大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月30日 キーホルダー(1)

2023-05-30 17:26:48 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月30日 キーホルダー(1)





 友人田中からキーホルダーをもらった。
ガラス製の人形と、ナザールボンジュウがついていた。
ナザールボンジュウは青いガラスでできた目玉。
トルコのお守り。
多分どこかで見たことあると思う。
 ガラス製品だから壊したくなくて、透明なプラスチックの容器に入れて自分の部屋の棚に飾った。
しばらくするとキーホルダーから視線を感じる、ずっとただ観察されてるような。
なんか見られてるなって顔を上げたら誰かと視線が合うあんな感じ。
だが見回してみても一人暮らしだから自分以外誰もいない。
生理的に気持ち悪くてプラスチック容器からキーホルダーを取り出し、中身が見えない箱に片付けた。
 数日過ぎて、夜、田中から電話がきた。
約二日間、ずっとトイレに閉じ込められてたそうだ。
 取っ手が壊れてドアを開けられなくなっていた。
押しても開かなくなってて思いっきり蹴飛ばしても動かなかったそうだ。
外につながる窓はなく、ドアの下部に空気を通すための隙間っていうのか、ブラインドを斜めにしたみたいな部分があったから、そこを無理やり外して出てきた。
健康診断で毎年やせすぎ判定されてる体形だからできた技だ。

「 やせすぎでよかった!
ボロアパートが!」

って田中が怒りながら話してくれた。
 いろいろ田中の話を聞いてたら、自分がキーホルダーをプラ容器に入れた直後に田中がトイレに入っていた。
自分がプラ容器からキーホルダーを出した直後に田中がトイレから脱出ってのがわかった。
たまたまなんだろうけど自分が閉じ込めたように思えたから、このことは誰にも言っていない。
 ちなみにキーホルダーは実家に置きっぱなし。
だいたいどこにあるかは覚えているが見たくない。









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日々の恐怖 5月27日 ぎい(2)

2023-05-27 17:36:27 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 5月27日 ぎい(2)






 思い出すのは、いつもそこだけだ。
きっかけもなく、白昼夢のように、ふと思い出す。
前後の記憶はどれだけ頭をひねっても思い出せない。
だからそこに至る経緯も、その後どうなったのかも、彼女にはわからない。
 ただ、思い出した直後は、不思議と懐かしむような気持ちになるそうだ。

「 そういえば、そんなこともあったなあ。」

そんな心持ちになるそうだ。
首吊りのシーンを思い出した感想としては、かなり変だと思う。
怖いとか、悲しいとかなら、わかるのだが。

「 一応、調べたけどね。
私が小さい頃にそんな死に方した人はうちにはいなかったよ。」
「 じゃあ、実際に見た記憶じゃないのか。」
「 それは、わからない。」

 彼女曰く。
彼女の実家に晴れ着の幽霊が出る、という話は昔からあったそうだ。
建て替える前の実家は昭和の初めに建てられた古い家だったが、その家が新築だった頃から幽霊話があったという。
その因果はあまりに古くて、詳細はわからない。

「 きっと私は、小さい頃にその幽霊を見たんだと思う。
その記憶を、時々思い出してるんじゃないかな。」

 実際に誰かが死んでいれば、それは怖い記憶となるだろう。
見知った人の死であれば、悲しい記憶になるだろう。
だが幽霊は、そのどちらでもない。
実際に死体を見つけたわけでも、知り合いが死んだわけではない。
だから怖いとか悲しいとは感じない。
ただ、懐かしむような気持ちになるだけ。
彼女はそう解釈しているという。
 ところで、建て替えた後の現在の実家では、二階のある部屋では頻繁に家鳴りがするそうだ。
なにかが軋むような音。

” ぎい。”

そんな音が、時々するという。













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日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)

2023-05-24 21:28:53 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)





 彼女には、たびたび思い出す古い記憶があった。
記憶のなかの彼女は、おそらくはまだ未就学児。
本当に小さい頃の記憶だという。
 小さい彼女は、廊下にいる。
実家の二階の廊下だ。
小さい彼女はすぐにそれを理解する。
 今ある実家ではない。
古い実家だ。
彼女が小学生の頃に建て替えた。
今はもうない古い実家。
 板張りの廊下はよく磨かれて、艶々としている。
右手には閉めきられた障子戸が整然と並ぶ。
左手には窓があり、そこから庭を見下ろせる。
廊下はまっすぐで、突き当たりで右に折れている。
折れた先がどこへ通じているのか、彼女は知らない。
 夢の中の彼女は、障子戸に手を掛ける。
するりと、音もなく障子戸が開く。
その先は二間続きの和室。
 二間を隔てる襖は開け放たれている。
そして、そこで女が首を吊っている。
こちらに背を向けていて、顔は見えない。
 奇妙なほどに俯いた頭。
滝のように流れ落ちた、いやに艶やかな髪。
牡丹の晴れ着。
両足を紐でくくっている。
ほどけた帯が、畳の上にだらりと落ちている。
倒れた踏み台。
女の身体は揺れている。

” ぎい。”

それに合わせて、軋む音がする。













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日々の恐怖 5月16日 白狐(14)

2023-05-16 20:53:55 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 5月16日 白狐(14)







「 神罰があるとかないとか言い出しても水掛け論だからその辺りはどうでもいいけども、俺はあると思っていた方が人生楽しいからそう思うことにしてるよ。」

と小豆さんは返した。
 私もそう思うことにした。
神社を燃やすというメンタルを持った人間がどういう人なのかはわからないけど、犯人は家具の角に足の小指毎日ぶつけてればいい。
 正直今も、神様と一緒にいたなんてあんまり信じてない。
現実世界でこんな話大声で出来ない。
でも信じることと、あると思う事はまた少し別だと思うから、そういうこともあるんだなぁと思うようになった。
あんなに思い焦がれた神様に、一時でも使われたのならこんなに嬉しいことはない。
 修復してからの節句の祭りでは、拝殿奥の扉が開かれて石像が公開されるようになった。
一年に一回、遠くからあの白い世界を見ることが出来る。
切り取られた白さはやっぱり綺麗で、この感覚は片思いに似てるんだとその時に気付いた。

 今年のツアーでも小豆さんに会った、
バンドのツアー日程を調べて私が来るのを待ち構えていた小豆さんは、今年は袴姿だった。

「 ちゃんと正装も見せとかんとな!」

と言うけれど、

” 袴の色が茶色・・・?”

言葉にすると茶色としか書けないけれど、なんというか茶色?と首を傾げたくなるような色だった。
おっさんはセンスがない。
 センスのない神職は、

「 神さんは気まぐれで我儘なもんだから、またこっそり君と全国回るかもしれないよ。」

と言った。
 そう思った方が楽しいから、そうであると思うことにする。
多分私は一生、あの白さに片思いし続けるんだと思う。
そういうお話。
神様に利用されても何の利得も無く、イブも一人で過ごすアラサーの盛り上がりに欠ける話に付き合ってくれてありがとう。












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日々の恐怖 5月13日 白狐(13)

2023-05-13 08:36:24 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月13日 白狐(13)






「 破!とか出来るんすか?」
「 そんな便利なこと出来たら、この神社大儲けしてるよ。」
「 形だけでも御祈祷とかすればいいじゃないですか。」
「 めんどくせぇよ~。」

来年もきっとこの神社は寂れたままなんだろうと思った。

 次の年の夏だった。
実家でぐだぐだしていたら、急にぴーちゃんが肩に乗り私の髪を毛づくろいし出した。
珍しいこともあるもんだと思った次の瞬間、はっとした。

” もういないんだ。
だから、ぴーちゃんが寄ってきたんだ。”

 こんなあっさりしてるものなんだと思った。
それ以外のことは、特に何も思わなかった。
ぴーちゃんが寄ってきたこと以外、特に何も変わりはなかったから。
 その年のツアーでも、小豆さんの県に行った。
1年振りに会った私の顔を見て、

「 そうかぁ、そうかぁ・・・・。」

と呟いて、また缶コーヒーをくれた。
 いるともいないとも、小豆さんは明言しなかった。
なので社に戻ったのだと確信出来た。
お互いそのことに付いては一切触れなかった。
 小豆さんのジャージはこの年もエメラルドグリーンだった。
見つかった人間はどうなるのだろうという話をした。
知る術もないけれど、出来れば酷い目に遭っているといいなと思う。











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日々の恐怖 5月7日 白狐(12)

2023-05-07 12:00:21 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月7日 白狐(12)






 基本は年始→節句→ツアーが基本の流れだったので、節句祭りを見届けてその年も小豆さんに会った県に行くことになった。
確認したくなった。
社が修復されて神田様が戻ったのかどうかを。
 その年の小豆さんはエメラルドグリーンのジャージだった。
社務所に訪いを入れた私を見て、

「 まだ見つからんかぁ・・・・・。」

と言い放った。
社には戻っていないらしい。

 1年前と同じ縁台に座って、神社が修復されたことを話した。
簡単に見れなくなったことも寂しかったけれど、やっぱりあの白さは覆い隠すべきだと思う。
あんなに綺麗なものは極力人の目に晒さない方が、綺麗なままでいられる気がする。
 そのようなことを話すと小豆さんは、

「 分かる分かる。」

と同意してくれた。

「 女子高生のスカートと一緒だな。
見えそうで見えないから見たくなるんだよな。
パンツ丸見えで歩かれるとガッカリするから。」

全然違う。

 その年は小豆さんと神社の金儲けについて話した。
金がないと直せない、古い神社には人が来ない、人が来ないと金が入らないという負のループに弱小神社は陥っていると愚痴られた。











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日々の恐怖 5月3日 白狐(11)

2023-05-03 20:58:01 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 5月3日 白狐(11)






 開場時間が差し迫ってきたので、小豆さんとはその辺りで別れた。
別れ際、

「 あんま深く考えずに普通に過ごすといいよ。」

と言われた。
 正直この時点で、小豆さんの話は全く信じていなかった。
神様が付いていると言っても、特に良い事があるわけでもなし。
生活は底辺だ。
でもよくよく考えると、再び神田神社に行ってから地元に戻るようになった。
 犬猫には嫌われるようになった。
そして極め付けは実家のぴーちゃんだ。
ぴーちゃんは私の首と髪の間に入って寝るのが好きだったのに、実家に戻って以降近寄ってさえくれなくなった。
 愛鳥に明確に避けられている。
本当に一緒にいるのかもしれない。
信じきるわけではないけれど、極力地元を歩くようになった。
 地方に行く時は初めて行く場所を回るよう心掛けた。
一度は行ったことある観光名所なんかももう一度足を運ぶようにした。
季節の花や綺麗な庭園を、色々なものを見せたいと思った。
 翌年の節句祭り後、神社は修復された。
昔以上に白く綺麗な外壁に、剥き出しだった白い世界はまた隠された。
 私は完全な零感だ。
祖父が亡くなった時も、みんな何かしら虫の知らせを感じて真夜中に起きたというのに私だけスルーされた。
何もなく一人爆睡していた。
 実の祖父にすらスルーされた私に神田様との遭遇フラグが立つはずもない。
姿を垣間見たとか感じたとか何かしらあればこの覚書も盛り上がるのだろうけど、悲しいことに何もない。
神田様が一緒にいる事を意識して清く正しい生活を送るようになったとか、そんなことも欠片もない。
やはり私は底辺だった。










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