大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道168

2008-12-31 19:22:19 | E,霧の狐道
 田中爺はかなりエネルギッシュな人だ。
俺が病室に入ってからも、ジッとしていることがない。
俺を相手に病院のことを話し捲くり、通路で他の病人とお喋りし、ナースステーションまで出張し世間話をする。
この階の病室や通路だけでなく、他の階にも出没していることが予想される。

“ ホントに、何処が悪いのだろう?”

手術痕はあるが、それらは昔のものだ。
でも、入院しているのが外科の病室だし、外科は外科だろうと思う。

“ ホント、元気そうだし・・・。
 それに比べると、もう一人は影が薄いな・・・。”

俺は山本爺のベッドの方に眼を遣った。
部屋の対角線の向こうのベッドは、山本爺の体で掛け布団が盛り上がっているのは見える。
でも、さすがに状態までは見えない。

“ まあ、静かだし、いいか・・・。”

俺は先ほどの生々しさから、今も夢のような気がちょっとした。

“ 今度は、俺、ホントに起きているよな。”

俺は、自分の顔を指で弾いてみた。

“ ピチッ、ピチッ!”

弾かれた顔は、小さな痛みがある。

“ うん、確かに俺は起きている。”



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霧の狐道167

2008-12-29 20:11:25 | E,霧の狐道
 病院の夜は長い。
何時間経ったのだろうか。
俺は、うるさい音に眼が開いた。

「 ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。
 くしゅ、くしゅ、ハックション、グスグス。
 ズ~、ズ~、ズ~。」

眼が開いた理由は、田中爺のいびきだ。

「 う、うるさい!」

 俺は布団から顔を出し、左隣のベッドに寝ている田中爺をチラッと見た。
田中爺は仰向けで口を開いて寝ていた。

“ 鼻と口から、雑音が漏れている・・・。”

俺は仰向きのまま、布団を耳の辺りまで引っ張り上げた。
布団を被っても、まだ、田中爺のいびきの音は耳に侵入して来る。

「 う、ぐぐぐぐぐ、ぐっ!
 ・・・・・・・・・。」

 突然、田中爺は静かになった。
俺は、様子を窺う金魚のように布団から顔を出した。
顔を出すと、布団を被っていた息苦しさから解放される。
そして、口をパクッと開けて大きく息を吸い込み、吐き出す。

「 プハァ~~~。」

息を吐き出した音が消えると、薄暗い病室は静かになった。
 夜の病室に静けさが広がる。

“ ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・。”

廊下の方から心臓の鼓動のようなモニターが聞こえる。

“ あんな音、してたかな?
 まあ、寝るときはザワザワした感じだったから、紛れていたのかな?
 それにしても妙に静かだな・・・。
 田中爺、いびきが喉に詰まった死んだか?”

隣のベッドの様子を見ると、掛け布団が上下しているので田中爺は生きているようだ。



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Photo Lounge75 階段

2008-12-28 19:30:48 |      Photo群

Photo Lounge75 階段 画像


   Photo Lounge75 階段 


         “地下鉄にて”
        

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霧の狐道166

2008-12-27 19:28:54 | E,霧の狐道
 俺は、一瞬、瞬きをした。

“ ハッ!!”

今度は、はっきり目覚めている。
体も動く。
俺は、病室を一通り見回した。
特に変化は無い。
 病室は、廊下の明かりが扉の窓から漏れている程度で暗い。
これだけの騒ぎにもかかわらず、爺さん二人は熟睡しているようだ。

“ やっぱ、夢かな・・・・。
 あのカエル見たら、爺さんたち大騒ぎだしなァ。
 起こされずに、寝てるもんなァ。
 でも・・・・・。”

俺は、手で顔を擦ってみた。
特にヌルヌルしたものは付いていない。

“ あれっ、ヌルヌルも消えているぞ。
 手も臭いが無いし・・・・。
 ゆ・・め・・か・・な・・・?
 でも、妙に生々しいし・・・・。
 分かんないなァ~。
  明日も、あの婆さんやって来るのかなァ?
 ヤダなぁ~。
 ホント、あの婆さん、参ったなぁ~~。
 また、明日来る、なんて言ってたしなァ・・・。
 眼が真剣だったし・・・・。
  寝るのが切っ掛けとか言ってたけど・・・。
 寝たら来るのかなァ~。
 ヤダなぁ~。
 ホント、明日もやって来るのかな・・・。
 来たら、ホント、ヤダなぁ・・・・。

俺は、壁に向かって口を尖らせて言った。

「 もう、来なくていいぞォ~~~。」

壁からは何の反応も無い。
俺は思った。

“ これはやっぱり悪夢なんだ。
 どう考えても、こんなこと起こるはずが無い。
 カエルに乗った婆さんなんてマンガの世界だ。
 うん、絶対、悪夢だ。
 夢を見ていたんだ。
 寝よう・・・・。”

俺はお揚げ婆さんを悪夢と決め付けて眠ることにした。



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霧の狐道165

2008-12-25 18:48:30 | E,霧の狐道
「 もう、今日のところは帰ってくれよ。
 夜中なんだぞ。
 みんな、寝てるんだぞ!」
「 しょうがないのう。
 呪文を思い出せないし・・・。
 それに、集中力も切れて来た・・・。
 ま、今日のところは、いったん帰るかの・・・・。」
「 その方がいいと思うよ。」
「 そうじゃな。
 じゃ、また、明日来るからの!」
「 もう、来なくていいよ。」
「 おまえが寝たのを見計らって出撃してくるからの!」
「 寝ないと出てこれないのか?」
「 レム睡眠が切っ掛けなんじゃ。
 それに、真言密教の奥儀は、まだまだこれからじゃの。」
「 充分、充分、今日ので充分。
 もう、いいって!」
「 いいや、まだまだこれからなのじゃ。」
「 来なくていいぞ。」
「 ふふふふふ、じゃ、またな・・・。」

 お揚げ婆さんの声を合図に、お揚げ婆さんとガマ太郎は輪郭が徐々に崩れ始めた。
そして、それらは大きな煙のモヤモヤした塊に変化し、次に、煙の塊は端の方から赤い円の真ん中にシュルシュルシュルと糸を引くように吸い込まれて行った。
煙が吸い込まれるのと平行して、怪しい呪文がまた響いて来る。

『 ・・・おんばあさらえんそわ・・・、おんばあさらえんそわ・・・。』

今度は、お揚げ婆さんの声とはっきり分かる。
そして、声は徐々に小さくなって消えて行く。

『 おんばあさらえんそわ・・・、おんばあさらえんそわ・・・。』

赤い円の方は、お揚げ婆さんの声が小さくなるに従って徐々に小さくなり、赤い点になって最後はス~ッと消えてしまった。
俺のベッドの右横の壁は、のっぺりとした元の白い病室の壁に戻った。



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霧の狐道164

2008-12-23 19:30:30 | E,霧の狐道
 俺は一旦眼を瞑った。

“ 悪夢なら、早く覚めろよな・・・。”

俺は再び眼を開けた。
でも、状況は変わらない。

“ う~ん・・・・?”

俺はベッドに仰向けになって、右から左へ、左から右へ跳んで行くガマ太郎の白い腹を見ながら思った。

“ 何で真夜中に、こんな訳の分からない連中の相手をしなければならないんだ。
 ええ加減にせえよなぁ~。
 俺は病人なんだぞ。
 こいつらを、さっさと退散させよう!”

俺は、この状況を打開するため、お揚げ婆さんに取り敢えず言った。

「 ああ、分かった、分かった。
 俺が悪かった。
 取り敢えず、謝るよ。
 ゴメン、ゴメン。
 これでいいだろ。」

お揚げ婆さんの声が上のほうで聞こえた。

「 ガマ太郎、ストップじゃ!」

 ガマ太郎は跳ぶのを止め、俺の右にヒラリと降りた。
続いて、ベッドで寝ている俺の右上に、お揚げ婆さんの顔がヌッと現れた。
お揚げ婆さんはニタニタ笑っている。

“ 謝ったし、満足したのかな?”

お揚げ婆さんは、俺の顔を覗き込み言った。

「 ふふふ、とうとう、謝ったな。」
「 もう、充分、謝ったから、家に帰れよ。」
「 ふふふふふふ、ダメじゃ。」
「 どうして、ダメなんだ?」
「 まだ、体中から血が噴き出しておらんじゃろ。」
「 呪文を家に帰って覚えろよ。」
「 う~~ん、もっと、おまえが困ることはないかの・・・?」



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霧の狐道163

2008-12-21 19:57:40 | E,霧の狐道
ガマ太郎は、俺をギロリと見た。

「 うわっ!」

俺は、ビックリして声を上げた。
ガマ太郎の舌がビヨ~ンと伸びて俺の顔を舐めたからだ。

“ うう、気持ち悪い・・・・。”

顔の舐められたところを手で触るとヌルヌルする。

“ うっ、くっさ~~~。”

手に付いたヌルヌルの液体の臭いを嗅ぐと妙に生臭い。

「 止めろよ、このクソガエル!」
「 どうじゃ、ガマ太郎の怖ろしさが分かったじゃろう。」
「 気持ち悪いから、舐めるのを止めさせろ。」
「 ふふふふふふ、こんなもんで驚いていてはいかんぞ!」

お揚げ婆さんは、乗っかっているカエルに向かって言った。

「 ガマ太郎、こいつの上をピョン、ピョン、跳び越すのじゃ!」
「 ゲロ、ゲ~ロ!」

 ガマ太郎は、お揚げ婆さんの言葉を聞いて、お揚げ婆さんを背中に乗せたまま、俺のベッドの上を右から左へ、左から右へ、ピョンピョン跳び始めた。

“ な、何だ、これは・・・・!?”

ピョンピョン跳ぶごとに、ヌルヌルの飛沫が飛んで来る。



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Photo Lounge74 ツイスターゲーム 

2008-12-20 19:32:42 |      Photo群

Photo Lounge74 ツイスターゲーム 画像


Photo Lounge74 ツイスターゲーム 


   「 ツイスターゲーム、する?」
        

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霧の狐道162

2008-12-19 18:46:31 | E,霧の狐道
 俺がニヤニヤして婆さんの方を見ていると、イライラした婆さんは忌々しげに俺の顔を見ながら悪態をついた。

「 ええい、クソッ!
 思い出せん!!
 全部、おまえが悪いんじゃ!」
「 俺のせいじゃないぞ。
 もう、諦めろよ。」
「 クソ~ッ!
 ダメだ。」
「 諦めろ、諦めろ、アハハハハ!」
「 う~~ん、腹立つヤツじゃ。
 何か、他におまえを困らせる方法は無いかの・・・?」
「 もう、充分、困っているから、家に帰れよ。
 俺は骨折して入院してるんだから、もう、これで充分だろ。」
「 骨折はおまえが勝手にしたことじゃろ。
 ワシのお揚げの腹いせは終わってないのじゃ。」
「 もう、いいって・・・。」

お揚げ婆さんは下のカエルを見てハッとした。

「 そうじゃ、ガマ太郎!」
「 ガマ太郎って、何だよ?」
「 このカエルの名前じゃ。」

俺は、お揚げ婆さんが跨っているでかいカエルをチラッと見た。

「 どうして、カエルに乗っかってるんだよ?」
「 この方が、みんな怖がるんだよ!」



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霧の狐道161

2008-12-17 18:59:28 | E,霧の狐道
 お揚げ婆さんは、まだ固まったまま動かない。

“ コイツ、固まってるぞ。
 どうしたのかな?”

俺は我慢できずにお揚げ婆さんに訊いてみた。

「 どうしたんだよ、婆さん?」

お揚げ婆さんは、カエルの上で左斜め上に眼を遣ったまま答えた。

「 今日は・・・、ちょっと、調子が悪いのじゃ。」
「 どう、調子が悪いのだ?」
「 呪文を忘れてしまった・・・・!」
「 あはははは・・・・。」

 お揚げ婆さんは、こちらに視線を戻した。
そして、言い訳がましく俺に言った。

「 ここに現れるための呪文を覚えるので精一杯じゃったからのォ~。
 それで、次の呪文が手薄になって忘れてしまったのじゃ。」
「 それって、バカみたい。」
「 とても難しい呪文じゃから仕方が無いのじゃ。」
「 記憶力が無いんじゃない?」
「 なにィ~~!」
「 バカチン婆さん!」
「 うるさい、このクソガキ。」
「 バカチン、バカチン!」
「 ええい、いちいち腹が立つヤツじゃのォ~。」
「 あははははは!」

俺は、ちょっと、安心した。

“ これは、たいしたことないぞ!”



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霧の狐道160

2008-12-15 18:55:50 | E,霧の狐道
 俺は婆さんの自信に溢れた表情を見て思った。

“ コイツ、真言密教の奥儀がどうのこうのって言っていたな・・・。
 それに、普通じゃない不気味な現れ方だったし・・・。
 これって、結構、ヤバイんじゃないのかな・・・。
 このババア、変な超能力を持ってたりして・・・。
 ヤダナ、こいつ・・・。
 何とか消えてくれないかな・・・。”

俺はニタニタ笑っているお揚げ婆さんを、とにかく追い払おうと思って言った。

「 ああ、もう、分かった、分かったよ。
 婆さんがスゴイことは分かった。
 もう、話はいいよ。
 それに、今日は夜も遅いし、家に帰れよ。」
「 ダメじゃ、ダメじゃ。」
「 またの機会ってことで・・・。」
「 い~~や、ダメじゃ!
 ふふふふふ。
 これから呪文を言うから、ホント怖ろしいことが起こるのじゃぞ。」
「 怖ろしいことって、何だよ?」
「 ワシが前に言ったじゃろ。」
「 何?」
「 もう忘れたのか。」
「 う~~ん?」
「 人の話をちゃんと聞け、このバカチン!
 なら、もう一度、教えてやろう。
 ワシが呪文を唱えるとじゃな。」
「 うん、呪文を唱えると・・・。」
「 体中から、血が噴き出して、おまえは、その苦しさにのたうち回るの
 じゃ!
 ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ!!!」
「 夢の中でも、苦しいのは、やだな・・・・・。」
「 ふふふふふふ、怖ろしくなって来たじゃろ。
 でも、もう、謝っても遅いのじゃ。
 じゃ、行くぞ。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・。」

 お揚げ婆さんは、カエルの上で左斜め上に眼を遣った。
そして、そのままお揚げ婆さんの動きはピタッと止まった。
なんとなく、間が悪い空気が流れる。


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Photo Lounge73 ペンギン

2008-12-14 20:11:23 |      Photo群

Photo Lounge73 ペンギン 画像


Photo Lounge73 ペンギン 


   「 ペンギン、通ります。」
        




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霧の狐道159

2008-12-13 18:48:55 | E,霧の狐道
話している間にも、お揚げ婆さんとカエルが近付いて来る。

「 近付いて来るなよ・・・・。」
「 ふふふ、怖がっておるな・・・・。
 夢だから、どうってことないんじゃろ。」
「 怖くなんてないぞ。」
「 い~や、心の中でビビッておるハズじゃ。
 あの時、せっかく、警告してやったのに、人の話を聞かないからじゃ。」

このとき、俺の頭にフト疑問が浮かんだ。

“ こいつ、俺の居る所がどうして分かったのかな?”

俺はお揚げ婆さんに訊いて見ることにした。

「 ちょっと、質問するけど・・・。」
「 何じゃ?」
「 どうして俺の居場所が分かったの?」

お揚げ婆さんは俺の質問に嬉しそうに言った。

「 ハハハハハハ、知りたいかの?」
「 うん。」
「 そうか、そうか。
 ムフフフフ、じゃ、教えてやろう。
 ワシは真言密教の奥儀を会得しておるのじゃ。」
「 真言密教?」
「 大学で宗教哲学と心理学を研究して、その後、ある高僧のもとで修行を
 積んだのじゃ。」
「 ふ~ん、それで?」
「 ワシは、スーパーでおまえがレジにお揚げを持って行こうとして後ろを
 向いたとき・・。」
「 俺の体に発信機をくっ付けたとか・・?」
「 違う、違う。
 おまえの後頭部に右手をかざして脳波を読み取ったのじゃ。」
「 俺の脳波をコピーしたのか?」
「 コピー、コピーな・・・。
 う~ん・・・、厳密には違うが・・・・。
 まあ、愚か者には理解不可能じゃから、そう思っておけ。
  それで、その読み取った脳波はレム睡眠のときに、おまえの頭から放射
 されるのじゃ。
 そして、ワシは真言密教の奥儀でおまえのレム睡眠の脳波を辿ってここま
 でやって来たのじゃ。
 どうじゃ、怖ろしいじゃろ。
 参ったか、ハハハハハハ!!」

お揚げ婆さんは勝ち誇ったように笑った。



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霧の狐道158

2008-12-11 17:48:46 | E,霧の狐道
俺はさらに強がって、お揚げ婆さんに言った。

「 これって、夢だから、どうってこと無いよ。」
「 ふふふふふ、そうかな。」
「 じゃ、夢じゃ無いのか?」
「 金縛りって知ってるかの?」
「 聞いたことあるけど・・・。」
「 レム睡眠のときに起こる現象じゃ。」
「 これのことか?」
「 ふふふふ・・・。」
「 レム睡眠だって睡眠だから寝てるんだろ。
 じゃ、今はやっぱり寝てるんだ。」
「 そうかな。
 レム睡眠では、体は寝ているが、意識は起きているのじゃ。」
「 体は寝ているんだから、これは夢だろ。」
「 いいや、意識は起きている。」
「 体は寝ているから眼は瞑っている。
 眼を瞑っているのに婆さんを見ているってことは、夢の中で婆さんを見て
 いるってことだろ。
 意識が起きているって、夢の中で起きていると思っているだけだよ。
 こんなの眼が覚めたら終わりだよ。」
「 夢の中で、ビフテキを食ってても、眼が覚めたら、不幸のどん底ってこ
 ともあるわな。
 夢の中で悲しんでいても、眼が覚めたら楽しく遊びに行く日かもな。」
「 だから、眼が覚めたら終わりだってことだろ。」
「 そうさな、夢とは不思議なものよな。
 夢の中で夢とは気付かず、夢の中で夢を見ることもあるわな。
 夢の中で起きていると思っている人間が、眠りについて夢を見ていること
 もある。
 夢から覚めたそいつは夢から覚めたと言う夢を見ていることもあり得るわ
 な。
 そして、そいつだってその夢から目覚めなければ、それが本当にあったこ
 ととして夢の出来事とは気付かんこともある。」
「 俺は眼が覚めるから大丈夫だよ。」
「 でも、おまえは、今、これを夢を見ていると現実に思っているじゃろ。
 夢を見ていると思い込んでいるおまえは起きているんじゃないかの?
 バカなおまえは自分は寝ていると思い上がって、何でもないとしてええん
 かの?」
「 だから、これは夢なんだって!」
「 おまえは、思い上がった頑固なヤツじゃの。
 これもあれもそれも夢やと思ってる。
 今、見ている触っている感じている夢は、現実でないと言い切れるのかな。
 眼が覚めるだろうと思っているおまえは夢の中かどうか、おまえに判断で
 きるかの。
 この話も夢の中と言い切れるもんなんかの。」



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霧の狐道157

2008-12-09 19:17:51 | E,霧の狐道
 俺はお揚げ婆さんを見上げた。
赤い円の光に照らされて弱いピンク色をしている病室を背景に、お揚げ婆さんとカエルは白く薄く光っている。
そして、お揚げ婆さんは俺を見下ろして口の両端を吊り上げニタ~っと笑った。

“ ううっ、気持ち悪いヤツ・・・・。”

俺は強がって言った。

「 婆さん、何か用かよ?」
「 ああ、昨日の恨みを晴らしに来たんじゃ。」
「 恨まれることは無いよ。」
「 惚けるんじゃないよ。
 人のお揚げを盗っておいて!」
「 違うよ。
 あれは俺が先に掴んだんだ。」
「 い~~や、ワシのもんじゃ!」
「 違うって!」
「 腹いせに、今から酷い眼に遭わせてやるからなっ!」
「 何だ、婆さん、しつこいぞ。」
「 これから、えらいことが起こるぞ。
 ふふふふ、覚悟するんじゃ!」
「 ・・・・・。」

カエルとお揚げ婆さんがジリジリとにじり寄って来る。

“ これって、絶対、夢だよな?
 まさか、ホントじゃ無いよな・・・。”

大きなカエルのギロギロした眼が、ちょっと怖い。



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