俺は、七匹と言い張るのは止めた。
ポシェットの件があるからだ。
居もしないウサギに盗られたなんて言ったら、俺が盗ったと疑われる。
案の定、由紀ちゃんが言った。
「 あれっ、ポシェットが無くなっている。
貴ぴ~、どうしたの?」
俺は、何とかこの場を誤魔化そうと焦った。
「 えっと、幼稚園くらいの女の子を連れた女の人が来て、子供の物だと言って
持って行ったよ。」
「 ほら、直ぐに落とした人が取りに来るって言ったでしょ。
その子にウサギを見せていて忘れたのね。」
「 うん。
俺、裏門まで案内してあげてたんだ。」
「 そう。」
「 ハイハイ、とにかく、掃除、掃除だ!
先生も手伝ってやるから、早く掃除をしろ!」
俺はウサギ小屋に入って、箒を持って地面を掃き始めた。
“ はあ、何とか誤魔化せた。
でも、おかしいな。
確かに七匹いた。
白黒の目立つウサギだったから、誰が見ても見落とす筈が無いけど・・・。”
掃除が終わった後、俺はもう一度、一人で体育館の通気口を見に行った。
でも、ウサギはいなかった。
通気口の中を覗き込んでも真っ暗だったし、音も聞こえなかった。
“ それにしても、どうして先生や由紀ちゃんは、白黒のウサギがいることに気
が付かなかったのだろう・・・。”
そして、俺は思い付いた。
“ そうだ!
エサを置いておけば、ウサギが出て来るかも知れないぞ!”
俺は、明日、エサを持って来て、通気口の入り口に置いて見ることにした。
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