大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 5月31日 テディベア

2015-05-31 23:12:58 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 5月31日 テディベア


 俺が勤務する学校の話です。
男性職員の更衣室の奥に、配電盤みたいなのがある小部屋がある。
そこには鍵がかかっており、マスターキーが無ければ開ける事ができない。
ドアの前には誰かの荷物や段ボールが積まれていて、その部屋の存在すら気が付いていない職員が多かった。
 最近になって、サーバーの配線の関係で調査中にそこを開ける事になった。
マスターキーで鍵を開けて中に入ってみたところ、二畳ほどの小部屋の奥に、更にドアがあった。
 図面にも名前が付いていないし、何の部屋だろうと開けてみると、そこはコンクリ打ちっぱなしの一畳ほどの空間だった。
不気味だったのは、その床に半畳ほどのゴザが敷かれ、その上に学校で使用しているカーテンを畳んで敷き、更にその上にレースのカーテンを畳んで敷いた上に、ドア側に頭を向けた真っ黒なテディベアが寝かされていたことだ。
 間違っても生徒がいたずらで入れる場所では無いし、マスターキーを持っているのは管理職と事務職員くらいしかいない。
転勤した職員にも見たことがあるか聞いてみたが、誰も知らなかった。
 そして、再度数人で確認しに小部屋に入った時、さっきまで真上を向いて横たわっていた熊が、右肩を下にしてドア側に少し顔を向けたポーズに変わっていることに気が付いてしまった。
その後、誰もその部屋に確認に行こうとしなくなった。
俺達は全員その部屋も、テディベアのことも見なかったことにして触らないようにした。









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しづめばこ 5月30日 P372

2015-05-30 21:21:14 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月30日 P372  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 5月27日 坊さん

2015-05-27 19:32:08 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月27日 坊さん


 お坊さんから話を聞きました。

 幽霊と仏教って縁が深いと思ってる人は多いかもしれないが、実はそんなことない。
家が寺だし墓地の隣で生活してるが、幽霊なんて見たことなかった。
 なんなら、墓地のド真ん中で寝袋転がして寝れると思う。 
蚊とかのほうが怖いくらい。
そんな俺が生まれて初めて体験した話です。
 うちはいわゆる兼業を必要としない、お寺の布施収入だけで食べていけるくらいの規模。
といってもマンション経営とか外車乗り回すほど都会なわけじゃなく、葬儀の数もそこそこで、忙しすぎず、暇すぎず 悠々自適な僧職系男子として生活してた。
 とはいえ周りは田舎の過疎地 維持するのが難しい寺院も多く、大半が兼業してて跡継ぎに困る寺院も少なくない。
 そんな中、住職が夜逃げ同然で無住となった寺から、兼務してくれないか?というオファーが舞い込んだ。
その寺は俺が跡を継ぐ数年前から廃寺同然となっていたところで、檀家の数も50件未満。
正直今の今までどこに頼んでいたのか不思議なくらい、無住となって久しい寺だ。
 普通、寺院を兼業する場合はそのお寺の親戚となるお寺が面倒を見ることが多い。
お寺の住職に僧侶の親戚がいることも多く、また、親戚がいない場合でもお寺同士の親戚、というポジションが存在する
 住職同士が同じ師匠の弟子である、いわゆる兄弟弟子であったり、大きな寺の末寺である場合なんかもそうだ。
だけどその寺院は親戚のお寺がない上、周りの寺院との付き合いもかなり希薄だった。
檀家のほうもお寺から歩いて行ける距離ばかりで、本当に小さな隠居寺って立ち位置だった。
 お寺の兼務って非常に面倒で、自分のところも満足に行き届かないのに、あれやこれやと手がかかるものです。
とはいえ放っておくこともできず、色々と忙しい日々が続いた。
 そんな日のこと、住職が一年のうちでもっとも忙しいお盆を控えた夏の日、兼務先の檀家から墓勤めを頼まれた。
 目的の墓はそのお寺の境内地にあり、そこまで赴いて檀家さんと一緒にお勤めをした。
長い長い石段を登って、お経をあげたあとまた長い長い石段を降りる。
それでは、と挨拶をして別れ、自分の寺に帰った。
 お寺に着いて晩御飯を済ませ、次の日の予定を確認したところ、朝一番に出かけることを思い出した。
遠方の檀家さんの自宅で、朝一番に法事がある。 
早朝に出かけることになるんで、明日の準備をすることにした。
 いつもの衣をチェックして、持っていくものを確認したところ、数珠がないことに気がついた。

“ 白衣の袂にいれたかな?”

と見ても無い。 
 帰った時の着替えた状況を思い返しても外した記憶が無い。
車で移動したから、車の中を見に行ったけど無い。 
最後に使った記憶があるのは今日の墓勤めの時だった。

“ 墓地に忘れたかなー。 
明日の早朝に取りに行くのは面倒だなー。 
いざ行って無くても嫌だしなー。”

時間はまだ10時くらいなんで、懐中電灯持ってさっと探しに行くことにした。
 数珠なんていっぱいあるから、どれを持って行ってもいいわけだけど、やっぱり使い慣れててお気に入り、ってのもある。 
梅雨時期に野ざらしで雨に濡れて汚れるのも嫌だ。
 数時間前に訪れた石段のところまで来て、懐中電灯を点けた。
超暗い、さすが超田舎、照らしても石段の先が見えない。
足元だけ照らしてゆっくり登りはじめた時、木魚の音が聞こえた。
 そこは小高い丘のような場所のてっぺんにあるお寺で、丘のふもと周辺にぽつぽつと民家が並ぶ感じだった。
大半が丘の上のお寺の檀家なわけで、そこから聞こえてくるのかな、と最初は思った。
 なんとなーく石段登りながら周り見るけど、家のほとんどが灯りが消えてる(田舎の老人は寝るのめっちゃ早い)。
まだ半分くらいだから再び足元を照らしつつ石段を登る。 
 だんだん上から聞こえてくるような気がしてきた。
持ち運びできるような小さくて甲高い音じゃない。 
明らかに本堂に置いてあるような、結構な大きさの木魚の音だった。
そこで正直石段を登るのを躊躇した。
 この寺院、無住となった時点で本堂の傷みが激しく、改修を指揮する人もいないため、何年も前に本堂自体を解体してある。
丘のてっぺんはサッカー場の半分もないくらいで、墓地と、平地と、周りは全部うっそうとした林、建物なんか一切ない。
 一定のリズムで聞こえる木魚、お経とか念仏の類は一切聞こえない。

“ ちょっと痴呆の入ったじいちゃんあたりが墓でお勤めをしてるのかな?”

とも思った。
 
“ そんなことあるか?”

ぐるぐる思考しながらそーっと石段を登り終えたとき、境内の全景が見渡せた瞬間、音が消えた。
 山門とはおよそ言えない小さな門を超え、ぐるっと懐中電灯で照らしてみる。
真っ暗だけど、端まで明かりは届く。 

だーれもいない。

昼間にお勤めした墓は端のほうだから、そこに行くまでの道で墓石の間とかも照らしつつ進んでみる。 

だーれもいない。

目的の墓まで着いて、色々明かりを照らしてみたけど、数珠が見つからない。

“ 無駄足だったし、なんか怖いし最悪だわ・・・。”

と思いながら、来た道を引き返しつつ周りを照らしてみる。
やっぱり誰もいない。
 境内の入り口ってひとつしかないし、その門の足元は砂利ひいてあるから歩くとジャリジャリ音がするし、自分の足音しか聞こえない。

“ ここから聞こえたのは気のせいで、本当は下で鳴ってたのかな?”

と思いつつ門超えて石段に足を踏み出したとき、後ろの砂利からチャリンと軽い音がした。 ビクっとなって石段から落ちるかと思った。
 後ろに懐中電灯照らしたら、砂利のとこに数珠が落ちていた。 
俺が忘れてったやつ。
ここで一気に鳥肌と冷や汗で軽く頭真っ白になりつつ、急いで数珠拾って石段駆け下りて車に乗った。
 車の中で数珠を確認したけど、いつもの俺が使ってる普通の数珠だ。
すぐに車出さずに、5分くらい待機して石段見張ってたけど、誰も降りてこない。
最後に車のエンジン切って窓あけてみたけど、木魚の音とかもしない。 
怖いのと意味不明なのとで混乱しながら自宅に帰った。
 ハッキリ見てしまった、ってわけじゃないけど、本当に説明がつかなくて驚いた。
心霊体験って大半が勘違いだと思ってただけに、勘違いの余地がない場所であんなことあるか?
 人が隠れる場所も無いし、音源を間違うような地形でもない。 
数珠の出所も分からん。
なんだか、嫌々ながらあのお寺を兼務していることを咎められているような、後味の悪い体験だった。















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日々の恐怖 5月26日 おばちゃん

2015-05-26 21:02:18 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月26日 おばちゃん


 久しぶりに年の離れた従兄弟に会えたので、こんなこともあったよなーって話で盛り上がったんだけど、そんな思い出に1つだけ、懐かしくも不思議な話があった。
 もう10年以上も前の話だ。
当時小学生だった自分は、毎年夏休みになると従兄弟の住む長野県へ遊びに来ていた。
地元では見られない規模の花火大会、見たこともないような変な虫や生き物、よくわからない祭とか、従兄弟には色々な所に連れて行ってもらった。
 そんなある年、小学生の自分は従兄弟と2人でハイキングに行くことになった。
詳しい場所は伏せるけど、ある山から入って、ある高原に抜けるルートだ。
ハイキングとは言うものの、ただのガチ山登りで小学生にはきつかったのを覚えている。
 最初の1時間くらいは本当に楽しかった。
登山ルート沿いに沢があって、確か生まれて初めて山椒魚を触った。
大学生の従兄弟は物知りで生えてるコケがいかに珍しいかとか、この辺りにはどんな動物がいるとかいろいろ教えてくれた。
 しかし小学生の自分に山登りは、ただひたすらにキツク、自然というものにに飽き始めていた。
しまいには持ってきた携帯ゲーム機をいじりながら歩いたりしていた。
 そんなこんなで2時間ほど過ぎて、山の中腹で食事を終わらせ休憩し始めたとたんに、ガスなんだか霧なんだかで周辺がもやってきた。
 ルートがわからなくなると洒落にならないと、先を急ぐ準備をしていると、目の前の沢から、モンペを着てほっかむりのおばちゃん2人が段差をよじ登ってきた。
 挨拶をするでもなく山道を先へ進み出すおばちゃん2人。
従兄弟と自分は、

「 地元の人かな?」
「 山菜とか採れるんじゃない?」

なんて小声で話しながら、同じ道を進み始めた。
 おばちゃんたちのシルエットを追う形で霞の中しばらく歩いていたが、おばちゃんたちは足が速く、どんどん先に進み視界から消えた。
 それから時間も経たず、高原側からいかにも山が好きそうなお兄さんたちが下りてきて、

「 こんにちわ!」
「 ガスがきついから気をつけて。」
「 がんばれ。」

とか挨拶をしてくれて、自分も一人前に扱われたみたいでうれしくて、振り向いて降りていく集団に手を振った時に気づいた。

「 あのさァ、後ろからも似た格好のおばちゃんたちが登ってくるんだけど・・・。」

 靄がかかっているので顔立ちとかがはっきり見えるわけではないんだけれど、うねうねと曲がる山道、手を振り返してくれる兄さん達とすれ違うように、腰の曲がったシルエットが見える。
 従兄弟は、

「 うーん・・・・。」

と首をかしげ

「 あのさ・・・・。」

と切り出した。

「 さっきの兄さんたちが、おばちゃんたちに挨拶してたの聞こえた?」

言われてみれば、振り向いて手を振った時におばちゃんたちとすれ違ってるはずなのに、先ほどのような挨拶を交わす声は聞こえてこなかった。
 従兄弟は小声で続けた。

「 おばちゃんたち、何も持ってないんだよね。
普通道具もなしに山にはいるかな?
怖がらせちゃいけないと思って言えなかったんだけど・・・。
地元の人だとして、手ぶらで山菜取りにきて、麓に下りず、一言も話さずに山登るなんて普通じゃないと思うんだよね。」

「 おばけ?」

と従兄弟に聞いたと思う。

「 まさか~。
でも気味悪いし、先に行かせちゃおうか。」

とか言い出して、適当な石に座りこむとタバコをふかし始めた。
 自分も疲れていたので座り込み、後ろからやってくるおばちゃんたちが通り過ぎるのをぼ~っと眺めながら、

“ 田舎や畑で見かけるような、ただのおばちゃんだよなぁ・・・。”

なんて考えていると、あっけないくらい何事もなく、おばちゃんたちは目の前を通り過ぎていった。
 おばちゃんたちをやり過ごした後は靄も晴れて、目的の高原に無事たどり着けた。
普通に地元のおばちゃんたちだったのか、お化けの類だったのかはわからないけど、山の空気もあって、自分には忘れ難い、なんとも言えない強烈な夏休みの思い出になった。

 久しぶりに従兄弟と話せたんだけど、さすがに向こうも覚えていた。
当時は完全にお化けだと思っていたそうだ。
タヌキやキツネはタバコが嫌いという話を誰かから聞いた事があり、試しに吸ってみたと言っていた。












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しづめばこ 5月24日 P371

2015-05-24 22:48:57 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月24日 P371  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 5月23日 掃除機

2015-05-23 15:25:34 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 5月23日 掃除機



 昔住んでたアパートには、

“ 夜中に掃除機をかけてはいけない。”

という決まりがあった。
 騒音が迷惑とかじゃなく、夜中に爪を切ってはいけないとか言うのと同じしきたり的なものだと思った。
入居する時大家にそれとなく言われたし、近所の人の挨拶でも言われた。
 それで、

「 なんで、なんで?」

と聞いて回ったら、

「 何か、掃除機かけた時だけ変なものが出るんだ。」

って言われた。
 そんなバカな話があるかと思って、一応隣室の住人が不在の夜に掃除機かけたった。
だってそうだろ。
爪切りとかならまだなんとなく話としてわかるけど、掃除機みたいな文明の利器に取りつく妖怪なんているはずがない。
 ところが、いやー出た出た。
壁から子供みたいな細くて2mくらいある腕が出て、蛇みたいに床をはってんの。
 自分の仮説完全崩壊して、思わず、

「 なんでだよ!」

って叫んで、部屋から逃げ出してコンビニで夜明けを迎えた。
 恐る恐る戻ってみたら、手は消えてたが掃除機はコンセントからプラグが抜けて、あと冷蔵庫のドアが開いてた。

“ アイツ、電源切った?”
“ 冷蔵庫のもの、持って行った・・・?”

でも、冷蔵庫の中身は減っていた感じはなかった。
なんか、つくづく意味わからんかった。
 大家に聞いても純粋に由来不明だった。
今までアパートで死んだ人とかもなく、とにかく出ることだけわかっているらしい。
 隣人に聞いたら、隣人が夜掃除機かけたときは足が出たらしいし、

「 もう引っ越したいわ!」

って言いつつも、掃除機かけなかったらどうってことないし、結局、2年も住んでしまった。










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日々の恐怖 5月21日 写真

2015-05-21 20:48:14 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月21日 写真


 大学生の頃、警備員のバイトをしていたんだが、ある冬にスーパーの夜間の巡回警備を任された。
巡回警備なんてやったことはなかったが、店に行って店長に話を聞くと、そのスーパーは24時間営業のため、夜になると近所のホームレス達が暖を取りに来るらしい。
 店のイメージが悪くならないように、そのホームレス達を追い出してほしいということだった。
警備の期間は12月の21日から25日の五日間だった。


 まず一日目、さっそく数人のホームレスを追い出した。
彼らは耳や足が悪い人ばかりで、障害者を寒空の下に追いやるのは気が引けたが、それが仕事だから仕方ない。
そして最後に、50歳くらいのおばさんのホームレスの対応をすることにしたんだが、このおばさんがちょっとした有名人らしく、店長からもあの女を何とかしてくれと言われていた。
 と言うのも、そのおばさんはスーパーで万引きした服を着て、万引きした惣菜を食べ、万引きした化粧品でメイクをし、万引きした香水の香りを振りまくという人物だった。
警察には何度も通報したらしいが、万引きの瞬間がカメラに映っていない、一人二人の証言では逮捕できないなどと言われ、何もしてくれなかったらしい。
 俺はそのおばさんと話をしようと近付いていったが、おばさんは俺を見ると早足で逃げてしまう。
結局、走らない鬼ごっこをして初日を終えた。


 二日目、おばさんは俺が怖くないと判断したのか、こちらが近づいても逃げることなく俺を罵倒し始めた。

「 警備員の癖に貧相だ。」
「 男の癖に眉毛をいじるなんてオカマか。」

と見た目の悪口から始まり、

「 あんたの卑怯さはみんなが知ってる。」

などと意味不明なことも言われた。
 おばさんを刺激すると面倒なことになりそうだったので、俺はへらへら笑いながら相槌を打っていた。
一通り罵倒を聞き終えたところで、

「 買い物をされないなら退店してほしい、と店長が申してまして・・。」

と伝えると、おばさんは財布を取り出して見せ、再び俺やスーパーを罵倒し始めた。
おばさんは意外と頭の回転が早く、打つ手が無くなった俺はおばさんの悪口を笑顔で聞いていた。


 三日目、おばさんは自分から近づいてきて俺を罵倒し始めたが、それに飽きたのか、色々と質問してきた。
年齢や学歴のこと、警備員をやっている理由、収入など訊ねてきたので、俺は嘘を交えつつ答えてやった。
 しばらく問答が続いた後、俺は、

「 家族はいらっしゃらないんですか?」

と逆に質問してみた。
 おばさんは誰が質問していいって言ったんだと悪態を付きつつも、家族のことを語り出した。
要約すると、数年前におばさんの娘が強姦された上、夫は強姦されるような場所に行った娘も悪いなどと言ったらしい。
それ以来おばさんは極端な男性嫌いになり、離婚して娘と二人で暮らしているそうである。
 俺は心底同情しているという表情を作りながら、おばさんの話を全く信じていなかった。
娘がいるならホームレスをやっているわけがないし、赤の他人の俺に娘が強姦されたなんて教えるわけがない。
結局、おばさんを追い出すことはできなかった。


 四日目、俺はおばさん以外のホームレス達を追い出すと、おばさんを無視して店内を巡回した。
おばさんを避けた理由は二つあった。
 一つは、あの警備員はホームレスとお喋りばかりしている、と店に言われるのを防ぐためである。
そんなことが会社に報告されれば、始末書を書かされた上で説教を食らうだろう。
 もう一つは言わずもがな、この日はクリスマスイブだった。
イブの夜にホームレスのおばさんと語り合うなんて余りにも虚しい。


 最終日、この日もホームレス達を追い出し、店を巡回していた。
おばさんを追い出すのは諦めたが、せめて俺がいる間は万引きさせたくなかった。
 今年も糞つまらない一年だった、と呟きながら店内を歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、おばさんがにやにや笑いながら立っていた。
 不意を突かれた俺はお辞儀して立ち去ろうとしたが、おばさんは俺の腕を掴み、一冊の手帳を渡してきた。

「 あたしの娘だよ。」

おばさんはにやつきながら言った。
俺はもうおばさんにはうんざりしていたのだが、愛想笑いをしつつ手帳を開いた。
 それは小さなアルバムだった。
1ページに一枚ずつ写真が収めてあり、最初は赤ちゃんだった女の子が、ページをめくる毎に成長していく。
肌が白く、目が大きくて綺麗な女の子だが、鼻や輪郭がおばさんにそっくりで、娘がいるというのは事実らしかった。

「 綺麗な娘さんですね。」

と言いながらアルバムをぱらぱらとめくり、中盤まで来たところで、女の子の寝顔が並んだ。
 それが3枚ほど続いた時、この娘は病気なのだと思った。
顔色はそれほど悪くないのだが、だんだんと頬がこけ、目元がくぼんでいく。
この様子だと娘は入院していて、おばさんは自分に回す金がないからホームレスをやっているのではないかと思えてきた。
俺は表情だけではなく、心底おばさんに同情しつつあった。
 しかし、眉間を寄せながらページをめくっていくと、突然俺の中に違和感が芽生えた。
これで7枚寝顔が続いている。
そして8枚目、俺の手は止まった。
 これまでの寝顔は首が写っていなかったのだが、その写真の隅にそれが写っていた。
首にはアザがあった。
紫色の、横に一本伸びたアザが。
 俺はもうページをめくることができなかった。
手が震えるのを堪えながらおばさんを見ると、彼女は俺を罵倒していた時とは別人のように優しく微笑みながら、俺の持つアルバムを見つめていた。
 俺は押し付けるようにアルバムを返すと、用事を思い出したとおばさんに告げて店の事務所に走った。
事務所にいた店舗責任者に事情を話し、警察を呼んだが、おばさんはパトカーが到着する前に姿を消していた。


 それから間もなく俺は警備会社を辞めた。
おばさんと話している間、俺はずっと会社名と本名が書かれた名札を付けていたからだ。
 あれから数年経ったが、現在まで警察からは一度も連絡が来ていない。
連絡がないということは、あのおばさんには事件性が全く無かったということではないだろうか。
 当時の俺は恐怖に呑まれて冷静な判断ができなかったが、今考えるとあの小さなアルバムは、おばさんが警備員である俺をびびらせるために作った偽物ではないかと考えるようになった。
そう思えば、気分的に楽になるからだ。










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しづめばこ 5月20日 P370

2015-05-20 18:32:23 | C,しづめばこ


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日々の恐怖 5月19日 猫の鳴く声

2015-05-19 18:45:29 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 5月19日 猫の鳴く声


 去年まで大学のある大阪に住んでました。
住んでたのは、日本最大のドヤ街、日本で唯一暴動が起こる街と言われている所のワンルームマンションです。
貧乏なんで、家賃が安いのが最大のメリットでした。
 でも、周辺は、変な人がすごく多いです。
ホームレスは盛り沢山だし、やくざ事務所もいっぱいある。
黒いつなぎの黒○会は見た目からしてかなり怖いです。
売春宿もジャンキーも頭おかしい人も、まぜこぜの街だった。
 道を歩いてて、

「 シャブ売ってるとこ知らん?」

って聞かれたこともありました。
 まぁそれはいいとして、その街にあるマンションの一階に住んでました。
オートロックじゃないから、不審者も結構マンション内に入ってきたりして、ポストに電波文入れられたり、勝手にドア開けられそうになったり、マンション内にあるコインランドリーのお金入れる部分だけもぎ取ってくヤツもいたりした。
 それで、ある日の深夜、家でテレビ見てたら、ドアの向こうから猫の鳴き声が聞こえてきた。
猫は、かん高い声で寂しそうに何回も何回も鳴いていた。
 しばらくしたら郵便受けの所を、カリカリカリって音がした。

“ 多分爪で引っ掻いてるんだろうな。
そんなに中に入りたいのかな・・・?”

とか思った。
 しばらくして、

“ 鳴くのも止めないし、中に入れてやろうかな・・・。”

って思って玄関まで行って、ドアスコープ覗いた。
 場所柄、ドア開けるとき覗く癖がついていた。
そしたらドアの向こうで女がこっちをじいーっと見てた。

“ わっ!”

びっくりして、すぐに目を離したんだけど、今度は郵便受けがガッチャンガッチャン鳴って、さっきのカリカリってのも女がやったんだなって分かった。
 怖くて動けなくて、しばらくしたら足音聞こえてどっか行ったのが分かったから、すごくほっとした。
大学卒業して街から離れたけど、猫の鳴き声聞くとビクッとすることがある。










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日々の恐怖 5月16日 疑問

2015-05-17 13:39:14 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月16日 疑問


 警官をしている友人が数年前に体験した話です。
そいつは高速道路交通警察隊に勤めているんだけれど、ある日他の課の課長から呼び出された。
内容を聞くと、一週間前にあった東北自動車道の事故の詳細を知りたいとのことだった。
その事故ってのは、一家四人が乗った自動車が平日の深夜に中央分離帯に激突して全員死亡した事故の事だった。
 事件のことを少し詳しく話すと、高速を走行していた長距離トラックから××インターチェンジ付近で乗用車が燃えているって通報があって、夜勤で待機していた友人が現場に直行したんだけれど、友人が到着した時には既に乗用車の中にいた人は全員黒こげになって死んでいた。
その後身元の特定と検死が行われて、歯の治療記録から死んだのは東京西多摩地方に住んでいる家族だってのがわかった。
 死んだのはKさんと妻、長男、長女の四人だった。
アルコールが検出されたとか、見通しの悪い場所だったとかの事故を起こすような要因は見つからなかった。
特に不審な点もなくそのままハンドル操作のミスによる普通の事故として処理された。
 それで友人も特に何の変哲もない事故でしたよって、他の課の課長に言ったらしいんだけど、その課長が、

「 実は・・・・。」

て言って呼び出した理由を話してくれた。
 その話によると、昨日の夜に少年が東京の○○市にある警察署に訪ねてきて、

「 僕が死んだとニュースでやっていたのだけど、僕はいったい誰なのでしょうか?」

って言ったらしい。
 少年の話をまとめると、一昨日の朝に朝寝坊して起きたら家に家族が誰もいない。
どこかに行ったのだと思いそのまま気にも留めていなかったが、夜になっても誰も帰ってこないし連絡もない。
心配になって警察に連絡したが、子供の悪戯だと思われたのかすぐ切られてしまった。
 祖父母や親戚に連絡してみたが、誰も連絡を受けていないと言われた。
そのまま朝まで待っていたが、つけっぱなしのTVのニュースから、自分も含めた家族全員が死んだことになっていると知った。
そんなことはないはずなので詳しく知りたくて訪ねて来たとのことだったらしい。

 その話を聞いた友人はその事故の資料を改めて提出したんだけど、見直してて不思議なことに気づいた。
家族の歯科治療記録との照合で、父親、母親、長女は間違いなく本人だって判明したんだが、長男は頭部の損傷が激しく、照合ができなかったと記録に書いてある。
しかも家族は青森近くで事故を起こしたが、両親は中部地方出身で東北に知り合いはいないことがその後の調査で明らかになっていた。
 その当時は旅行にでも出かけた際の事故って事になったんだけれど、どうにも不自然なことが多すぎる。
それで友人は資料を提出してから数日後に、例の課長に事件の進展を聞いてみた。
すると課長は口ごもりながらこう答えたらしい。

 例の少年は身体的特徴や見た目は死んだ長男によく似ていたが、歯形が違うため別人だと思われる。
そのことを告げると少年が錯乱したため、心療内科のある警察病院に搬送した。
 その後の調査で事故死した家族の家を調査したが、事故後誰かが住んでいた形跡はなかった。
そのことを告げると、少年は完全に精神に異常をきたしてしまったため、結局どのこの誰だか分らず今も病院にいる。
もう済んだ事だから、今後かかわらなくていい。

 友人はそこまで話すと最後にこう言った。

「 黒コゲの死体は本当は一体誰で、自称長男の少年は一体誰なんだろうな?
それと、あの家族は何で平日に誰も知り合いのいないところに向かっていたんだ?
俺は思うんだ。
あの家族は何かから逃げてたんじゃないかって。
何から逃げてたのかはわからないけど。」










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日々の恐怖 5月13日 やれること

2015-05-13 18:30:03 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月13日 やれること


 実家にある掛け軸の話です。
それは、いつ誰が買ってきたのかも定かでない掛け軸です。

 実家の床の間には、龍神様の描かれた小ぶりの掛け軸がある。
聞けば祖母が嫁いできた頃には既にあったって言うから、既に70年以上前のものだ。
この掛け軸に悪さをすれば良くない事が起こる。

 私が5歳くらいの時の話だ。
お盆ってこともあって、いとこが家に泊まりに来た。
 同い年の男の子は結構な暴れ者で、龍神様の掛け軸に向かって物を投げ始めた。
うちの家族やその子の母親は、

「 それは一応神様なんだから悪さをするな。」

みたいなことを言うんだけれど、いとこは言う事を聞かずに掛け軸に物をぶつけていた。
 その夜、その男の子が大泣きして、その声で家族中目が覚めた。

「 手がぁ・・!手がぁ・・!」

って言って、男の子ギャン泣き状態。
見ると、その子の右手がパンパンに腫れていた。
 その腫れ方っていうのがちょっと変わっていて、薄手のビニール手袋に水をパンパンに入れると、手の平の所に水が溜まって風船みたいになるんだけれど、まさにそんな腫れ方だった。
 救急で病院に行って見てもらったら、右手に水が大量に溜まっていた。
案の定、

「 ほら、言わんこっちゃない!
悪さするからだ!」

ってなったんだけれど、その翌年、更に暴れ者になった男の子はあろうことか、その掛け軸をわざと蹴っ飛ばした。

「 祟りなんてねーよ、やれるならやってみろよ!」

って言葉付きだった。
 そしたら今度は、次の日に何も無いところですっころんで、その拍子に右足の骨とあばら骨を折った。
どうやら龍神様、やれることをやったらしい。










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日々の恐怖 5月11日 町に行く道

2015-05-11 20:26:20 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月11日 町に行く道


 数年前に務めていた病院ってのが東北のド田舎で、山間にあったんだけど、ほんの少し一緒に働いてたおじさんに聞いた話です。
大分昔の事だよ~、と前置きしてから話してくれた。

 世間でいうお盆休み期間でも、病院に勤めてるとなかなかそういうのが取れない。
その日もいつもどおり業務を終えて病院を出ると終バス時刻まであと15分くらいだった。
 病院を出て5分ほどの場所にある小さなバスの待合所の中は真っ暗だったので、真っ暗な山道の中でほんの少しだけ外灯の明かりが届く外に出てバスを待っていた。
バスが来る方向を見ながらウォークマン(当時の事だからカセット式)を聞いていると、町の方から一台の車が通りかかった。
 おじさんの目の前で車が止まり、窓がサーっと開いた。

“ 何だ?”

と思っていると、中から男の人が顔を出し、

「 休みを利用して遊びに来たけれど、子供が熱を出してしまった。
救急病院に行こうとしてるのだが、道に迷ってしまった。
どこをどう行けば町に出られるか教えて欲しい。」

みたいな事を言ってきた。
 車の中からはエアコンの冷気が外に溢れ出し、蒸し暑い外にいるおじさんでさえ、寒っとなってしまうくらいだった。
 車に乗っていたのは、四人家族で運転席に父親、助手席に母親、
後ろの席に4歳くらいの男の子が1人、その横にタオルケットをすっぽり被って横になっている小さな子がいた。
 車内は暗くてよく見えなかったが、男の子はこの寒い車内の中、タオルケットを被っている子を必死で扇いでいたそうだ。
 おじさんは、

「 もうしばらく走るとUターン出来る場所があるから、そこまで行って、今来た道を戻って行ってくれ。
途中で新しく出来た道路があるから、そこをまっすぐ・・・。」

と、親切に町まで出る道順と、どこに救急病院があるのかを教えたそうだ。
 父親と母親は、

「 助かりました、ありがとうございました。」

と言って、車を走らせた。
少しすると、バスが来たのでおじさんはそれに乗り込んで家に帰った。

 季節は過ぎて秋の山菜取りのシーズンになった。
地元の人は勿論、他の地域の人達も山菜を求めて山へやってくる。
 その日もおじさんは仕事の為にバスで山道を通っていた。
すると、地元の警察がパトカーで何台も往復しているのが見えた。

“ 山菜取りに来て誰かが遭難したな。”

と思い、顔なじみの運転手に、

「 遭難でもあったのかね?」

と話しかけると、

「 いや、違うんだよ、今朝方ずっと向こうの山のほうで子供の死体が見つかった。」

と予想外の答えが返ってきた。
 話を聞くと、死体を発見したのは山菜取りに来た人で、山の中で何かに転んでつまずいたらしい。
何だろと思って振り返ったら、一部が白骨化した子供の死体だったという。
どうやら、埋められていた子供の死体を野生動物がほじくり返したようで、食べられたような後もあったそうだ。

 犯人はそれからしばらくして逮捕された。
あの日、おじさんに道を尋ねてきた夫婦だったそうだ。
 供述によると、

「 娘を出先でウッカリ死なせてしまった、つかまるのが嫌で人目につかない場所に埋めた。」

だった。
 おじさんは暫くショックを受けていたそうだが、ある日ふと気がついた。

「 あの日、俺に町まで行く方法を聞いてきたのは、子供を助けたいからじゃなくて、どこの道をどう行けば人目につかない子供を捨てられる所に行けるかを尋ねていたんじゃないだろか?」

そうだよな、おじさんの言う道と逆方向に行けば町から遠ざかるもんな。













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しづめばこ 5月10日 P369

2015-05-10 22:29:57 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月10日 P369  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




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日々の恐怖 5月9日 痣

2015-05-09 19:23:59 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 5月9日 痣


 これは母方の婆ちゃんから聞いた、婆ちゃんが幼少の頃に体験したという話です。
婆ちゃんは3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいた。
兄と婆ちゃんは元気そのものだったが、姉は生まれつき身体が弱くて毎日病床に伏しており、衰弱の為か声も出にくい為に用があると家族の者を鈴を鳴らして呼んでいた。
 しかし両親は共働きで日中は家におらず、姉の面倒は妹の婆ちゃんがしていた。
看病と言っても幼少の為に出来る事は大した事がなく、水や食事を運ぶ程度の事だったらしい。
姉の病状は回復の兆しも見えずに痩せ細り目は窪み、それはまるで死神のように見えたそうだ。

 そんなある日の事だった。
姉が震えるか細い声で、病床から兄に向かって言った。

「 お水、ちょうだい・・・。」

それに対して兄は顔を顰めて

「 やーだよ、ボクはこれから遊びに行くんだから。」

と言い捨てて、さっさと家を飛び出してしまったらしい。
 姉はその言葉がショックだったんであろう。
顔を歪めて憎々しげにその姿を目で追っていたらしい。
そして今度は婆ちゃんに顔を向けて、

「 ○○ちゃん、お水、ちょうだい・・・。」

婆ちゃんは、その歪んだ姉の表情に突然恐怖心が込み上げてきたらしく

「 わ、わたしも遊びに行ってこよー。」

と逃げ出そうとしたその時、恐ろしい力で腕を掴まれて、

「 死んだら、恨んでやる。」

と言われた。
婆ちゃんは泣きながら、

「 嫌だーっ!」

と腕を振り解いて、外へ走り逃げてしまった。
それから婆ちゃんは姉に近づく事なく過ごし、数週間後に姉は他界してしまった。

 それから数日後の婆ちゃんが部屋に1人でいた時の事だった。
チリン・チリンと何処からか鈴の音が聞こえてきた。
婆ちゃんはビクッとしながらもおそるおそる振り返ると、恨みの籠もった目でこちらを見る姉が立っていたそうだ。
それからというもの、婆ちゃんが1人きりの時に姿を現しては、姉は恨みの視線を送り続けてきた。
 しばらくの間は、婆ちゃんも1人で耐えていた。
それというのも、姉は自分が水をあげなかった事が原因で死んでしまったと後悔していたからだ。
 しかしあまりの恐怖に根を上げた婆ちゃんは親に泣きつき、水をあげなかった懺悔を悔いてすべてを話した。
それを聞いた母親は、

「 あなたのした事は酷い事だけれど、それが原因でお姉ちゃんは天国へ行った訳じゃないのよ。
お母さんがお姉ちゃんに話してあげる。」

と、抱き締めてくれたらしい。
 その夜、婆ちゃんを部屋に1人した母親は隣の部屋でじっと姉が現れるのを待っていた。
その時、母親にも鈴の音が聞こえたらしい。
 婆ちゃんの悲鳴と共に部屋へ入り、

「 ○○ちゃん(姉)、もう○○(婆ちゃん)の事を許してあげて。
決して○○ちゃんの事が憎くて水を渡さなかった訳じゃないのよ。
好きだけど、怖くなっちゃったんだって。
それも全部○○ちゃんを置いて仕事していたお母さんが悪いの。
だからこれからは、私のところへ出てらっしゃい。」

そう言ったらしい。
 それからというもの、姉は出てこなくなった。
婆ちゃんも姉が許してくれたんだと思い、私に話を聞かせてくれたんだと思う。

 そんな婆ちゃんが1年前、心筋梗塞で亡くなった。
心よりご冥福をお祈りする。
と共に、私しか気づいていないかもしれない親族にもしていない話を追記する。
 婆ちゃんが亡くなったのは、婆ちゃんから聞いていた姉の命日と同日だった。
そして亡くなった婆ちゃんの腕に、手形らしき痣があった。
 何故、今頃に・・・ 。
それは婆ちゃんが亡くなった今、知りようもない謎である。










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しづめばこ 5月7日 P368

2015-05-07 19:00:54 | C,しづめばこ


しづめばこ 5月7日 P368  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




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