俺はアンパンマン自転車に跨って、山住神社から家へ向かった。
自転車の前カゴの底には、空になったスーパーの袋が一回結んだ状態で揺れている。
快適に自転車を走らせながら、俺はムフフフフと満足感に浸っていた。
“ これで、あのキツネから解放される・・・。”
自転車のペダルを踏む足も軽い。
“ 大ボスに会えなかったのは残念だったけど・・・。”
俺はちょっと後ろを振り返った。
もう、山住神社の森からかなり離れている。
“ それにしても、結構、長い道のりだったよなァ~。”
俺は、お揚げ婆さんからヤンキーから山下先生までの流れを思い出していた。
もと来た道を戻って、当摩川の橋を越えて、しばらく行ったところにある農道を右に曲がれば近道だ。
日は暮れ掛かっている。
しばらくで真っ暗になるだろう。
空は曇り始めて、雲がモコモコ動いていた。
俺は、ガタガタ道を進みながら思った。
“ ホント、家が全然無いところだな・・・。”
辺りは、人通りがまったく無い。
自転車で道を走らせていても、来た時からずっと、誰とも擦れ違わなかった。
町からかなり離れているので、当然と言えば当然だ。
ガタガタ道の両側には、木がポツンポツンと立っている。
俺は自転車を走らせながら右を見た。
木々の隙間から流れて行く景色には、荒地と畑が斑にあるように見える。
放置してある荒地には、低い潅木や雑草が茂っている。
荒地と荒地の間には、小規模の畑がチラチラ見える。
畑には、何か作物が植えてあるようだ。
作物には実がなっていないので、何が植えてあるのか俺には分からない。
木々が途切れた隙間に、一瞬、遠くが見通せた。
遠くの方の、山の手前の畑に軽トラックが止まっていた。
その近くで、頭に麦藁帽子を被った農家の夫婦が動いているのが見えた。
でも、それは直ぐに木々の陰に隠れた。
俺は、暗くなる前に家に帰りたかったので、急いで自転車のペダルを回した。
蛇行しているガタガタ道を進むと、左前に当摩川の橋が見え隠れし始めた。
“ もう直ぐ橋だ。”
荒地を通過して、左手に少し高くなった川の土手を見ながら走る。
川に沿って左にカーブしている道を、さらにスピードを上げる。
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