大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3)

2024-11-16 20:18:42 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月16日 国有鉄道宿舎(3)





 とりあえず何とかなってるからいいか、と思っていたのも束の間、ある日、
夜8時過ぎに電話がかかって来た。
障子の向こうから、とうに亡くなったはずの自身の祖母から語りかけがあった、
という電話だった。
今現在、襖が開かないので外に出られない。
どうしよう、というものだった。
 内容が内容だけに、合鍵を持って今から宿舎に行くことになり、中学生の私も
同行することになった。
ただでは行けないので、知り合いのお寺でお札と御守りを貰って行くことにし
て、さっそくお寺に電話すると、

「 すぐ来なさい。」

とのこと。
お寺でお経をあげてもらい、お札と御守りを持って父のいる宿舎へと向かった。
 片道1時間半ほどで着き、玄関を開けた。
確かに父のいる寝室だけ電気が点いていたが、すぐに宿舎中の明かりを点け、寝
室の襖を開けた。
 何の抵抗もなく襖は開いたが、父曰く内側からは開かなかったとのこと。
お寺の住職の言いつけ通り寝室にお札を貼り、御守りを父に渡し、父は機関区
に、母と私は来た道を帰り、夜半過ぎには帰宅した。
その後、宿舎で寝泊まりしても何も起こらなくなったという。
 後日、父が玄関わきの、北隣の墓地との境の掃除をしていたら、土の中に白い
かけらがあったという。
その昔、生で埋めてた名残で、年を経て流れて来たのかな、と言っていたもの
の、やはりあまり居心地のいい宿舎では無かったらしい。
 国有鉄道が無くなって久しいが、生前、父は、

「 あの街の宿舎は嫌だったが、職場は最高に良かった。
人に恵まれたし、街も良かった。」

と良く言っていた。
また、

「 奇妙なことも多かった。
昔と今の境だったのかもな。」

とも。
 コロナの前、自分の娘と一緒に列車の旅をしてその街に行ってみたが、当時の
面影もないくらい発展していたし、宿舎も取り壊されて土地だけになっていた。
時の経つのは早く、もう一度この目であの宿舎を見たいと思っていたが、叶わな
かったのが残念でならない。









 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2)

2024-11-10 10:09:12 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 11月10日 国有鉄道宿舎(2)





 日は山に沈もうとしている。
私は、

” 一見してのどかでいい街だなぁ・・・。
転校してこの街に来たら、どんな毎日だったかなぁ・・・。”

と考えながら、玄関を出て通りまで歩いて自販機のジュースを買って戻ると、
縁側に座った母が驚いて声をかけて来た。

「 今までお前がトイレから風呂場にかけて掃除をしていたのではないか?
下から登って来たから驚いた。
今の今まで音がしていた。」

という。
 私は縁側から駆け上がってトイレから風呂場、台所、寝室と見て回ったが、
何の姿も無かった。
私がさっきトイレから出たら人の気配がしたと母に告げると、とりあえず戸締り
をきちんとして暗くならないうちに帰ろうということになった。
 台所の窓を閉める時、北側の斜面の高いところに墓地が見えた。
上の方に墓地があると母に言うと、斜面の上に寺があると言う。
鍵をしっかり掛けて、この日は帰った。
 父が単身赴任生活を始め、宿舎と機関区、休日は自宅宿舎のある管理局のある
街と、三角ベースのような動きをして三ヶ月くらいが経った頃、

「 あの宿舎にはちょっとお化けのようなものが出るような気がする。」

と言い始めた。
そして、

「 夜寝るのに電気を消すと、障子に人影が写るので、電気を点けて勢いよく障
子を開けると誰もいない。
気のせいかと障子を閉めて電気を消すとまた人影が写る。
気持ち悪いので電気を点けたまま床に就こうとすると、今度は襖を誰かが叩く。
開けようとすると開かないのだ。
食事も外で済ませ、洗濯と入浴だけ宿舎でして、機関区の仮眠室で寝ている。」

というものだった。







 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1)

2024-11-02 10:33:27 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 11月2日 国有鉄道宿舎(1)




 かつての国有鉄道には宿舎があった。
アパートみたいなところから一軒家のようなものまで様々で、家族が住んでいる、管理局のあ
る街とは離れたところへ転勤命令が出た場合、単身で赴任先の街に行く事がしばしばあった。
 父も、とある街へ首席助役として赴くことになったが、機関区の近くの宿舎ではなく、300m
ほど離れた小さな山の中腹にある一軒屋、いわゆる高級宿舎に入ることになった。
最も、山と言ってもその街の駅前にある繁華街の傍なのだが、山のふもとにある専用の駐車
場に車を止め、斜面を歩いて20mも登るかどうかの距離でその宿舎の玄関まで行くことが
できた。
 昭和の終わり頃の当時でさえ、その宿舎がかなり古い建物であることが分かった。
中学生だった私は、母と共に宿舎の鍵を開けて玄関から中に入り、荷物をクルマから運び入
れるため駐車場と何回も往復した。
前の住人がきれいに掃除したのだろう、しかし少しカビ臭く、窓という窓(しかも木製枠)を
開け、持ち込んだ掃除機で掃除したり、座敷箒で畳の上を掃いたり、拭き掃除をしたりした。
 掃除の途中、私は催してトイレに行った。
水洗だが、木製の箱で覆われた水タンクが天井近くにあるタイプでもちろん和式だ。
用が済んだら、把手付きの鎖を引っ張るやつだ。
今ではとんとお目にかからない。
ここから想像すると、昭和20年代半ば頃にこの宿舎は建てられたのではないかと思われた。
 トイレを出ると、不意に人の気配がした。
母かと思って呼んだが返事がない。
誰だろうと思っていると、母は外で庭の掃除をしているのがわかった。
この時は不思議に思わず、私は部屋の掃除を続けた。
 街の中心部にある火の見櫓のスピーカーから、午後5時を知らせる音楽が流れ、

「 良い子は家に帰りましょう。」

とのアナウンスがあった。









 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 10月25日 足(2)

2024-10-25 11:02:26 | B,日々の恐怖
 





 日々の恐怖 10月25日 足(2)





 もう一度自分の置かれている状況を思い出す。
個室に、ひとり。
顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。
それなのに、足がある。
 体は金縛りのように動かなかった。
俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。
足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。
おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。
机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。
どけた。
ただ足をどけたのだ。
 目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、
とりあえずトイレに向かった。
さっきのは何だったんだ。
幽霊?
妖怪?
用を足しながら1人考えを巡らせる。
いや、あれには感じなかった、何か、意志のようなものを。
まるでそこにいるのが当たり前の様に、そこにいた。
考えがまとまらないまま個室に戻ると、そこには見慣れた友人の姿があった。

「 よう・・・!」

ぎこちなく声をかけながら正面に座る。
しばらく飲みながら何気ない会話を交わしていると、話の途中で不意に友人が、

「 あ、ごめん。」

と言った。
俺には彼がなぜそれを言ったのかわからなかった。
わからなかったからこそ、わかってしまった。
おそらく彼の足は、触れたのであろう。
誰のものかわからない、あの足を。

「 別にいいよ。」

とは、言えなかった。










 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
 
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 10月19日 足(1)

2024-10-19 16:05:18 | B,日々の恐怖

 

 

 

 

 日々の恐怖 1019 足(1)

 

 

 

 

 ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。

その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。

 用意された個室に案内され、俺は席についた。

部屋にはまだ誰もいなかった。

畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、

足を下ろして座れるような作りになっている。

 とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。

何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。

覗いてみても何もない。

 テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷きの床の上に伸びている。

つまり今俺が足を下ろしている空洞には何も無いはずなのだ。

 俺は足を少し動かしてもう一度先程の感触を探す。

 

 あった。

 

ちょうど自分の正面のあたりに、少し丸みを帯びた、それでいて少し平たい様な物体がある。

 もう少し足を動かしていると、今度は足先ではなく、脛の外側辺りに何か縦に長い物が触れた。

床に対して垂直ではなく、少し斜めに伸びている。

その先に、丸くて平たい物。

 俺はそれが何であるか直感で理解していた。

あるいは似たような経験をした事があるからかもしれない。

足。

自分が足で触れているもの。

それは紛れもなく人間の足だった。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
 
 
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 10月14日 IPad(2)

2024-10-14 09:41:17 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 IPad(2)





 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、

「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」

と赤ちゃんにIPadを向ける。
 赤ちゃんはその日一番長々と、

「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」

とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。
すると画面に、

”大宮さんがきよる”

と表示された。
 姉が、

「 えー、なんか文章になった!
すごい~!
大宮さんて誰かな~??」

と笑う。
すると祖父母が、

「 えっ!?」

と画面に顔を近づける。

「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?
名前を入れよるんかね?」

祖父が不思議そうに画面を眺める。
姉は、

「 えっ??」

と祖父を見る。
 祖母が、

「 大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。
大宮さんが来よる、いいよるね・・・・。」

と、同じく不思議そうに画面を見る。
すると母親が、、

「 あの・・・・・。」

と窓を指差す。

「 離れの方に・・・・。」

全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が
俯きがちに立っているように見えた。
 祖父はすぐに、

「 大宮さんじゃね・・・。」

と呟く。
祖母も、

「 大宮さんじゃあ。
2月に亡くなりはったんじゃけどね、なしてじゃろうね・・・。」

と窓の外を見つめる。
 俺たちは、

「 え?え・・・・?」

と、よく分からずに、窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が、

「 いけんいけん、いけんよ。」

と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。







 
 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 10月5日 IPad(1)

2024-10-05 20:32:15 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月5日 IPad(1)




 四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、
夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、
そしてその赤ちゃんの8人で、居間で夜更かししていた。
 田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、
それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。
海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。
 皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、

「 面白いもの見せてあげるわ!」

とボタンを押した。
メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述筆記みたいに話した言葉を文字にしてくれる機能。
姉はそれを赤ちゃんの口元に寄せて、

「 何か話してごらん~。」

とあやすと、赤ちゃんは、

「 あうあうあう~。」

と言葉にならない言葉を話す。
すると画面に

” 合う会う、ううー良い愛ー”

みたいに、赤ちゃんの声を無理やり文字に起こしたものが表示され、姉は、

「 赤ちゃんの言葉やで!」

と笑う。
祖父母も父母もうれしそうに、

「 おおー!すごいなー!」

と笑った。
 夜もふけていく中、皆でその遊びをしばらく続けていました。

「 あいあい~たー、うう~。」

という、言葉にならない赤ちゃん語を、

” 会い合い~他、右ー”

みたいに表示していくIPad。
祖父母は、

「 最近の機械はえらいもんじゃのう!」

とはしゃぎ、僕たちも笑う。
赤ちゃんは皆がうれしそうに笑うのと、田舎の家の薄暗さの中で光るIPadの画面に大喜びし、

「 うあうあいい~!!わーわー!きゃあー!」

と声を上げ続ける。

 




 
 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 9月22日 40男の夏(3)

2024-09-22 15:25:16 | B,日々の恐怖
 
 
 
 
 
 日々の恐怖 9月22日 40男の夏(3)
 
 
 
 
 
 更に月日は流れ、数年前の夏。
小5の息子が夏休みと言うこともあり、家でダラダラと過ごしていた。
そこに、暑さでイライラしていたのか、俺の嫁から外で遊べとカミナリが落ちた。
 昼飯を食べたあと、仕方なく息子は3DSを握りしめ自転車に跨がり、
友達が集まっているであろう図書館へ行こうとした。
が、何を思ったのか、息子は自転車に乗って件の山へ向かった。
 
「 名前を呼ばれたから。」
 
と後で言っていた。
 それから夕方になった。
が、17時になっても息子は帰って来ない。
友達のとこで時間を忘れて遊んでいるのかと、あちこちに電話したがいない。
町内も探してみたが、全然見付からなかった。
 19時になっても戻って来なかったので、警察に捜索願いを出そうとした時、やっと帰ってきた。
怒鳴る嫁を尻目に、息子が俺に言ってきた。
 
「 ○×君(大伯父の名前)が、たまには墓参りに来いって怒ってたよ。」
 
その名前を聞いて、昔の記憶が蘇る。
この30年忘れていた。
更に息子は、
 
「 昔助けた恩を忘れたか!って言ってた。
パパ、山で迷子になって鼻水垂らしながら泣いてたんだって?
ダセェ~!」
 
固まる俺に、嫁が
 
「 どうしたの?
○×君て誰?」
 
と矢継ぎ早に聞いてくる。
 
「 まぁまぁ・・・・。」
 
とお茶を濁し、晩飯を食べて久しぶりに息子と風呂入って詳しく話を聞いた。
 曰く、家を出たら、山の方から何度も自分を呼ぶ声が聞こえた。
何だろうと思って行ってみたら、着物みたいの着た、見たことない男の子がいた。
一緒に遊ぼうと言うから遊んだ。
 そしたら、パパのことを知ってるみたいで、いろいろと昔の話を聞いた。
よくこの山で遊んでた事、迷子になって鼻水垂らしながら泣いてた事、
親に反発して山でタバコ吸ったけど、気持ち悪くなってゲロ撒き散らした事
などなど、おおよそ俺が山でした事を色々と聞いてた。
話が面白く、聞いたり質問したりしていたら帰りが遅くなってしまった。
合流したとこまで送ってくれて、最後に、○○がうちの孫は誰も墓参りに来ないと嘆いている、
助けた恩を忘れていないなら、○○の墓参りに来いって言ってた。
 話を聞き、
 
” そういや、ばぁちゃん死んでから、墓参り一度も行ってないな・・・・。”
 
と思っていたら、その夜、夢に大伯父が出てきた。
12歳の姿の大伯父に正座させられ、小さくなりながら説教をされ涙目の40男。
次の日、遅まきながら嫁と子供達を連れ墓参りに行った。
今の気分は悪くない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 9月13日 40男の夏(2)

2024-09-13 11:25:14 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 9月13日 40男の夏(2)





 そして月日は流れ、俺がまだ鼻たれ坊主で、ファミコンが出るちょっと前の夏休みのことだった。
当事小4だった俺は、友達3人と一緒に朝から山へクワガタを取りに行った。
その辺りの山は一族(と言っても、親父を含めその兄弟)で所有している山だ。
だから普段からよく遊んでいた。
迷った事は一度もなく、その日も奥へ奥へと進んで行った。
 最初のうちは四人仲良く虫を捕っていたが、やはり虫の大きさで争いが起こり、

「 自分だけででっかいの捕ってやる!」

となり、それぞれがバラバラに虫捕りを始めた。
木を蹴飛ばしたり、登ってみたり、根元を掘り返してみたり、夢中になって虫を探していた。
 太陽も真上になり、お腹も減ったしそろそろ一度戻ろうかと辺りを見回すが、自分が何処にいるのか分からない。
まあ、小さい山だし、下って行けばそのうち知ってる場所に出るだろうと、斜面を下って行った。
 が、日が傾きかけても一向に下山できず、歩き疲れるわ腹は減るわで、歩くのを止めその場で泣き出した。
すると、突然目の前に男の子が現れた。
 本当に突然、パッと現れた。
それに驚きながらも、人が居たことに安心した。
見た感じも自分よりも少し大きいくらい。

「 なんだ、迷子になったのか・・・。」

短くそう言うと、その男の子は俺の手を引いて歩き出した。
手を引かれながらお互い自己紹介をし、話をしながら少し歩くと見覚えのある道に出た。

「 ここまで来れば分かるな?」

その言葉に頷き、ありがとうと言うと、

「 ○○(祖母の名前)によろしく。」

と、男の子はまた山に戻って行った。

” 何でまた山に・・・?”

と不思議に思いつつ、暗くなっていく中で家に帰った。
 家に帰り、実家の隣に住んでた祖母に今日あったことを話した。
すると、最初に書いた内容を俺に話してくれた。
そして次の日、祖母に連れられ墓参りに行った。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 9月1日 40男の夏(1)

2024-09-01 16:58:53 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 9月1日 40男の夏(1)




 40男の夏は妙に熱い。
もう100年は前のことだ。
父方の祖母には2歳離れた兄(俺の大伯父)がいた。
その大伯父が山一つ越えた集落にいる親戚の家に、両親に頼まれ届け物をしに行った。
山一つと言っても、子供の脚で朝一に出発すれば夜には帰って来られる位くらいの距離だ。
歩き馴れた山道で、大伯父はいつも朝一に出て、夕方ちょっと過ぎには帰って来ていた。
 しかしその日は、夜を過ぎても大伯父は戻らなかった。
向こうの親戚の家に厄介になっているのだろうと、両親はあまり心配もしていなかったが、
2日経ち3日経ったところで、そろそろ畑仕事も手伝ってもらいたいからと、親戚の家に大伯父を迎えに行った。
 が、大伯父は親戚の家に居なかった。
居ないどころか、来てもいなかった。
慌てた両親は、自分の村と親戚の集落の人に頼んで、両方から山狩りをした。
しかし、大伯父は発見されず、行方不明として処理をされた。
祖母10歳、大伯父12歳の夏だった。







童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 8月20日 監視カメラ

2024-08-20 15:36:06 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 8月20日 監視カメラ





 コンビニの店長さん(故)から聞いた話です。
最近のコンビニは死角を無くすために監視カメラだらけにしてるんだけど、
店長さんがいたコンビニも、通常より2台増設して万引きなどの犯罪対策に熱心だった。
(実際、深夜に発生した強盗未遂では犯人逮捕に繋がった)

「 時々カメラが止まるんだよね。」

店長さんは眉を八の字に傾けながら愚痴を漏らした。
カメラ自体や録画機器の故障で一斉に止まるのではなく、順番に止まるのだという。

「 どんな順番で?」
「 駐車場から自動ドア、本の棚がある窓際の通路からソフトドリンクのコーナー、
お菓子の棚、弁当のコーナー、自動ドア側とは反対のレジ、自動ドア、駐車場。」

つまり、誰かが入ってきて買い物をして帰る動線の順にカメラが止まるのだ。
 カメラの前を通りすぎると問題なく録画を再開するそうなのだが、
カメラには誰も映ってはいないんだとか。
時間は人の波が一旦収まる午後2時ぐらい。
曜日はまちまち。
 バイトやパートの店員さんは不気味がって、その時間帯には入りたがらない。
なので、2時から3時の1時間だけ店長さんが独りで作業する羽目に。

「 まさか昼間っから幽霊が出るとはねえ。」

買い物をしてるんだったら金を置いていってくれたらいいのにと、
その時の店長さんは冗談を交えるだけの余裕があった。
 後日、その店長さんが体調を崩して入院、店を辞めたことを同じコンビニで
働いてる店員さんから知らされた。
バイトリーダーやってる若い店員さんだけど、近い内に自分も理由をつけて辞
めるつもりだという。

「 なんで? そんなことしたらオーナーさんが可哀想だよ。」
「 店長からカメラの話聞いてます?」

うん、と頷くと彼は震えるような溜め息をつく。
そして退職を希望する理由をポツリと話してくれた。

「 何回修理しても、事務所内部を映してるカメラが止まったままなんですよ。」








童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 8月13日 ゆっくりと歩く女の人(2)

2024-08-13 16:25:28 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 8月13日 ゆっくりと歩く女の人(2)





 しばらくして、祖父母ともに相次いで死に、俺とオカンは介護から解放された。
正直、祖父母が死んだ時、俺はほっとした。
やっと死んでくれた。
もう夜中にトイレにつれていけと喚く人はいなくなったんだ。
その癖、わざと目のまでうんこもらして、お前のせいだと、さっさと処理しろと喚く人は消えたんだ、
と嬉しくて泣いてしまった。
 後ろめたさから、その後俺は祖父母のことについて話を一切しなかった。
オカンも同じような感じだったから、きっと同じように思っていたんだろう。
 俺は逃げるように実家から出て、一人暮らしをはじめた。
一周忌・三回忌・七回忌、すべて理由をつけて拒否した。
死んだことを喜ぶ人間が法事にでちゃいけない気がしたからだ。

 先日、祖父母の十三回忌が行われた。
嫁さんが一度くらい顔だしてあげなよ、というのではじめて法事に出席した。
その時初めてオカンと2人で祖父母について語り合った。
お互いつらかったね、でも頑張ったね、と、泣きながら語り合った。
そんな中、母が、

「 あまりにもつらすぎて、頭おかしくなって、夜、ベランダで洗濯物干してたら、
隣を女の人が通る幻覚までみてたわよ、私。
2階なのにね。
しかもしょっちゅう見えた、その人。
ホント頭おかしかったわ、あの頃は。」

と言った。
 ソレを聞いて、俺は当然驚いた。
俺もオカンに同じものを見ていたことを言うと、オカンも、

「 じゃあ、あれは幻覚じゃなかったの?」

と驚いた顔をしていた。
オカンも同じように、あの人が通っても何故か違和感なく、恐怖感もなく、
ただそれを見ていただけだったらしい。
不思議なことに2人とも、女の人だった、という事実は覚えていても服も髪型も覚えてない。
そして、毎回同じように隣の裏手に曲がっていく。
 未だにその人が何なのかわからない。
2人とも頭おかしくなってた可能性もゼロじゃないけど、一体何だったんだろう、アレ。
そんな異常な光景をみて恐怖を感じないのも、何故なのかもまったくわからん。
もしかしたら、今もその人同じところを毎晩のように歩き続けてるんだろうか?









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 8月3日 ゆっくりと歩く女の人(1)

2024-08-03 12:30:18 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 8月3日 ゆっくりと歩く女の人(1)





 12年前の話です。
当時、俺はオカンと2人で父方の祖父母を介護していた。
 もともと祖父が事故で身体障害になり寝たきり、その後介護していた祖母が認知症になり、
長男である父が引きとったものの、本人は介護する気なし。
姉は既に結婚していて、弟はその話がでた直後に遠方の専門学校に入学を決めて逃亡。
仕方なく、母と当時大学生だった俺と2人で介護することになった。
 介護は想像以上にきつく、俺もオカンも交代で精神科に通いながらの介護で、夜は眠剤つかって寝ていた。
お互いギリギリのなか、俺も介護だけじゃなく家事も手伝うようになっていた。
 その日、夕方にうんこもらした祖母のパジャマとシーツを洗ったものを干すタイミングを失って、
夜10時過ぎに2階のベランダで干していた。
ふと気づくと、俺と同じ高さで、うちのベランダと隣の家の隙間を、ゆっくりと歩く女の人がいた。
2階と同じ高さで歩くなんて明らかにおかしいんだが、何故か恐怖感がわかず、

” ああ、俺本格的に頭おかしくなったんだなあ・・・。”

と思ってぼんやり見ていた。
 その人はそのままゆっくり横を通り過ぎて、隣の家の裏手のほうに曲がっていった。
彼女が消えてからも、

” 今のは幻覚か?幽霊か?
まあ、どっちでもかわらんか・・・。”

と妙に冷静に思って、洗濯物を全部干して、部屋に戻った。
 その後、夜、ベランダで洗濯物を干していると時々その女性が通るのを見た。
精神科の医者に伝えたところ、

「 時間も時間だから、半分寝てたんじゃないですか?」

と言われて、

「 そうですね。」

と答えた。








童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月29日 飲食店の紹介の仕事(4)

2024-07-29 16:32:51 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 7月29日 飲食店の紹介の仕事(4)





 無視して撮影続けて1時間くらい経った。
一発目の定食でシャッター押す前、モニターで店長と構図確認してたら、
フレームの左上からいきなり赤い何かがさっと入って引っ込んだ。
 一瞬だったけど、見えたのは真っ赤に爛れてる手だった。
ひどい火傷した状態の手。
ただ被写体と比較すると実物はかなり小さいし(3歳児くらいの大きさ)、
店長も一緒にモニター見てるんだけど何も言わないから、

” 見間違いかなぁ・・・・。”

と思って続けて、また30分くらい経った頃、いきなり店長が、

「 も~。」

って呆れたように呟いて上を向いた。
 で、厨房から戻ってくると小皿1枚。

” もしかして料理長が漬物間違えたかな?”

撮り直し勘弁、と思ったら塩盛ってる。
それ奥にちょこんと置いて、

「 すいません。」

と一言。
そんなことされても、苦笑いで、

「 いいですよ~。」

としか言いようがない。
でも、音はまだ聞こえていた。

「 あ~、う~。」

まあいいやと思いながら撮影終了した。
 で、撮影終わって撤収する時に店長が塩回収したんだけど、表面が緑黒い。
ほんの2、3時間くらいしか経っていない。

” 衛生的に大丈夫か、ここ?”

と思って、ああだからこれだけスペースあるのに冷凍庫しかないのか、と合点がいった。
 場所的には江戸時代は刑場だったとか、昔近場で火事があったとかいう話を聞いた。
その店だけじゃなく地下街全体、割といるという噂だった。
居心地よさそうだから、いついちゃったのかもしれないです。










童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月21日 飲食店の紹介の仕事(3)

2024-07-21 12:30:50 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 7月21日 飲食店の紹介の仕事(3)





 とある地下街の和食店。
ここも長く続く繁盛してる店だ。
撮影メニューが多く、個室もない店舗で人の出入りがアイドルタイムでもそこそこあるから、

” 何処で撮影すんのかな?”

と思ってたら、厨房から降りられる地下室があるってことで、そこでやることになった。
厨房に入口ってなんだそれと思いながら、人1人強通れるくらいの階段を降りていくと、
蛍光灯一本の薄暗い空間だ。

「 こんなのあるんですね?」

と聞くと、どういう経緯で出来たのか知らんが地下街がオープンする前からあって、
元々別の所有者が別の用途で使っていたものを、場所がちょうど上だからってんで
つなげてもらったとか。

” そんなことあるのか?”

と正直思った。
 場所で言うとB4くらいになって、インフラ設備との兼ね合いもあるだろうし。
壁もちゃんとしたコンクリートではなく、でこぼこで地下室っていうより地下壕。
和食店なのでワインセラーがあるわけでもなく、業務用の冷凍庫と使わなくなった
古い机や椅子が置いてある以外、何もない殺風景な穴蔵だった。
 ロケーション的にあまりよくないけど他に場所もないし、照明増やしてとりあえず撮影開始した。
店長が料理を下に運んで来てチェック、撮影、上に引くの流れ。
 始めて30分くらい経った頃かな、時々変な音がするのに気づく。
機械音にも聞こえるし、人が「あ~」とか「う~」とか言ってるようにも聞こえる。

” 冷凍庫?”

と思ったけど、発生源が違うし、トーンが途中で変わるのでたぶん違う。
奥の何もないところから微かに聞こえてくる。

” まあいいや。”

とスルーしてパシャパシャ撮ってたら、突然耳元で、

「 あつい。」

って低い男の声がした。
正確には、

「 ヴァツォイ(ぼそっ)。」

みたいな感じ。
なんだなんだと周り見ても、店長と自分以外いない(この時は助手くんいなかった)。
で再開すると、またあ~う~聞こえてくる。









童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------