大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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しづめばこ 1月31日 P352

2015-01-31 22:09:48 | C,しづめばこ


しづめばこ 1月31日 P352  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 1月30日 ヒョットコ

2015-01-30 19:54:31 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 1月30日 ヒョットコ



 40数年前、私が小1だった時のことです。
同居していた祖父が、8畳の茶の間の白ふすま四枚に墨汁でびっしり遺言を書いてしまった。
 長くガンを患っていて、本人も死を覚悟していたのだろう。
子供の私に内容は読めなかったが、大酒飲みで洒脱な祖父らしく、遺書のところどころにヒョットコの顔や、徳利と盃の絵が描かれていたのを覚えている。
場所が茶の間だから、孫の私や弟を喜ばせようとしたのかもしれない。

 その翌年に祖父は亡くなり、相続税を払うため我が家はその家を人手に渡して手狭な家に移った。
遺書が記されたふすまは、引っ越し時に処分されてしまったらしい。
 あとから知ったのだが、そのふすまは遺言に必要な体裁を整えておらず法的には無効だったそうだ。
それでも一応形見の品なので、屏風か掛け軸にでも仕立て直せば良かったのにと思うが、相続でてんやわんやだった両親には、そんな精神的余裕がなかったのだろう。
 写真の一枚も撮っておらず、幼かった弟にはそのふすまの記憶がないので、祖母と両親が亡くなった今、遺言のふすまをハッキリ覚えているのは私一人となった。

 その後、私は結婚して一人娘をさずかり、その娘も結婚して男の子をもうけた。
現在、娘は第二子妊娠中でおなかが大きく、4歳の息子を連れて実家に戻るのはキツイので、正月2日に主人と一緒に娘夫婦のマンションを訪ねた。
 すると、リビングの壁一面に白い紙が貼られ、孫息子が描いた色とりどりの絵が踊っている。
いくら叱っても落書きをやめないので、紙を貼って自由に描かせることにしたのだそうだ。
 へえー、と笑いながら孫の落書きをながめていて、私は思わずギョッとした。
何故かそこだけ黒いサインペンで、ヒョットコのような顔と、徳利と盃らしきものが描かれている。
 娘に、

「 これ、ヒョットコ?」

と聞くと、

「 漫画のキャラでしょ。
○○君はヒョットコなんて知らないわよ。」

徳利と盃を指して孫にも、

「 これ何?
ジュース?」

と聞いてみたが、彼は、

「 うーん?」

と気まずそうに首をひねって答えてくれなかった。
 偶然だとは思うが、孫が祖父のように大酒飲みになって肝臓を傷めないことを祈るばかりです。











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日々の恐怖 1月27日 祖父から聞いた話

2015-01-27 19:29:23 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月27日 祖父から聞いた話 



 東京在住のMさんに話を聞く機会がありました。
以下は、Mさんの話です。


 昔、私が祖父から聞いた話です。
ただ、細かく言うと、古い話なので微妙に違うところはあると思います。
 もう祖父は他界してますが、存命の時に良くサシで酒を飲むことがありました。
そのときは片方の目は失明していましたが、体は大病もせず元気でした。
そして、なにより人柄がとても良かったので、よく酒を一緒に飲む機会がありました。
 祖父は話好きで、よく本当か嘘か分からない話をしてくれました。
その中でも特に印象に残っている話が次の話です。


“ 幽霊とか呪いとかそういう類のものは基本目に見えないだろ?
でも俺が一番畏怖するものは、普段の景色に何気無くあるものなんだよ。
 例えば、散歩する時には景色を見ながら進むわけだ。
その時にいちいち、ここに看板があって、あそこに花が咲いてて、家が何軒あって、とかはわざわざ確認して歩かない。
なんとなくボヤッと視界にある。
 だがそれだけで勿論十分散歩は出来る。
そこになんとなく異物っていうか、あるはず無いものが目に映ると確認してしまうわけだ。
 例えば、いつもの散歩道で昨日まであった建物が壊されてるとか、通り道に大きな冷蔵庫が捨てられているのを見るとか。
 でもそういうのは慣れてくる。
一週間後にはそれらも景色の一部として認識出来てくるだろう。
 しかし、どれだけ経っても違和感が拭えないものがあるんだ。
俺の場合はかかしだったんだよ。

 ある日、田んぼにちょっと気味悪いかかしが立っていた。
最初は、

「 なんだこれ気味悪いなぁ・・。」

って思った。
 でも何度見ても慣れないんだよ。
それどころかますます気味悪くなってくる。
景色にそのかかしがあることが生理的に受け付けなくなってくる。
そうすると夢にまで見るのな。
 んで不思議なことに、視界の端に映るようになる。
嘘だと思うだろう?
でも本当なんだ。
 一回や二回なら見間違いだろうと思う。
けど日に何回も見るようになってな。
んで病院に行ったら、ほとんど右目の視力がなくなってたのよ。
手術したけどダメだったわ。
ありゃ俺の目は死神でも魅入られていたのかね?”


 私はもう幼くはありません。
だから、

“ 祖父の片目の視力がないのは知っていたけれど、そんな理由だったのか・・・。”

と納得することはありません。
 けれど、その話は何故かすごく印象に残っていて、当時、なんとなくちょっと怖かったのです。
 最近、そのことを祖母に聞いてみました。
すると祖母は、

「 目は昔から悪かったよ。
本ばっか見て、ビン底みたいな眼鏡かけとった。
その言い訳だろ?
都合悪いことは全部、不思議話に持っていく人だったから・・・・。」

そう言って、いくつかのエピソードを披露してくれました。
 ほとんど祖父から聞いた話だったし、荒唐無稽であったけれど、嬉しそうに話すばあちゃんを見ると、ちょっとじいちゃんが懐かしくなって思い出しました。











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しづめばこ 1月26日 P351

2015-01-26 18:10:31 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月26日 P351  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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四枚の写真 1月24日 P34

2015-01-24 20:07:53 | _7,四枚の写真
四枚の写真 1月24日 P34 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 1月23日 俺を呼ぶ声

2015-01-23 19:02:03 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 1月23日 俺を呼ぶ声



 昔、実家の近所に一人暮らしのおじさんが住んでいた。
平日の午後になるとその人の家の前にイスを置いて座り、下校する子供たちに手をあげ、

「 よぉい!」

と挨拶をするおじさんだった。
雨の日も雪の日も、さすがに台風とか大雨のときには居なかったと思うが、傘をさして座っていた。
 俺が高校生になった頃に足を悪くして家から出られなくなったそうだが、家の前の通りが見える二階の部屋のベッドから、

「 よぉい!」

と手を振っていた。
 要はちょっと心の壊れてる方だったのだが、子供たちもみんな、

「 よぉい!」

と返すくらいに親しまれていた。


 もう亡くなられてその家は空き家になっているのだが、先日久しぶりに実家に帰ってその家の前を通ると、

「 よぉい!」

という声が聞こえ、二階の部屋の窓には手が見えた。
 近所の同世代と飲んだ時にこの話をしたが、同じ経験をしたというヤツは何人もいるようだ。
でも、今の子供たちは聞いたことがないらしい。
 ホラー的なものというより、

“ 当時を思い出した俺たちが、懐かしんで見えてしまうのかな?”

と、少ししんみりした。









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しづめばこ 1月22日 P350

2015-01-22 20:04:53 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月22日 P350  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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四枚の写真 1月20日 P33

2015-01-20 15:07:14 | _7,四枚の写真
四枚の写真 1月20日 P33 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 1月19日 ビックリしたこと

2015-01-19 18:18:08 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 1月19日 ビックリしたこと



 酒の席で昔話をしていた途中に、友人がふと思い出して言った話です。


『 そういえば認知症の祖父が、ある日突然、

「 天井に人形がいる、見られていて怖い・・・・。」

と言い出した。

「 何もいないよ!」

って言って宥めてたんだけど、しばらく後に工事の関係で業者をいれた時に、天井裏から誰も置いた覚えのない日本人形が数体出てきてビックリしたよ。
まあ、一番びっくりしたのは、天井に登った瞬間、奇声を上げて転がり落ちた業者さんだろうけど・・・・。』










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しづめばこ 1月17日 P349

2015-01-17 18:08:55 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月17日 P349  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 1月16日 医局の人

2015-01-16 18:56:24 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 1月16日 医局の人



 医局の人にお話を聞く機会がありました。

 病院の心霊現象という話をよく聞くけれども、自分では1回しかそれらしきことは体験していません。
自分が鈍感なのか、どうなのか、その辺はわかりかねます。
少なくともオカルトチックな話が好きな医師はおりますが、自分がそういうものが見えるとかいう人には会ったことないですね。

 今勤めている病院は歴史が古い方で、先の大戦中には陸軍関係者がよく入院していたとか言われています。
そのため、ゲートルを巻いた兵隊さんの幽霊が出るらしいです。
らしいというのも、なにせ、勤めて5年目で初めて知りましたから。
 たまたま入院していた世間話の好きそうなご婦人に聞かされました。
ええ、実は見たんですよ系の話を期待されていたようですが、本当に知らなくて彼女をがっかりさせてしまいましたが、しかたありません。
病気を治すだけで満足してくださいとしか言いようがありません。

 病院で寝ると金縛りや幻聴が多いのは確かです。
突然ズキズキ頭が痛い感じがして意識が遠のき、そのまま深く眠りこむこともあります。
しかし、週に10回当直していれば、過労で寝起きに変な感覚にもなるでしょう。
 そもそも、金縛りになるような時はソファーで体を縮めて仮眠していたり、患者さんのモニターや壁一枚向こうのナースステーションの話が聞こえる状態だったりと明らかにおかしな状況で寝ていますしね。
心霊より自分の健康という意味で洒落にならない。

 病院自体もだいぶ建物が昔とは建て替えられています。
第二次世界大戦中から現存する唯一の建物には、現在病室は一つもなく、更衣室や私たちの医局があります。
特に、我らが医局はその中でも最下層なので半地下状態です。
 オカルト好きの某ナースからは、

「 あんな廊下が真っ白になるほど霊の立ち込めたところに良く入れますね!」

とか言いたい放題に言われてますが、別に喘息にも肺炎にもならない分、禁止されてるはずの紫煙の立ち込めた看護師休憩室よりはましなんじゃないですかね。
愚痴になってしまい申し訳ありません。

 くだんの患者さんに日本兵の霊が出る話を聞いてふと思い出したのは、ある当直明けの午後の事です。
ほとんど寝れない夜間救急勤務後でも帰ることなど許されません、少なくともうちの病院は。(うちだけでもないと思います、とんだブラック業界だ。)
 幸い手術も外来もなく、病棟の患者さんも全員落ち着いていたため、医局で調べ物をしながら疲労の余りそのまま突っ伏して寝てしまいました。
正確にいえばそれこそ金縛りに近く、体は突っ伏したまま動けないけれど頭は半分起きている状態です。

“ ああ、今日も疲れてるな、いつかこのまま死ぬんじゃないかな・・・。”

と思いながら、休憩と割り切って半分うとうとしていました。
 しばらくすると、

“ コツ・・、コツ・・、コツ・・・・。”

と固い靴でコンクリートむき出しの床を歩く音がします。
 うちの病院では基本的に革靴は内科部長クラス以外ほとんど誰も履きません。
理由は音がするし、ダッシュもできないから。
逆に言うと外科系だと部長クラスでも走らされます。
 そもそもガタが来たドアが全く軋まなかったのも不思議な話です。
誰か入ってきたのにも気がつかずに寝ていたのかと、内心驚きました。
一応起きなければと思うが、体が動かない。

“ ああ、サボってるのがばれた。
まあいいか、仕事はすませたし・・。”

そう思ってると、誰かが話しているのが聞こえました。

『 よく寝てるなあ。』
『 慣れですかね。』

聞き覚えのない声の会話です。
 嫌な感じは受けませんでしたが、すぐ後ろからコツコツ音がする割に、気配を感じません。
足音はすぐ後ろを行ったり来たりしています。

『 度胸があるなあ。』
『 いつ見てもいますねえ。』
『 肝の据わるに越したことはないが、恥じらいがないのはどうしたものか。
嫁に行き遅れはしないだろうか・・?』

“ 黙れおっさん!”

思わずカチーンと頭に来ましたが、涎が出ているのを自覚してる分、何も言えない。

“ はい、親にも心配されてます。
少子化の原因のうちの一人です。
わかってるからもう何も言わないで・・・・。”

痛む心を抱えつつ、そのままぐっと寝込んでしまいました。

『 これこれ・・・・・。』

と言われながら軽く頭を叩かれて、はっと目が覚めたのは2時間後くらい。
 余りに感触と声がリアルだったので、思わず口元がべちょべちょのままでキョロキョロしましたが、やはり周囲は無人。
一応顔を洗って化粧を直して、汚れた本はこっそり引き出しに隠してから病棟に戻りました。
 あれが兵隊さんの幽霊二人だとしたら、ドアの音がしなかったのも靴音も納得はできます。
でも、心配してくれるは、起してくれるは、幽霊であったとしても、まるで心霊いい話です。

“ 少なくとも患者さんの言うような、身の毛もよだつような体験ではないなあ・・・。”

と思いました。


 前置きが長くなりましたが、本当に洒落にならなかったのはこの後日の話です。

“ 医局に泥棒が入るらしい。”

と噂が流れるようになったものの、普通に生活していましたが、ある夜に相変わらず遅くまで仕事をしていると、廊下の方からガタガタいう音がしました。

“ え・・・・?”

と思っていると、我が医局のオンボロドアを外から誰かがガタガタやる音がするのです。
 最近どうやら物騒らしいということで、古い木製のドアに内側から簡単な閂を最近つけていて、一人でいるときにはそれを下すようにしていたのですが、医局員はみな当然知っています。
すりガラスの窓で明かりがもれていますので、中に誰かがいるのは一目瞭然です。
ですから事情を知っていれば、声をかけてあけるように頼めばいいだけの話です。
 不審に思ってドアの近くまで寄った瞬間。

“ ガタガタガタガタガタガタ!!!!”

と激しい音と衝撃。
ドアの閂はもう外れそうなほどで、特に向こうがぐっと押した瞬間は少し隙間が空きます。
 咄嗟に、

“ まずい!”

と思い、内側からほぼ体当たりするようにドアを押し返します。
ドアの向こうからはおそらく2人ほどの男の話声がします。
言葉からして外国人と推察されました。

“ ますますまずい。”

あれほど冷や汗が出たことは覚えがありません。
 ガッガッガッガッと、おそらく蹴っているのでしょう、ドアの下の方がきしみ、一瞬板が浮きます。

“ 持ってくれ、戦前からの建物とか悪口言って悪かった、頼むから折れないでくれ。”

もう、ありとあらゆるものに心の中でお願いしました。
 定番の神様仏様。
忙しくて余りお墓参りできていないご先祖様に、まだピンピンしている田舎の祖父母4人。
小言が嫌なのと本当に忙しいので余り帰省していない両親。
この間出てきたおせっかいやきな兵隊さんの幽霊(推定)。
天国にいるはずの看取ったペット達。
 祈りが聞いたのか廊下の音はひとまず落ち着いたのですが、今度は後ろから声が聞こえます。
廊下からも返事をするような声がします。
 思わずぎょっとしました。
つまり、半地下の私の部屋を挟んで男たちが外国語で会話しているのです。
そして、

“ バリーン!”

と大きな音を立ててガラスが割れました。

“ もう駄目だ・・・。”

と半分覚悟を決めたのですが、奇跡的に助かりました。
 というのも、その窓を半分ふさぐ形で大きな書棚があったのです。
吹っ飛んできた本が頭に直撃して涙目になり、後からそこは見事なたんこぶとなって10円ハゲができました。
 すぐさま侵入できなかったことと、思ったより大きな音がしたことで、向こうも慌てたのでしょう。
そのまま大声で話をしてバタバタと立ち去りました。
私はドアに寄りかかったまま、しばらくへたり込んで動けなかったです。

 そのあとは通報して大騒ぎになりましたが、廊下に出た瞬間が一番洒落になりませんでした。
たぶん慌てて置いていったズックから少し中が見えていたのですが、定番のバールのようなものをはじめ、金づちらしきものや、 むしろ包丁なんじゃないかと思うようなサイズのナイフらしきものが見えてました。
 ドアを開けてそれを見た瞬間、それこそすぐドアを閉めて立てこもり、半泣きで電話しました。
ほんとあれは死ぬほど洒落にならなかったです。
 あの時ドアが空いていたら、あるいは本棚の位置が少しずれていたら、本当に死んでたかもしれません。
それ以来、医局がトラウマになって、今は周囲の好意で更衣室に全部荷物を運び込んでいます。
 ちなみに今でもたまにうとうとしてしまうことがありますが、不思議と金縛りはなくなりました。
ホント、幽霊よりも生きてる人間の方が怖いですというお話です。










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四枚の写真 1月15日 P32

2015-01-15 21:00:10 | _7,四枚の写真
四枚の写真 1月15日 P32 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 1月14日 黒電話

2015-01-14 19:12:38 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月14日 黒電話



 入院していた義母が他界したので、夫と弟夫婦の四人で夫の実家の整理に行った。
隣の家まで歩いて10分と言うど田舎だった。
 電気も水道も止めて貰っていたので、色々手続きが面倒だった。
私と義妹で家の片付け、夫と弟がご近所さんへの挨拶回りをした。
 昔、庄屋規模だった実家は、戦前は何人も奉公人が住み込んでいただけあり、部屋数も多く、とにかく広い。

「 うちでは管理しきれないわ。」
「 うちも無理だわ、遠いし。」
「 処分するしかないわね。」
「 でも主人達にとっては生家だし、なんて言うかしら。」
「 そうね~。」

と言いながら、とにかく家中の雨戸と窓を開けていると、奥の部屋にあった電話が鳴った。
昔ながらの黒電話の音だ。
 出てみると聞き覚えの無い男の声で、

「 お戻りだったのですね。
お待ちしておりました。
これから伺います。」

と言われた。

「 どなた様でしょう?」

と聞いたが、相手は答えず電話を切ってしまった。
 夜には帰るつもりだったので、義妹と慌てていると夫達が帰ってきた。
玄関で電話のことを話して、心当たりを尋ねると弟が笑って言った。

「 姉さん、真面目な顔で何言ってるの?
奥にある電話はどこにも繋がってないよ。
10年前に子機付きの新しい電話機に換えた時に、線も引き直したんだよ。
居間にあるほうが繋がっている電話だよ。
もっとも、今は電気が止まっているから、どちらの電話も繋がらないけど・・・・。」
「 えっ!?
でも、確かに奥の電話が・・・・?」

凍り付く義妹と私。
 そのとき、奥の黒電話がまた鳴り出した。
今度は四人とも凍り付く。

「 来るって言ったのか・・・?」

と夫が言った。
黙り込む四人。
 黒電話の音が鳴り止んだ。
ついに義妹が泣き出した。
それで、四人で戸締まりもそこそこに車に飛び乗った。
 それ以来、私は夫の実家に行ってない。
実家の処分は業者に頼んだ。










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しづめばこ 1月13日 P348

2015-01-13 19:07:47 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月13日 P348  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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四枚の写真 1月11日 P31

2015-01-11 22:12:33 | _7,四枚の写真
四枚の写真 1月11日 P31 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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