焦がれ、中を見たいという欲求を阻んでいた外壁が、真っ黒になっていた。
 外壁の一部は焼け落ちて、あんなに見たくて仕方なかった白い世界がだだ漏れだった。
外壁は真っ黒だけれど、中は子供の頃見た時のままに真っ白で、変わらず綺麗だった。
だからこそ悲しい。
 白い世界を汚す黒さが、ただただ悲しかった。
あんなに見たくて仕方なかったのに、こんな見方をしたかった訳じゃない。
崩れ落ちたところから、身を乗り出して中を覗き込むことは憚れた。
まじまじと見ることは失礼に感じたからだ。
その日は手を合わせて、帰宅した。
 なんとも言えない気持ちがもやもやと広がって、なんだか毎日がうまくいかない気がした。
お客さんは相変わらずしつこかったし、街を歩けば犬に吠えられる。
猫カフェに行けば全ての猫に威嚇される。
心が折れた。
 実家から通えない距離ではないし、そろそろ家も特定されそうだったので、いい機会だから実家に戻ろうかと思った。
親に話すと大喜びだったので、そこからは早かった。
そんなに好きな実家ではなかったけれど、戻ると決めたら1日でも早く帰りたくなった。
 実家に戻ってからは大分気持ちも落ち着いた。
神田神社はその時点でも修復はされてなかった。
寄進が足りなくて修復出来ないままらしい。
次の節句の祭りでは寄進が集まるから、修復はその後になると教えてくれたのはあーちゃんだった。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月15日 白狐(6)

2023-04-15 09:00:23 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 4月15日 白狐(6)





 それからずっと、あの石像を見ることは叶わなかった。
木を登ってみてもずり落ちて傷が出来るだけ。
窓から身を乗り出してみても先生に見つかって叱られるだけ。
欲求が溜まるまま、高学年になって転校をすることになった。
 引越し先はそんなに離れているわけではないけれど、別の町に行くと神田神社に行くことはなくなった。
思い出すことも少なくなった。
けれど他の神社に立ち入る度に、あの白さを思い出した。
あそこほど綺麗な場所には出会えなかった。

 それから大分年を取って、高校を出て一人暮らしを始めた。
それと同時に実家は以前の地元近くに戻ることになった。
それでも一人で住んでいる場所から実家まで1時間もかからなかったので、実家に帰ることはなかった。
なので神田神社に行くこともなかった。
地元に立ち入ることはなかったけれど、思い出すことは多くなった。

 一人で暮らし始めて6年ほど経った頃、2・3日実家に帰ることになった。
その頃働いていたお店のお客さんがタチが悪く、大分しつこくされていた。
教えていない携帯番号に連絡が来たり、住んでいる地域を特定されたりということが続いた。
少し、疲れていた。
実家で少し気を休めるべきだ。
 実家でインコのぴーちゃんに癒されていると、姉が神田神社の話を聞かせてくれた。
市内の神社に放火されるという事案が続いていて、神田神社もその被害にあった。
近くに消防署があったお陰で全焼はしなかったけれど、被害はそこそこ大きかったらしい。
 私は、それはもう憤った。
あんな綺麗なものを燃やそうだなんてどうかしている。
憤った後、悲しくなった。
あの白さが損なわれてしまったかもしれない、という現実が辛かった。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月12日 白狐(5)

2023-04-12 20:03:35 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月12日 白狐(5)





 お祖母さんの話を、麦茶を添えてあーちゃんと二人で聞くこととなった。
あーちゃんのお祖母さんの麦茶は、砂糖が入ってるから余り好きじゃなかった。
 麦茶に手を付けず、とくちゃんに聞いた話をする。
この謂れは本当かと。

「 そんな話は聞いたことないねぇ。」

お祖母さんはあっさり否定する。

「 でも犬に殺されたってのは聞いてるよ。
その狐を鎮めるために、神田神社は建てられたのね。
節句の祭りで神楽をやってるでしょう。
あの時に付けるお面は狐面だからね。
お狐様を奉って、この辺りを守ってくださいってお願いしてるんだよ。」

すごい信憑性があった。
 寂れた小さな神社だけれど、とある節句の時はわりと大掛かりなお祭りをしていた。
初詣よりも縁日よりも、節句のお祭りは派手。
神輿も出て神楽も催される。
それでも御神体は、本殿の奥は公開されなかった。
 屋上から本殿の中を見たことを話した上で、

「 あの石像がまた見たいんです。」

と頼んでみると、

「 それは無理だねぇ。」

と一蹴された。

「 本家の人間なら立ち入られるから、うちの養子になりなさいな。」

帰宅後、母親にあーちゃん家の養子になると言ってみたけど、

「 馬鹿言ってないで宿題しなさい。」

の一言で話は終わった。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月8日 白狐(4)

2023-04-08 22:45:59 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月8日 白狐(4)





 山葵の茎に棘なんてないことは知っていた。
茎のおひたしは、うちでよく出るメニューだったからだ。
 この辺りはずっと宿場町だった、と生活かなにかの授業で聞いていた。
大昔は農地もたくさんあったのかもしれない。
それでもこの辺りに山葵が自生出来るような清流があったとも思えない。
 でも、話はまとまってるし、犬に殺されたというリアリティは感じ取れた。
それでも私の感想は、

” よく出来た話だなぁ・・・。”

止まりでしかなかった。
なので私の顔には、不信感が浮かんでいたのだと思う。
 今思い返せばとくちゃんには申し訳ないことをした。
とくちゃんは、この辺りに古くから住んでる人に聞いてみてたらいいよとアドバイスをくれた。

 当時の私の親友は、大地主の家の娘だった。
近隣一体にあるマンションや賃貸物件、空き地や農地に至るまで、土地という土地はその家の物。
同じ名字はほぼ全て一族。
その本家の娘が、親友のあーちゃんだった。
 すぐ近くに住んでいたので、あーちゃんとはほ毎日遊んでいた。
お祖父ちゃんんとお祖母ちゃんにも、毎日顔を合わせていた。
昔の事を知っているBBAがこんな身近にいたとは。
 その日の放課後、いつも通りあーちゃんの家にいった。
あーちゃん家は入り口に大きな門がある。
その門から家までがとても長い。
お祖母さんはよく、その門から家の間にある芝生を手入れするのが日課のようだった。
 その日も、お祖母さんは芝生に水をやっていた。
いつも通り挨拶を交わして、お祖母さんに聞いてみた。

「 学校裏の神田神社について知りたいんですけど、何か知りませんか?」
「 あの神社の管理はうちでしているから、知りたいことは教えてあげられるよ。」









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月3日 白狐(3)

2023-04-03 21:18:43 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 4月3日 白狐(3)





 稲荷神社の意味は図書室の本で調べた。
狐を奉っているのが稲荷神社。
ならばあの白い狐は神様だ。
余計見たくなった。
 そこで私に救いの手を差し伸べたのは同じクラスのとくちゃんだった。
私が図書室で神社仏閣の本ばかり読み漁っている姿を見て、声をかけてくれた。
とくちゃんのお祖父さんは別の地方で神社を管理しているらしく、そういうことなら少し分かるよと話を聞いてくれた。
神田神社の由来を、少しなら知っているととくちゃんは言った。

     ”とくちゃんのお話”

 大昔、この辺りに一匹の狐が住み着いた。
畑を漁って細々と生き抜いていた狐はある日犬に襲われた。
追いかけられた狐はとうきびの畑の中に逃げ込んだけれど、葉っぱで体に切り傷が出来た。
びっくりして畑から逃げ出した狐を、犬はまた追いかける。
慌てた狐は、次に山葵の群小地に逃げ込んだ。今後は山葵の茎にある棘で狐は更に傷付いた。
またも飛び出し狐は逃げたけれど、傷付いて弱った狐は遂に犬に捕まり、殺されてしまった。
住人たちは狐に同情し、小さな稲荷神社を作った。
だからあそこには犬を連れてっちゃいけないし、山葵を供えちゃいけないんだよ。


私は、

” 嘘つけっ!”

と思った。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 4月1日 白狐(2)

2023-04-01 11:37:07 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 4月1日 白狐(2)





 なんせ徒歩2分、自宅はすぐに見えた。
ウォーリーを探せより簡単だった。
 今度はピアノの先生の家を見つけてみようと思った。
ピアノの先生の家はうちとは反対側の、学校の裏にある。
なのでみんなから離れて、反対側の下を覗き込んでみた。
神社があった。
 陰鬱としてただ怖いだけの神社が、真上から見るとだいぶ違う。
祭事でも公開されない本殿の奥が、上からだとよく見えた。
塀に囲まれた四角い何もない空間一面に、真っ白な砂利が敷き詰められていて、そのど真ん中にこれもまた真っ白な狐の石像があった。
 私はこの時生まれて初めて何かを見て、綺麗だと思った。
薄暗い神社の一番奥、そこだけが本当に一面真っ白。
綺麗で、ちょっと寂しかった。

 結局富士山は見えなかった。
富士山の方角に、少し大きめのマンションが建っていてちょうど視界を遮る形になっていたせいで。
去年は屋上から見えたのに、と零した先生の言葉はよく覚えている。
 屋上にいた時間は短かった。
なので私が神社を眺めていた時間も短かったはずなのに、どうしてもあの光景を忘れられなかった。
また見たいと、何度も思った。
 校舎は4階建てだったけど、4階のどの窓から覗き込んでも神社の全貌しか見ることは叶わなかった。
どうしても本殿を囲む高い外壁が、あの白さを覆い隠してしまう。
親や先生に聞いてみたところで、分かったことはずっと昔からある稲荷神社だということだけだった。













童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------