一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

村上ファンドと阪神電鉄

2005-10-09 | M&A
これも遅まきながら村上ファンドによる阪神電鉄株の取得の話。

取得の経緯はHard Waveさんisologさんが分析されてます。

転換社債とか株式交換とかの裏道を使うあたりはまた物議をかもしそうですが、阪神電鉄もかなり脇が甘いですね。
そもそも転換社債が満期償還直前に一気に転換されているのを変だと思わなかったのでしょうか(償還資金の手当てもあるだろうに)
また、既に買収された10/5になって阪神電鉄、防衛に着手 大和SMBCと連携というのは、ジョークとしては面白いですけど・・・


村上氏は8日の後援会で経営権は取ろうと思っていないと発言したそうですが、一方で阪神タイガースの上場なども提案しているようです。



まずは阪神タイガースの上場ですが、そもそも一阪神ファンとして、村上氏が球団の「オーナー」になるのは抵抗がありますが、まあそれはおいとくとしても、そもそもプロ野球の球団に上場がなじむのか、というのはちょっと疑問です。

今のプロ野球機構とかオーナー会議の馴れ合い状態は良く無いと思うのですが、上場企業になるといろいろ制約があることも事実です。

そもそも選手構成や年棒などは厳密な説明責任を果たせるものではありません。

たとえば有力選手やメジャーリーガーの獲得、自球団選手のFA権行使を阻止に数億円の年棒を提示した結果活躍しないなんていうことはよくありますし、合理的な予想なんてできません(だからこそスポーツ紙が商売になるわけです)

また、球団間の戦力均衡化のためのサラリーキャップ制の導入など、全体最適のために自球団の利益を犠牲にするような改革も今後必要かもしれません。

こういう意思決定にいちいち株主代表訴訟が気になるのでは、取締役のなり手がいなくなります。
また、監督には高年棒の選手を起用しろという圧力(起用してだめなら仕方ないが、そもそも起用もされないと「無駄な設備投資」といわれてかねない)がかかるかもしれません。
さらに、収益の安定を考えれば、昔のタイガースのように優勝はぜずに年棒を安くおさめてそこそこの収入を得るという方向に行きかねません。


なので、上場企業として株主の発言権が大きくなりすぎると弊害もあると思います。



つぎに、村上ファンド(MAC)はどうやって儲けようとしているのか、という疑問。

MACはファンドですからで最後は取得した株を高値で売却しないといけません。
ただ、そうするには38%という比率(市場で売れば値崩れを起こすし、まとめて売却するとTOB規制にかかる)と1000億という総額がネックになりそうな感じがします。

また、鉄道料金は国土交通省の認可事項で、確か利益が上がりすぎると利用者に還元(駅舎の改修など)しろと指導されたり、値上げ申請が認めてもらえなくなる、ということを聞いたことがあります。
だとすると、阪神タイガースの上場やその他の資産の売却の収益がそのまま株主に還元されない可能性もあり、株価上昇も限定的になる可能性があります。

そうなると、阪神電鉄(自社株買いは出来ないので)役員へのMBOか、長期投資で電鉄業または阪神地区の事業展開に参入しようとする会社に売却するくらいしかないのように思います。

そう考えると、個人的にはオリックス(村上氏と宮内氏は懇意らしいし、タイガースと合併して不振のオリックス・バファローズの出口にする)か阪急電鉄くらいしかないんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうかね(前に言いましたが、読売グループが買ったら見ものですが、さすがにないでしょうw)


個人的には、タイガースは上場せずに、村上氏はお目付け役の大株主として経営陣がさぼらないように目を光らせていてくれたらそれはそれでいいのですが、無理だろうなぁ。
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投資も計画的に

2005-10-09 | あきなひ
先週は指が痛いなどと騒いだり、仕事がバタバタしているうちに、世の中でもいろんな動きがあったので、遅ればせながら一言コメント。

平成電電の民事再生法適用申請

問題になっているのは平成電電の設備投資のかわりに機器をリースし配当で「年率10%程度の利回り」などという触れ込みで個人投資家から490億円を調達した匿名組合出資がどうなるかということ。

匿名組合出資というのは、出資者が営業者に金銭を出資して、営業者の行う事業の収益の配当を得る、というしくみ。

既に平成電電のサイトからは匿名組合関係のページが見れなくなっているので、Googleのキャッシュくらいしか見れないですが(平成電電システム㈱(匿名組合の営業者)の概要投資の仕組み投資に対するその他の留意点)だいたい次のような仕組みだったようです。

① 出資者は平成電電とは資本関係の無い(でも名前は似ている「平成電電システム㈱」など)が営業者となるに匿名組合に出資をする。
② 匿名組合の目的は、平成電電に設備をリースすること
※ 出資対象がリース資産なので、この匿名組合契約は証券取引法の適用がないので情報開示は任意
※ また、配当の保証や元本保証はされていない(出資法の規制がありそもそもできない)
③ 営業者は出資された資金で通信設備を購入し、平成電電にリースする
④ 営業者はリース料の収入を匿名組合出資者に配当する

肝心のリース契約の内容が、6年契約らしいということ以外不明なので、このリース債権が倒産手続き上どういう法律的取り扱いを受けるかについてはなんともコメントのしようがないのですが、そもそも「予定配当率10%」についてだけひとこと


この匿名組合出資予定配当率が10%ということは、設備を購入額が100だとすると、毎年10、金利相当を支払う必要があります。
リース期間が6年とすると、金利相当で60、設備購入額(元本)が100なので、毎年のリース料は(固定資産税等を除いても)26.6になります。これではキャッシュフロー的にもあまりメリットはないんじゃないでしょうか。
※それとも契約終了時の残存価格を高めに見積もったオペレーティングリースなんでしょうか。そうだとすると、そもそものリース契約が適正だったかという問題もあると思います。

本来それだけ収益があがる事業ならば、銀行から借り入れ(少なくとも金利10%はしないはず)をするか、会社の資本金として調達すればいいはずです。

ベンチャー事業なので、銀行の融資を受けにくいとしても、事業の内容を精査しているはずの株主が出資しない(10%の利益を外部流出させてしまう)というのは、自分で追加出資できないほどリスクが大きいか、よほどの高収益を見込んでいたかのどちらかのはずです。

ただ資本金は17億で負債総額が1200億、ということを考えると、資金繰りにつまった会社が高利の金に手を出したという感じがします。
高金利といっても商工ローンだと金利も10%以上だし相手も取り立てのノウハウがあるので、一般投資家相手の投資商品を仕立てた、ということなのでしょう。

素人考えでも設備投資のかかりそうな固定電話事業に打って出るにしては、過小資本だし、資金計画が甘かったような感じがします。
しかも一方で(自分は非上場でありながら)ほかの上場会社に出資していたというのですから妙な話です。

まさか大掛かりな詐欺ということはないとは思いますが、ひょっとすると、派手にぶち上げて話題作りをし、初期段階でそこそこの実績をあげた時点で上場したり大企業の資本参加で資金調達をして辻褄を合わせればいいや、くらいの発想だったのかもしれませんね。

そうだとすると「10%」というのも、万が一(今回のような倒産)のとき、投資家もハイリスクは承知だったはずだ(=欲に目がくらんだ自己責任)と開き直るためにあえてハイリターンにしたという勘ぐりもしたくなるのですが・・・


投資をする側も、利回りに注目するだけでなく、
 何に投資をするのか、
 投資先は本当にそれだけの収益をあげることが出来るのか、
 自分が調達側だとしたら他の方法をとらずにこういう商品にしたのはなぜか、
をよく検討すべきだといういい事例だと思います。


大投資家であるウォーレン・バフェットですら「自分の理解できないものには投資しない」(なのでIT企業には投資しない)というスタンスを貫いているのですから、庶民がなけなしの金をつぎ込むにはもっと注意が必要ですね。
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