大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 9月30日 穂高(2)

2016-09-30 18:51:12 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月30日 穂高(2)




 足を滑らせれば即ち死を意味する岩崖の僅かな足場を頼りに尾根を通過していると、下方から風が吹き上げ、

“ おおおおおお・・・。”

山と共鳴したのか気味の悪い音が響きました。
 風の音とはいえ、幾千ものこの世の者では無い者の叫びに聞こえた私は、鳥肌が抑えられませんでした。

「 集中しろよ。
風で煽られる。
絶対に身体を山側から離すな。」

それを察してか、先輩がかけてくれた激励の言葉が心強く感じました。
 キレットに足を踏み入れて2時間、最下部のコルを通過し、北穂高岳への登りの難所に差し掛かりました。
壁のようなその登りは、ピンが打たれる以前は高度なクライミング技術が必要であったと見て取れます。
 先輩が先行し、私は下で確保を行います。
先輩が登り切った後、降りてきた確保のザイルを装着しピンに手をかけました。
 中程まで登った時、耳元で虚ろな男の声が囁きました。

「 おい!」

私は全身の血が凍りつきました。
次の瞬間、何者かに右足を捕まれ、私は足を滑らせました。

「 おい!大丈夫か?!」

確保のザイルが無ければ命は無かったでしょう。
 先輩の声に答えようとしたところ、

「 助けてくれ。」

耳元で声が響き、私は身震いしました。
虚ろで生気のないあの声を忘れる事は出来ません。
 その日は奥穂高岳を諦め、北穂高岳の山小屋に宿泊することにしました。
そこで出会った山のベテランにこの話をしたところ、彼も同じ様な経験をした事ことがあるといいます。
人のいない筈の場所で声が聞こえたり、山小屋で女に足を捕まれる悪夢を見たが、仲間も全く同じ夢を見ていたなどです。
山の経験が長いと少なからずそういった不思議な経験をするらしく、明日は山を降りたほうが良いとの忠告を頂き、私達はそれに従いました。
 朝の内は雨が残り、濃い霧が立ち込めていましたが、下まで降りてくると晴れ間も見えるようになりました。
私達は下山の前に遭難者を慰霊する穂高神社奥宮へ足を運び、今命が有ることの感謝と、遭難者の冥福を祈りました。
 無事に帰宅した翌朝、先輩からの電話が鳴りました。

「 おい今のテレビのニュース見たか?!」
「 何かあったんですか?」

 そのニュースは私達が2日前に通った道、北穂高岳の北側で早朝に男性が滑落し死亡したことを伝えていました。
北アルプスの犠牲者の中には連れて行かれた方もいるのではないでしょうか。
現実的ではないと分かっていても、あのような経験をした後ではそう思わざるを得ないのです。












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しづめばこ 9月29日 P455

2016-09-29 19:11:53 | C,しづめばこ



しづめばこ 9月29日 P455  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 9月28日 穂高(1)

2016-09-28 18:06:56 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月28日 穂高(1)




 数年前、私と登山仲間の先輩とが、北アルプス穂高連峰での山行中に経験した話です。
その日は穂高連峰の北に位置する槍ヶ岳から稜線を伝って奥穂高岳へ抜ける縦走ルートを計画していました。
 ルート上には南岳と北穂高岳を結ぶ、大キレットと呼ばれるV字状に切れ込んだ岩稜帯があります。
痩せた岩稜が連続するこのルートは、一般登山道としては屈指の難易度を誇り、毎年滑落による死者が絶えません。
 当日の朝こそ太陽が顔を覗かせていましたが、南岳に達するころには濃霧に覆われ、雨も滴り始めました。
予報より3時間も早い雨です。
私達は文句を垂れながら雨具を纏い、互いの身体をザイルで結びました。
 キレットは岩肌に梯子や鎖が取り付く厳しい下りで始まり、一気に200m程下るとキレットの最下部、コルまでアップダウンが続きます。
足を踏み入れて1時間もしない内に雨風は強まり、私達の身体を容赦無く撃ち始めました。
 ここで引き返す選択肢もありましたが、体力は十分であるし、今日中にはキレットを越えておきたい。
霧の中にぼんやりと浮かぶ岩山は私達を阻むように佇んでいましたが、私達はそれへ足を向けました。
 岩肌に取り付くようにして岩山を登り始めると、頭上から微かに男の声が聞こえてきました。
登山シーズンは過ぎているし、このような天候です。
私達以外にも先を急ぐ者、物好きがいるんだなと考えながらも、私は久々の山行者との出会いに心を踊らせていました。
 山頂に近づく頃にははっきりと男の声が聞こえましたが、山頂で見た光景は拍子抜けするものでした。
人影は無く、切り立った細い尾根が伸びているのみ。
 今私達が通ってきたルートは人一人がやっと通れる細いものであり、すれ違う事は出来ません。
また、尾根は僅かばかりの足掛かりを残して鋭角に切り立ち、下方は霧に吸い込まれています。

「 あれ、さっき男の人の声聞こえましたよね?」
「 お前も?俺も聞こえた。」
「 落ちた、なんて事はないですよね。」
「 まさか、さっきも聞こえたし、落ちるような音も声もしなかっただろ。」

先輩の表情は不安と疑問が入り混じったようなものでした。

「 空耳だろ、早く行くぞ。」

空耳とは思えませんでしたが、反論しようとは思いませんでした。











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日々の恐怖 9月27日 狐火(2)

2016-09-27 18:57:03 | B,日々の恐怖





  日々の恐怖 9月27日 狐火(2)





「 そもそも大学生かどうか以前に向こうに何があるかもわかんないし、向こうには行かないほうがいいって誰か言ってたし。」
「 誰だよそんなの言ったの。」
「 さっきそこで擦れ違ったおっさん。」

 そこで皆で振り返ったんだけど、そのおっさんがどこにもいない。
数分前のことだし、合宿所に続く道以外は一本道だから姿くらい見えてもよかった。
しかし、まぁ真っ暗だったから見えなくてもおかしくない。
 ここで、

「 なんかおかしくね?」

って気づいた。

「 近くに民家もないのに、真夜中におっさんが懐中電灯もなしに湖を散歩するか?」

振り返ると、火はいつの間にか全部消えてて真っ暗だった。

「 やばい、やばい。」

って言ったのがきっかけで、そっから先は全速力で合宿所に戻った。
 合宿所戻った頃には皆笑顔で、あー怖かったーとかって笑ってたんだけど、そのまま朝になって、もう一度そこに行ってみたら、火が複数見えたそこは、道路どころか船もない水の上だった。
 霧が凄くて近くまで行けなかったのが残念だった。
結局あれなんだったんだろうなと、そのときは思った。


 なんでこんなことを思い出したかっていうと、大学生になって同じような経験をした。
夜中コンビニ行った帰りに、神社の近くでぼんやりした火が見えて、もしや放火かって近くに行こうとしたら、擦れ違ったおばあちゃんに、

「 そっちは行かんほうがええよ。」

って言われて、改めて見たら火も消えてて、気のせいかなってそのまま家に戻ったんだけど、

“ そういや夜中の3時に着物きたばーちゃんが歩いてるもんかな?”

って思って、高校の頃のこれを思い出したから。











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日々の恐怖 9月26日 狐火(1)

2016-09-26 20:15:12 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月26日 狐火(1)




 高校の頃、部活の合宿で夏休みに山中湖に行った。
毎年恒例で借りてる大学管轄の宿舎で、とにかくボロい。
民家は勿論、最寄りのコンビニまで2kmの陸の孤島で、山中湖までは徒歩3分くらいだった。
 高校入ったばっかりのテンションで、同室になった4人で当然の如く夜更かししてたわけだが、誰が言い出したのか探検しようぜって話になった。
探検つっても何も用意してないし地理も全然わからないから、ちょっと外出て散歩する感覚だった。
 宿舎を抜け出した時間は、夜中の2時くらいだった。
都会育ちだからか、探検っていうよりは、虫でけー空気きれー星やべーって田舎の夜空に感激してて、山中湖一周しよーって和気あいあいしてた。
 湖のとこまで出てみると、遠くの方でぼんやりした火が2つ3つあって、大学生が水辺で花火でもしてんのかなって話になった。
車もまず通らないし、真っ暗で、人の姿なんてまったく見えないんだけど、1つか2つふわふわ動いててあとは動いてなかった。
 とりあえず水辺沿いに近くまで行って、大学生とかだったら混ぜてもらおーぜって流れになった。
 この時点で2人はびびってて乗り気じゃなかった。
夏休み入ったばっかりで大学生なんているわけなくね?とか、真っ暗で距離感わかんねーやらこの時間帯で迷子になったら洒落になんねーとか、すれ違ったおっさんにも、

「 そっち行かない方がいいよ。」

とか言われた。
 そんなの気にしないでどんどん行ったけど、ちょっと行ったところで火の動きがぴたっと止まった。
こっちに気づいたのかなと思った。
 夜中なのでテンションあがったヤツが、

「 あのー、すんませーん!」

って声をかけた。
 そしたら、暫くして火が1つ消えた。
もう1つも消えた。
 ここで、誰かが、

「 戻ろう。」

って言い出した。












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日々の恐怖 9月25日 原稿

2016-09-25 18:22:41 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月25日 原稿




 10年程前に母が痴呆と分かり、現在では娘の顔も判断できなくなりつつある。
介護のため私も好きな同人誌は停止にならざるを得なくなったけれど、母が痴呆になって、

“ ああ、母は父と結婚して幸せだったんだなぁ・・・・。”

と感じる瞬間が多くなった。


 母はよくチラシを並べながら話をする。
話の内容はチラシとは関係なく、意味も分からない。
 父は後ろで、

「 うんうん。」

と聞いている。
 床いっぱいに色とりどりのチラシが並んで、母はようやく満足する。
大体その上で丸くなって寝てしまう。
 次にいつ起きだして何をしだすかも分からないので、その時間が数少ないホッと一息つける時間だ。
母に布団をかぶせ、私と父はコーヒーを飲む。


 先日も仕事から帰ったら母が床に紙を並べていた。
私は、

“ 今日は白黒の紙か・・・・。”

と思って床を見る。
 どっから出してきたのか、捨てたと思っていた私の同人原稿を並べていた。
母の作業が終わり、父と床いっぱいの原稿を眺めコーヒーを飲んだ。

「 父さんなぁ、お前が絵を描くの止めるって聞いて、お前が一生懸命作ったものだから、捨てたら後悔すると思って、ゴミ袋から出して取っておいたんだよ。」

 泣いた。
ホモの原稿を見ながら泣いた。
ガチムチおっさんが、亀甲縛りで天井からプラプラしてる原稿を眺めて号泣した。
嬉し泣きではなかった。












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日々の恐怖 9月24日 青(3)

2016-09-24 11:50:41 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月24日 青(3)




 ルームミラー見たら赤灯が見えたし、じゃあ大丈夫かと思い、言われるがままに現場を離れた。
 気を落ち着かせる為に次のPAに入って一服しながら後輩に聞いてみた。

「 青い人って、なに?
何かあるみたいなこと言ってたけど、あれはなに??」

とかいろいろ質問て言うか、尋問してみた。
そしたら、

「 昔からなんとなくわかるんです。人が死ぬなぁとか。
特に青い人。
アレに憑かれてる人は、本当に死期が近いんですよ。」

それで、

「 見えるんなら助けることって出来るんじゃないのか?」

って聞いたら、

「そう思った時もあったけど、無理なんです。
青い人に憑かれちゃうと。
自分はただ見えるだけだし・・・。」

って話してくれた。

「 なんで早く現場から離れたかったのか?」

には、

「 青い人が車に乗ってきそうだったから。」

「 なんでオレにも見えたか?」

には、

「 自分と波長が合う人は、一緒にいると見えちゃうことがあるんです。」

 後輩、何度も何度も、

「 すいません」

って謝る。
別に悪い事した訳でもないのに。
てか、オレは単純に、

“ スゲー!”

としか思わなかったが。
 車で走り出してから後輩が、

「 いつも自分しか見えてなくて、本当は青い人はいなくて、自分がオカシイだけなんじゃないかって思ってた。
だから、今回はなんかホッとしました。
1人で人の死を感じるのってキツイんですよ。」

と言った。
 俺は、

“ もしかしたら何度も言ってたすいませんは、亡くなった人へ向けて言ってたのか?
助けられなくて、すいませんって・・・。”

と思った。
 その後輩、出張続きの仕事が嫌で会社辞めちゃって、そのまま疎遠になったのが悔やまれる。
ただ、青い人が元人間だったってのは冗談であってほしい。











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日々の恐怖 9月23日 青(2)

2016-09-23 18:15:43 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月23日 青(2)




 夜中の地方の高速はガラガラで真っ暗だった。
疲れてるし、事故起こしても嫌だから、100キロくらいで走ってたら、PAで見たBMWがスゲー勢いで追い越していった。
 それを見た後輩は、

「 この先気を付けてくださいね、もうどうにもできないから・・・。」

みたいな事を独り言のようにボソボソ言い出す。
 遠ざかってく車のテールランプ見ながら、

“ こいつ、こんなキャラだったっけ???
なんだろね・・・?”

って思った。
 それで、テールランプが見えなくなるかならないかくらいの距離で、いきなりBMWのヘッドライトがこっち向いて闇夜に消えていった。
 一瞬理解不能だった。
とりあえずハイビームにした。
そして、よくわからんから減速した。

「 やっぱり・・・。」

呟く後輩。
 今でもハッキリ覚えてる光景。
後続車なんていなかったけど、一応ハザード焚きながら減速しつつ走っていたら、横倒しで一車線塞いでるミニバンがあった。
 散乱してる何か。
横向きに止まってるトラック達がライトに照らされて浮かび上がった。

「 マジかよ!?」

って叫んだと思う。
後輩は黙り込んでいる。
 なんとかぶつからないようにそこを抜けたら、さっきのBMWが中央分離帯に逆向きで突っ込んで止まっていた。
他にも路肩に何台かの車が止まってたけど、全てが明かり一つつけてない。
 もうね、後輩の言葉よりも事故の悲惨さに意識いっちゃって、

“ 発煙筒焚いて、警察&救急に電話!”

って思い路肩に止めようとしたら、後輩が、

「 止まらないでください、お願いですから・・・。」

って言う。

「 でも、このままスルーする訳にもいかないだろ。」

って言ったら後輩は、

「 大丈夫です。
路肩に止まってた車は事故に巻き込まれてないから、通報してくれてます。
だから、ここから早く離れましょう。」

って強い口調で言う。













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日々の恐怖 9月22日 青(1)

2016-09-22 18:43:37 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月22日 青(1)




 仕事が遅くなって車で後輩と帰るときの話です。
その日っても、3年くらい前だと思う。
取り引き先との調整で帰りが深夜になり、疲れてます感全開で家路を急いでいた。
最近、絆リゾートってフレーズで復活した施設があるトコから東京へ。
 禁煙車だったから、一服も兼ねたトイレ休憩で途中のPAに入った。
地方で、おまけに深夜だからガラガラの駐車場だった。
トイレ済まして車で後輩が戻って来るのを待っていた。
 そしたら後輩が車に乗り込むなり、

「 青い人、見えません・・・?」

って意味不明なことを言ってきた。
 俺は、

“ 青い人って、なんだよ?
見えません?って何?“

って思いながら聞いてみると、後輩が指差した先に一台のBMWがあった。
 車内灯がついていて、運転席にはオッサンらしき人が座って何かしている。
確かにそのオッサンは、車に戻ったとき、俺も見ている。
でも、青くない。
 俺は後輩に、

「 よく見ても、わかりません?」

って言われながらそのオッサンを凝視していたら、後部座席からオッサンを覗き込むような姿勢の薄い人影があった。
 よく見ると、その人影が確かに青い。

「 見えました?
アレ何だと思います?」

って聞いてきた。

「 知らん、全身タイツ着せられてる罰ゲーム?」

って適当に答えたら、後輩が、

「 元々人だった何かなんです。」

って言う。
 俺は返事せず、

“ いやいや、そんな変なものオレ見えるはず無いよ。
車内に他に誰かいるんだろ。
と言うか、こいつ疲れてるんだろなぁ・・・。”

って思いながら出発した。

「 あの人、長くないですよ。」

とかボソっと言ってて、本気で、

“ こいつ大丈夫か?”

って心配になりました。










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しづめばこ 9月21日 P454

2016-09-21 19:42:57 | C,しづめばこ



しづめばこ 9月21日 P454  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 9月20日 ペチペチペチ

2016-09-20 18:35:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月20日 ペチペチペチ




 十年くらい前、埼玉で病院の改築したときの話です。
解体工事中にまだ事務所を構えてなかったから、解体予定の診察室Aに仮に事務所を構えて仕事をしていた。
家が遠かったし若かったから帰るのもめんどくさくて、しょっちゅうその街で飲んで事務所で寝ていた。
 ある夜、いつものように飲んで事務所に戻ったものの眠気が来ず、図面チェックしてたら、

“ ペチペチペチ・・・。”

って拍手みたいな音が聞こえてきた。
 現場に浮浪者侵入とかあったもんで、音のする方に確認しに行った。
場所は、1フロア上の診察室Bからのようだった。
その時は心霊現象とかそういうのは頭の片隅にもなくて、泥棒だったらひっぱたいてやると、バール片手に部屋に入った。
 すると、さっきまでしてた音がピタリと止まった。見回しても異常はなし。
ところが、部屋を出てしばらくするとまた聞こえる。
入るとやはり誰もいない、出るとまた音がする。
 俺は次に、そーっと部屋に入った。
すると音はしてる、でも誰もいない。
これはきっと屋鳴りだと思い部屋を出ると、微かに笑い声がした気がした。
それで流石に怖くなって、ダッシュで現場を出て駅前のビジネスホテルに泊まった。
 で、情けないけど怖かったもんで本気で事務所を探して、現場から歩いて3分くらいのマンションの一室を借りて事務所にした。
 一週間くらいだったかな。
なにもなく、やはり飲み歩いて新しい事務所に泊まっていた。
そしてその日も飲んで帰ると、

“ カチャカチャ・・・。”

って小さい音がする。
まあ、あんまし気にせずにいた。
 それでトイレに大をしに行った。
洋式便所に腰かけて用を足してると、目の前の壁から、

“ ペチペチ・・。”

って例の音がしてきた。

“ え?マジかよ?”

とビビって、また駅前のビジネスホテルに逃げた。
 翌朝、事務所に戻ってトイレに行ってみると、昨日音がしてた壁の腰かけた目の高さくらいのところに、小さい手形がうっすらついてた。
血とかそう言うのじゃないんだけど、赤錆びのような泥のようなうっすらとした小さい手形だった。
 流石にこれは普通じゃないと怖くなって、近所の寺を探して住職さんに状況を話して部屋に来てもらった。
 すると住職さんがボソッといった。

「 小さい子だからね、迷子でついてきちゃったんだね、帰らせてあげないと・・・。」

それで、お経をあげてくれた。

「 他の人もいるかもねえ。」

と、そのあと現場の病院にも来てくれてお経をあげてくれた。
それ以来そういうことはぱったりなくなり、無事に工事は完了した。
 で、不思議なもんなんだけど、坊さんに来てもらった後日、気付くとトイレの手形は掃除もしてないのに消えていた。
あと、坊さんへのお布施は現場経費として認めてもらえず、懐の痛さにも泣いた。
現場やってると色々あるもんです。











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日々の恐怖 9月19日 ヒトリカラオケ

2016-09-19 18:17:53 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月19日 ヒトリカラオケ




 先週体験した出来事です。
ヒトカラ行って気持ちよく歌ってたら、いきなり演奏が中断された。

“ あれ・・・・?”

と思って、デンモク(※)で同じ曲を入れなおして歌い始めた。
 その曲を歌い終わり、違う曲を入れて歌ってたら、また中断された。
ヒトカラだからデンモクなんて俺は触っていない。
 廊下に出てみたが誰も居ない。
左右の隣の部屋は空き部屋で誰も居ない。
当然ヒトカラだから俺の部屋には俺しか居ない。
 すると突然aikoの『気付かれないように』が予約登録されて、イントロが流れ始めた。俺は何もしていないのに。
俺は怖くなって、即演奏中止を押して音楽を止めた。
 即座に店員を呼んでカラオケの機材を確認してもらったが、おかしいところも無い。
デンモクも正常動作している。
一応デンモクを取り替えてもらって、店員と二人で、

「 なんだったんでしょうね?」

と話していたら、またしてもaikoの『気付かれないように』が予約登録された。
しかも三連続で。
 店員は真っ青になって、

「 え?あれ?どうして・・・?」

と言いながら困惑している。
 次の瞬間、突然マイクが強烈なハウリングを起こして、

「 ブツン!」

と大きな音を出して切れた。
スイッチを入れても充電台に置いても反応無し、いきなり壊れてしまった。
 青ざめた店員が店長を呼んできたが、さっき予約解除して消しておいたはずのaikoの『気付かれないように』が、またしても勝手に登録されて部屋に流れていた。
当然デンモクにはそんな曲を入れた履歴など無い。
 店長が、

「 すみません、今日は料金は結構ですので、お引取り願えないでしょうか?」

と申し出てきたので、次回無料のクーポン貰って帰ってきたんだけど、これって結構怖い出来事でしょうか?
何を気付かれないようにすればいいのでしょうか?
 そのとき、店員と店長は凄く気味悪がっていた。
機種はLIVEDAMだったんだけど、遠隔で操作できるものなのでしょうかね?
それに、その店はそんなに大きくないし、平日で店員の数も少ないから、バックヤードで人を怖がらせるような遊びをやってる余裕なんて無いと思うんだけどな。




(※)デンモク
電子目次本の略。
歌いたい曲を探して送信するための大き目のリモコン。










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日々の恐怖 9月18日 カオス 

2016-09-18 18:26:21 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月18日 カオス 




 前勤めてた病院での話です。
夜中に巡回してたら、二人部屋からうなり声がした。
二人部屋の一人は入院したてで症状が重く、全然意識ないおじさんAだった。
もう一人も時々弱くうなるだけで、1ヶ月ずっと夢の中にいる寝たきりのおじいちゃんBだ。

“ Bさんがうなったのかな?”

と思い訪室すると、寝たきりのはずのBさんのベッドが空だった。

“ えっ?”

と思って部屋を見回し、巡らせた目が真後ろの開いたドアをとらえた時、廊下の光を背にして立つガリガリのBさんがいた。
 点滴抜いて左半身血まみれだった。
あごが外れるくらい口を開いて、目は前方斜め上を見てる。

“ えっ、えっ、なに、これ・・・?”

と混乱してたらBさんが、

「 ぅうぅうううおおおーー!!!」

と雄叫びとともに、両手を横に広げて倒れ込んできた。
 突然のことに私は悲鳴を上げてしりもちをつき、しかし覆い被さるBさんがケガしないように必死で抱きかかえながら、必死にもがいて振り向いたら、意識ないはずのAさんが首だけこっち向けて、充血した目をカッと見開いて笑ってた。
もう、カオスだった。











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日々の恐怖 9月17日 システムエンジニア(2)

2016-09-17 20:57:10 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月17日 システムエンジニア(2)




 翌日、

「 怪我の治療のため長期休暇です。」

と説明され、それから同僚はいなくなった。
 ・・・と思ったら、1年後くらいに職場復帰した。
周りで事情を知ってる人たちは腫れ物にさわるような対応だった。
 一応歓迎会というか懇親会というか、全快祝いみたいな飲み会も開催されたが、90分飲み放題なのに60分ちょいでお開きになった。
 沿線が同じ俺だけ上司に、

「 頼むぞ!」

って置いて行かれた。
 一応形だけ、

「 どっかでちょっと飲み直すか?」

って聞いたら、

「 うん、いいか、行こう。」

という予想外の返事が来てしまった。

「 お、おう・・・・。」

としか言えず、駅近の立ち飲み屋へ行った。
酒入ってるとは言え流石にズバリ核心は聞けないので、

「 どうよ・・?」

みたいな曖昧な聞き方したら、
 本人はあの時のことを聞かれたと気づいたらしく、耳真っ赤にして下向いて話してくれた。
 曰く、小さい黒い牛みたいなのが肩とか首の辺りから次々に生まれる幻覚に悩まされてたらしい。
すげー痛くて苦しくて、しかも、

「 死ねよ。」

とか

「 何だそのバグ、素人か?」

とか色々罵ってきて、精神的に追い詰められ、自殺も考えたそうだ。
 それで、あの日、

“ あ、首と肩を切り離せば、こいつらも死ぬし、痛くなくなるし完璧じゃん!”

と思いつく。
 黒い牛達も、

「 やめろ!」
「 俺達を殺す気か!」

とか慌て始めたので、すごくいい方法を思いついたとウキウキして、自分を刺してしまったと言うことだ。
今となっては本当に恥ずかしいと言っていた。
 それから半年くらいで震災が起き、同僚はボランティアをするために会社を辞めた。
その後は知らない。
俺も流石に黒い牛は見えなかったが、謎の肩や首の痛みに耐え切れず、そこを辞めた。












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日々の恐怖 9月16日 システムエンジニア(1)

2016-09-16 20:13:37 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 9月16日 システムエンジニア(1)




 大田区某所の企業でSEしてた数年前の話です。
今は転職して違う仕事している。
 そこは結構、夜勤中の突発的な飛び降り自殺が多いと有名な所で、今は屋上へ行けなくなっている。
 会社の先輩からは半分冗談で、

「 朝早い時間に出勤するときは、死体発見者にならないように気をつけろよ。」

とか言われていた。
そんな会社です。
 隣の席のたまに二人で飲みに行くくらいの仲の同僚が、半年以上首と肩の痛みに苦しんでいた。
首をグルグルしたり、肩を扇子でグリグリしたり、首を肩につくくらいまで傾けたり、唸ってたりしていた。
四六時中、痛みと戦ってる様子だった。
 ある日、急に、

「 あ、そうか・・・!?」

と納得したように独り言を言うと、たぶん給湯室からだと思うけど、果物ナイフを持ってきた。
ちなみにプログラム作ってる時の独り言は普通にみんな言うので、あまり気にしていなかった。
 同僚は椅子に座るとワイシャツのボタンを2つくらい外し、肩の辺りを広く開けると、そこにナイフをぶっ刺した。
同僚は、

「 あっ、痛ってぇ、ううう、痛てぇ・・・。」

とか言いながら、それでもナイフを刺し続ける。
 驚いて俺が、

「 おいっ!何してんだよ!」

と叫んだのを聞きつけ、周りにいた数人でナイフを取り上げ、警察と救急車を呼んだ。
 思ったより血は出なかったが、救急車到着までの数分間、痛い痛いと騒ぎ続ける同僚の肩にタオル巻いたり押さえつけたり大変だった。
 救急の人に同僚を引き渡し、

「 家族の方に連絡は?」

って言われて初めて家族に連絡するってのに気づいた。
警察に色々事情を聞かれたが、

「 急に自分でナイフを刺した。」

以外何も言えなかった。










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