日々の恐怖 4月21日 中古の家(4)
帰省した日に友達と待ち合わせをしたら、他に男が1人やってきた。
友達の会社の後輩だそうで、ご丁寧に名刺までいただいた。
友達が、
「 彼、おまえが夏に言ってたあの家の話を知ってるんだよ。
あの地域の出身で、今もそっちの地域の支店にいるんだけど、最近、俺がそこの支店に立ち寄ることあってさ。
その時、飯ついでに聞いたら話に食いついてきてくれて、おまけに独自に調べてくれたんだって。
けっこうすげえよ。」
わざわざその日も電車で出てきたそうで、ちょっと唖然とした。
それで、3人で飲みながら聞いたことだ。
その家は、所有者はたしかにあのご夫婦だった。
その旦那さんは、小学生のころに両親を亡くしてしまい、独り者の叔父に引き取られて育った。
就職するまで叔父と二人暮らしだった。
その旦那さんが結婚し、その後、賃貸のアパートから、自分の家が欲しいということになった。
しかし旦那さん、かなり低収入なのでローンも断られてばかりで、見かねた育ての親である叔父が購入資金を出してあげることになった。
ただそれには条件があり、
「 俺はおまえが出て行ってからまた独り者なわけだ。
もう高齢だから、一緒に暮らせるなら全部出してやってもいい。
俺になにかあったときにちゃんと面倒見てくれ。」
と言うことだった。
結果、奥さんも同意してそうすることになり、無事家を建てた。
しかし奥さんがあまりその叔父のことを好きではなく、暮らし初めて数ヶ月後に、老人ホームに入れようということになった。
それで、これまた叔父のお金から捻出して、無理矢理老人ホームに入れた。
老人ホームに入れられた、つまり裏切られたショックで叔父は精神に異変が生じ、毎日毎日、
「 あの家は俺の家だ・・・。」
とブツブツ呟いていた。
それで老人ホーム側にも多々迷惑がかかるんで、3つほど転々とさせられ、そのあげくに病気で入院した。
次は、末期患者の方が入るようなところに入れられてしまい、しばらく放置されてしまったそうだ。
その間、奥さんは家の中で階段から転げ落ちて流産してしまったり、他にも良くないことが続くので、気になってお祓いとかしたが効果がなかった。
それでご夫婦で別の場所で賃貸アパートか何かへ住み、家は売ることになった。
しかしなかなか決まらなくて、とりあえず貸家も考えた。
貸家にすると2組ほど家族が住んだが、すぐに出て行ってしまった。
そして最期までその叔父は、
「 あの家は俺の家だ。」
と言い続けながら、結局病院で亡くなったということだ。
いまだにその家は空き家で手つかずな状態だった。
その付近の住民がよく、家の中に誰かいるのが外から見えるとか、家の前に老人が立っているなど、いろいろ話があり、それで現状幽霊屋敷ということになっていると言うことだった。
あのときに弟が見たのと、父が聞いたのは本物だったらしい。
弟は一切覚えていないけど、
” GJだったんだなあ~。”
と思いました。
調べた友達の後輩も、ほんとよくやったと思いました。
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