日々の恐怖 12月24日 別荘の掃除
なんでも屋に勤めているKさんの話です。
オカルトというほど怖くはないかもしれませんが、一家心中のあった別荘の掃除がありました。
ただ、血糊がべったりとかはありません。
死体とかそういうのは特殊清掃といって、衛生的に安全な手順を踏んだり特殊な薬品を使うため、うちみたいななんでも屋では引き受けないのです。
依頼人はN県のリフォーム屋さんです。
「 一家心中のあった家の片付け掃除をしてほしい。
家具や調度品など一切全て運び出して、そちらで処分してくれ。」
新聞にも載った大きな事件だそうで、地元の職人たちからは気持ち悪がられて、全て断られたとか。
4tトラックとワゴン車で、社長+バイトを含めて4人の合計5人で向かいました。
20年程前に事件があって以来、誰も管理していないので、庭は雑草というより雑木林のようです。
まずは我等とバイトで、鎌と草刈り機で雑草を刈り取ります。
社長は軽く手伝います。
穴を掘って雑草を燃やしながら別荘の中へ。
別荘の中は、ネットで見る廃墟とか廃屋そのもの。
事件のあった日付のまま、家具や調度品全てが残されてました。
それらを、とにかく家の外に運び出す。
その途中、家鳴りが凄いのなんのって。
家のあちこちから、
“ ビシィ!ギシィ!バァン!”
と鳴り響く。
急激に外の風を入れたからだろうと思いこもうとするものの、さすがに怖い。
ワゴン車のCDで、社長の80sディスコをガンガンかけながら作業しました。
1日目はこんな感じで終りました。
日暮れと共に里に帰り、宿屋に泊まる。
宿屋に帰ると、そこのおばちゃんが頼んでもいないのに、 あの事件はこうだった、ああだった、と詳細に教えてくれるんです。
夫婦2人、幼い子供2人が無理心中したって、いらない情報インプット。
おかげで社長を除く全員が、その夜は怖い夢を見たり金縛りに遭いました。
“ さすが、社長は偉いなァ・・。”
とは思ったものの、鈍感なだけかも・・・・。
次の日は、全員早起きして朝07:30から現地入り。
とにかく早く終わらせて、明るいうちに帰りたい一心。
家鳴りは昨日ほど酷くなかったので、
“ やっぱり昨日のは、気圧とか湿度の関係だったんだろうな・・・。”
なんて思いつつ作業していたら、なぜかカラスがグワァグワァとうるさい。
その上、パタパタ…、とスリッパで駆け回る音が何度も聞こえる。
我々は全員がゴム底の安全スニーカーだから、パタパタ音なんかするわけがない。
壊せる木製家具やカーペット類を庭の穴で燃やしていると、一人のバイトが、突然、
「 炎の中に子供が見えた!」
とか半狂乱状態になる。
しかし、社長がエッチな話を始めたら空気が軽くなったような気がしたんで、俺たちもバイトくんも、とにかく卑猥な言葉を絶叫しながら作業を終わらせました。
それで、バイトくんのギャラは、2日拘束で16,000円+出張手当で計20,000円。
俺たちも、特別手当が出ました。
後日談としては、子供が見えたと半狂乱になったバイトくんが、その後、毎晩のように金縛りに苦しみ、お祓いをしてもらったとか。
作業中は寡黙だったバイトくんは、ずっと我慢していたんですね。
途中で我慢できなくなって、半狂乱になったようです。
それまで知らなかったのですが、バイトくんは実は霊感持ちで、
「 作業中、ずっと血だらけの中年夫婦が、我々を睨んでたんですよね。」
「 真っ白な煙みたいな子供が、作業中の我々の周りを楽しそうに駆けていた。」
と、後で告白しました。
そして、バイトくんは、
「 お祓いでバイト代が消えた!」
と文句を言っていました。
それで、俺は実害はなかったけれど、以後、その手の現場は絶対にお断りすることに決めました。
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