大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月30日 伊藤君の部屋(1)

2021-03-30 15:53:30 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月30日 伊藤君の部屋(1)





 今から20年ぐらい前 のことです。
当時大学1年で、たまたま同じサークルにいた、それまであまり親交もない同級生の伊藤君から、

「 今日、うち(彼のアパート)に来ない?
相談したいことがある。」

と真剣な顔で言われ、訳も分からず彼について、そのアパートへ行った。
 6畳一間、風呂なし、共同便所で築20年は経ってるような、しかし家賃は2万円。
考えれば、今では文化財級かも、でも20年前当時は大学1年なんて半分はそんな感じだった。
 伊藤君の部屋は、意外とこざっぱりした感じ。
俺が聞いた。

「 で、相談て何なの・・・・?」

伊藤君は言いよどんでいたが、押し入れを指さして、

「 何かおる。
見てっ!!」

正直、伊藤君の必死な顔に笑い出しそうになったけど、こらえた。
 俺が、

「 何がおるんや?」

と質問すると、 伊藤君は、

「 毎晩、あっちから何かが出てくるんや・・・・。」

と答えた。
 俺は、

” 意味分からん・・・?”

と思いつつも、とりあえず押し入れのふすまを開ける。
 たぶん伊藤君は片づけておいたんでしょう、中身は空っぽだった。
俺が、

「 なんも、無いで・・・?」

と怪訝な顔で伊藤君の方を見ると、伊藤君は、

「 そっ、そこに、何か貼ってるでしょう?
見て!見て!!」

と言うやいなや、何故か部屋を大急ぎで飛び出して行った。











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日々の恐怖 3月26日 漁に出る(5)

2021-03-26 18:56:15 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月26日 漁に出る(5)




 ナメクジ握りつぶしたらこんな感じだろうって感触で、思わず、

「 ヒャァ・・・!」

と声を出してしまいました。
そしたら、すぐ近くの海面から、

” ピチャ!”

って音がしたような気がして、恐る恐る海面を見たんです。
 すると、そこには波の中に真っ白い人が立ってる感じでこっちを見てました。
上手く表現できないんですが、2階建ての建物の2階から真下にいる地面の人を見下ろす感じです。
 地面の側の人が首を真上に向けて見上げてるイメージです。
そして、その状態で両手を空に伸ばしてる感じ。
情けない話、腰を抜かしまして、立てなくなって、そのまま気を失っちゃいました。
 ふと目を覚ませば港の中で、オヤジが心配そうに私の頬を、

” ペチペチ!”

叩いてました。
アレがなんだったのかは今でも分からないんです。
 あの時、何かを握りつぶしたほうの手の指に、魚の目が出来まして。
それで、その魚の目の皮がある程度厚くなると、自然に、

” ぺロッ・・・。”

って剥けるんです。
その皮がまるで鱗に見えるって言うんで医者のところに行ったんですけど、原因不明ってことで放置されてます。
なんかとりとめの無い話で恐縮ですが、そんな体験でした。










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日々の恐怖 3月23日 漁に出る(4)

2021-03-23 20:55:14 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月23日 漁に出る(4)




 波の上で霧に巻かれると、本当に何も見えなくなるんです。
吹雪に巻かれるホワイトアウトと同じくらい恐ろしいんです。
 そしたら宿のオヤジが船を止めまして、最後尾にどっかりと腰を下ろして、念仏なんかあげてるんです。

” ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・・・。”

って。
すっかり怖くなっちゃって、船べりで無様にガタガタ震えました。
 本気で怖い思いしたのは2回目です。
チビルとか言う次元じゃなく、もうほんとにパンツの中にでかいのをぶちまける勢いです。
 どれくらい震えたか分かりませんが、さっきから聞こえてきた声が、

「 おーい!」

から、

「 まってくれ~!」

にかわって、

「 たすけてくれ~、おいてかないでくれ~。」

になったんです。
 で、そこでピンと着たんです。
これ、ドザエモンの声だって。
 恥も外聞もなくガタガタ震えてたら、今度は船のヘリを誰かが叩くんです。

” バンバン!バンバン!”

凄い音です。
 そして、相変わらず生臭い臭いがしてます。
それなりに波のある状態でしたが、波のうねりとは違う揺れが唐突に船を突き上げました。

” グラッ!”

と揺れた感じで慌てて船にしがみ付いたら、自分の指先になんとも言えない、

” グニャ!”

って感じの感触がありました。








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日々の恐怖 3月20日 漁に出る(3)

2021-03-20 20:48:24 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月20日 漁に出る(3)





“ とりあえず何か良くない事が起きるんだろうな・・・・。”

と思って、言われた通りに前を向いて船の揺れに落とされないように船べりにしがみ付きます。
 波に当たって、木っ端舟は大きくバウンドするように上下に揺れます。
水上の速度感覚が無いもんですから良く分かりませんが、少なくとも走る船の上で受ける向かい風は時速20キロとか、そういう感じだと思います。
 とにかく、何から何まで良く分からない状態で、しばらくジッとしていたら、後ろの方から男の声が聞こえます。
それも、うんと遠くから呼びかけるように、

「 おーい!おーい!」

と言う感じで。

” なんだろう・・・?”

と思って振り返ると、オヤジは手ぬぐいを使って両耳を塞いでいました。
そして、ものすごい形相で、

” 後ろを向くな!”

と言うジェスチャーをしてます。
 まぁ、その時点で尋常な事態じゃないと言う事を理解しました。
船べりに捕まってジッとしていたんですが、ふと気が付けば良かったはずの天気がスーッと陰り、船の周りには霧が出始めました。
 段々と視界が利かなくなり、それと同時にあの呼びかける声が段々大きくなります。
ただ、その声は呼びかけると言うより、助けを求めるようなか細い声にも聞こえます。
出来る限り無視して陸の方だけを見ていたんですが、そのうち霧が段々深くなって、陸も見えなくなりました。

 







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日々の恐怖 3月18日 漁に出る(2)

2021-03-18 20:41:51 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月18日 漁に出る(2)




 海釣り用の竿を出したオヤジが、のんびりと糸をたらします。
暢気なもんだと思っていたら、程なく大きな魚がヒット。

「 鯛ですかね?」

と、聞いたんですが、親父はゴニョゴニョ言うばかりで教えてくれません。

” まぁ、良いか・・・・・。”

と思っていたら、親父が血相を変えて竿をしまいました。

「 なんかあったんですか?」

と聞いても、何も言ってくれません。
しつこく聞いていたら、

「 良いか、何があっても、これから声を出すな、絶対に出すな!」

と怒鳴られました。
 意味が分からず、ちょっとふて腐りモードで沖のほうを眺めていたら、なんか白いモヤみたいなのが漂っているのが見えました。
オヤジは自分にも聞こえるような音で派手に舌打ちして、クルリと船の向きを変え、港に向かって船外機全開で走り始めます。
 ふと気が付けば、何となく生臭い臭いと共に、ベタベタするような湿気交じりの空気が船を包んでました。

” なんだこりゃ・・・・?”

と思い、親父を見たら、もの凄い血相で指を口に当てて、

” シー、・・・・。”

とするようにして、沈黙を求めています。
そして、ハエでも払うように、

” シッ、シッ!”

と手を振って、前を向くように指示されました。









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日々の恐怖 3月16日 漁に出る(1)

2021-03-16 19:18:28 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月16日 漁に出る(1)




 怖いと言うか不思議な話です。
去年の10月前半なんですが、千葉の鴨川の近くの小さな民宿へ泊まりました。
古い付き合いの相棒がそこの親戚筋と言う事で、まぁ、なんとなく美味い魚でも食えれば的な感じでした。
 金曜日の夕暮れに民宿へ到着し、旅装を解いて早速風呂へ。
温泉と言うわけではないのですが、海の見える自称大きな露天風呂はそれなりに気持ちの良いもんです。
 風呂の後は楽しみにしていた晩飯。
話に聞いていた通り、鯛やらひらめやらの船盛に煮魚に、おまけの美味い地酒ですっかり上機嫌。
その晩は普段の仕事の疲れもあって早々に寝てしまいました。

 翌朝。
民宿の質素な朝食を摂って近所をブラブラしていると、宿のオヤジが漁に出るとかで準備してました。
こりゃ面白そうだと言う事で、ちっちゃなデジカメ一台持って船外機のついた木っ端舟に便乗。
 内海向けの小さなボートに船外機が付いただけの、本当に浜のすぐ近くで使うような船で沖に向かって20分か30分は走ったくらいですかね。
距離感覚とか方向感覚が鈍いほうなんで、どこまで行ったかは自信がありません。
ただ、ちょっとうねりの入った沖合いの、その波間に日本が消えて無くなるような沖合いでした。








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日々の恐怖 3月14日 水死体

2021-03-14 18:31:22 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月14日 水死体




 にわかに信じられないんだが、うちのおふくろがおふくろの祖父に聞いた話です。
母方のばあちゃんの実家は漁師の網元だったらしい。
で、おふくろの祖父(以降祖父)が、よくおふくろに話していたようだ。
 祖父が若い頃、海に出て漁をしていると水死体に出くわすことがあった。
事故にしろ自殺にしろ、水死体というのは無惨な姿で波間に浮いているんだが、不思議と船に近付いてくる。
 当時まだ戦前だから、地方の漁師で船外機のついた船なんか乗ってるはずもない。
引き離そうと必死に漕いでも付いてくる。
 小さなてこぎ船で一人で漁をしてるので引き上げるわけにもいかないし、生活がかかってるから漁を中断することもできない。
 そういう時に昔かたぎの漁師には、ある種のまじないみたいなのがあった。
と、いうのは、水死体に手を合わせて、

「 スマンが今から漁をしなけりゃならないから少し離れて邪魔をせんといてくれんか。
そのかわり、あんたを何がなんでも陸に帰してやるけん。」

ってお願いする。
そうすると水死体はいつの間にか波間に見え隠れするぐらいのところでつかず離れずに浮いている。
 で、漁を終えて帰途につく時に、

「 漁は終ったけん、今から帰るけんの。
しっかり付いてきんさいよ。」

って声をかけて帰る。
 すると、不思議と水死体はつかず離れずの距離を保って港までついてくる。
祖父が言うには、どんなになっても人間ってのは海にはおられんもんなんだろうって。
何がなんでも陸に上がろうとするのが人間の性なんでしょうね。








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日々の恐怖 3月12日 お祓い(5)

2021-03-12 15:51:51 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 3月12日 お祓い(5)





 青年神主の話は、次のようなものだった。
関東のわりと大きな神社に勤めていた頃、かつてその神社で起きた話として先輩神主が、さらにその先輩神主から伝え聞いたという話。
 ある時から神主、巫女、互助会の組合員等、神社を出入りする人間が、狐のお面を目にするようになった。
そのお面は敷地内に何気なく落ちていたり、ゴミ集積所に埋もれていたり、賽銭箱の上に置かれていたりと、日に日に出現回数が増えていったという。
 ある時、絵馬を掛ける一角が、小型の狐のお面で埋められているのを発見され、これはもうただ事ではないという話になった。
するとその日の夕方、狐のお面を被った少年が、家族らしき人たちとやって来た。
 間の良いことにその日、その神社に所縁のある位の高い人物が、たまたま別件で滞在していた。
その人物は家族に歩み寄ると、

「 こちらでは何も処置できません。
しかし○○神社なら手もあります。
どうぞそちらへご足労願います。」

と進言し、家族は礼を言って引き返したという。

「 その先輩は、”神社ってのは聖域だから、その聖域で対処できないような、許容範囲を超えちゃってるモノが来たら、それなりのサインが出るもんなんだなぁ”って、言ってました。」
「 じゃあ、今のがサインってことか?」

と、おじさんが呟いた。

「 多分・・・・、まぁ、間違いないでしょうね。」
「 でも、あのまま帰しちゃって良かったんですかね?」

という俺の質問に青年は、

「 ええ、一応予約を受けた時の連絡先の控えがありますから。
何かあればすぐに連絡はつきますから。」
「 いやぁ、でも大したもんだね、見直しちゃったよ。」

とおじさんが言った。
俺も彼女も、他の皆も頷いた。

「 いえいえ、もう浮き足立っちゃって。
手のひらとか汗が凄くて、ていうかまだ震えてますよ~。」

と青年は慌てた顔をした。
 その後、つつがなくお祓いは済んだ。
正直さっきの出来事が忘れられず、お祓いに集中出来なかった。
しかしエライもので、それ以後体調は良くなり、不幸に見まわれるような事もなくなった。
 結婚後も、彼女とよくあの時の話をする。
あの日以来、彼女は心霊番組を見たりしている。
やっぱり気になっているのだろう。
 しかし、だからといってあの人の良い青年神主に話を聞きに行こう、という気にはならない。

「 もしもだけどさぁ、私たちが入った途端にさ、木がビュンビュンって、揺れだしたら、もう堪んないよね~。」

彼女が引きつった笑顔でそう言った。
まったく、その通りだと思う。
あれ以来神社や寺には、どうにも近づく気がしない。








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日々の恐怖 3月7日 お祓い(4)

2021-03-07 17:22:37 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月7日 お祓い(4)





 すると神主の青年が、サッと待機所から飛び出すと、二人に走り寄った。

「 △△様でしょうか?」

木の揺れる音のため、自然と大きな声だった。
うなずく男。

「 大変申し訳ありませんが、お引取り願いませんでしょうか。
我々ではどう対処も出来ません。」

こちらに背を向けていたため、青年の表情は見えなかったけれど、わりと毅然とした態度に見えた。
 一方老婆と男は、お互いに顔を見合わし、うなずき合うと、青年に会釈し引き上げていった。
その背中に青年が軽く頭を下げて、小走りで戻ってきた。
 いつの間にか木の揺れは収まり、葉が何枚か落ちてきていた。

「 い・・、いまの何だったの・・・!?」

と中年のおじさん。

「 あの木、何であんなに揺れたの?
あの二人のせい・・・・?」

と彼女。
 俺はあまりの出来事に、言葉が出なかった。
興奮する皆を、青年は落ち着いて下さい、とでも言うように手で制した。
 しかし青年自体も興奮しているのは明らかだった。
その手が震えていたからだ。

「 僕も実際見るのは初めてなんですけど、稀に神社に入られるだけで、ああいった事が起きる事があるらしいんです。」
「 どういう事っすか!?」

と俺。

「 いや、あの僕もこういうのは初めてで・・。
昔いた神社でお世話になった先輩の、その先輩からの話なんですけど・・・・。」









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日々の恐怖 3月5日 お祓い(3)

2021-03-05 15:43:59 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 3月5日 お祓い(3)



 その時、待機所にいる全員の視線が、青年に集まったのを感じた。
俺も実は、そこんとこは知りたかった。
 青年は、

「 いやぁ全然見えないですねぇ。
まぁちょっとは、何かいるって感じることも、ないこtはないんですけど・・・・・。」

と、皆の注目を知ってか知らずか、そう笑顔で返した。

「 じゃあ修行っていうか、長いことその仕事続けたら段々見えるようになるんですか?」

と、俺の彼女が聞く。

「 ん~、それは何ともォ・・・・。
多分・・・・・・。」

青年が口を開いた、その時だった。

“ シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ・・・。”

入り口にある結構大きな木が、微かに揺れ始めた。
 何事だと一同身を乗り出してその木を見た。
するとその入り口の側に、車椅子に乗った上品そうな老婆と、その息子くらいの歳に見える男が立っていた。
 老婆は葬式帰りのような黒っぽい格好で、網掛けの(アメリカの映画で埋葬の時に婦人が被っていそうな)帽子を被り、真珠のネックレスをしているのが見えた。
息子っぽい男も、葬式帰りのような礼服で、大体50歳前後に思えた。
 その二人も揺れる木を見つめていた。
そして木は一層激しく、

“ シュシュシュシュシュシュシュ・・・・・。”

と音を鳴らして揺れ始めた。
 さらに、その振れ幅も大きくなった。
根もとから揺れているのか、幹の半分くらいから揺れているのか不思議と分からなかった。
分からないのが怖かった。
 木が、

“ シュン、シュン、シュン、シュン・・・・・。”

と、凄い勢いで揺れる。
老婆と男は立ち止まり、その木を困ったように見上げていた。








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日々の恐怖 3月2日 お祓い(2)

2021-03-02 10:34:52 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 3月2日 お祓い(2)




 神社には既に何人か、一見して参拝者とは違う雰囲気の人たちが来ていた。
彼女の話では午前の組と午後の組があって、俺たちは午後の組だった。
今集まっているのは皆、午後の組というわけだった。
 合同でお祓いをするという事らしく、俺たちを含めて8人くらいがいた。
本殿ではまだ午前の組がお祓いを受けているのか、微かに祝詞のような声が漏れていた。
 所在なくしていた俺たちの前に、袴姿の青年がやって来た。

「 ご予約されていた〇〇様でしょうか。」

袴姿の青年は体こそ大きかったが、まだ若く頼りなさ気に見え、

“ この人が俺たちのお祓いするのか、大丈夫か・・・・?”

なんて思ってしまった。

「 そうです、〇〇です。」

と彼女が答えると、もう暫らくお待ち下さい、と言われ、待機所のような所へ案内された。
 待機所といっても屋根の下に椅子が並べてあるだけの東屋みたいなもので、壁がなく入り口から丸見えだった。

「 スイマセン、今日はお兄さんがお祓いしてくれるんですか?」

と、気になっていたことを尋ねた。

「 あぁ、いえ私じゃないです、上の者が担当しますので。」
「 あ、そうなんですか。(ホッ!)」
「 私はただ段取りを手伝うだけですから。」

と青年が言う。
 暫く待っても、順番がなかなか来ないので、かなり暇だった。
すると、待機所にいた先客らしき中年の男が青年に尋ねた。
どうやら一人でお祓いを受けに来ているようだった。

「 お兄さんさぁ、神主とかしてたらさ、霊能力っていうか、幽霊とか見えたりするの?」








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