大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

しづめばこ 2月29日 P422

2016-02-29 19:05:18 | C,しづめばこ


しづめばこ 2月29日 P422  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 2月28日 大阪の夜の雨

2016-02-28 20:00:23 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月28日 大阪の夜の雨



 5年前の夏です。
雨の夜でした。
残業が長引いて、私は人通りもない帰り道を急いでいました。
 近道の路地に入ると、年老いた風の男女二人連れが、ゆっくりとこちら側へ向かってきました。
お爺さんが銀色の自転車を押し、その後ろからお婆さんがお爺さんに傘を差しかけて、自分は少し濡れながら歩いています。
 譲り合ってようやく傘同士がすれ違えるような狭い路地なので、私は立ち止まって道を譲りました。
するとお爺さんが、

「 ○○病院はどこかいな?」

と私に尋ねてきました。
 ここに長く住んでいる私でしたが、心当たりの病院がありません。
困って後ろのお婆さんを見ると、片手を拝むように目の前にした後、私が歩いて来た方を指差し、もう一度拝むように頭を下げました。

“ ああ、このお爺さんはきっと少し呆けているんだな。
そういえば、着ているものもパジャマみたいだし・・・。”

そう思って私は、お婆さんの指差すまま、

「 あっちです。」

とお爺さんに告げました。

「 おおきにな。
あっちやな。
ホンマに、オカンは何さらしとんのや。
オカンおらへんかったら、ワシ道全然分からへんがな。
ホンマおおきに。」

 ブツブツ言いながらお爺さんは歩き出し、お婆さんはまた私にお辞儀をしながら後に続きました。

“ きっと呆けてしまって、奥さんがついて来ている事にも気がつかないのだ!”

 何となく可哀想に思えて、何気なく振り返ってみると、そこにはお婆さんしかいませんでした。
お爺さんも、自転車も、どう目を凝らしても見えないのです。
 その路地は大きな工場の裏手で、どこにも隠れるところはありません。
雨の夜とは言え、シルバーの自転車とネルっぽいパジャマだけを着たお爺さんを、見失うわけもありません。
 お婆さんは傘を何も無い空間に差しかけて、自分は肩を濡らしたままゆっくりと歩いていきます。
その姿が路地の角を曲がって見えなくなるまで、私は怖くて動けませんでした。











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日々の恐怖 2月27日 川の呼ぶ声(2)

2016-02-27 19:53:50 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月27日 川の呼ぶ声(2)



 しかし、さほど危険ではないので、最後に上の淵を攻めてから終わることにした。
上の淵に竿を出すと一発で掛かった。

“ 大きい!”

慎重に取り込む。
 上がった魚は50cmを越えるイワナだった。
しかし、確かにイワナなのだが、ガリガリに痩せている。
産卵後のイワナを見たことがあるが、それよりも遙かに痩せ衰えている。
 餌が豊富なこの渓流で、今までこんな痩せた気味が悪い魚は見たことがない。

“ もう帰ろう…。”

釣った魚を逃がして竿をたたんだ。
 帰り支度を整えて振り向くと、道がない.。
先ほど登ってきた道、そこには苔むした岩と老木が、まるで何十年もそこにあるように道を塞いでいた。
半ばパニックになりながら別の道を探した。
 下流を向いて左側の岩伝いに、何とか下の淵へ行けそうである。
躊躇なく岩に飛びつき、足場を確認しながら下流へ向かうことにした。
 少し進むと、

「 お~い!」

と頭の上の方から声が聞こえた。
 歩を止めて上を見るが、崖の上に人の姿はないようだ。
もっとよく見ようと少し戻り、頭上に張り出した木の根を掴んだ。
その瞬間、

「 おいっ!!」

背後からの大きな声がした。
そして、自分が掴まっていた岩が足場ごと岩盤から剥がれた。

“ ガアアァァン!”

岩は大きな音を立てながら淵の中に落下していった。
 俺は木の根を掴んだ状態で宙づりになっていた。
もし手を離していたら、今頃は淵の底で岩に押しつぶされていただろう。
まさに紙一重だった。
 上の淵の砂地の所へ戻ると、両足がガクガク震えている。
全身に鳥肌が立ち、気持ち悪い汗が止まらなかった。

“ さっきの声は・・・?”

辺りを見回したが、声の主らしき人は何処にもいない。
 ふと気付くと、さっきは岩と老木があった場所に登ってきた道が見える。
オレは少しでも早くこの場を離れたくて、無我夢中で川を下った。
 翌日、釣りの師匠である近所の爺さんに、この話をした。
すると、

「 川が呼んどったんじゃろうなあ。
けど、無事だったのは、山がお前を助けてくれたんじゃな。
川が呼ぶ日がある。
山の呼ぶ日もある。
どちらも怖いよ。
そういう日は深く入らねえほうがええ。」

もっと早く教えてくれよ、師匠。












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日々の恐怖 2月26日 川の呼ぶ声(1)

2016-02-26 20:16:47 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月26日 川の呼ぶ声(1)



 2年前の話だ。
俺は渓流釣りが趣味で、ウチの近くの川の源流部へよく釣りに行っていた。
車で30分程度の距離、適度な水量、あまり険しくない流れなど、1人で行ってもさほど危険を感じないような場所である。
 3月には珍しいくらいの大雨が降った翌々日、俺はその渓流へ入った。
車を降りてから最初のポイントまで行く間に、砂防ダムを一つ越える必要がある。
歩きながらふと砂防ダムの上を見ると、大きな鹿がいた。
いつもなら人影を見ると逃げるのだが、この日は全く動こうとしなかった。
 砂防ダムの下まで来ると、そこには足でも滑らせたのだろうか、すでに冷たくなっている子鹿の姿があった。
すると、砂防ダムの上の鹿はこの子の親か。
 しばらくして親鹿は、森の中へ消えていった。
俺は子鹿のために小さく合掌をしてから、その場を後にした。
 いきなり自然の現実を目の当たりにしたためか、それとも曇天のせいか、この日は足取りが妙に重かった気がする。
 さて、竿を出して釣行を開始する。
大雨の後に釣り人が入った形跡は全くない。
この川では珍しいライズ(魚の飛びはね)も確認できる。
 いつもなら小躍りするような好条件なのだが、この日はどうもおかしかった。
何でもないような所で根掛かりをしたり、木の枝に引っ掛けたり、木の根に躓いたり、石の上で滑ったり。
 その時は大雨の影響だろうと考えていたのだが、今考えると、まるで奥へ進むなと言う警告だったような気がする。
 右膝と臀部に打撲を負った。
しかし、魚だけは良く釣れていた。
こうなると釣り人の性か、前へ進まずにはいられない。
もう少し、もう少しだけ。
 二段淵まで行こう。
二段淵とは、巨大な岩盤に囲まれた絶好のポイントである。
 ここに着くまでに右肘と右手の甲に擦り傷が増えていたが、なんとか二段淵に到着し、ほっと一息ついた。
水量が少し多い他はいつもと変わらない景色のはずが、何かおかしい。
淵全体の雰囲気がいつもと違った。
いつもなら下流に向かって気持ちよく風が吹いているのだが、この日は無風。
ライズも影を潜め、川から生命感が無くなっていた。
さらに、不気味なほどの静寂。
そう、鳥の鳴き声一つ聞こえないのだ。
 奇妙に思いながらも、ここまで来たからにはと竿を出した。
案の定、当たりは全くない。

“ もう終おうか・・・。”

と思った矢先、二段淵の上の淵で魚が跳ねるのが見えた。
上の淵へは、川の上流に向かって左側の大きな岩をぐるっと回り込んで行かなければならない。









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日々の恐怖 2月25日 電話に出た女(2)

2016-02-25 19:55:48 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月25日 電話に出た女(2)



 次の日、私は早朝に目を覚まし、倉庫側のドアから倉庫に入り、一人で積み込み作業をしていました。
すると、事務所の入り口の辺りに人が集まっているのが見えました。
作業の手を止めて行ってみると、昨日物音がしていたドアに引っ掻いたような傷が残っています。

「 空き巣狙いなんじゃないのか?」

私の話を聞いた部長がそう言って、一応警察に連絡することになりました。
 夕方、配送を終えて事務所へ戻ると、私の顔を見た部長が「警察へ行ってくれ」と言い出しました。

「 今日、近所で倉庫荒らしが捕まったらしいんだが、その関連で昨日の話が聞きたいそうだ。」

私は部長の車で警察に行くことになりました。
 警察署では、簡単な事情聴取を受け、捕まった倉庫荒らしの話を聞きました。
警察によると、犯人は中国人の窃盗団だということでした。
彼らは、狙いを付けた倉庫会社に電話を入れて不在確認をし、そのうえで、電話が鳴りっぱなしであれば、多少の物音を立てても気にすることなく、工具でドアをこじ開けて中に侵入し、金品を奪ってトンズラする、という手口で倉庫を荒らしていたそうです。

「 万が一の時に備えて、奴ら拳銃も持っていたんです。」

取り調べの警官がそう言うのを聞いて、あの日侵入してきた窃盗団に見つかっていたら、と思うとゾッとしました。
 続けて、警官が気になることを聞いてきました。

「 昨夜、あなたは電話には出なかったとおっしゃいましたが、本当ですか?」

私が、

「 はい。」

と答えると、警官はしばらく考え込むような素振りを見せてから、こう語り始めました。

「 あいつら、あなたの会社へかけた電話に誰かが出たと、そう言ってるんですよ。
だから、ドアをこじ開けるのを止めて、様子を伺っていたらしいんですが・・・。
その時、そこで何があったのか、誰も話そうとしないんです。」

警官はちょっと困ったような顔で言いました。

「 捕まった時にはあいつら、あなたの会社の近くに止めた車の中で、ブルブル震えていたんですよ。
大の男が4人揃って。
どう考えてもおかしいでしょう。」
「 男が4人・・・、ですか?」
「 ええ、一網打尽って訳でして。
それについては、私らもホッとしておるんですがね・・・。」

 それで、私は昨日の事を思い出しました。
電話が切れた後、ドアの外にいたのは凶器を持った中国人の男達だった。
するとあの時、声がふっつりと止む直前に聞こえた女の声。
あれは誰の声だったんでしょうかね?











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日々の恐怖 2月24日 電話に出た女(1)

2016-02-24 20:28:54 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月24日 電話に出た女(1)



 会社員Oさんから伺った話です。
3年ほど前のことです。
当時、私は倉庫会社の配送担当をしていました。
 その日は仕事が終わってから仲間と一緒に飲みに行き、その後2軒3軒と飲み歩くうちに、気が付くと終電は無くなっていました。
翌日は早朝から積み込みと配送があったので、私は会社に泊まることにしました。
 倉庫の横にある事務所の2階に休憩室があり、早番や遅番のドライバーは、そこで仮眠を取ることが良くありました。
ただ、深夜には出るという噂があって、そこで夜を明かす人はほとんどいませんでした。
 その噂のことは知っていたのですが、生まれてこの方、怪異などとは縁がなく、まるっきり心霊音痴だった私は、かなり酔っていたせいもあって、あまり深く考えることもなく、休憩室の畳の上で横になるとすぐに眠ってしまいました。

 どれぐらい眠っていたのか、私は電話の音で目が覚めました。

“ ピリリリリッ、ピリリリリッ!”

事務所の電話が鳴っています。

“ こんな夜中に誰だろう?”

そう思いながらも、起きるのが面倒臭かったので放っておきました。
 しかし、電話は執拗に鳴り続けました。

“ ピリリリリッ、ピリリリリッ!”

ボリュームが最大に設定してあるせいか、物凄くうるさい。
いい加減うんざりして、身を起こそうとした時、

“ ドンドンドンッ!”

1階にある事務所の入り口のドアが叩かれる音がしました。
 不審に思って、動作を止め耳を澄ますと、今度はドアを引っ掻くような音がします。

“ ガリ・・ガリ・ガリ・・・ガリ・・・。”

何だか怖くなって、私は畳の上に半身を起こしたまま息を潜めていました。

“ ピリ・・・・・。”

と、不意に鳴り続けていた電話の呼び出し音が止みました。
 同時に、ドアの物音もしなくなりました。
すると今度は、ぼそぼそと人の声がします。
 ドアの外で誰かが喋っているようですが、話の内容はわかりません。
何が起きているのか全くわかりませんでしたが、ひどく嫌な予感がしたので、私は耳だけに神経を集中して、物音を立てないようにジッとしていました。
 話し声は断続的に、ぼそり、ぼそり、と聞こえてきます。
複数の男の声のように思えました。
 やがて、女の声が加わるとすぐに声は止み、周囲には静けさが戻ってきました。
何が何だか良くわからないまま、しばらくは様子を伺っていましたが、そのうち張りつめていた気が緩んだのか、いつしか私は眠ってしまいました。









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日々の恐怖 2月23日 小石

2016-02-23 20:27:10 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月23日 小石



 林業を営むEさんの話です。
枝打ちと間引きで山に入った。
 大スズメバチの巣があった。
間引いた木を、巣の上に落とさないように調節して失敗。
木がやばい方向に向かった瞬間に、逃走を始めた。
 近くの軽トラに避難してから見てみると、出てくるわ出てくるわ。
こりゃもう仕事できないな、と思っていると近くからもの凄い悲鳴が聞こえた。
 キノコ取りの人でもいたのかと思い、声の方向に軽トラをまわす。
自作の網付きヘルメットと白カッパを着込んで救助に向かう。
 が、誰もいない。
草刈りと枝打ちで見通しはいいのだが、人の姿はない。
 それでもと思い、少し探していると誰かが小石を投げてきた。
動けないのかと思い、石が飛んできた方向に行ってみるが誰もいない。
 そうしたら、また小石が飛んでくる。
そんなことを3回ほどやってたら、急に怖くなって帰った。
現場に忘れたチェンソーは、後日回収に行った。










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日々の恐怖 2月22日 写真

2016-02-22 19:29:03 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月22日 写真



 関東地方に住むDさんの話です。
5年くらい前の話だ。
母方の親戚が墓を建て直した。
立派な墓が出来たので、家族全員で墓の前で写真を撮ったそうだ。
 その時、長男が写真を撮ったんで写真には写ってないはずが、現像してみると、墓石にカメラを構えた長男が写っていた。
墓があまりにピカピカだったので、撮っている人が鏡に映ったようになっていたんだと思う。
 それは普通にあってもおかしくない話なんだが、その後暫くして、写真を撮った長男が事故で亡くなった。
建てたばかりの墓に、一番最初に入った事になる。
 後でその事を墓石屋に話したら、その写真を現像した時に話して欲しかった、と言われたそうだ。
何でも、墓に写って写真に撮られた時はお祓いしないと、そのまま写っている人が墓に入ってしまう事になるんだと。
墓が新しい場合、入る人を待っているんだそうだ。
 新しい家とかアパートに入った時とかに、その家に自分の先祖を祭らないと、家が仏を欲しがるから、新しい家を建てると身近に誰かが死ぬらしい。
実際、俺の知ってる範囲でも、家を新しくすると家族に一人死人が出てるし。
それはそれで保険が降りて良い様な気もするが。










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しづめばこ 2月21日 P421

2016-02-21 19:18:22 | C,しづめばこ


しづめばこ 2月21日 P421  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 2月20日 黒い蓋つきのビニールケース

2016-02-20 19:06:15 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月20日 黒い蓋つきのビニールケース



 ある日、海外勤務していた友人から至急の電話があった。
日曜の明け方、シンガポールからだった。
 寝ぼけ眼で受話器を取ると、

「 社宅のトランクルームに私物を預けてあるんだが、それを取って来てもらえないだろうか?」

挨拶もそこそこに友人は切り出した。

「 管理人に話は通してあるから、悪いが今日中に取りに行ってくれないか?」

切羽詰った様子は受話器の向こうからも感じ取れた。

「 黒い蓋つきのビニールケースなんだ。
それがすぐ必要なんだ。」

友人のたっての頼み、こちらにも断る理由がなく勢いで受けてしまった。
 荷物の引き取りはスムーズにいったのだが、肝心なことを忘れていた。
友人の電話番号を控えていなかったのだ。
 確か年賀状があったはずだと家捜ししたが、途中でひどく面倒臭くなってしまった。
今日中に連絡あるだろうと思い、そのまま部屋で待機した。
 夜更かしして朝早く起こされ、そのまま電車で郊外の団地まで行き、昼過ぎにはすっかり疲れていた。
そして、うたた寝してしまった。
 夢うつつに赤ん坊の泣き声が聞こえていた。
ふっと目を開けると、視線の先にビニールケース。

“ そう言えば中身は何か聞いていない。
もし国際郵便で送ることになれば、内容を知っていなけりゃなあ・・・。”

そんなことをぼんやり考えていた。

“ このまま送って構わないのかな・・?”

などと自分に言い聞かせながら、ケースを厳重に梱包してあるテープを剥がした。
 中からは色々なベビー服が出てきた。
そして一番奥から、バスタオルに包まれた赤ん坊のマネキン人形があった。
 マネキン人形は、柔らかい樹脂か何かでできたかなり精巧なものだった。

“ こんなもの売っているのか?”

と思いつつ人形の体に触れていると、背中に何か感触があった。
 タオル地の服をめくると、一通の手紙が出てきた。
友人には悪いと思ったが、ここまで来て止めるわけにはいかなかった。

“ この人形をあなたの赤ちゃんだと思って可愛がってください。
あなたの愛情が人形に伝われば、あなたは再び身ごもるはずです。
その時が来たら、この人形をすみやかに同じ境遇の女性に渡してください。
手元に置いてはいけません。
もし手放さなければ、あなたは一生この人形を愛しつづけることになります。”

手紙にはそう記されていた。
 友人は結婚していた。
子供はいなかった。
 いろいろ思いを巡らしていると電話が鳴った。
友人からだった。

「 間違いがあったら困るんだ。
Fedexで会社宛に郵送してくれ。」

こちらも人形のことは黙っていたし、友人も口にしなかった。
 数日して、友人から荷物が無事に届いたという知らせがあった。
その後、友人とは音信不通になったが、あの人形の行方について時々考えることがある。











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日々の恐怖 2月19日 カード

2016-02-19 18:52:13 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月19日 カード



 去年の暮れのことだ。
池袋のとあるレストランで、会社の忘年会があった。
二次会は部署内で、三次会は仲間内での飲み会になった。
 家路につこうとする頃には終電も過ぎ、タクシーを使うことにした。
タクシー乗り場は例年のように長蛇の列。
私は連れと三人だったが、一人だけ帰路が違った。
彼らは乗合で乗車し、先に帰っていった。
 一時間も待ち、なかなかタクシーが来ない。
私は痺れを切らして、目白の方へ一人歩き出した。
線路に沿って歩いていたつもりが、細い路地に入り込んでしまった。
 塀に沿って進むうち、その向こうは墓所であることが分かった。
ちょっと気味悪いなと感じながら足早に歩くと、突然私の脇を子供が通り過ぎた。
黄色いパジャマを着ていた。
 この寒空に、などと感じる暇はなかった。
その子供は、塀の中に吸い込まれるよう消えたのだ。
私は声こそ出さなかったが、恐怖のあまり駆け出していた。
 ようやく広い通りに出て、運良くタクシーを拾うことができた。
運転手にちょっと話を振ると、年末は忙しくて幽霊なんか見る暇も無いとのこと。
私も笑い話につられて、さっきは目の錯覚だったかもと思い始めた。
 家に着く頃には、半信半疑、まあそんなこともあるか、くらいの余裕だった。
そしてタクシーから降りることになって、運転手から声をかけられた。

「 お客さん、忘れ物・・・。」

 振り返ると、ポケモンか何かのカードだった。
私が座っていた場所にあった。

「 違う、これは私のものじゃない。」

と言うと、運転手が不思議そうに言った。
お客さんを乗せる前には何も無かったと。











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日々の恐怖 2月18日 低学年ぐらいの女の子

2016-02-18 19:39:27 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月18日 低学年ぐらいの女の子



 大学を卒業して、最初の仕事を始めて2年目のことだった。
その日、仕事が早めに終わっての帰り、マンションなんでエレベーターで自宅階に下りたら、一番奥の部屋の前で子供がしゃがんでいた。
 小学校低学年ぐらいの女の子で、

“ 具合悪いのかな・・・?”

って一瞬思ったんだけれど、なんだか嫌な予感がしたので触れないで自宅に戻った。
 私は、

“ 親から締め出されてたりしたら面倒だし・・・・。
それよりあの奥の部屋あんな年の子供いたっけ?”

って考えていた。
 しばらくして、うちの母が帰宅して

「 廊下に子供が座ってたけど、どうしたのかな?」

って言うので、

「 その子、夕方からいるけど大丈夫かな・・・?」

って話になって、二人で見に行った。
 でも、もうそこには誰もいなくて、

「 オバケだったりしてな~。」
「 そんな訳無い。」

とか言いながら家に戻った。
本当のところは帰ったか家に入れたんだろう、ぐらいで特に気にしないことにした。


 数日してコンビニに行こうと外に出たとき、ふとマンションを見上げると外から見える廊下に、またしゃがんでる子供が見えた。
 なんとなく階を数えたが、うちとは違う階だった。

“ あの階の子かな?
この寒いのに鍵を持ってないのかな・・・。”

と少し可哀相に思った。
 でも、何故か急に寒気がして違和感を感じた。
なんだか見てはいけないものを見た気がして、さっさとコンビニに直行した。
 怖かったのはそのあとのことだった。
コンビニから戻るとき、上を見たらもういなくなっていて、

“ あ、もう家に帰ったか・・・。”

と、それほど気にもせずエレベーターに乗り、自宅の階で下りた。
 ポケットから鍵を出して、目線を上げて、びくっと足が止まった。
うちの家の前でその子がしゃがんでいる。
後ろを向いているので顔は見えない。
 足元から恐怖が上がってくるような何ともいえない感じになって、思わずその場で硬直した。
振り向かれたら叫んでしまうと思うぐらい怖かった。
 普通の子供かもしれないし声をかけようか、それとも直感を信じて逃げようかと、ぐるぐる考えていたら、背後の家の玄関が勢い良く開いて、振り返るとよく知った近所のおじさんが出てきた。
ドアの音には飛び上がったんだけれど、おじさんを見て私は一応安心した。
 おじさんに、

「 あ、こんにちは!」

って普通に言われて、フッと緊張がほぐれて、

「 あの子、どうしたんでしょうかね?」

って話しかけると、おじさんは怪訝な顔をして、

「 あの子って・・・?」

それで、うちの家を見ると、もう誰もいなかった。
 私は、

「 いや、子供がいたような気がして・・・。」

と誤魔化しつつ家に逃げ込んだ。
 通路の奥にも階段があるので、別に普通の子供で階段で下りただけかもしれないけれど、足音はしなかった。
その後、他にも目撃者が出て来て、マンション中が一時パニックになった。










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日々の恐怖 2月17日 松の木

2016-02-17 20:08:13 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月17日 松の木



 一番下の娘も小学校の高学年になったし、今年の夏は久しぶりにキャンプに行こうと近場のキャンプ場をリサーチしていた。
 車で一時間ほどかかるが、気に入って毎年行く遠浅の海水浴場がある。
その海水浴場の近くにもキャンプ場があることを思い出した。
 海水浴場からは同じ海岸沿いだが、1kmほど離れている。
20年ほど前、そのキャンプ場が出来て間がない頃に、一度キャンプしたこともあった。
 今はどうなっているだろうかと、趣味の仲間でその近くに住んでいる知人にそのキャンプ場のことを聞いてみた。
 すると彼は、

「 あのキャンプ場はやめたほうがいい。」

という。
何でも、自殺者が相次いでいるというのだ。

「 自殺者?」
「 ああ、砂浜には松の木がつきものだろう?
その松の木で首を吊るんだよ。」

 彼は鈍感なのだが、奥さんは感覚が鋭いそうで、キャンプ場辺りは空気が淀んでかなりやばい雰囲気なのだという。
 それから近所の青年の話をしてくれた。
彼もそこで首を吊ったのだが、彼は時々空中を漂っているという。

「 嫁さんが言うにはね。
ちょうど二階の高さくらいの所を漂っているらしいんだ。」
「 二階・・?
家のですか・・・??」

 彼はちょうど二階の窓の辺りに顔が来るから、漂いながら近所の家の中を覗いているらしい。

「 これは嫁さんの意見なんだけど、あの高さはちょうど首を吊った位置なんじゃないかな。
首を吊って死んだものの、その高さから降りられないんじゃないかって・・。」

そして、あまりにも自殺者が続いたので、自殺者が首を吊った松の木は切り倒してしまったそうだ。


 その後、夏の初めに遠浅の海水浴場に家族ででかけた。
天候が崩れてきて、雨もポツポツし始めたので、海水浴は切り上げて、件のキャンプ場を覗いてみることにした。
 車に乗ったままキャンプ場に入って行くと、右手に浜辺、左手に駐車場やテントサイト、調理場などが並んでいる。
その道は車でも入って行けたので、徐行しながら切り倒された松の木を探してみた。
 自殺者の噂は知らないのか、キャンプだけでなく潮干狩りに来たらしい家族連れもいて、そこそこひと気がある。
俺たち家族はみんな鈍感だし、知人が話してくれたことを知らなければ、そんな不気味な場所とは気付かなかっただろう。
 ゆっくりと走る車から探していると切り倒された松の木があった。
普通木を切り倒す場合、根本から切ると思うのだが、異様なことにその木は1mくらいのところで切られている。
それなりに年月を経てきたであろう太さの松の木がだ。

「 あれかな?」

と言いながら、車を進めていくとまた同じように途中で切られた松の木があった。

「 あっちにも同じような木がある。」

それは200mほどの間に点々と続いた。
 どの木も風雨に晒されたためだろう1mくらいまでの高さでも微妙にくねっている。
それぞれ少しずつ違う方向にくねった1mの寸胴の松の木が並んでいるのは、かなり気持ちが悪かった。
 車から降りるのはためらわれたので、そのまま家路についた。
車の中で、

「 たくさんありすぎて、どれが首吊りの木かわからなかったね。」

と話していた。


 後日、このキャンプ場の話をしてくれた知人に会った時、キャンプ場を家族で見に行った話をした。

「 いやあ、切り倒された松の木はたくさんあって、どれが首吊りの木かわかりませんでしたよ。」
「 ああ、そうかァ・・・。」

彼はちょっと申し訳無さそうに苦笑いすると言った。

「 途中で幹を切られていた木はすべて、人が首吊りをした松なんですよ。」












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日々の恐怖 2月16日 白い家

2016-02-16 19:35:31 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月16日 白い家



 私が大学生のときに住んでいた部屋は、雰囲気が妙に悪かった。
日当たりは悪くないのに、何故かどことなく薄暗いような気がする。
いつもジメジメしていて、なんとなく気分が鬱になるような。
 当時は、

“ 建物が安普請だからかなあ・・・。”

と思っていた。
 同じ敷地内に住んでいる大家さんの息子は、心を酷く病んでいる人だった。
極度の妄想癖と病的な躁状態だった。
 彼は私が入居してから、半年後に精神病院に入院した。
さらに、一年後に退院してきたときには、見違えるほど回復していた。
すっかり常識人みたいな物腰、話すこともまともだし、15歳は若返ったみたいだった。
他人事ながら、良かったなあと思っていた。
 ところが恐ろしいことに、たった2日ほどでもとの木阿弥になってしまった。

“ 薬が切れたからだろうか・・・?”

それにしても酷い変わりようだった。
 彼は合い鍵を持っていたので、少し身の危険を感じない訳でもなかった。
夜中、彼が突然ドアを開けて入ってくることがあった。
そして、彼の“発明”についての話を、長々と聞かされたりした。
 さっさと引っ越せば良かったのに、入居しているときは何故かそこを離れてはいけない理由をいろいろ思いついて、なかなか転居することができなかった。
今思うと、それは不思議だった。
 結局、2年半そこに住み続けた。
路地の奥まった場所、そして、行き止まり。
生い茂る緑に建物はほとんど隠されていて、通行人からはほとんど見えない白い木造建築。
友人以外の不意の来客、セールスなどは、ただの一度も訪ねてくることが無かった。











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日々の恐怖 2月15日 お誘い

2016-02-15 20:47:36 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月15日 お誘い



 高校時代、先輩と8ミリ映画をよく作っていた。
俺以外はみんな1年先輩の仲間だったが、映画のこと以外でもよく一緒に遊んでいた。
 みんなで撮影したフィルムが現像からあがってきて、M先輩の家でアフレコをすることになった。
M先輩の部屋は二部屋ぶち抜きになっていて広く、フィルムを映写しやすいのと、人がたくさん入れるからだ。
 しかし、その先輩の家はユーレイが出るということが常々話の種になっていた。
ウワサではなく、住んでいる本人からもいつも聞かされていたのである。

「 階段の上をふっと見るとさ、人が通るんだよ。
廊下なんてないのにさ。」
「 この部屋泊まるだろ?
ザコ寝してるとさ、誰かが邪魔なんだよ。
まったくよ~、と思って起きると、近くに寝てるヤツなんていないの。」

そんな話ばっかりなのである。
 その部屋に映写機などの機材をセッティングし、すべてが整って、さあ始めようという時、映写機が動かない。
ウンともスンとも言わない。

「 おっかしいなあ、持ってくる前は大丈夫だったのに・・・。」

どうにかしようと色々試したが、一向に動く気配がない。
原因不明である。
あとで診てもらうことにし、その日の作業は中止になってしまった。
 それから持ち主の先輩が家に持ち帰ると、何事もなかったように動いたのだった。

「 やっぱり・・。
ユーレイに邪魔されたんじゃないか?」

そう言ってかたづけるしかなかった。
 そのM先輩がとうとう引っ越す事になった。

「 なんで?やっぱりユーレイがいやで?」
「 そう!
もうだめだっていう事があった。
 俺の部屋はね、人が入って来るの。
3人。
女の人。
 寝てるとさ、一人づつ部屋に入ってきて、俺の耳元で何かボソボソ言ってから、こたつの方に行って座る。
 3人がみんなボソボソ何か言うんだよ。
そしてみんなコタツのところに座るの。
いっつもだからさあ、半分慣れたっていうか、そんな感じだったんだけど、あるとき、何言ってるかはっきり聞こえたんだ。
『 Mさん・・・どこか連れてって・・・。』
ってよう、そう言ったんだよ。
もうダメさあ!」

その後、その家はどうなったかは知らないが、自分の名前言われると、そりゃ怖い気がする。









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