大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道93

2008-07-30 19:59:04 | E,霧の狐道
 山下先生は後ろを振り返った。
画面に戻ったキツネは、二カッと笑う。

「 うわっ、パソコンにキツネがいる!
 神谷、何時、パソコンを起動した?」
「 いえ、起動してないです。」
「 だったら、何で、キツネが映っているのだ!」
「 知らないですよ。」
「 惚けるな、電源を入れられるのは、おまえしかいない。
 お湯を沸かしている間に、パソコンをいじくったな。」
「 いや、触ってないっすよ!」
「 コイツをインターネットから拾って来たな。
 削除しろっ!」

 山下先生は、カップめんとフォークをテーブルに置いてパソコンの方に向き直った。
山下先生がパソコンの画面を見て叫んだ。

「 うわっ、大変だ!」

俺は、何事かとカップめんを啜りながら、パソコンの画面を覗いた。
画面のキツネは後ろ足で立ち上がって、字を書いた横長の四角い紙を持っている。
顔は、ニカッと笑っている。
そして、その紙には次のように書かれていた。

“ 僕は、ウイルスです。”



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霧の狐道92

2008-07-28 19:03:59 | E,霧の狐道
 山下先生が俺に聞いた。

「 どうした?」
「 いえ、何でも無いです。」

俺の声に驚いたのか、キツネが画面からサッと消えた。

「 そろそろ、3分経ったな。」

山下先生は、机からカップめんをテーブルに置き直して、俺は先生と向かい合わせに座った。

“ 何か不穏な空気が漂っているな・・・。”

山下先生が、プラスチックのフォークを俺に渡した。

「 よし、食うぞ!」
「 イェ~イ!」

山下先生と俺は、カップめんを食う。

“ ズルズルズ~ッ、ズルズルズルズル。”

スープもすする。

“ ズズズズズ~ッ。”

山下先生の後ろに、肩越しにパソコンの画面が見える。
 俺は、パソコンの画面を見て驚いた。
キツネが尻から出て来て、山下先生に後ろ足を伸ばしている。
山下先生は、後ろから迫っている危険に気が付いていない。

“ パコン!”

キツネは、先生の後頭部を蹴っ飛ばした。

「 痛いっ、棚から何か落ちて来たぞ!」



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霧の狐道91

2008-07-26 18:28:15 | E,霧の狐道
 パソコンのキツネは、右から出て来て左に入る、次は、左から出て来て右に入るを繰り返している。

“ 参ったなぁ。
 俺が部屋から出たら、こいつ、ついて来るんじゃないかな・・・。
 目的を知ったら、脇社に行くのを阻止されるかも知れないな・・・。”

 俺がパソコンの画面を眺めていると山下先生が、カップめんとプラスチックのフォークを二つ持って戻って来た。
パソコンのキツネは、山下先生が戻って来るとパッと消えた。
そして、山下先生は、カップめんとフォークを、一旦、パソコンが置いてある机に置いた。
 カップめんの良い匂いが部屋に充満する。
次に、山下先生は、押入れに行って何かをゴソゴソ探している。
そして、本を押入れから出し、奥から小さなテーブルを引っ張り出した。

“ あ、食卓か・・・・。”

山下先生は、足をパタパタ立てて食卓を作った。
そして、小さなテーブルを床に置いてカップめんの食卓が完成だ。
 俺はパソコンとカップめんが置いてある机の方が気になって、そちらを見た。
パソコンの画面の端に、ひょっこりキツネの顔が現れた。

“ あ、また、出て来たぞ。”

キツネは、画面から前に置いてあるカップめんを見ている。

“ お、画面から手が出て来たぞ。
 画面から出て来ると、こいつ立体的だな・・・・。”

 キツネは、カップめんに手を伸ばそうとした。
山下先生は、テーブルに座布団をセットしているからキツネに気付いていない。
俺は声を上げた。

「 あっ!!!」



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霧の狐道90

2008-07-24 19:42:45 | E,霧の狐道
 山下先生が俺の方に向き直って言った。

「 テストの試作品を学校に持って行くのを忘れて、取りに帰って来たんだよ。
 昨日、パソコンで作ってみたヤツ。
 でも、もうちょっと神谷に付き合うか・・・。」
「 ハイ、そうして下さい。」
「 じゃ、腹減ったから、カップめんでも食うか?」
「 あ、それ、いいっすね!」
「 よし、お湯を沸かすぞ。
 トウモロコシは貰っておくぞ!」
「 ハイ。」

山下先生は、トウモロコシを持って、台所に湯を沸かしに行った。

“ バタン!”

トウモロコシを冷蔵庫に入れる音がする。
そして、続いてヤカンに水を入れる音がする。

 俺は、再び、パソコンの画面を見た。
パソコンの画面は変化していた。

“ あらっ、小さなキツネが出て来たぞ・・・・。
 漫画の本に出てきそうなキツネだな・・・。”

耳がピンと立って、面長の顔に、鼻から左右にピッピッピッと三本ずつ髭が出ている。

“ う~ん、何か、あいつに似ている気もするけど・・・・・・?
 まあ、キツネってどれも同じように見えるしなぁ・・・。”

小さなキツネはパソコンの画面の左から四足でトコトコ出て来て、中央まで来たら後ろ足で立った。

“ うん・・・?”

小さなキツネは、赤いポシェットを右肩から左下にタスキに掛けていた。

“ この赤いポシェット、何処かで見たことがあるような気が・・・。”

そして、キツネはこちらを向いて、右手でVサインをして、ニカッと笑った。

“ ゲッ、これは、あいつじゃ・・・・。”

Vサインが終わった小さなキツネは四足に戻り、再び、トコトコと画面の中央から右に歩いて、パソコンの右枠に入って行った。

“ 今日は見ないと思ったら、こんな所にいたのか・・・。
 また、何か悪さを考えているんだろうな・・・・。”



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霧の狐道89

2008-07-22 19:28:44 | E,霧の狐道
 俺は、座布団に戻った。
山下先生が俺に聞いた。

「 話の連中か?」
「 そうです。
 もう、しばらく探すようです。」
「 じゃ、もう少しここにいるか?」
「 ハイ・・・・。
 あ、先生、何処かお出かけですか?」
「 いや、忘れ物を取りに帰って来たんだ。」
「 じゃ、学校に戻るんですか?」
「 ああ、そのつもりだ。」

俺は返事をしながら、先生の肩越しに、机の上にあるパソコンの画面を見た。

“ 変わったスクリーンセーバーだな・・・・。”

 暗い画面の左の枠から、アニメの動物の黄色い耳のようなものが真横に出て来る。
画像のサイズは、かなり小さい。

“ ・・・・・・?”

耳が全部出ると額から眼の辺りまで真横に出て、すぐにサッと引っ込んだ。
しばらくすると、また出て来てサッと引っ込む。

“ スクリーンセーバーだから、同じ動作を繰り返すのは当たり前か・・・・。”

俺がパソコンの方を見ていることに気が付いた山下先生が後ろを振り向く。

“ サッ!”

山下先生が振り向いたとき、心持ち顔が引っ込むのが早かったような気がする。

“ ・・・・・?”



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Photo Lounge65 汽車

2008-07-21 19:53:17 |      Photo群

Photo Lounge65 汽車 画像


        Photo Lounge65 汽車 

          「 運転手は、前が見えているのかな?」          

   
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  Photo Lounge目次

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霧の狐道88

2008-07-20 18:56:48 | E,霧の狐道
 原爆頭の携帯電話が繋がったようだ。

「 あ、自転車置き場にアンパンマンの自転車あったか?
 え、無い・・・、そう・・・。
 建物の中には、居ないわ。
 5階から、外眺めても、見えないし・・・。
 うん、じゃ、下に降りるけど・・・。
 あ~、あ~、うん、うん、・・・。
 あ~、あんがちょ、後は、俺等で探すわ。
 あ~、あ~、また、走りに行こうな。
 ポリに追い駆けさせて、逃げ回るのオモロイしな。
 うん、うん、そう。
 うん、じゃ、またな・・・・。」

“ ピッ!”

「 無かったって言ってまっせ、兄貴。」
「 自転車が置いてないから、ここの住人じゃないかな。
 う~ん、見失ったなぁ・・・。」
「 もうちょっと、下を探しますか?」
「 うん、そうする。
 婆ちゃんの仇は死んでも討つ!」
「 さすが兄貴、付いて行きまっせぇ!」
「 おうっ!」

“ ドタドタドタ・・・・。”

二つの影は足音と共に、エレベーターの方に去って行った。

“ ハア~、取り敢えず助かった。
 ホント、見付からなくって良かった。
 でも、まだ、下を探すらしいから、もうちょっとここで隠れておこ
 う・・・。”




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霧の狐道87

2008-07-18 19:03:41 | E,霧の狐道
 俺は、スーパーで先に掴んだお揚げを極道婆さんに因縁をつけられ取られそうになった話をして、それが原因で極道婆さんの孫のヤンキーに追い駆けられた話をした。
山下先生は笑いながら俺に言った。

「 そのスーパーには、当分行かない方が良さそうだなぁ。」
「 ホント、そうします。」

そのとき、マンションの通路の方から話し声が聞こえた。

「 兄貴ぃ~、いないっすね。」
「 クソガキ、何処に行きやがったんだ!?」

俺は話し声を聞いて思った。

“ うわっ、来た!”

 山下先生は、俺の顔を見た。
俺は、小声で言った。

「 あいつ等です。」
「 部屋に入るのは見られて無かっただろな。」
「 はい、この部屋に来たときは、まだ、マンションの玄関ぐらいに居た
 と思います。
 ちょっと、見て来ます。」
「 ドアを開けるなよな・・・。」
「 はい、ドアスコープから覗くだけで・・・・。」

俺は立ち上がり、音をさせないようにそっとドアに近付き、ドアスコープで外を見た。

“ 特徴のある頭が二つ揺れているぞ・・・・。”

ちょうど、この扉の前でカナトコ頭と原爆頭が、通路の手摺にもたれて、外を眺めながら相談をしている。

「 こっちの方に来たと思ったんっすがね。」
「 建物の中には居ないようだけどなぁ・・・。」
「 部屋の中かも知れないっすよ。」
「 う~ん、住んでいれば・・・・。」
「 ちょっと、携帯電話、掛けますわ。」

 少しの沈黙。
カナトコ頭の髪が乱れて、風に靡いている。



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霧の狐道86

2008-07-16 20:08:25 | E,霧の狐道
 俺は自転車から降りて、台所へ自転車を押して行き、そこでスタンドを立てた。
そして、奥の部屋に戻った。
渡したトウモロコシは、パソコンの机に置いてある。
 山下先生が、破れた座布団を俺に勧めた。

「 汚い所だけど、まあ、座れ。」
「 ホント、汚いすっね。
 座布団破れてるし・・・。」

山下先生は座布団を引っくり返した。
さらに大きな破れがある。

「 あはははは。」

山下先生は、笑いながら座布団をもう一回引っくり返してもとに戻した。
俺は破れた座布団に座りながら言った。

「 ホント、汚いすっね。
 ゴミは散乱してるし、台所には汚れた茶碗は転がっているし・・・。」
「 うるさいなぁ。」
「 彼女とか、いないんですか?」
「 さあな、それは秘密だ・・。」
「 あはっ、イナイ、イナイ。
 見栄を張って、もう、このォ~。
 写真とか机に飾ってないし。」
「 おまえ、妙に、観察力が鋭いな。」
「 てへへ・・・。」

 部屋にはベッドとパソコンが乗った机がある。
壁には、等身大の女性アイドル歌手のポスターが貼ってある。
その女性アイドル歌手は、こっちを向いて微笑んでいる。
猫耳のメイド姿だ。

“ 結構、ロリコンだなぁ・・・・。”

俺がボンヤリ考えていると、山下先生の声が聞こえた。

「 で、どうして、自転車ごと俺の部屋に乱入したんだ?」
「 あ、極道婆さんとヤンキーに追い駆けられてるんです。」




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霧の狐道85

2008-07-14 19:06:57 | E,霧の狐道
山下先生の声が正面奥の部屋から聞こえた。

「 おう、神谷、こっちに来い。」

 俺は自転車を押して、奥の部屋に入り、部屋の中で自転車のスタンドを立てた。
そして、自転車の前カゴに一つ入っている原爆頭の投げたトウモロコシを取り出し、先生に渡した。

「 先生、お土産です。」
「 お、気が利くなぁ~。」
「 いやぁ~、それ程でも・・・・。」
「 ・・・って、言っている場合か!
 こら~~~っ!
 何で、自転車で部屋に上がって来るんだ!」
「 先生、もう、ちょっと、小さい声で怒って下さい!」
「 にゃにぃ~~!」

“ カナトコ頭と同じこと言ってる・・・。”

俺は、妙に可笑しくなって声を殺して笑った。

「 うっ、くっ、くっ、くっ、・・・・・。」
「 何を笑ってるんだ。
 自転車は外に置いて来い。」
「 それが、ちょっと、支障があって・・・・。」
「 じゃ、せめて台所に置け。」

俺は部屋の中でスタンドを上げ、自転車に跨った。

「 バカ、押して行け。
 ホントに、もう・・・。」
「 はぁ~い。」



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霧の狐道84

2008-07-12 18:38:38 | E,霧の狐道
俺は玄関扉の上にある部屋番号を見る。

“ 502号室か・・・。”

 山下先生は、ポケットから鍵を出して扉を開け、部屋に入った。
俺も、先生に続いて自転車ごと急いで部屋に入る。
山下先生は、そのまま奥の部屋に入って行った。
そして、部屋に入った俺はマンションの入り口の鍵を閉める。

“ ガチャ!!”

入り口の扉が完全に閉まった。
部屋は、扉の隙間からの外の明かりが入らなくなると薄暗くなった。

“ これで、良し。
 しばらく、ここに隠れていよう。”

俺は、キョロキョロ部屋を見回した。

“ う~ん・・・・。
 それにしても汚い部屋だなぁ・・・。”

 山下先生の部屋は1Kの部屋のようだ。
入り口を入ったら台所、台所の奥には部屋がある。
台所の右手には小さなテーブルと流しがあって、流しには洗っていない茶碗が積んである。
流しの隣に見えている扉は風呂とトイレに続いているのだろう。
 薄暗い台所だが、奥の部屋の窓からの明かりが台所に漏れて来ているので、床に置いてあるダンボール箱に無造作に放り込んであるスーパーの袋やカップめん等の雑多なものが見える。
そのダンボール箱の前には、ゴキブリホイホイの紙の家が置いてある。

“ あらっ、ゴキブリが出て来たぞ・・・。”

 ゴキブリは、ゴキブリホイホイの紙の家から顔だけ出して、ヒゲをピクピクさせている。
俺が見ていると恥ずかしいのか、紙の家の中に引っ込んだ。

“ これって、役に立ってないような気がするけど・・・。”


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霧の狐道83

2008-07-10 19:50:34 | E,霧の狐道
 エレベーターの扉がスルスル閉まり、エレベーター内が静かになった。

“ とりあえず、これはラッキー!”

引っくり返っていた山下先生が立ち上がりながら俺に言った。

「 あのなぁ~、神谷・・・。
 自転車で入って来るな!
 バカか、おまえは!」
「 いやぁ~、会えて良かった。」
「 ぜんぜん、良くない!」
「 先生は、ここに住んでるんですか?」
「 ああ、そうだよ。」
「 ちょっと、部屋に隠れさせて下さい!」
「 え、また、何か仕出かしたのか?」
「 訳は、後で説明します。
 とにかく、早く、部屋に行きたい!」
「 まあ、訳は部屋で聞くか・・。」

 エレベーターが、5階に到着して、俺は自転車を押して山下先生に付いて行く。
通路の右は部屋の扉が並び、左には良く晴れた外の景色が広がっている。
外を覗くと、カナトコ頭と原爆頭、それの後ろに20人ほどのヤンキー連がマンションの方に向かって歩いて来る。

“ うわっ、来た!”

俺は山下先生を急がせた。

「 先生、早く、早く!」
「 何、急いでんだよ。
 ここだよ、ここ!」

エレベーターから数歩で先生は立ち止まった。

「 あ、ここか・・・。」

エレベーターから、二つ目の部屋が先生の部屋だった。



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霧の狐道82

2008-07-08 18:59:41 | E,霧の狐道
 山下先生は突っ込んで来る俺の自転車を見て、エレベーターの奥に後ずさった。
俺は自転車に乗ったまま、エレベーターに突入する。
山下先生が叫んだ。

「 うわっ!」

“ ガツンッ!!”

自転車は、エレベーターの奥の壁にぶち当たって横倒しに止まった。
そして、俺は、ぶち当たった急停車で自転車の前に投げ出された。

「 うおっつ!」

突っ込んで来る自転車を辛うじて避けた山下先生はエレベーターの床に倒れている。
その山下先生をクッションに、俺は上に乗っかった。
 山下先生が俺の下で苦しそうな声を出す。

「 いでででで!」

でも、俺は山下先生の上で休憩している暇は無い。
俺は、すぐに立ち上がって言った。

「 先生、何階?」
「 ううううう・・、5階・・・。」

 俺は、エレベーターから少しはみ出した自転車の後ろを引っ張り上げながらエレベーターに自転車を入れ、5階のボタンを押した。



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霧の狐道81

2008-07-06 19:24:47 | E,霧の狐道
 ひと筋走って、左手に大きなマンションが見える。

“ よし、あそこの裏だ!”

 俺は、道路沿いのフェンスに沿って走り、道を曲がってマンションの正面が見えるところまで来た。

「 あれっ・・・・?」

マンションに向かって、歩いて行く緑色の男の後ろ姿がある。

“ あの緑色のズングリムックリの後ろ姿は・・・・。
 何処かで見たような・・・・。”

俺は眼を凝らして見た。

“ 山下先生だ!”

 山下先生は、今日、緑色のジャージを着ていた。
本人はジャージと言い張っていたが、どう見てもパジャマに見える。
クラスの連中が山下先生を煽てた。

「 先生、カッコいいっすね!」
「 お前たちにも、俺の趣味の良さが理解できるのか!」
「 ホント、シブイっすよ!」
「 そうか・・、フフッ・・・。」

ズングリムックリのミドリムシは、クラスの声に満足して黒板に向かって字を書き始めた。
そして、今、そのミドリムシはマンションに向かって歩いている。
 後ろ姿の山下先生は、マンションの入り口のガラスの扉を開いて中に入って行った。
それを追って、俺は自転車ごとマンションに突入する。
 マンションのロビーを自転車に乗ったまま俺は走った。
そして、俺は、エレベーターの階の表示を見上げている山下先生に向かって叫んだ。

「 山下先生っ~~~!」

山下先生が振り返った。

「 げっ、神谷!」

山下先生の後ろでエレベーターの扉が開き始める。

「 一緒に行きまぁ~すっ!」
「 うわっ、来なくていい!」



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霧の狐道80

2008-07-04 18:50:42 | E,霧の狐道
 上り坂が終わって、下り坂になった。
俺の自転車のスピードが上がる。

“ 下り坂だったら、こっちの方が早いよっ!”

俺は、ドンドン二人を引き離した。

“ かなり離したな。
 バッテリー切れかな?
 もう、振り切れるぞ!”

そう思って、交差点まで来て振り返ると、遥か後ろで、カナトコ頭が携帯電話を持って何か話している。

“ ヤバッ、仲間を呼ぶ気だな・・・。”

 俺は、交差点から前を見た。
交差点の200メートルほど先にあるコンビニから、携帯電話を持った金髪のヤンキーが、こっちを見ている。
さらに、ゾロゾロと5人ほど仲間がコンビニから出て来て、携帯電話を持った金髪のヤンキーと一言二言言葉を交わし、一斉にこっちを見る。

“ マズイぞ、これは・・・。
 挟まれた・・・・。”

 この町は妙にヤンキーが多い。
石を投げたらヤンキーに当たる。
そのヤンキーたちは、いつもゾロゾロとコンビニ辺りから湧いて出て来るのだ。
俺は、前と後ろを見て考えた。

“ カナトコ頭が、他のヤンキーにも応援の電話を掛け始めたら、もっ
 とヤンキーが増えて来るかも知れないぞ・・。
 このままでは、ヤンキー1000人に包囲される可能性もある。
 取り敢えず、方向転換して何処かに隠れなきゃ・・・!”

俺は急いで交差点を左折した。



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