日々の恐怖 4月18日 石を投げる(1)
最初に、何歳の頃だったのか忘れてしまった幼い日の出来事からです。
山や田んぼには、神様が住んでいるという話を聞いた事がありますか?
私の生まれた町では、お百姓さん達からそんな話を聞かされて育ちました。
ある日、私は幼馴染A君と2人で、彼の家の近所の神社の裏手の田んぼのあぜで遊んでいました。
親からは、
「 明るいうちに、帰っておいで。」
ときつく言われてはいましたが、楽しい時間はあっという間に過ぎ、あたりが薄暗くなってきてしまった時、それは起こりました。
苗の植えられている田の水面が鏡のように調い輝いて、その中では、怒り心配している私とA君の母親と、近所に住んでいる同級生の母親が映っていたのです。
3人の母親の会話まで聞こえた記憶があります。
早く帰らないと酷く怒られると思った我々は、急いでA君の家の前まで駆けて行きました。
そこには、水面に映ったのと同じ服装、構図の母親たちの姿がありましたが、なぜか不思議には思いませんでした。
その後か先かは忘れましたが、田んぼに石を投げ込む遊びをした事があります。
まだ苗の植わっていない田んぼは見晴らしが良く、大きな石を投げ込むと爆発するように泥と水飛沫を上げる事から、爆弾投げと呼ばれていました。
その年、私の家の前の田は神田(その田の収穫から、神社に一束の稲穂をお供えする)となっており、お神酒と、注連縄で飾られていました。
私たちはいつもの年のように、大きな掴み易い丸めの石を選んで投げ込む事にしました。
まるで注連縄がプロレスのリングのようで、幼い心に特別な思いを抱かせたのでしょうか、
私は石垣に隠しておいた、模様の入ったお気に入りの宝物の石を投げる事にしました。
石の大きさは、多分大人の握りこぶし位だったと思います。
私は一番乗りで石を投げ、石は放物線を描いて水面へ。
大きな水飛沫が上がった時、私は頭に強い衝撃を受けて、意識を失いました。
目が覚めると、そこには母と、友人達、そして近所の医院のお爺ちゃん先生が覗き込んでいました。
「 この石が頭にぶつかったんだよ。」
と聞かされて、先生が見せてくれた石は、確かに自分が投げ込んだはずの宝物の石だったのです。
周りにその事を訴えると、皆、急に押し黙り、その後両親に連れられて神社と田んぼに、お供えをしに行った記憶があります。
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