大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道258

2009-09-30 19:07:05 | E,霧の狐道
 談話室の窓からは、暖かい日差しが差し込み足元を照らしている。
窓の外に眼を遣ると、遠くの山並みが見える。
背の高いマンションが山の中腹から裾まで段々と降りてきている。

“ 落ちて行ったって言ったよな・・・。”

 俺は四角い窓に車椅子の車輪を転がして近付いた。
窓枠から見える風景は山並みから徐々に下がって、遠くから近くへと下界の家々が見えてくる。

“ 結構、大きな町だなァ。”

三筋ほど離れた斜めの大通りに面して、小振りの商業ビルが二列に並んでいる。

“ あの辺が町の中心かな。”

遠くに列車が左から右に移動して行く。

“ あの大通りは駅に繋がっているんだろうな。”

遠くから見ていたから分からなかったが、近付くと窓には白い汚れが付いていた。

“ ちょっと、窓開けてみようかな。”

俺は窓を開けようとした。

“ あらっ、開かないぞ!?”

窓には鍵が掛かっていたのだ。

“ 仕方ないな・・・。”





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霧の狐道257

2009-09-26 19:19:59 | E,霧の狐道
 俺の疑問を他所に龍平の話は続いている。

「 そやろ・・・・。
 ホンマ、あれ無かったらヤバかったかも知れんわ。
  お、あ・・・、わい、いいこと思い付いた!
 昨日、考えながら寝てしまったんやけど・・・。
 わい、ちょっと行って来るわ。
 また、後でな。」
「 おい、龍平、何処に行くんだ?」
「 ハハハ、あと、あと!」
「 おい、待てよ!」

龍平は俺を残して談話室を飛び出して行った。
 俺は、龍平が出て行ったドアが、ゆっくり閉まりつつあるのを見ていた。

“ あいつ、一体、何処に行ったんだろう?
 それに吉沢って・・・・?
 ・・・・・・・・・・・。”

ドアはす~っと隙間を埋め、ぴったり閉まった。
談話室は俺一人になった。

“ とにかく、由紀ちゃんのお守り、無くさないようにしなくっちゃ。”

俺は疑問と疑問を持ったまま、取り敢えず手に持ったお守りをポケットに仕舞った。





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霧の狐道256

2009-09-21 19:06:28 | E,霧の狐道
 龍平が、来なかったことを気にしていると思ったので俺は言った。

「 昨日、状況を聞いても、どうしていいか思いつかないし・・・・。
 だから、仕方ないし、後はお互い寝るだけだよ。
  それに、山本爺、朝、ちゃんと自分のベッドにいただろ。
 山本爺、大丈夫だったんだよ。
 いつもと変わんないよ。
 まあ、微熱が朝ちょっとあったみたいだけど・・・。
  でも、今のとこは大丈夫だって。
 あ、それから・・・・。」

俺は自分のお守りをパジャマのポケットから引っ張り出した。

「 俺のお守り、貸してやれば良かったと思いついたけど・・・・。
 龍平、行ってしまった後だったから渡せなかった。」
「 ああ、そうか・・・。
 ・・・うん、そやな。
 これはこれで、効き目があったと思うで。
 良かったな貴志、吉沢さんに貰ったお守りが役に立って。
 あの女の子、誤魔化しながらも、わいらのベッドに近付いて来なかっ
 たやん。」
「 そう、近付いて来なかったよな・・・・・。」

俺は龍平の言葉に違和感を覚えながら答えた。

“ 俺は龍平に由紀ちゃんとは言ったが、吉沢とは一度も言ったこと無か
 ったと思うけど・・・・。”




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霧の狐道255

2009-09-14 18:59:31 | E,霧の狐道
「 誰か来た?」
「 うん、そうや。
 エレベーターに近付いてみると、下から上に何かが上がって来るんや。
  で、“これってヤバイぞ”って感じがしたんで、5階の談話室に大急ぎで飛び込
 んで、扉の隙間からそっと覗いてたら・・・・。
 誰やと思う?」
「 誰?」
「 エレベーターの扉が開いて、出て来たヤツは黒い影。
 さっき、落ちて行ったヤツ。
 また、上がって来よったんや。
 それで、談話室の前を通過して、屋上の階段、上がって行きよったわ。」
「 見に行った?」
「 いや、やっぱ、どう対処していいのか分からんし、行かんかった・・・・。
 それで、とにかく貴志に状況を知らせたろと思って、もう一度、4階に降りる階
 段のところに行ったら、看護婦さんの見回りの懐中電灯の光が階段を上がっ
 て来るのが見えたんや。
  俺、一回見つかってるから、今度見つかるとヤバイことになると思て、慌てて
 5階の自分の部屋に戻ったんや。
 看護婦さん、5階の部屋も一つ一つ回って行くから見回りの時間が結構掛かる
 んや。
 それで、ベッドに入って、これはどうしたもんやろかと、さっき見たこと考えてい
 るうちに寝てしもたんや。」
「 ああ・・・、それで来なかったのか。
 来るかも知れないと思って待ってたけど・・・。
 俺も、待ってるうちに寝てしまった。」
「 そうか、やっぱり待ってたのか・・・。」




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霧の狐道254

2009-09-09 19:10:04 | E,霧の狐道
「 後ろの山本さんは・・・・?」
「 そう、それで黒い影の後ろにいた山本さんなんやけど・・。
 柵の角まで行って、躊躇してる感じやったけど、結局、屋上の方に降りて来た
 わ。」
「 そうかァ。」
「 それで、山本さんは女の子と向かい合わせになって立ってたんやけど、あれ
 は、何かの相談かなァ~。
 声とか聞こえへんにゃけど・・・。
  それで、しばらくしてな、二人がフッとこっちを向いたんや。
 何か見られてる気配を感じたんやろか。
 わい、こっちに来るって思って、ビビッてな。
 クルッと向き変えたんや。
 一瞬で、女の子が瞬間移動して、ヒュッて目の前に現れたら怖いやろ。
 それで、スリッパ脱いで、急いで階段降りて逃げたがな。」
「 スリッパ?」
「 スリッパ、履いてたらパタパタって音するがな!」
「 なるほど、さすが、さすが。」
「 変なとこで感心するやっちゃな。」
「 で、追い掛けて来た?」
「 いや、来んかった。
 期待外れで、スマンのォ~。」
「 いや、それ程でも・・・。」
「 で、5階まで降りて階段の手摺からそ~っと上を覗いて様子を窺ってたけど、
 追い掛けて来てないようやなと思たんや。
  でも、もう一度、見に行くのは止めたわ。
 見たところで、どう対処していいのか分からんやろ。
 それで、貴志に知らせたろと思って、そのまま5階から4階に階段を降りようと
 したんやけどな、5階のフロアをクルッと回ったとき、エレベーターの階の表示
 が動いてるのが見えたんや。」






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霧の狐道253

2009-09-02 20:10:42 | E,霧の狐道
 龍平と俺の目玉が、龍平の丸を挟んで向かい合う。
接近した顔のアップが目の前にある。

「 プッ!」

龍平が、俺の寄り眼に我慢出来ずに吹き出した。

「 勝った!」
「 何、すんねん!」
「 穴があったら、覗くのが人の常。」
「 で、寄り眼は何やねん?」
「 関西では、“笑わしてナンボ”って言うんだろ?」
「 まあ、それはそうやけど・・・。」

俺は手をヒラヒラしながら龍平に言った。

「 ゴメン、ゴメン!
 それで、続き、続き!」
「 分かったがな。」

俺と龍平は座り直して向かい合う。

「 で、穴から見えたんや。
 穴の正面、10mほど先におったんや。
 女の子と黒い影と山本さんやがな。」
「 何、してた?」
「 女の子、鞠をついてたわ。
 テン、テン、テンってな。
 山本さんと黒い影は、その子の横に立ってた。
  それでな、女の子が鞠を付くのを止めたんや。
 その後な、黒い影がヒョイって、屋上の柵の上に飛び乗ったんや。
 屋上の周りにグルッとな、これぐらいのコンクリートの柵あるんや。」

龍平が両手で30cmほどの幅を作った。

「 この上やがな。
 それで、次がビックリやで。」
「 何が?」
「 続いてな、山本さんも柵の上にあがったんや。」
「 えっ、山本さんも?」
「 そうやがな。」
「 めちゃ、危ない。」
「 そう、めちゃ、危ないんや。
 柵の上に腹這いになってやな。
 乗っかってるねん。
  で、黒い影が、柵の上を向こうの角っこに向かってゆっくり歩いて行くん
 や。
 その後、山本さんも続いて、ズルズルと這って行くんやで。
 しゃくとり虫みたいやがな。」
「 危なぁ~。」
「 まあ、幅があるから落ちんと移動してたけど・・・。
 それで、先に進んでいる黒い影が柵の角まで行ったら、一旦、黒い影が立ち
 止まったんや。
 柵の直角の角っこに真っ直ぐに立ってやなぁ・・・。」
「 ・・・・・・。」
「 そしてなぁ・・・・・。
 黒い影は、ゆ~っくり柵の外に倒れ込んで、落ちて行ったんや。」
「 え、落ちて行った・・・。」
「 そう、落ちて行ったんや。」




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