大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月25日 足(2)

2024-10-25 11:02:26 | B,日々の恐怖
 





 日々の恐怖 10月25日 足(2)





 もう一度自分の置かれている状況を思い出す。
個室に、ひとり。
顔を上げてもそこには誰の姿も見えない。
それなのに、足がある。
 体は金縛りのように動かなかった。
俺はその姿の見えない存在に言いようのない恐怖を感じていた。
足が触れ合ったまま動けないでいると、ふとその足の感触が消えた。
おそらくその足が消えてなくなったわけじゃない。
机の下で足が当たった時に誰しもが取る行動。
どけた。
ただ足をどけたのだ。
 目の前の存在が多少人間的な行動をとった事で多少冷静さを取り戻した俺は、
とりあえずトイレに向かった。
さっきのは何だったんだ。
幽霊?
妖怪?
用を足しながら1人考えを巡らせる。
いや、あれには感じなかった、何か、意志のようなものを。
まるでそこにいるのが当たり前の様に、そこにいた。
考えがまとまらないまま個室に戻ると、そこには見慣れた友人の姿があった。

「 よう・・・!」

ぎこちなく声をかけながら正面に座る。
しばらく飲みながら何気ない会話を交わしていると、話の途中で不意に友人が、

「 あ、ごめん。」

と言った。
俺には彼がなぜそれを言ったのかわからなかった。
わからなかったからこそ、わかってしまった。
おそらく彼の足は、触れたのであろう。
誰のものかわからない、あの足を。

「 別にいいよ。」

とは、言えなかった。










 
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日々の恐怖 10月19日 足(1)

2024-10-19 16:05:18 | B,日々の恐怖

 

 

 

 

 日々の恐怖 1019 足(1)

 

 

 

 

 ある日、俺は友人と2人で飲みに行く約束をした。

その日は予約を取っていたので、待ち合わせの時間の少し前に店に到着した。

 用意された個室に案内され、俺は席についた。

部屋にはまだ誰もいなかった。

畳敷きの個室で、床には座布団があり、背の低いテーブルの下は床が一段低くなっていて、

足を下ろして座れるような作りになっている。

 とりあえず座りながら上着を脱ぎ、自分の横に置く。

何の気なしにメニューを眺めながら友人の到着を待っていると、俺は足の先に何かが当たるのを感じた。

覗いてみても何もない。

 テーブルの脚かと一瞬思ったが、よく見るとテーブルからは短い脚が畳敷きの床の上に伸びている。

つまり今俺が足を下ろしている空洞には何も無いはずなのだ。

 俺は足を少し動かしてもう一度先程の感触を探す。

 

 あった。

 

ちょうど自分の正面のあたりに、少し丸みを帯びた、それでいて少し平たい様な物体がある。

 もう少し足を動かしていると、今度は足先ではなく、脛の外側辺りに何か縦に長い物が触れた。

床に対して垂直ではなく、少し斜めに伸びている。

その先に、丸くて平たい物。

 俺はそれが何であるか直感で理解していた。

あるいは似たような経験をした事があるからかもしれない。

足。

自分が足で触れているもの。

それは紛れもなく人間の足だった。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
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日々の恐怖 10月14日 IPad(2)

2024-10-14 09:41:17 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 IPad(2)





 姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、

「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」

と赤ちゃんにIPadを向ける。
 赤ちゃんはその日一番長々と、

「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」

とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。
すると画面に、

”大宮さんがきよる”

と表示された。
 姉が、

「 えー、なんか文章になった!
すごい~!
大宮さんて誰かな~??」

と笑う。
すると祖父母が、

「 えっ!?」

と画面に顔を近づける。

「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?
名前を入れよるんかね?」

祖父が不思議そうに画面を眺める。
姉は、

「 えっ??」

と祖父を見る。
 祖母が、

「 大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。
大宮さんが来よる、いいよるね・・・・。」

と、同じく不思議そうに画面を見る。
すると母親が、、

「 あの・・・・・。」

と窓を指差す。

「 離れの方に・・・・。」

全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が
俯きがちに立っているように見えた。
 祖父はすぐに、

「 大宮さんじゃね・・・。」

と呟く。
祖母も、

「 大宮さんじゃあ。
2月に亡くなりはったんじゃけどね、なしてじゃろうね・・・。」

と窓の外を見つめる。
 俺たちは、

「 え?え・・・・?」

と、よく分からずに、窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が、

「 いけんいけん、いけんよ。」

と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。







 
 
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日々の恐怖 10月5日 IPad(1)

2024-10-05 20:32:15 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月5日 IPad(1)




 四国の田舎に帰ってきてるんですが、姉夫婦が1歳の娘を連れてきてるんだけど、
夜が蒸し暑くてなかなか寝付いてくれなくて、祖父母、父母、姉夫婦、俺、
そしてその赤ちゃんの8人で、居間で夜更かししていた。
 田舎は海沿いの古い家で、庭に面した窓からは離れが母屋の明かりに照らされて浮かんでいて、
それ以外には姉夫婦の車が見えるだけ。
海沿いなので網戸越に波うちの音が聞こえて、蒸し暑いけど田舎の心地よさに包まれていました。
 皆でお茶を飲んで語らっていると、姉はIPadを持ち出してきて、

「 面白いもの見せてあげるわ!」

とボタンを押した。
メモ帳画面でマイクのボタンを押すと、口述筆記みたいに話した言葉を文字にしてくれる機能。
姉はそれを赤ちゃんの口元に寄せて、

「 何か話してごらん~。」

とあやすと、赤ちゃんは、

「 あうあうあう~。」

と言葉にならない言葉を話す。
すると画面に

” 合う会う、ううー良い愛ー”

みたいに、赤ちゃんの声を無理やり文字に起こしたものが表示され、姉は、

「 赤ちゃんの言葉やで!」

と笑う。
祖父母も父母もうれしそうに、

「 おおー!すごいなー!」

と笑った。
 夜もふけていく中、皆でその遊びをしばらく続けていました。

「 あいあい~たー、うう~。」

という、言葉にならない赤ちゃん語を、

” 会い合い~他、右ー”

みたいに表示していくIPad。
祖父母は、

「 最近の機械はえらいもんじゃのう!」

とはしゃぎ、僕たちも笑う。
赤ちゃんは皆がうれしそうに笑うのと、田舎の家の薄暗さの中で光るIPadの画面に大喜びし、

「 うあうあいい~!!わーわー!きゃあー!」

と声を上げ続ける。

 




 
 
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