大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道107

2008-08-31 19:08:39 | E,霧の狐道
 俺は辺りの様子を窺いながら思った。

“ これはとんでもないことになったぞ・・・。
 あの女の子、それに、あの男の声は、何なんだ。
 男は、何処に消えてしまったんだ。
 あの女の子は、まだ橋の上に声を潜めて俺の様子を窺っているのだろう  
 か・・・。”

橋を見上げても変化は無い。

“ 居ないのだな・・・・。
 ・・・・・・・・。
 消えてしまったままなら、まだいいが・・・。
 でも、確かに居たよな・・・・。
 あれって、世に言うナニの類のものか・・・?
 一応、今は居ないような気がするけど・・・・。
 でも、このまま、夜になったら、また、ここに出て来るとか・・・・・。
 “こんばんは”とか、言いながら・・・・・・・。
 ゲッ、ゲゲッ!?”

 俺はピンチに陥ったことを痛感した。
それに、俺は山住神社に来ていることを誰にも言っていない。

“ これはマズイぞ・・・・。”

探しに来てくれる人は誰もいない。

“ シャリ、シャリ、シャリ・・・。”

 川の流れの音が、妖怪“小豆洗い”の音に聞こえる。
俺は思わず音のする後ろを振り返った。
でも、そこには誰も居ない。




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霧の狐道106

2008-08-29 18:11:45 | E,霧の狐道
 河原の雑草が風に吹かれて揺れていた。

“ でも、あの女の子は橋の上にいる筈だ。”

俺は、橋を見上げた。
しかし、誰も橋からこちらを覗き込んでいる者はいない。
汚い橋の裏側しか見えなかった。
 俺は不審に思ったが、動けないので、とにかく、橋の上に向かって、もう一度大声で助けを呼んだ。

「 た・す・け・て・く・れぇ~~~~!!
 川に落ちたァ~~~~~~!!」

辺りは、シーンとしていた。

“ ホントに誰も居ないのか・・・・。
 あの女の子も居ないのか・・・・・!?”

俺は、心細くなって来た。

“ このまま、ここで夜が来るのはイヤだなァ・・・。”

 俺は、再び、周りをキョロキョロ見回した。
河原は日が翳って暗くなり始めている。
その寂しそうな風景に不安が大きくなる。

“ あの橋の下の声は何だったんだ・・?
 さっきの、女の子は何だったんだ・・?
 ・・・・・・・・。
 ううううう・・・・。
 何だ、何だ、何だ、これは、くそっ、ゴラァ・・・・!”

俺はメチャメチャヤバイ気がして、大声で空に向けて叫んだ。

「 うおォ~~~~~っ!
 誰か来てくれぇ~~~っ!!
 助けてくれぇ~~~!!
 おォ~~~い!
 おォ~~~い!
 おォ~~~い!
 おォ~~~い!」

俺は、何回も繰り返した。
でも、反応は何も無かった。



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霧の狐道105

2008-08-27 18:47:32 | E,霧の狐道
 俺は、たぶん、走り幅跳びのように空中で足を回転させて歩いていたと思う。
でも、鳥ではないから、必ず落ちる。
俺は横に回転しながらスローモーションで下に落ちて行った。

“ どすん!”

川の真ん中に俺は落ちた。

「 イデデデデデ!!」

 川の水は、多くは無い。
水は川幅の半分を流れていた。
残り半分は河原だ。
 俺は、ちょうど川の真ん中にある浅瀬に落ちた。
浅瀬だから、溺れることは無かったが、左足に激痛が走った。
さらに、左肩の辺りが痛くて、腕が上がらない。
俺は体の左を下にして、河原の砂利の上に落ちてしまったのだ。
 体を動かそうとすると痛みが走る。
俺は、立ち上がって土手を登ることは出来ないと思った。

“ でも、川には女の子の親がいる筈だ。”

俺は川の水に濡れながら大声で叫んだ。

「 助けてくれぇ~~~!!
 落ちたァ~~~~!!」

俺は、助けの声を待った。

“ ん、・・・・・。”

妙に静かだ。

“ 返事が無いぞ・・・・。”

俺は、足元を水に濡らしながら、キョロキョロ周りを見回した。

「 誰も居ない・・・・。」

雑草の茂った河原と川の水の流れる音がしていた。

“ 確かに橋の下から男の声がしたのに・・・。”

辺りは妙に静かだった。



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霧の狐道104

2008-08-25 19:05:14 | E,霧の狐道
 俺は、再び、自転車のスピードを上げた。

“ よし、橋を渡るぞ!”

橋の幅は3メートルほど、両側に60センチほどの低い欄干がある。

“ 俺って、何をビクついているんだ・・・・。”

 俺は、後ろを向いたままの女の子を左に見、背後を廻り込んで急いで橋を通過しようとした。
そのとき、突然、俺の目の前に丸い何かが転がって来たのだ。
俺はビックリして大声をあげた。

「 うわあっっっ!!」

それは、一瞬、生首に見えた。
でも、よく見ると違った。

“ あ、鞠か・・・・。”

 女の子の持っていた鞠が自転車の前に転がって来たのだ。
でも、女の子が投げたようには思えない。
女の子は後ろを向いたままだし、どうして鞠がこちらに転がって来たのか、俺には分からなかった。

「 おおっと!!」

俺は急いで鞠を避け、自転車のハンドルを右に切った。

“ ザザザザザ、ザザ~ッ!”

 スピードの出ていた自転車は、激しく右に横滑りをして橋の上を滑って行く。
斜めになった自転車に辛うじて乗っかったまま、橋の欄干が俺の目の前に迫る。

“ うわっ、当たる!”

自転車は俺を乗せたまま、橋を横断して反対の欄干に激突した。

“ ガツン!!!”

激突した自転車は横倒しに橋の上に倒れた。
 俺は急に止まった自転車から投げ出され、欄干を乗り越えて川に放り出された。
そして、俺は空中を飛んだのだ。

「 うお~っ、うお~~~~~っ!!
 飛んでるゥ~、飛んでるぞォ~~~!!!」



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霧の狐道103

2008-08-23 19:07:38 | E,霧の狐道
 道の左側の土手には壁のように連なる高いセイタカアワダチ草が続いている。
俺は、黄色いセイタカアワダチ草の壁に沿って自転車を倒しながら、左にカーブを進む。
しばらく進むと、突然、セイタカアワダチ草の壁が途切れ、急に橋が現れた。
壁の陰から、急に橋の欄干が飛び出して来たように、大きく見えたのだ。

“ ん・・・・?”

 俺は、少し怪訝に思った。
橋の欄干の手前に、五歳ぐらいの女の子が横を向いて立っているのが見える。

“ 親が、下の川で魚釣りでもしているんだろうか・・。
 退屈して、一人で橋の上まで上がって来たのか・・。”

 でも、それにしてもおかしい。
今時、赤い着物に帯を締めている。
それに、両手で鞠を胸元に大事そうに持っている。
 女の子は、橋の欄干の手前から川の方を向いて、少し俯き加減で立っている。
横顔は、おかっぱの髪に隠れて見えない。

“ ・・・・・・・・・。”

 俺は、スピードを少し緩め、様子を窺いながら自転車を進めた。
俺は、女の子にドンドン近付く。
と、そのとき、橋の下から、男の声が聞こえた。

「 お~い!」

俺は、声を聞いて思った。

“ 何だ、やっぱり父親が釣りをしているんだ。”



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霧の狐道102

2008-08-21 18:33:08 | E,霧の狐道
 俺はアンパンマン自転車に跨って、山住神社から家へ向かった。
自転車の前カゴの底には、空になったスーパーの袋が一回結んだ状態で揺れている。
快適に自転車を走らせながら、俺はムフフフフと満足感に浸っていた。

“ これで、あのキツネから解放される・・・。”

自転車のペダルを踏む足も軽い。

“ 大ボスに会えなかったのは残念だったけど・・・。”

 俺はちょっと後ろを振り返った。
もう、山住神社の森からかなり離れている。

“ それにしても、結構、長い道のりだったよなァ~。”

俺は、お揚げ婆さんからヤンキーから山下先生までの流れを思い出していた。

 もと来た道を戻って、当摩川の橋を越えて、しばらく行ったところにある農道を右に曲がれば近道だ。
日は暮れ掛かっている。
しばらくで真っ暗になるだろう。
空は曇り始めて、雲がモコモコ動いていた。
 俺は、ガタガタ道を進みながら思った。

“ ホント、家が全然無いところだな・・・。”

辺りは、人通りがまったく無い。
自転車で道を走らせていても、来た時からずっと、誰とも擦れ違わなかった。
町からかなり離れているので、当然と言えば当然だ。
 ガタガタ道の両側には、木がポツンポツンと立っている。
俺は自転車を走らせながら右を見た。
木々の隙間から流れて行く景色には、荒地と畑が斑にあるように見える。
 放置してある荒地には、低い潅木や雑草が茂っている。
荒地と荒地の間には、小規模の畑がチラチラ見える。
畑には、何か作物が植えてあるようだ。
作物には実がなっていないので、何が植えてあるのか俺には分からない。
 木々が途切れた隙間に、一瞬、遠くが見通せた。
遠くの方の、山の手前の畑に軽トラックが止まっていた。
その近くで、頭に麦藁帽子を被った農家の夫婦が動いているのが見えた。
でも、それは直ぐに木々の陰に隠れた。
 俺は、暗くなる前に家に帰りたかったので、急いで自転車のペダルを回した。
蛇行しているガタガタ道を進むと、左前に当摩川の橋が見え隠れし始めた。

“ もう直ぐ橋だ。”

 荒地を通過して、左手に少し高くなった川の土手を見ながら走る。
川に沿って左にカーブしている道を、さらにスピードを上げる。



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Photo Lounge66 何?

2008-08-20 18:17:31 |      Photo群

Photo Lounge66 何? 画像


 Photo Lounge66 何? 

    「 ん・・、何や・・・・?」          
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霧の狐道101

2008-08-19 18:59:03 | E,霧の狐道
 俺は、お揚げを社の前に置いて、予定していたお願いを言った。

「 ええと、あの、家をウロウロしているキツネを何とかしてください。
 勝手に、冷蔵庫のお揚げを食べたり、俺の姿で、みんなの夢に出て来
 て悪さをするのです。
 真っ当なキツネになるように、ご指導して下さい。
 苦労の末、手に入れたお揚げを置いておきますので、くれぐれもヨロシク。」

“ むふふふふ、これで、もう大丈夫だ。”

俺はお願いを言ってから脇社の様子を窺った。

“ そろそろ煙がモクモクと湧いて来る筈なんだが・・・・?”

脇社は、特に何の変化も無い。

“ お稲荷さんネットワークは、お休みかな・・・?”

脇社は静かなままだ。

“ おかしいな、大ボスは寝ているのかな・・・・・?”

俺はしばらく考えた。
そして、結論だ。

“ そうか、分かった。
 きっと、珍しくお供えがあったので動揺しているのだ!
 何年振りかのお供えに、ビックリして腰を抜かしてしまったんだ!!”

ま、いいのだ。
とにかく願いが叶えばそれでいいのだ。
俺は、ちょっとは残念な気もしたが、大ボスに会うのは諦めた。
そして、大きな声で脇社に言った。

「 確かに頼んだからねっ!!!」

俺は、そう言い終わると、気のせいか心持ち両肩が軽くなったような気がした。
そして、“ぱんぱんぱんぱんぱぱんのぱんぱん”と多めに拍手を打って、山住神社の脇社を離れ家路についた。



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霧の狐道100

2008-08-17 18:52:23 | E,霧の狐道
 俺の目指す、山住神社の脇社のお稲荷さんは、参道の途中にある。
参道は木々に挟まれて暗く、両脇には落ち葉が積もっている。
しばらく歩いては、キョロキョロ辺りを見回す。

“ 確か、この辺りにあった筈だが・・・。”

参道沿いに低木が茂っているところを越えて右を見ると、狭い道の奥に小さな社が見えた。

「 あった、あった!
 これだ、これだ!
 ムフフフフフ!!」

俺は、狭い道の奥に進んだ。

「 うん、うん、稲荷だ、稲荷だ。」

石のキツネが、左右で俺を出迎えている。

“ よく来たなァ~~~。”

歓迎の声が聞こえて来そうだ。
低い木々に囲まれた社は、小さくって少々古びてはいるが、きっと全国の稲荷ネットワークに通じているだろう。

“ よし、早速、用件をお願いするぞっ!”

 俺は、スーパーの袋からお揚げを取り出した。
そして、さりげなくアピールした。

「 ホント、このお揚げをキープするのにメチャメチャ苦労したんですからね!」

一応、こう呟いて置くとお揚げの評価も高くなると言うもんだ。



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霧の狐道99

2008-08-15 23:11:37 | E,霧の狐道
    5、橋


 俺は、キープしたお揚げを持って山住神社に向かった。
アンパンマン自転車は、舗装されたアスファルトの道路を絶好調に走っている。
始めこそヤンキーを意識して注意して走っていたが、繁華街を抜けると、もうあの連中とは出くわすことも無いだろうと、軽く鼻歌も出て来る。
 家並みを抜け、町の西を流れる当摩川の橋を越え、少し走ると山住神社の森が見えて来る。
当摩川の橋を越えた辺りから、舗装していない砂利道だ。
 俺は西の空を見上げて思った。

“ 余計な所で時間を食ったな・・・・。
 少し、急いだ方が良さそうだ。”

もう、太陽は西の山に近付いている。
 俺は、自転車のスピードを上げた。
自転車の振動がガタガタ激しくなる。
お揚げの入ったスーパーの袋が自転車の前カゴの中で小刻みに揺れている。
涼しい風が俺の頬を通り抜け後ろに飛んで行く。

 俺は、途中でヤンキーに出くわすことも無く、無事、山住神社の鳥居の前に到着した。
山住神社は、町から少し離れた所にあるので人通りは無い。
神主も常駐しておらず、通いの状態だ。
大きな鳥居の奥の、暗い森の中に長い参道が吸い込まれている。
俺は、山住神社のいわれ書きの書いてある、腐りかけた立て札の前に自転車を置き、お揚げの入ったスーパーの袋をぶら下げて参道を進んだ。



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霧の狐道98

2008-08-13 19:41:57 | E,霧の狐道
 山下先生が、格闘を始めた。
画面の女の子は、三回に一回はキツネに蹴っ飛ばされてプシュッと消える。
その度に、山下先生は雄叫びを上げる。

「 くそぉ~~~~っ!
 にゃろぉ~~~~~っ!!」

 再び現れた画面のキツネは嬉しそうにピョンピョン跳ねる。
キツネは遊び相手が現れて楽しそうだ。
俺はそれを見ながら、カップラーメンを食べ終わった。

“ そうだな・・・・。”

俺は壁に掛けてある時計を見た。

“ もう、時間もかなり経ったし、ヤンキーも俺を捜すのを諦めているだろうな。
 そろそろ、脇社に行くか・・・・。”

俺は、山下先生に言った。

「 あの~、そろそろ、帰ります。」

 山下先生は、キツネと戦うのに必死で、こちらを見ようともしない。
パソコンの画面を見たままの状態で言った。

「 そうか、帰るか。
 じゃ、気を付けてな!」
「 ハイ!」

俺は一旦ドアを開けて、外の様子を窺ってから、台所の自転車のスタンドを上げた。

「 じゃ、帰ります。」
「 明日は、宿題、忘れるな。」
「 は~い。」

俺は山下先生の部屋を後にした。
 俺は、通路をアンパンマン自転車を押しながら思った。

“ コンセントに、パソコンの電源プラグが差し込まれていないことに、
 山下先生は何時気が付くんだろう・・・?”



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霧の狐道97

2008-08-11 18:20:45 | E,霧の狐道
 山下先生が、眉間に皺をさらに寄せて言った。

「 きっと、スゴイヤツが出てくるんだろうな・・・・。
 ちょっと、不安になるな・・・・。」

でも、俺は、出て来る画面をもう知っている。

“ 稲荷の本部だ。
 大ボスが出てきたら、先生、ビックリするだろうな・・・・。
 でも、どうして、俺のイメージが画面に出てるんだろう?”

理由は分からない。

“ あっ!”

俺は、その画面を見ながら別のことに気が付いた。

“ ここで、キツネが山下先生と遊んでいれば、俺が脇社に行くのをキツ
 ネに邪魔されないで済むな・・・・。
 おお、これは、いい!!
 ムフフフフ、よ~し・・・・。”

俺は、山下先生をたき付けて言った。

「 先生、頑張って下さい!
 応援します。」

山下先生は、パソコンの画面を睨みながら言った。

「 神谷も応援してくれるのか?」
「 そうです、ウイルスなんて、バコバコにしばいてやりましょう!」
「 よし、頑張るぞ!」
「 そうです、その意気ですよっ!
 先生がウイルスなんかに負ける筈がありません!!」
「 よぉ~し、やる気が出て来たぞ。
 うお~っ、俺は、ウイルスなんかに負けないぞっ!!」

山下先生の肩に力が入っている。
俺は、カップラーメンをズルズル食いながら言った。

「 先生なら、絶対、大丈夫ですよっ!」
「 お~っ!!!」


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霧の狐道96

2008-08-07 19:53:23 | E,霧の狐道
 山下先生は、マニュアルと打って、エンターを押した。
画面に、駆除の流れが図解入りで出て来る。


   “ウイルス・駆除ソフト・モグモグ7”

      ウイルス駆除のステップ

  『 解説 』

  各ステージをクリアーして下さい。
  ただし、各ステージで、登場人物に10回蹴っ飛ばされるとあなたの負けです。


  『 第1ステージ 』

  キツネ1匹~キツネ10匹
  映像は、狐が笑いながらVサインをしている。


  『 第2ステージ 』

  狐火1匹~狐火10匹
  映像は、狐火がポワポワ浮かんでいる。


  『 第3ステージ 』

  女狐1匹~女狐10匹
  映像は、かわいい女狐が現れた。


俺は、ハッと思った。

“ これって、俺がイメージしたのと同じ画像だ・・・。
 とすると、次は・・・・・。”


  『 第4ステージ 』

  中ボス2匹
  映像は、宝珠を咥えた狐と巻物を咥えた狐の2匹が現れた。


山下先生が、眉間に皺を寄せて言った。

「 こいつ等、強そうだな・・・。」

俺は、中ボスを見て思った。

“ やっぱりな・・・。”


  『 第5ステージ(最終ステージ) 』

  大ボス1匹、他
  画面に大ボスの画像が出て来ない。
  画面のど真ん中に、大きな“?”マークがあるだけだ。
  “?”マークは立体画像で、画面の真ん中でクルクル回っている。



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霧の狐道95

2008-08-05 19:21:45 | E,霧の狐道
 山下先生は、画面を注視した。

「 何だ、これは?」

キツネの横に、小さな木槌を持った萌え系のかわいい女の子が現れた。
 キツネが女の子を指差して、こちらに合図を送っている。

「 えっ、“この女の子の木槌で僕を叩け”か・・・。
 女の子の動きは、←、↑、→、↓のキーで、木槌で叩くときは、Zキー
 か・・・。
 モグラ叩きの要領だな。
 これ、分かり易いな・・・。」

山下先生は、パソコンの前に座り直して言った。

「 よし、早速、駆除するぞっ!!!」

俺は思った。

“ ウイルスに、動かし方を教えて貰ってどうすんだよォ!”

山下先生は、パソコンを操作し始めた。

“ カタカタカタ、パシパシパシ!”

画面を逃げ回るキツネを、萌え萌え女の子が追い駆けて行って、パシッ!と木槌で叩く。

「 くそ~っ、すばしっこいヤツめ。
 これで、どうだ。」

“ パシッ!”

「 うおっ、やった、やった、当たったぞ!
 ウイルスをやっつけたぞ!」

叩かれたキツネは、プシュッ!と消えた。

「 ・・・・・・、あれっ?」

キツネが二匹現れて、ピョンピョン跳んでいる。

「 おのれ、増殖しやがって・・。」

再び、山下先生の戦いが始まった。

「 このォ~~!
 エイッ、エイッ、エイッ!!」

“ パシッ!パシッ!”

キツネを二匹叩くと、キツネが三匹現れた。

「 ゲッ、これは、切りが無いぞ・・・・。」
「 先生、駆除のマニュアルを調べた方がいいんじゃないですか?」
「 うん、そうだな。」



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霧の狐道94

2008-08-03 19:14:04 | E,霧の狐道
 山下先生が俺に言った。

「 おまえだな、このォ~!
 ウイルスに感染させやがって!
 パソコン、どうしてくれるんだ!」
「 いや、動かしてないですよォ~。」
「 じゃ、どうして、コイツがいるんだ?」

画面のキツネは、二カッと笑ってVサインを挙げた。
 どうせ説明しても分かって貰えそうも無いので、俺はキツネをウイルスと、先生の希望通り言うことにした。

「 先生、昨日、エッチなサイトでも、見ていたんじゃないですか?」
「 えっ、・・・・・・。」

山下先生は黙った。

「 ホラ、やっぱり見てたんだ。
 だから、ウイルスに感染したんですよ!」
「 う、ウルサイ!」
「 どうするんですか?」
「 いや、冷静に考えると、心配は無い。
 こう言うときのために、パソコンにはウイルス駆除ソフトがインストー
 ルされているのだ。」
「 へぇ~。」
「 ウイルス駆除ソフト、結構、高かったんだぞ。
 でも、まだ、動かしたことが無いんだ。
 どんな、画面が出て来るのかな?
 今まで、ウイルスに感染したこと無かったからな。
 しかし、いよいよ、今回、出番がやってきたのだ。
 買っておいて良かったなぁ。」
「 早速、やってみて下さいよ!」
「 よし、まず、“ウイルス・駆除ソフト・モグモグ7”と打って、次
 にパスワードは“モエモエコロコロ”だ。」
「 ・・・・・・・。」

俺はソフトの名前を聞いて思った。

“ 何だか、ウイルスに返り討ちになりそうな感じだけど・・・・。
 もうちょっと、まともな駆除ソフトは無かったのかなァ・・・?”

それでも、山下先生は嬉々としてパソコンのキーボードを叩いている。

“ カタカタカタカタ・・・・。”

そして、打ち込みが終わると、勝ち誇った顔で言った。

「 ムフフフフ、打ち込んだから、エンターを押すぞ!
 行けぇ~モグモグ7、ウイルスを叩き潰すのだァ~~~!!」

“ ポチッ!”



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