日々の恐怖 12月27日 地蔵神社(8)
プール道具を載せて自転車で集合場所にしてたバス停に向かうと、サイレンの音がしてて、たくさん車が停まっていた。
パトカーと救急車もいた。
ちょうど担架にのせられた人が救急車の後部に運び込まれていくとこで、足だけが見えたが、それがMのボロっちいズックだと思った。
俺はどうすることもできず、たまらなくなって、プールには行かずに家に帰った。
仕方なく一人でテレビを見ていると、パートに出ていた母親が帰ってきて、
「 なんか、子どもが事故にあったみたい。
近所の人が噂してたけど、あんた知ってる?」
って聞いてきたから、俺はプルプルと首を振った。
後でわかったんだが、事故にあったのはやはりMで、トラックの後ろを自転車で走ってたら、積んでた鉄筋が何本も落ちてきて頭や体に刺さったってことだった。
体中が穴だらけになって、即死だったと聞いた。
それから夕飯前に婆ちゃんが戻ってきて、俺の顔を見るなり、
「 あれほどいけんと言うたやろ!」
そう言ってまた、仏壇の前に2時間正座させられた。
ま、これでだいたいの話は終わり。
それからしばらくの間、婆ちゃんは畑に行かず、ずっと俺を監視するようにそばについて宿題をやらされた。
おかげで宿題が新学期までにできたのは、あの夏休みだけだった。
あと、学校でMと一番親しかったのは俺なんだが、葬式には呼ばれなかった。
Mの家は新興宗教に入っていて、その人たちだけで葬式を出したみたいだ。
もちろん俺は、婆ちゃんをふくめ神社での話は誰にもしゃべっていない。
ここで今話したのが初めてだ。
ああ、あの神社なあ・・・。
夏休みが終わって少ししてから、怖かったけど気になって一人で見に行った。
裏手に回ってみると、俺らが作った鳥居や、板の社殿はなくなっていたが、地蔵様だけはそこに残されてあった。
それで、最初、すり減って表情もわからなかった地蔵様の顔が、なんだか微笑んでるように見えた。
だから俺は、
” ああ、たりたんだな・・・。”
って思ったんだ。
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