大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月30日 石鹸

2023-10-30 17:09:05 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 10月30日 石鹸






 小学校の教員をしていた友人から聞いた話である。
当時友人が勤務していた小学校は、都市部と田園部が半々といった場所だった。
 ある初夏の頃、学校の校庭にある手洗い場の石鹸が盗まれるという小さな事件が続いた。
水道の蛇口の根元に縛り付けられた、赤いビニールネットに入ったレモン石鹸である。
新しいものに付け替えても、すぐに何者かがカッターのようなものでネットを切り裂いて、
中の石鹸を持ち去ってしまうのである。
 始めのうちは、

「 物好きもいるものだ。」

と職員室の軽い話題でしかなかったが、事件が頻発し目撃者がだれもいないという事で、
やがて校舎の内外を管理する教頭が乗り出してきた。
 教頭は、

「 いたずら者を捕まえて、しっかりと指導しなくては!」

と意気込んで、付近の見回りを強化したのだが、犯人の目星もつけられないまま夏休みになった。
休み中も犯行はぽつぽつと続き、一部の児童は”学校の七不思議だ!”と色めき立った。
 やがて秋になり運動会も終わった頃、台風がやって来て周囲の小川を氾濫させたり、
校庭のヘチマ棚を飛ばしたりと、この地域にも多少の被害をもたらした。
台風騒ぎの最中は例の石鹸盗難事件はなかったのだが、その後は1学期同様に続いたので管理する教頭を悩ませた。
 その頃、教頭は奥さんから自宅の雨どいの掃除を頼まれていた。
どうやら先の台風で落ち葉が雨どいに詰まってしまったようである。

「 雨水が溢れて困るから早くして!」

とせっつかれた教頭は、高い所は大の苦手で気乗りはしなかったが梯子をかけて渋々屋根に上ったところ、
我が目を疑った。
雨どいの中が黄色いのである。

「 まさか・・・・?}

と目を凝らしたがやっぱり黄色。
詰まっていたのは落ち葉ではなく、なんとものすごい数のレモン石鹸であった。
 しかもそれらを良く見ると使い古して小さくなったものではなく、
どうも学校で度々盗難にあっていた、あのレモン石鹸のようだった。

「 何で俺の家の雨どいにこんなものが・・・?」

と恐怖と冷や汗でクラクラしつつも、教頭は丸一日がかりで石鹸を全部取り除いたそうだが、
数えてみると60数個もあったという。
 結局のところ、未だに目撃者すらいないこの謎の石鹸騒動の犯人はというと、
どうもカラスしか考えられないのではという結論に達した。
 学校から教頭の家まで約3キロ。
自家用車で通勤していた訳だが、カラスが校庭の水道の所から嘴でネットを破り、
石鹸をくわえて、よりによって何故か教頭の家の雨どいに運んで・・・?
はたしてカラスにそんな芸当ができるのだろうか?
それとも別の何かの仕業なのだろうか?
 実際に他に六つあったかどうかは知らないが、そこでこの出来事は正式に”学校の七不思議”に昇格する事となったそうである。
その後、校庭の水道のレモン石鹸はポンプ式のものに付け替えられたのは言うまでもない。












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日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)

2023-10-22 09:13:43 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)






 一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。
そして男の奇怪な行動について話してくれた。
 姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。
しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。
気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。
女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。
毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。
 彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。
しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。
彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。
どうにもならないイライラが、死んでまで自分に付きまとう彼女に対する怒りに変わり、
男は発作的にあのような行為をしてしまう。
そういう行動を何週かごとに繰り返していたようだ。
 神妙な面持ちで話をするKさんを見て俺は少しあきれた。
確かに気持ちの悪い話ではあるのだが、男は精神を病んでいたので幻覚を見ている可能性があるし、
なによりも心霊やオカルトを信じていないはずのKさんが、そんな話を鵜呑みにするのはおかしいと思ったからだ。
 そんな俺の気持ちを感じたのかKさんが、

「 実は昨日の夜・・・・。」
「 えっ!また男が来たんですか?」

反射的に俺が聞くと、

「 いや・・・、違うんだけど・・・・。
やっぱいいです。」

と何か歯切れの悪い返事だった。
 腑に落ちず、さらに聞こうとしたが彼のあまりに青ざめた表情を見て気の毒になり、それ以上の話を聞くのをやめた。
結局、Kさんは次の部屋が見つかるまで知人の家に泊めてもらうことで終わり、彼と別れた。
実際に自分が心霊現象にあったわけではないですが、いわくつきの部屋にはこんなトラブルもあったという話です。











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日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)

2023-10-14 10:50:18 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)






 俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。
男はKさんの部屋で自殺した女性と知り合いだった。
以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事だった。
 しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。
女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたようだ。
 Kさんの部屋に行った動機に関しては、あいまいな事を言っていて良く分らないとのことだった。
結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することになった。
事件はとりあえず解決し、Kさんも一安心した様子で別れた。

 翌日、仕事に行きMさんに昨日の出来事を話した。

「 幽霊の正体見たり、ですよ。」

俺は得意そうに言い、

「 いわくつきの物件は出る出るというけど、まあ大体現実はこんなもんだよなぁ。」

と二人で笑っていた。
 ところが男が捕まって三日後にKさんから連絡があった。
聞くと、部屋をすぐに解約して欲しいとの事だった。
理由を問いただしたのだがあやふやな態度をとられてしまいどうにもならないので、俺は本人に直接会う事にした。
 Kさんのところに行くと、青白い顔をした本人が待っていた。
解約の理由を俺が問い詰めると、Kさんがうつむき加減に理由を話してくれた。









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日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)

2023-10-07 09:37:26 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)





Kさんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。
 アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見ると、アパートの電灯の中に人影が見える。
自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が、
Kさんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えた。
 警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると、男が不意にこちらに顔を向けた。
男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。
そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、
逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。
男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので、今度は男の腰にしがみついた。
その拍子に男は前のめりになり、地面に俺と共に倒れこんだ。
 男はすぐに立ち上がったのだが、そのさいに片方のスニーカーが脱げた。
しかし、そのまま逃走。
俺も残ったスニーカーを掴み、後を追いかけたが途中で見失ったので追うのをあきらめ、一旦アパートに戻った。
戻ると警察官が来ていてKさんと話していた。
 俺が事の次第を警察官に話していたが、その途中で男が他の警察官に捕まったと連絡が入った。
その後、警察に行き事情聴取をされた男は素直に犯行を認めた。











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