大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 1月31日 冬山

2014-01-31 18:26:35 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 1月31日 冬山



 登山者の間で語られる冬山のタブーはご存知の方もいるかもしれません。
登山の途中、別のパーティーと出くわすことがままありますが、そうした場合互いに軽く挨拶します。
 しかし、猛吹雪の中では、かつて遭難した死者達のパーティーをも見出してしまうことがまれにあるのです。
彼らはすぐそばで挨拶しても気づかず行ってしまうのでそれと分かります。
 そうした場合、強いて呼び止めようとしてはなりません。
また決して振り返ってはなりません。
さもなければ彼らは私達を救助に来てくれた者と勘違いして、しつこく付きまとってくることになります。

 私の先輩は、そのタブーを犯してしまい、極寒の高山で生命に関わる禍に見舞われました。
その日、先輩の一行は、かなりの高度で予期せぬ吹雪に襲われ、最も近い山小屋に避難すべく進行していました。
 途中、前方から下りてくるパーティーが見えてきました。
互いにすれ違う際、リーダーが彼らに声をかけましたが、相手パーティーは誰一人として応答せず、黙々と下山して行きます。
 先輩一行のメンバーは、皆はっとした様子で顔を見合わせると、きびすを返して山小屋へ 向かうルートに立ち戻ろうとしました。
しかし経験の浅かった先輩はその様子を解しかね、去り行く相手パーティーに再び、

「 山小屋は逆方向だ!」

と声をかけてしまいました。
すると、最後尾の者が振り返り、

「 あとで行く。」

と答えました。
この猛吹雪に、あとでもないものですが、他のメンバーにせかされ先輩も皆に続いて再び山小屋へ向かい歩き始めました。

 山小屋といっても何があるわけでもありません。
寝袋に入って皆で固まり、凍えないよう暖を取るだけです。
ようやく小屋に辿り着いた先輩達一行も、寝袋に包まり少しでも体温が下がらないようにして吹雪がやむのを待っていました。
 その時です、

「 ドンドンドン。」

と扉を叩く音がしました。
リーダーが、

「 どうぞ。」

と答えました。
しかし誰も入ってきません。
もちろん避難用の小屋の扉に鍵などかかっていません。

「 負傷して扉が開けられないのかもしれない。」

メンバーの一人が起き上がって扉を開けに行きました。
しかし、開けた扉の向こうには誰もいません。
見えるのは相変わらず続く吹雪だけです。

「 雪が扉を打っただけだろうか。」

不審に思いながらも扉を閉めるしかありませんでした。
 しかし20分ほど経つと再び、

「 ドンドンドン。」

と扉を叩く音がしました。
今度も扉を開けてみましたが、やはり誰も居ません。
 そんなことが繰り返されました。
扉を開けるたびに室内の気温は下がって行きます。
しかも扉を叩く音の間隔が20分、15分、10分、5分と縮まって行きます。
誰もが事の異常さに気づいていました。
 リーダーが、

「 このままでは危険だ、皆もう扉を開けるな。」

と命じました。
 再び扉を叩く音がしました。
今度は誰も開けません。
やがて音はやみました。
皆一様にほっとした面持ちになりました。
 しかしそれもつかの間、今度は壁から、

「 ドンドンドン。」

と音がしました。
皆再び緊張しました。
続けて、

「 お~い、お~い。」

と外から人の声のような音が聞こえてきます。
 やがて壁からの音もひっきりなしに鳴るようになりました。
壁だけではなく、天井、床からも音がします。
それも段々と乱暴さを増して行くのです。
気味の悪い呼び声も収まりません。
一向は皆壁から離れ、部屋の真ん中で寄り添って、耳を塞いで一晩中不気味な音に悩まされながら、眠れぬ夜を過ごしました。
 朝になると吹雪もおさまりました。
外には何事もなかったような銀世界が広がっています。
頂上まではもう少しの地点です。
しかし、皆疲れの取れない身体を引きずるようにして、ほうほうの態で下山の途についたということです。












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日々の恐怖 1月30日 夜勤

2014-01-30 20:59:50 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 1月30日 夜勤



 コンビニで夜勤のアルバイトをしていたときの話です。
入って3ヶ月くらいのある晩、同じ夜勤の人間でその日は深夜1時に上がる予定だった先輩が、

「 今日は明け方まで残ってもいいかな?」

と私に聞いてきた
 ウチの店は深夜1時までは二人制、1時から翌朝6時までは一人での勤務になる。

「 べつに構いませんけど、どうかしたんですか?」

その日は特別な仕事も無く残業をする理由などないはずだ

「 仕事じゃないよ、タイムカードももう切ったしね。
ただ、事務所にいさせてくれればいいんだ。」

 レジ内の扉の先にある狭い事務所は、横に長いスペースに事務用のパソコン机、更衣室、在庫品用の保管棚が並んでいる、二人がなんとか通り抜けられるような部屋、そんな場所にあと3、4時間もいたいというのだ。

「 先輩の家すぐ近くでしたよね、歩いて5分くらいの。
鍵でも失くしました?」

私が尋ねると先輩は苦笑いを浮かべてこう言った。

「 ちょっと確かめたいことがあるんだ、笑わないでくれよ。」

 先輩の話によると、一人で夜勤をしている際、事務所にいると誰もいないはずの店内から、

「 すみません。」

と声をかけられることがあるという
 来客を知らせるチャイムが風や振動などで誤作動を起こしたり、逆に人が入ってきても鳴らないということはたまにあることなので、

「 はーい、お待たせ致しました~。」

とレジ内の扉から店に出ると店には誰もいない
 また別の日、事務所で作業中、

「 すみません。」

と声をかけられ、今度は扉近くの事務机で作業をしていたため、すぐさま店に出るがやはり誰もいない
 さらに別の日またしても聞こえてきた、すみませんの声に素早く防犯カメラのモニターを見るも、店内はもちろん店のすぐ表を映しているカメラにも誰も映っていない。
こんなことが週に1、2度はあるのだという。

「 キミは、そんな経験ない?」

先輩は最後にそう尋ねてきた
 自分も週に2回ほど夜勤をしているがそんな事があった覚えはない。
私が首を横に振ると先輩は、

「 そうか・・・。」

と再び苦笑いを浮かべて

「 とにかくよろしく頼むよ。」

と事務所に入っていった。


 それから二時間が経ち深夜3時。
その日は来客もほとんど無く、先輩の協力もあって作業も早々に片付き私たちは事務室でお喋りをしていた。
珍客話が盛り上がり、私がのんきにも先輩が残っている理由を忘れかけていたそのとき、

「 すいません。」

自分のすぐ後ろ、店内へと続く扉の向こうから声が聞こえた。
 先輩の話を思い出した私が先輩を見ると、モニターを見ていた先輩は私の視線に気づき首を振る。
やはり誰も映ってはいない。
 内心焦りながらも私が、

「 レジ近くにもカメラの死角ありますし、一応確認してきますね。」

と店内に出るために扉に手を伸ばすと、

「 待て!」

先輩が突然声を張り上げた
 驚いて硬直した私に先輩は、

「 これ・・・。」

とモニターの一部を指差す。
 先輩の指差す場所。
モニターに映ったレジ内部。
防犯カメラの死角ギリギリに映る事務所への扉の下半分。
そこに黒く長い髪と女の足が映っていた。
 それも立っているのではない。
カメラに映った部分からその女の状態を考えると壁にしがみついている。
壁に張り付いているような女の足。
そして膝から上を覆い隠している長い髪。
モニターにはそこしか映っていない。
 私は振り返れなかった。
自分のすぐ後ろの扉の、ちょうど私の胸元から頭頂部くらいまでの位置にある一辺50センチほどの正方形の窓。
 マジックミラーになっていて、向こう側からは覗けないはずのこちらを女が見ているような気がした。

「 消えた。」

先輩の一言に我を取り戻すと、すでにモニターの中には誰も映っていなかった。



 それから月末までの数日間、私は内心怯えながら勤務にあたったが、その後例の声を聴くこともモニターにあの女が映ることもなかった。
 そして翌月の初め、先輩が店を辞めた。
気になってオーナーに話を聴くと、私とともにアレを見た次の日の晩、オーナーから防犯カメラの録画した映像を見る方法を聞くと、翌朝には辞めさせてほしいと言い出してきたのだという。

「 なんなんだろうねぇ、悪い事をしてたわけじゃないとは思うんだけど。」

不思議がるオーナーから録画した映像の見方を聞き出すと、私は一人になってすぐにその映像を見た。

「 ああ・・・・。」

私は合点がいった
 それは先輩が残っていった日より前、先輩が一人で夜勤をしていた晩、誰もいない店内からの声に応えて店に出る先輩が映った映像に、やはりソレも映っていた。
カメラの死角ギリギリの事務所への扉、その壁にしがみついているかのような女の足と髪。
そして扉が開き先輩が出て来て、その女を通過する。
モニターを元の状態に戻し、私は次のバイト先を探すことを決めた。












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しづめばこ 1月30日 P276

2014-01-30 20:59:22 | B,日々の恐怖
しづめばこ 1月30日 P276  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



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日々の恐怖 1月29日 ディーラー

2014-01-29 18:16:25 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 1月29日 ディーラー




 以前勤めていた某自動車ディーラーでの体験談です。
お客さんが車の中で亡くなり、(自殺だったらしいです)、もう乗らないから売却したいと遺族から申し出があり、その車を引き取りに行かされたのが、当時まだまだ駆け出しだったSさん。
嫌々ながら車を回送してきて、地下の駐車場の一番隅に置いたそうです。
 翌日、出勤してみると、先輩方が何やら騒いでいる。

「 どうしたんですか?」

と訊ねると、

「 お前、例の車、地下に置いたよなあ。」

と聞いてきます。

「 はい、確かに置きました。」

と答えると、先輩は、

「 でも、そこに、あるんだよ・・・。」

と言う方を見ると、確かにあの車が表の駐車場に停まっています。
出勤してきた全員に質問しても、誰もその車を移動した覚えはないと言います。
 そりゃ、車内で人が死んだ車を用もないのに動かす物好きはいないでしょう。
取り合えず、誰かの悪戯だろうと言う事になって、またSさんが地下駐車場に戻す羽目に。
その日の閉店時、地下駐車場の電気を消しに行った人は、その車が隅に置いてあるのを確認しています。
 しかし、翌日も、朝来て見ると、またその車が表に出ていました。
改めて社員全員に質問しても、やはり誰もそんな事はしていないと言い張ります。
念の為、セキュリティー会社に連絡して、閉店後の入館記録がないかと調べてもらっても、誰も入っていないとの返答でした。
 その車、本当は自社でオークションに出品する予定だったのですが、次の開催日までまだ間があり、気味悪がった店長が懇意の業者を呼んで即日引き取らせたそうです。
その時業者さんの対応をしていたSさんが気付いたのは、その車の走行距離が伸びていた事でした。
 引き取った時、査定書を作って走行距離もチェックしていたですが、その時の距離より、何十㌔か、増えていたのだそうです。
その事実は誰にも言わなかったそうですが、

「 たぶん、亡くなったお客さんが、最後のドライブをしてたんでしょうねぇ・・・。」

とは、Sさんの締めくくりの言葉でした。












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日々の恐怖 1月28日 エレベーター

2014-01-28 18:10:51 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月28日 エレベーター



 約10年程前転勤になり、隣にある雪深い地方都市に移った。
そこで職場のパートさんに数か月前にエレベーター事故で清掃会社のおばさんが亡くなったと聞かされた。
 夜、終業後に5階からエレベーターを呼んで階下に降りようとしたらエレベーターの箱本体が来ていないにも関わらずドアが開き転落死したとのこと。
隣の市の自分の会社の事故とはいえ、県が違ったため全く知らなかった。
客商売のため、地方紙とかでは報じたのだろうが、全国版では報道していなかったと思う。

 当時それを聞いた時は心霊的な事に興味もなかったので、気にせず毎日23時頃まで仕事をしていた。
会社の人間はみんな21時頃には帰ってしまうため、夜は自分、警備員さん一人、清掃会社の方3~5人という状況が多かった。
 当時はサービス残業に対して労基の監視も甘かったので18時が終業だったのだがいつも23時頃に5階の事務所にタイムカードをスキャンしに行っていた。
警備の方の迷惑になるため23時15分には必ず退社するという約束で、警備の方には会社に長時間勤務している事は内緒にしてもらっていた。
 その日もいつものように23時頃タイムカードを打ち、事務所を出てエレベーター乗り場に向かった。
会社は古いビル(築30年以上)で改装を実施した時にエレベーターを大きなサイズに取り換えた直後という事もあり、亡くなった方への賠償はエレベーター製造会社、工事請負会社が支払い、エレベーターの箱も無償交換されたとのこと。
 事務所を出たところで、通路を曲がって消えた小柄なおばさんを見かけたのだが最初は清掃の方だと思い、エレベーターで先に一人で降りられては困ると思い、急いで後を追った。
 エレベーター乗り場の前に行くと誰もいない。
古い建物のため、非常灯もなく窓から差し込む月明かりのみで薄暗いエレベーター乗り場前には自分一人。
資材が放置してあり人が隠れる事は可能だが、今そんな事する意味ない。

“ あれ?おばさんいたよな・・・。”

不思議に思いながらエレベーターのボタンを押そうとパネルをみると、何故か数分前自分が5階に来るのに使ったエレベーターが3階にある。

“ 警備員さんが使った?
それよりも、さっきのおばさんは何処いったんだよ。”

その時に押していないエレベーターのランプが4階、5階と登ってきた。

“ あれ、警備員さんが事務所の詮錠にくるのかな?”

と思い待っているとスーッとエレベーターの扉が開いた。
中には誰も乗っていない。
 その時にやっと聞かされたエレベーター事故の事を思い出して怖くなり震えた。
怖くてエレベーターの中に入る事が出来ない。
どうしよう、どうしようとエレベーターの開ボタンを押したままガクブルしていた。
 エレベーターとは少し離れた場所に階段があるのだが、物凄く急な階段で明かりが一切ないのでそちらを使うのは危険という意味で怖かった。
 怖くて怖くて仕方無かったのだが23時15分の約束の事もあるので、恐る恐るエレベーターに乗り込み1階へと向かった。
一階の警備員室では警備員さんがのんびりとくつろいでおり、やはり警備員さんではなさそう。

「 まだ誰かいますか?」

と警備員さんに声をかけると、

「 もう誰もいないよ。」

との返答。
警備員さんには何も言わず急いで会社を出たが一人暮らしだったため、家に帰るのが怖く一時間以上コンビニで立ち読みをして、恐怖心を紛らわせてから帰宅した。


 数日間は気味が悪くエレベーターに近付くのも怖かったのでタイムカードも早めにスキャンして、夜にエレベーターは使わないようにしていた。
仕事の業績も順調で、自分の能力もあがってきているのがわかってきたので、いつしかその夜の体験も忘れて仕事に又没頭するようになった。
職場の人間には一切その夜の体験は話さなかった。
 一年ぐらい経って、同業他社で修業を終えた社長の息子が上司として着任してきた。
仕事熱心な上司で毎日22時頃までデスクワークをこなして帰宅するのがデフォ。
自分は建物の一階で毎日働いていたのだが、22時過ぎにエレベーターの側にある急な真っ暗な階段を使い一階まで降りてきて

「 ○○君、早く帰りよ。」

と必ず声をかけてくれて、少しだけ立ち話をして上司が帰り、自分は仕事を続行していた。

 半年近くそんな事が続いていたのに、ある頃から帰宅する上司に全く合わない日が続いた。
ちなみにエレベーターを使用して下に降りると一階の自分の職場の裏側になるため、働いている自分は気付く事はありません。
急な階段を使用すると自分の職場の真ん前に降りる事になり、直にわかる事になります。
 会社の建物内で実施した他の社員の送別会の時に酒を注ぎに行った際、上司と話した。

「 最近、早く帰るようにしたんですか?
夜に合わないですよね。
ひょっとして何かヤバいもんでも見たんですか?」
「 えっ、ああいつものように22時頃までやってるよ。
もう階段じゃなくエレベーターを使ってるんだ。
でも、やばいものって何のこと?」

 上司がちょっと険しい顔で聞いてきた。
酒の席だったので冗談めかして昔のエレベーターであった事を少しだけ話した。
話を聞いた上司が、この後外で2人で飲もうと誘ってきた。
上司は自分より一つ年下で話しやすかったのでOKして送別会終了後、近所の飲み屋で落ち合って再度飲みだした。
 上司が着任当初にエレベーターではなく、薄暗い階段を使用していたのは一応エレベーターは物販の運送用で人のみの使用は禁止が決まりのため。
 最初はお互いの馬鹿話、だんだんと仕事の話へ。
そこで自分の体験した事をかなり詳しく聞かれ全てを話した。
上司はこの建物であった事件を家でも会社からも知らされていなかったようで根掘り、葉掘り聞かれた。
その後、上司に言われた。

「 実は階段を使わなくなったのには訳がある。
いつものように階段を使って下に向かう途中、3階の踊り場で変なものを見た。」

上司は踊り場で物凄く恐ろしい顔でこちらを睨みつけるおばさんを見たんだとか。
薄暗い階段ではあるのだが、輪郭から色彩まではっきりとわかるぐらいで、そのおばさんを見てしまいおもわず何かあったのかな?と思い、

「 どうかしたんですか、清掃の方ですよね?」
「 ・・・。」

何も答えないおばさんを不思議に思いながら、どうしようかと、再度声をかけようとしたところで、おばさんが急にパッと消えてしまったとのこと。
 上司も、えっ、と驚き、急いで5階の事務所に戻り、気を落ち着かせてからエレベーターを使って帰宅したらしい。
警備員さんは巡回中で警備員室に不在だったため、警備員さんには何も告げずに帰宅しやはりその事は誰にも言えず気にかかっていたらしい。
 自分が見た場所、事故があった場所はエレベーター周辺なので、何故階段で目撃したのか辻褄があわないが、上司がみたおばさんは間違いなく清掃会社の制服を着ていたとのこと。
自分は小柄なおばさんだったという事は間違いないのだが、服装や表情はイマイチはっきり記憶がない。

 結局この話は会社ではしないでくれと頼まれ、家で社長に相談してみるとのこと。
上司は階段を使うのが怖いらしく、ビビりながらしばらくエレベーターを使って帰宅。
わざわざ一階の自分の職場まで立ち寄って、

「 今日は大丈夫、何も出なかった。」

少し後に休日を使って建物をお祓いをしたと上司が教えてくれました。


 今は自分も上司も例の建物とは違う別の県の営業所で働いているため、お互い話す事はありません。
自分はお盆前の予定で実家の仕事を継ぐために退社する予定なので、ついつい話してしまいました。
今も事故のあった建物は何事もなく使用されています。
お祓いの効果がある事を信じたいものです。













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日々の恐怖 1月27日 体験談

2014-01-27 18:49:32 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月27日 体験談



 大学の先生の体験談を聞きました。

 十年くらい前、俺がまだ大学生だった時の話です。
同じサークルでよくつるんでた友達が二人いた。
名前はKとH。
俺とHは学生寮に住んでいて、Kだけが安アパートで独り暮らしだった。
どいつも親は別に金持ちじゃないから、仕送りも衣食住でかつかつ程度だったし、大学は最後の自由時間って感じで、講義もそこそこにバイトしては遊ぶ毎日だった。
 彼女もいない野郎三人。
つるんでゲーセンやカラオケ行ったり、独り暮らしのKの家で夜通しゲームしたり、今思えば、受験戦争から解放されて精神年齢が逆戻りしたようなアホな大学生活だった。

そんなある日、いつものように三人で馬鹿話してるとKが、

「 最近おもしろい夢を見る。」

と言い出した。
 連続する夢、夢の続きをまた夢で見るのだと言う。
それも毎晩見るのではなく、数日あいてまた同じような夢を見るらしい。
俺とHがどんな夢かたずねると、Kは、

「 自転車に乗っている夢。」

と答えた。
自転車に乗って走ってる夢で、夢の中のKは、どこかに行かないといけないと思っていて、その、どこかを探しているらしい。
 ストーリー性のある夢かと思ってたから、正直つまらねー話だと思った。
それのどこがおもしろいのかと尋ねたら、Kは、

「 ペダルを踏む感覚や景色がすごいリアルで、夢と思えない夢だ。」

と興奮していた。
 それからなんとなく、Kに会ったら夢の話を聞くのが俺とHの日課になった。
どっちか片方が聞いたらもう片方にも伝える。
それでKに会ったらもう一度直接聞いたりして、なんだかんだでKの夢の内容は、三人で共有する形になっていた。

「 昨夜は残念ながら見なかったな。」とか。
「 昨夜は海辺を走った。」とか。
「 薄暗くて山道みたいだった。」とか。

Kの夢に共通してるのは、それがK本人の行動として描かれることと、必ず自転車に乗っていることだった。
 俺たちはおもしろがって、Kの夢をあれこれ診断しようとしたりした。
占いや精神分析とかを本で調べてみたり、Kの過去や思い出を聞いてみたり。
 夢が現実にある場所かもしれないとKに心当たりがないか尋ねてみたが、景色をリアルだと思うのはあくまで夢の中のKであって、目覚めた時に夢の景色をリアルに記憶しているわけじゃない、ということだった。
実体験のような夢を見てるだけで、目が覚めれば夢は所詮夢ってことらしい。

 Kの夢に異変が起きたのは、Kから夢の話を聞くようになって一ヶ月近く経ってからだった。
ヤツはその頃、街中を走る夢を何度か見ていて、最初に聞いた時はその延長だと思った。

K「 昨夜は線路の横を走った。」
H「 昨夜も?」
K「 そう、昨夜も。二夜連続!」
俺「 すげえ!連夜は初めてだな。」

 Kは二晩続けて、線路の横を走る夢を見ていた。
街中を横断する線路で、上下二本の線路の両側は細い道路を挟んで住宅地になっているらしい。
 その線路横の細い道路を自転車で走る夢だった。
二晩の夢の線路は続いていて、Kは線路伝いに、どこかへ向かっている途中だと言う。
その時のKは、ようやく目的地が見えてきた気がすると、現実の話でもないのにやけに張り切っていた。

 それから一週間くらい、俺は課題だバイトだと忙しくてKともHとも話す機会がなかった。
大学で久しぶりにHに会ったら、Kの様子がおかしいと言う。
講義を欠席してサークルにも来なくなり、電話で遊びに誘っても生返事。
新しい夢について尋ねても、

「 うーん、まぁそれなりに・・・。」

としか言わなかったらしい。
 後で考えると本当に直感だったんだが、俺はHからKのことを聞いたその時、ものすごく嫌な予感がした。
 とにかくKに会おう、ということになり、電話して居場所を尋ねたら友達の家にいると言う。
外出したくないと言うKを説得して、Kの居場所から一番近かったファミレスに呼び出した。
俺とHは先にそこへ行ってKが来るのを待ってたんだけど、店に入ってきたヤツを見て、俺は自分の直感が正しかったことがわかった。
 Kは異様なくらいやつれていた。
目の下にすごい隈を作って痩せて、ろくに寝ても食べてもいないようだった。
 俺とHはしぶるKを一生懸命説得して、この一週間に何があったのか話すようにうながした。
Kは前置きに、

「 お前らに話をすると本当になりそうで怖い。」

と何度も繰り返しながら、ぽつぽつと話した。
それはやっぱり、例の夢の話だった。
 Kが二晩続けて線路横を走る夢を見た後のこと、二日間は夢を見なかったらしい。
ところが次の日から、夢は毎晩やってきてKの睡眠を脅かした。

 その日。自転車で線路横を走る。前方には踏み切りが見えてくる。

 次の日。踏み切り前で電車が通り過ぎるのを待っている。自転車にまたがって、一番前で。

 次の日。自転車で踏み切りを渡る。何度も何度も繰り返し渡る。

 次の日。どこかの路地で自転車を降りて、踏み切りへ歩いていく。

 次の日。踏み切りを歩いて渡る途中、線路の真ん中で立ち止まる。

 次の日。線路の上を歩いている。踏み切りを後にして。線路をまっすぐ。

夢が進むにつれて、Kにはこの夢が何を意味するのかわかったのだろう。
 夢のことを知る俺とHには相談できなかったと語った。
口に出せば、正夢になりそうだったから。
 Kは眠るのが怖くなった。
場所を変えれば夢を見ないかもしれない。
アパートを出て友達の家に転がり込んだ。
 しかし、夢は毎日容赦なくやってきた、ほんのちょっとのうたた寝の隙にも。
昼夜問わず一日一回必ず、正確にリアルに。

「 俺は自殺の夢を見ている。」

Kは真っ青になって震えていた。

「 この後は何を見せられるんだ?
最後まで見たら、俺はどうなるんだ?」

もちろん俺とHには、返事のしようがなかった。
 Kによると、夢の中のKは明確な意志を持って、そこへ向かっているのだと言う。
現実のKに自殺願望はないのだが、夢の中のKの自我は淡々と目的を果たそうとしているのだと。
俺とHはとにかく、半狂乱のKを必死でなだめた。

「 現実でお前はちゃんと生きていて、自殺なんか絶対にしない。
俺たちが絶対にさせないから。」

 その日の夜、Kは友達の家を出て、俺たちと一緒にアパートのKの部屋へ戻った。
当面は、俺とHでできる限りKから目を離さないことにしたからだ。
 俺はその日、バイトが夜のシフトでどうしても代わりが見つからず、仕方なくKをHに任せて出かけた。
HはKのアパートで、Kを見張りながら一晩すごすことになった。
 二人には何かあったらすぐ連絡するよう念押ししていた。
バイト終わっても終電過ぎてKのアパートには戻れず、特に連絡もなかったから俺は寮で寝ることにした。

 翌朝7時頃、Hから電話があった時、俺は疲れてすっかり熟睡していた。
Hは「Kは無事だけど、大変なことになった。とにかく早く来てくれ!」と言う。
電話で事情を聞こうとしたが、Kをなだめるのに手こずっているようだった。
Kの声もしていたが、何を言っているのかよく聞き取れなかった。
俺は急いでKのアパートへ向かった。

 Kは多少落ち着いたのか、泣き腫らした目でぐったり座り込んでいた。
しゃべる元気もないようで、俺はほとんどの説明をHから聞くことになった。
K は明け方に、またあの夢を見てしまったらしい。


 夢の中で。Kの目には、一面の、青い空が広がっていた。
 線路の上に、仰向けに、寝転がって。
 体の下に、近付いて来る、振動を聞きながら。


 俺たちは全員、もう時間がないとわかった。
次の夢を見てしまったら、何か恐ろしいことが起きると思った。
Kは今確かに生きているが、これは明らかにおかしい。正夢じゃなくても、この夢は絶対に異常だ。
 それで、Kをどこかの神社で御祓いしてもらおうとか、精神科で深層心理調べるとか、催眠術みたいなのでKの知らない記憶が見えないかとか、いろいろ話したけど、俺もHもKもそういうのに詳しくなかったし、詳しい知り合いもいなかったから、とりあえず自分たちで原因を探ることにした。
まだ朝で、そういう頼れるかもしれない場所がどこも開いてなかったのと、俺たち自身が焦っていて、とにかく何かして動いてないと不安だった。
 今度は俺が憔悴したKを見ることにして、昨夜寝ずの番をしたHは調査に出ることになった。
眠りたくないKは俺と一緒に、Kの部屋やアパート周辺を調べる。
HはKの生活圏周辺の、線路への飛び込み自殺者情報を調べる。
 当時はネット普及前で、調べると言っても駅周辺で聞き込みするか、図書館で新聞あさるしかない。
警察にこんなオカルトめいた話して、何か情報が得られるとも思えなかった。
そもそも、

「 いつ?どこで?死んだ奴?誰がKに悪夢を見せているのか?」

あてのない話だ。
 でも、事件が解明したのは、結果的には新聞を調べたHと警察のおかげみたいな感じになった。
 俺とKはアパート周辺をうろうろ歩き回っていた。
Kの住むアパートは、駅や線路からは離れた場所にあった。
古い安アパートで外観も中もオンボロだったけど、二年住んでるKは霊障なんて聞いたことがなかった。
 Kの部屋は一階で、裏の駐輪場に自転車を置いていた。
自転車にも特に変わった所はなかった。
俺の役割は調査よりKの監視だった。
フラフラするKを支えて、眠らせないよう歩かせる。
とりとめないことを延々と話しかけ、返事をうながし、Kの意識が夢に沈まないように注意した。
 9時に図書館へ飛び込んだHは、新聞で直近の人身事故情報を探した。
Hから連絡があったのは昼頃。最近二ヶ月の事故情報は、死亡・重傷あわせて5件。
路線名や地名や地図を確認しながら、Kの記憶に残るものがないか調べた。
 1件にKが反応した。
二週間前に隣県で起きた死亡事故。
女性の飛び込み自殺だった。
 その日、Kは自転車で隣県へサイクリングに行ったと言った。
見るようになった夢に触発されて、急に自転車で遠出したくなったらしい。
隣県に着いて駅前に自転車を停めて、そのまま歩いて街の散策と食事に出かけた。
 事故はその間に起きていたのだが、数時間後に戻って自転車で帰ったKは気付かなかった。
事故を見たのはKではなく、Kの自転車だった。
俺とKは図書館から戻ったHと合流して、もう一度Kの自転車を丹念に調べた。
そうしたら、サドルの真下に黒っぽい物がへばりついていた。
 俺たちはすぐに最寄の警察に行って、その日Kの自転車が事故現場の近くにあったこと、遺体の一部が付着しているかもしれないことを話した。
 一応、簡単にだけど、妙な夢の話もした。
信憑性が増すのか減るのか、判断迷ったけど。
 もちろんその日のうちに警察から連絡なんか来なかったが、その晩からKの夢はピタリと止んだ。
俺とHはその夜もKの部屋にいて、怯えるKをなだめつつ、結局朝には全員つぶれてた。
目が覚めて、Kは夢を見なかったことを泣いて喜んだ。

 数日後、警察から連絡あった。
Kの自転車に付いていたのは、被害者の目玉だったんだ。


以上です。


本当の話か作り話かは分かりませんが、一応、先生の体験談ってことです。
ただ、女性の事故死とKの夢の始まりが同時じゃないので、女性の自殺願望が生霊みたいな感じでKに夢を見せたのか、不思議だと先生は言っていました。














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しづめばこ 1月27日 P275

2014-01-27 18:49:05 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月27日 P275  、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 1月26日 修学旅行

2014-01-26 18:05:57 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 1月26日 修学旅行


 中学の修学旅行で、京都に行った。
女子の部屋は恋愛話で盛り上がり、寝たのは深夜2時半頃だった。
自分は枕が変わるとなかなか寝付けないタイプで、3時過ぎまで眠いのに眠れない状態だった。
 やっとウトウトし始めた時、隣に寝ていた子がモゾモゾと動き出した。

「 …、大丈夫…、…違うけど…。」

ごにょごにょと寝言まで言い出した。
あ~、また眠れなくなっちゃう、と耳を塞ごうとした瞬間、

「 6時半ですね。はい、わかりました。気をつけます。」

と、彼女がはっきりと言った。
寝言なのに、冷静でかしこまったような口調に意味もなく鳥肌が立った。

 翌朝、6時に起床した私達は眠い目をこすりながら布団を畳んだり、着替えたりしていた。
今日の予定などを楽しくおしゃべりしていると、突然外から、

「 ボンッ!!」

と謎の爆音。
びっくりして部屋のカーテンを開けると、ホテルの前の大通りで車が炎上していた。
 当然、私たちはパニックになり、教師の元へ走って行った。
聞こえてくるサイレン、ホテルのアナウンス。
とりあえず落ち着こうと、友達の手を握る。
昨夜寝言を言っていたあの子の手だ。

「 6時半、ぴったり。」

彼女はそう言ったあと、驚いている私を見て苦笑いした。
 15年経った今でも友達だが、あの時の事を聞いてもただ微笑むばかりで何も答えてはくれない。











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日々の恐怖 1月25日 チョコレートビル

2014-01-25 18:15:35 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月25日 チョコレートビル



 多聞の大門から第2神明と並走して大蔵谷ICに向かう道の高架(トンネル)になった所の上に見えるマンションって自殺の名所って聞いていたんだけど、あれが有名な“チョコビル”だって、つい数日前に気付きました。


 知ってるよ。
チョコビルって言う人もいるし、黒ビルって言う人もいるな。(今は白いけど)
たしか俺が小学生の時に、神陵台中学の子が自殺したって聞いたことがある。
 あそこのマンションの屋上に人がすっぽり入れる穴が開いてるらしい。
あそこは暴走族のたまり場になってたし、エレベーターもスプレーとかで落書きされてて、不気味。(用を足す人もいるらしい)
俺が知ってる限り数人は死んでると思う。


 チョコビルしっとう人がおってちょっとうれしいです。
オレは小学校のとき、友達とあのチョコビルを北に見て歩いていたら、屋上から飛び降りの瞬間を見ました。
 さらに、また別の日、あのビルの一階に児童室?学校終わってから、不特定多数の児童が遊びに行く部屋があるんですが、遊び半分で、屋上いかへん?ってことになったんです。
 で、エレベーターで最上階のボタンを押して、さあいざ!というときに、途中でおばちゃんが乗ってきて、俺らに、

「 屋上いくの?幽霊出るから止めとき。」

と言い残し7階くらいで降りていきました。
 怖くなってとっさに最上階のひとつ下の階のボタン押したんやけど、屋上のひとつ下の階は誰も住んでなくて、くもの巣だらけで屋上より怖かったです。
友達と叫びながら階段で下まで降りました。
普通のおばちゃんが、オレらに“幽霊出るから止めとき”と言うたのは、今思うとまじで怖いです。


あのビルは今、小学校では行ってはいけないビルになっている。


あの辺は、チョコビルだけじゃなくて明舞センター,明舞北センタービルでもよく飛び降りてる。


明舞センターの話は、以前、明舞に友達が住んでいた時によく聞きました。
知ってるだけでも4回ぐらいあったんじゃないかな、飛び降り。









    チョコビル



 昨日、街にでました。
なんだか、世の中バレンタイン一色ですね。
バレンタインには無頓着ですが、感謝を形にする日ってのは大事だと最近思います。
だから、今年は沢山感謝しようと思う。

 チョコレートで思い出すのは、2回目の引越し先にあったチョコレートビル。
文字のとおりチョコレート色したそのビルは、子供達にとってはチョコビルとか言って、ちょっとした秘密基地状態。

 或る日、そのチョコビルが真っ白に塗り替えられた。
子供達は高学年になりつつあって、時間か大人になったのか何かわからないけど、それをきっかけにいつしかそのビルには興味がなくなっていて、回り道して行ったチョコビルは秘密基地から景色になっていた。

 その後引越しして、もうそんなこと忘れたころに、そのチョコレート色が作る陰気くさい空気から、そのビルでは自殺者が絶えなかったということと、その為に役所がイメージ一新のため塗り替えたということを知った。

 そういえば、よく警察が来てたし、救急車も来てたな。

 大人になってもそれくらい。
すべては子供達の景色であって、世界だった。
どれだけの大人が最期を迎えたかは知らないけど、いつまでたってもチョコビルはチョコ色してる限り、私達にとっては秘密基地だった。

 そんな景色ももうないんですよね。
あのころの子供達はいまどうしてるかな。












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しづめばこ 1月25日 P274

2014-01-25 18:15:11 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月25日 P274 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 1月24日 坂

2014-01-24 18:42:53 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 1月24日 坂


 漫画のアシスタントをしているKさんから聞いた話です。

 僕は漫画のアシスタントをしている。
現場の雰囲気にもよるが、ときおり雑談しながら作業をする。
そんなときに聞いた話。
 僕は今でもその話は嘘だと思っている。
話してくれた方を仮にAさんということにしておく。

 詳しい場所は教えてくれなかったが横浜方面の現場での体験談だそうだ。
その現場は深夜に作業をするタイプの現場だそうで、出勤は昼ごろになる。
駅から少し離れたところに坂があり、その上にある住宅地の一角、マンションの一室だそうだ。
 Aさんは話の端々で坂の長さと勾配が急であったことを強調していた。
何度もその現場に通っているうちに、いつも坂の袂、道の真ん中にに女の人が立っていることに気づいたそうだ。
 ワンピースを着ていた。
美人だった。
Aさんが言った女の人の特徴だ。
 原稿の都合によっては早く呼び出されることがあったそうだが、いつ行ってもその女の人はいたという。
 お盆の終わりの頃の話。
いつものように現場に向かうとき、一台の車がその坂を下りてきたという。
いつも女の人が立っているのは道の真ん中だ。
気になって様子を見ていると、その車は女の人が見えないように突っ込んでいった。
「あっ!」と叫んだとき、轢かれたと思った女の人は消えていた。
通行人たちは叫び声の理由が気になるのかAさんの方を見てくる。
ぶつかるような音は聞こえてこなかったし、気のせいだったのかと思った。

 その2日後、原稿があがった。
時刻を見るともうすぐ夜中の3時にかかろうかというところ。
帰宅は翌日の始発にすることにして、Aさんはたばこを買いに行くことにした。
 坂の上は住宅地なのでコンビニは一軒もないらしい。
駅前まで歩く必要があるそうだ。
 マンションから降りていくと、坂の袂に例の女の人が立っている。
一昨日のこともある。
こんな夜中にまでいるということは、ヤバい存在なんじゃないかなと思ったそうだ。
 たばこを買ってきてまた坂にさしかかると、やはりいる。
Aさんはなるべく目を合わせないようにした。
坂を上っていくと男の人とすれ違った。
 坂の下に立つ女の人はともかく、こんな時間にすれ違うのは珍しいなと思ったという。
横浜という場所を考えればそうでもないのかもしれない。
 坂を上るとまた別の人とすれ違った。
結構勾配のきつい坂だったそうで、よろけないように足元を見て上っていたという。
 そのために気づいていなかったが、坂の上のほうを見てみるとぞろぞろと人が降りてくる。
いくらなんでもこれは変だと気づいた。
Aさん曰く百鬼夜行だという。
たしかに夜中の3時にできる行列には異様なものがあるだろうと思う。
 ふとAさんは坂の下に立つ女の存在が気になったという。
何者なのだろうか…。
見てみると、坂を降りてきた男のうち一人の手をとり、角を曲がっていったという。
しばらくすると戻ってくる。
また別の男の手をとり角を曲がっていく。
 Aさんは坂を下りてくるのは男ばかりではなく女も混じっていたと言ったがこれは蛇足というものだろう。
 原稿も終わっていたし、暇だったのでボーっと見ていると女の人と目が合ったという。
なんとなく怖くなったAさんはマンションまで戻り、ベランダで一服だけすると布団に入ったそうだ。
 ベランダから坂を見てみると、行列は消えていたという。
坂が長くて袂のほうはどうなっているか分からなかったとも付け加えた。
Aさんが後で調べたところでは坂は南西から北東にかけて伸びていたという。
 坂の袂は南西だそうだ。
あの行列は裏鬼門に向かっていたと言いたかったらしい。
漫画を描いていたりするとそういう話に詳しくなったりするが、ちょっと強引じゃないかなと思った。
 時期をお盆の終わりといったのはそれをオチにしたかったからなのかもしれない。
月末にまたその現場で仕事があるという。
 7月のことだった。
Aさんと会ったのはその話を聞いたときが最初で最後だった。
というよりも、僕がそのときの現場に行ったのが最初で最後だった。
 後で知った話だが、坂は別の世界につながっていると信じられているらしい。
黄泉の国と葦原中国をつなぐのが、その代表ともいえる黄泉比良坂だ。
また、坂には坂姫が立つという。
これをオチにすればちょっとは面白くなるかもしれないと思ったが、裏鬼門の話と同じレベルかもしれない。














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日々の恐怖 1月23日 リサイクルショップの得体の知れない物たち

2014-01-23 18:09:30 | B,日々の恐怖





   日々の恐怖 1月23日 リサイクルショップの得体の知れない物たち





 リサイクルショップで働いてるんですが、結構得体の知れない物が入ってきます。
例えば、

・刃が錆びててルミノール反応が出ちゃった長ドス。
・タンスの地板に切り刻んだ写真と護符が釘で見えないくらい滅多打ち。
・分厚いアルバムなんだけど、写真が何枚焼き増ししたんだってくらいに同じ女性の同じ写真がギッシリ貼られたアルバム。
・女性用の大人の玩具に男の写真が貼り付けられてるヤツ。
・「お爺さんを買ってください」って言って、骨壺を持ってきたおばちゃん。
・墓石を持ってきて、「ごめんなさい、これは買い取れないです」って言ったら、「使用済みにしたら買い取ってくれるのか??」とか聞いてくるおじさん。

そんなこんなで、変な物や事を上げだしたら幾らでも上がっちゃうです。


 それで今回の本題なんですが、倉庫で見つけた時に起きた出来事を。
一応一般のお客様の買取時は、買い取れる物、買い取れない物を分けさせてもらって買い取るんですが、業者買取の場合は一括買取で、店に出せないものはこっちで処分するってやり方なんです。
 業者さんのは一回の持ち込みの量が多いから、一旦倉庫に入れて、スタッフが多い時とか手が空いてる時に選別するって感じ。
その日はダンボールで15箱ほどが積み重なってて、もぅ本当('A`)←こんな顔しながら選別してたと思う。

 その中から出てきた物って言うのが壺。
蓋のある壺なんだけど、見た目以上に中身がやばかった。
蓋が御札で押えつけられてて、あーやべーもんだな・・・とは思ってたんだけど、仕事だから中を確認しないといけない。
 御札を剥がして、何かの接着剤なのか蓋と壺がくっ付いてるのを、工具で少しずつ剥がしてたんだけど、どうせ売り物にはならないのは判ってたから、接着部が剥がれた所から強引に蓋を外して中を見た瞬間、何かの顔がこっち見てるのがわかって、思わず「ウワッ!!」って叫びながら、片手で抱え込んで剥がす格好だったので、手から滑り落ちて割っちゃった。

 割れた中から出てきたのが、爬虫類だの・虫だの・干乾びて何かわからない生き物とか、全部干物っぽくなってました。
あとは御札写真っぽいものが入ってました。
こちらも中で水分を吸った後グチャグチャになって干乾びたのか、原形をとどめてませんでした。
(お払いとか神社に持ってけって思うでしょうが、出る毎に持っていってたら、財布と私の生活が干からびてしまう、無論経費で落ちるはずが無い。)
 “うげぇ!”って思ったのと同時に、他のスタッフに見せて反応を見たいって言うwktk感が膨れ上がって、

「 ちょっとちょっと、こっち。」

って小声で声掛けて、

「 何~?」

って感じで来たスタッフに

「 凄い物出てきた!」

って言って、付いてくるスタッフを見てテンションが一気に急加速。
 そのスタッフは見た瞬間、“なんぞこれ??”って感じで怪訝な顔をしながら首をかしげて、顔を近づけた瞬間、

「 ・・・ん、・・・・・・・うぎゃぁ!」

って・・・。
その声を聴いた瞬間、何か今日の仕事をやり遂げたって言う達成感と共に、

「 なっ!凄いだろ!!」

って言う爽快な一言と、満面の笑みを差し上げたんですが、思いっきり胸を叩かれた。
私、一応上司なのに・・・。
 そのスタッフも他のスタッフに同じ思いをさせたかったんだろう。
他のスタッフを呼んでは同じ事が・・・。
それを全スタッフで繰り広げて、結局、最後に私が片付けて不燃ごみで捨ててきました。
 ただ一つ気になったのが、壺の中から私を見てきた顔が、爬虫類やらの顔のサイズとは異なっていたのに、掃除したときには無かったっていう事でした。

 その日はそれで片付けを済ませ、通常業務→閉店の〆業務を終えて、買い取った商品を修理したり綺麗にしたりだので、家に帰ったのが深夜の2時くらい。
家についてからは、風呂に入って、次の日も8時半には出社しないといけないので速攻で布団に入って爆睡。

 どれくらい寝たのかわからないですが、急に脳が動き出したようにパッと目が覚めて、目を開けた瞬間、何かが顔の前にあったんですが、それが何かがサッパリ理解できず。
(寝てる位置は、壁に頭側の布団をくっつけて寝てるので、頭上には何も無く見上げれば天井しか見えない。)
 その何かと焦点が合ってなかったので、眉間に皺を寄せながら細目で見たりして、何なのかを探ろうとジックリ見てて、私の目の丁度上の方でパクパク何か動いていて、それが口だって理解すると直ぐにわかりました。

人の顔。

「 うわっ!」

て我に返って、反射的に避けようとしたんだけど体が動かず。

“ なんだコイツ!!!!”

って心の中は疑問符だらけ。
 距離は1mも離れてないくらいで、寝ている私の頭上から、椅子に座った状態で腰を屈めて覗き込んでるくらいの距離でした。
口を一定の間隔でパクパクさせてて、多分女性だと思う。
 息は感じられず、目はずっと開けたまま。
目は大体普通の大きさなんだけど、黒目部分しか無い感じ。
ただ焦点が合わず、ハッキリした顔立ちはわかりませんでした。
豆電球で照らされてる程度の暗い部屋なのに、顔が妙に青白く、光ってる訳でも無いのに顔があるのがわかる。
かなり不気味でした。

 体が硬直して身動きが取れないけど、何かする訳でもなく相手は口をパクパクさせたまま動かない。
“気持ち悪っ!”て思いながら、“体動け!”ってもがいてたら、頭の中に直接声が響くって表現が正しいのか、耳から聞き取るのとは違う感じで、

「 指が動けば大丈夫。」

って、親が子供に優しく言う感じの声が聞こえて、何故かその言葉は正しいって、必死に指先を動かそうとガムシャラに意識を指に込めてました。
 ピクッて指先が動いた瞬間に体全体が動くようになったんで、すぐに飛びのくように離れて警戒して見ると、壁から頭だけ出た女性が、こちらをヌゥ~っと見上げてきました。
で、体が動くようになって五感が戻ったのか、女性が口をパクパクさせてたんじゃなく、延々、

「 違う・・・違う・・・違う・・・。」

って言ってたんです。
 警戒しながら、どれくらい対峙したかわからないんですが、急に見上げられた状態のまま壁の中に消えてしまいました。
少しの間呆然としながら外を見たら、若干明るくなってて、脱力感と共に数時間後には仕事に行かなきゃ・・・、っていうゲンナリ気分。

 その日、スタッフにその話をしたんですが、周りのスタッフはビビる人・笑う人それぞれで、今現在私を含め何か起きたっていう事は特にはありません。
壺と関係があるかはわからないですが、その日の内に起きた出来事なので合わせて書きました。

 たまに見えるって言う事はあるんですが、毎回どんなに近くで見えても、ピントのズレたカメラのように見え、何故ココにいるのかとか、この人の名前は○○で△△を訴えてるとか、そんな事は一切判らないです。
ただ、いつも見える時や嫌な感じがする時は、体の何処かが叩かれたように痛くなったので、何も前触れも無く見えたのはそれが初めてでした。
 補足としては、年度末とかに仕事が仕事なのでスタッフ全員で集まって、忘年会と合わせてお清めに行ったので、大丈夫かなと思ってます。





 続きです。
変な客や変な物です。



 変な客です。
去年の12月の中旬の出来事で、22時過ぎでした。
入り口のドアに張り付いてこちらをジーッと見てるおじさんで、顔は笑顔と言うより狂喜に近い顔、目を見開き眺めている方が。
入り口に行って、

「 何か御用ですか?」

と聞くと、

「 買い取って欲しいものがあるんだけどさぁぁぁぁ!!!」
「 ごめんなさい、もう閉店しちゃってるので営業時間内にお願いできますか?」
「 おーまーえーのぉぉおぉおぉぉぉ命だよぉぉぉぉおおぉお!!!」

って叫びながらドアをガンガン叩いて、

「 死ねぇぇグギィィイ~、死ねぇぇえぇぇぇええぇギヒィ~、ぐひひぃぃいぃぃい。」

と奇声を上げ、明らかにヤバイ。
 目は見開き若干血走り、涎を垂らし無精髭、服装はセーターにチノパンにスニーカー、頭はボサボサで、中肉中背で歳は40は過ぎていると思います。
一言で言うなら、素の状態でも近づきたくないタイプ。

 警察に連絡すると2~3日潰れてしまう上に、日常業務にも支障をきたす。
正直面倒です。
放って置いて帰る訳にも行かず、嫌悪した顔を見せるのも腹立たしいので、スタッフとヒーターを入り口前に持っていき、椅子に座りながらタバコをプカプカ、温かいコーヒーを飲みながら談笑して待機。
23時前になると、おじさんも飽きたのか帰っていきました。


2日目
 また同じように昨日のおじさんが張り付いていたので、スタッフと一緒に、買っておいた肉まんをかじりながら、おじさんを無表情で凝視。
なかなか帰らないので、一度コーヒーを入れてきて、更におじさんの前でコーヒーを飲みながら無表情で凝視。


3日目クリスマス
 フツフツ怒りと言うか狂気と言うか。
頭の中にもう一人の私が出てきて、今日はクリスマスだよーっと満面の笑み。
 次の瞬間、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユーっと、フルメタルジャケットのハートマン軍曹の声が・・・。
 何も言わず、買い取った商品の山から模造刀を引っ張り出し、抜き身の模造刀を持ちながら入り口の方に行ったら、さっきまで奇声を上げてたおじさんが、えっ?って顔になりながら、口をガクガクさせて猛ダッシュで逃げていきました。
 他のスタッフが言うには、『超笑顔でした~!』の一言。
私がでしょうか・・・???
 その後、そのおじさんが現れる事は二度とありませんでした。
サンタさんだったらごめんなさい。
プレゼント欲しかったです。


 変な客です。
ブランド品を数個、指輪など高価な物を持ってきた30後半の女性で、

「 ここに新しい旦那も売ってれば良いのに~。」
「 いやぁ・・・売ってたとしても中古ですよ?」
「 あら、中古のほうが輝く男もイッパイ居るでしょ?」
「 中古屋に売られる旦那さんなんて、問題がある旦那さんばかりですよ。
売られてる旦那さん探すより、売られてない新しい旦那さんを捕まえた方が良いと思いますよ。」
「 それもそうねぇ、良い男が売りに出たら教えてくれる?」
「 うちは生物扱ってないんで、出ないと思いますよ~。」
「 あら残念ねー。」

っと談笑してたのですが、数週間後に、

「 新しい旦那さん!」

って言って連れてきた女性。

「 早くないですか?」

と笑いながら言うと、

「 うん、目星は付けてたの。」

っと爽やかに・・・。
『古い旦那さんはどうした?』とか、『その人は、今現在も他の人の旦那さん?』とかは考えないようにしました。
女性って怖い・・・。



 変な物です。
ちょっと怖いものでは、見た目は普通の西洋の女性の油絵なんですが、後書きされた形跡があったので慎重に削ってみると、顔部分だけが思いっきり崩れていて、目玉がそのまま涙のように垂れ、口は半開きの絵に。

「 うわっ!!」

サインの部分も上書きされていたので慎重に削ると、英語で『お前は死ね』っと筆記体で書いてありました。
 持ち込んできたのは40代前半の女性の方で、何度か来店して顔を覚えていたので何となく話を聞いてみたら・・・。

「 やっぱり、あの絵変だった?」
「 ちょっと変でした。」
「 うちに飾ってたとき、いつもあの絵の視線が怖くて、主人と喧嘩しながら持ってきたのよ。」
「 何処で買ったんですか?」
「 フリーマーケットで主人が貰ったんだけどねぇ。
絵は変じゃないのに、その売ってた人が差し上げます差し上げますって。」
主人もタダでくれるなら貰います、って喜んで貰っちゃってたのよ。」
「 そうなんですか~。」
「 それで、あの絵何か変だったの?見せてよ!」
「 うーん見ない方が良いですよ。」

っと笑いかけたのですが、

「 えーちょっと気になるじゃない。怖いものでも無いんでしょう?」
「 うーん怖いと思います。」
「 え?・・・一応見せてもらっても良い?」
「 止めておいた方が良いですよ。」

と何度か言ったのですが、好奇心が前に出ちゃってるのか、見たくて仕方が無いと言った感じ。
 それで、倉庫に置いてあった絵を見せたのですが、その女性、見た瞬間、絶句しながら涙を流し、速攻旦那さんに、だと思うのですが電話してました。
 電話口では顔を真っ赤にしながら、激怒を通り越して般若や鬼に近い表情。
体からは殺気と言うか、目に見えるんじゃないかと感じられるほどのオーラを出しながら怒声。
正直、その絵よりも女性の方が怖かったです。













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日々の恐怖 1月22日 場所

2014-01-22 18:06:47 | B,日々の恐怖




     日々の恐怖 1月22日 場所




 俺の話は怖いと言うより不思議な話なんだが、どうしても合わない土地・場所があって、それは以前の仕事で出張していた東北のある田舎町だ。
出張先だから訪れる回数は多いのだが、そこへいくと突然の発熱・腹痛は数多く、嘔吐・目にできもの・肌に原因不明のアザが出る。
気象的な要因での大きな交通事故と、その土地だけが異常に何かが起きる。
とにかく、合わない土地だった。
今は仕事を変え、行くことは無いが、振り返って見ても不思議な場所だった。

 もう一つ、出張の時の話です。
かなり昔の話だが、ある街へ行った時の話です。
 何度か足を運んだことのある街で、俺は夕方7時頃にホテルに入ることになっていた。
国道を折れて海沿いの道を北へ走り、橋を渡ってしばらく走るとそのホテルに着くはずだった。
その頃、俺はその街にちょっと不慣れだったせいか、行っても行っても目印が見つからなかった。
 そのうち、あたりは闇に包まれた。
街灯も無く、ライトの灯りしか頼るものが無くなった。
その街自体が海沿いに長い都市なので、このまま行けば着くだろうと俺は更に車を走らせた。
 しかしかれこれ2時間近くになるが、進めど何も見えてこない。
周りは真っ暗なまま、民家も無ければ、わき道も見当らない。
それでも進むと、自転車に乗った中学生か、高校生か、白いシャツに黒いズボンの少年を前に見つけることができた。
 助手席の窓を開け、少年に道を尋ねると、少年は振り返る事も無く、元来た道を指差した。
俺が礼を言うと、少年は一言も発することなく、闇に消えていった。
全く逆方向へ来ていた事を知り、真っ暗闇の中、車を切返し、元来た道へ車を走らせた。
 30分もすると街の明かりが見え、その日のホテルに入ることができた。
その時、自分はなんてひどい方向音痴なんだと思っていた。
 しかし、その後、仕事に頻繁に来るようになって気が付いた。
その道には途中に1つの信号も、商店も、対向車すら無かったこと。
そして、2時間も走れる海沿いの一本道も、その道への入り口も存在しないことだった。














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しづめばこ 1月22日 P273

2014-01-22 18:06:20 | C,しづめばこ
しづめばこ 1月22日 P273 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


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日々の恐怖 1月21日 犬

2014-01-21 18:03:32 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 1月21日 犬



 僕の地元では、毛の無い犬が出るという噂があった
当時小学生の僕は、その話を聞いて「普通に病気の犬なんじゃ?」といつも思っていた。
ところが友達は、「そんなもんじゃない。もっと気味悪くて、恐ろしいもんだ」と言うのだ。
 毛の無い犬は、深夜2時頃に国道から市民プールに向かう道路に現れ、プールを取り囲む林に消えていくのだという。
小学生の僕らに深夜2時という時間は、未知の世界で想像もつかない分、恐怖心を煽った。
 もう一つ怖かったのは、大人に毛の無い犬を聞いてはいけないし、その話をしている所を聞かれてはいけないという噂。
なぜかは知らないが、この話を大人に聞かれると、毛の無い犬の餌にされてしまうらしい。

 夏休みのある日、僕は友達のYの家に泊まった。
Yには大学生の兄Tさんがいて、僕の知らない外国の曲をよくギターで練習していた。
夜になるとYの部屋でゲームをし、Tさんから借りたマンガを読んだりして過ごしていた。
 夜中の12時を回った頃、Tさんが僕らの部屋に現れた。

「 まだ起きてるのか?」
「 今日は寝ないで朝まで起きてるんだ。」
「 そうなのか。俺今から車で出るけど、お前らも付いてくるか?」

 僕とYは顔を見合わせた。
小学生にとって深夜のドライブはとても魅力的で、好奇心が沸々とした。

「 うん、行く。」

僕らはYの両親に見つからないように部屋を出て、車に乗り込んだ。
 Tさんの用事自体は大したことなく、コンビニでジュースやお菓子を買ってもらい、僕らは上機嫌だった。
帰り道、Tさんはタバコをふかしながら僕に言った。

「 ○○くん、毛の無い犬知ってるか?」
「 うん。」
ドクンと心臓が鳴った。

Tさんはニヤッと笑うと、「見てぇか?」と聞いてきた。

「 兄ちゃん。見たことあるの?」
「 市民プールの通りだろ。どうする?」
「 見たいです」

実は少し怖かったが、好奇心には勝てなかった。

 すぐに車は市民プールについた。
デジタル時計は01:34と光り、林のざわめく音だけが不気味に響いた。

「 そろそろかな。一応鍵、閉めといてな。」

その言葉に、僕は消えかかっていた恐怖心を覚えた。
何故鍵を?毛の無い犬って何?
 車の中は蒸し暑く、額にはじんわりと汗がにじみ、Tさんの吐くタバコの煙が街灯に照らされている。

「 あれだ。」

Tさんが呟いた。
僕とYは、フロントガラスに顔を押し付けて外を覗き込む。
 規則的に刺さった街灯の明かりに、黒い影が揺れた。
冷や汗が頬を伝い、手の甲に落ちた。
なぜ深夜に?なぜ大人に話してはいけないの?
毛の無い犬は僕らの乗る車の横を通り過ぎ、プールの壁が作り出す影に混ざると、やがて見えなくなった。
 帰りの車でYが言った。

「 兄ちゃん。なんであれは・・・。」

それ以上言葉が出ない。

「 俺も詳しくは知らん。
でも、ずーっと前からああしてるらしい。」

Tさんもそれっきり何も言わなかった。
 僕とYは毛の無い犬の正体を知った。
深夜に現れる意味も、大人に聞いてはいけない訳も。
犬は本当の犬ではなかった。
でも僕にとっては人でも無かった。
犬でも人でも無かった。

今でも毛の無い犬は現れるのだろうか?
地元に帰るたび今でも思うが、それを確かめる気はもう無い。











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