一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

にらみあいの原因(TBSvs楽天)

2005-10-28 | M&A

楽天とTBSについては、小康状態が続いてましたが、ついに楽天がしびれを切らして株式を買い増したり、買収防衛策を発動した場合には株主代表訴訟を提起するぞなどと牽制球を投げたりしています。

このうち、買収防衛策発動が取締役の善管注意義務違反(として株主代表訴訟の対象)にるのは難しいんじゃないかという点についてはtoshiさん(弁護士の方です)が詳しくblogで分析されています。

またtoshiさんは、両者がどういった事業計画によって「将来の企業価値の向上」を図ろうとしているのか、TBS単独での事業計画や、統合後の楽天サイドの事業計画から、買収プレミアムを支払ってでも、統合後のシナジー効果が得られかどうか、その是非を考える根拠というものを、専門家以外にもわかるような内容で示すことが必要だ、と書かれていますが、僕も同感です(以前のエントリはこちら

ところで、先日の日経新聞のインタビューで鹿子木判事(ライブドアのときの仮処分決定などを出した裁判官)が

企業防衛に関する紛争では、やや法律事務所主導で紛争が拡大している傾向が見受けられないでもないようです。小手先の防衛策に頼るのではなく、真摯な経営努力により企業価値の向上を図ることが重要。防衛策フィーバーのような状況には疑問を禁じえません。

と、現役裁判官としてはかなり踏み込んだ発言をされていますが、(ぶっちゃけて言えば「買収防衛策とか弁護士が与えてくれる飛び道具に頼らずにまっとうに利益を上げるために知恵を絞れよ」という経営者への苦言なんでしょう)

この(特に前段)に対して、47thさん(M&Aに詳しい弁護士さんです)が「買収防衛策にも問題点はあるものの、企業価値の向上だけでは対応し得ない強圧的買収者への対抗などにはやっぱり必要なんじゃないか」ということをかかれています。


で、その47thさんがtoshiさんの先のエントリへのコメントで、実際の交渉で買収後の事業計画の詳細を開示しろというのは、買収者側からすればそのノウハウを漏洩や流用をされたら元も子もないので、対象企業側の行動にも制約を加える必要がある。というこれまたとても実戦的な指摘をされています。

これは具体的には「これから言う事業計画については第三者(ホワイトナイト)に言ったり、交渉が決裂流用した場合に自分で実現したりしたら巨額の損害賠償を請求する事にあらかじめ同意しろ」などと交渉前に迫ることになるのでしょう。

ただ、開示を受けるほうも、実は自分も同じような事業計画を考えていた場合将来の事業計画に差し支える、とか、開示の中身が抽象的・包括的だった場合、今後やることなすこと因縁をつけられると困るので、そもそもそんな合意は軽々には出来ない、ということになります。
そうするとまた交渉の前段階でとまってしまうことにもなりかねません。


なんか、剣道の名人同士の手合わせや、昔の米ソの核兵器によるMAD(=Mutual Assured Distruction 相互確証破壊)戦略のように、対戦当事者のレベルが上がれば上がるほど、にらみ合って動けなくなる、という感じですね。


さらに、「楽天の意図をくじく『良い案』を私は持っている」などと思わせぶりなSBIの北尾CEOがまたまた登場したりして、事態をよりややこしくしそうです(さしずめ米ソに対する中国でしょうか・・・)


買収防衛策は解決策でなく、あくまでも相手のペースに巻き込まれずに交渉を有利に進めるための手段であるはずなのですが、M&Aの歴史が浅いなかで導入を急いだためか、残念な事に肝心の交渉への進めかたのノウハウ(またはミサイル攻撃の次に地上戦に突入する気合?)が企業(経営者)に不足しているのかもしれませんね。
※本場アメリカの実態はどうなんでしょうか?実は同じようなもんかもしれませんが・・・


このままにらみ合いが続くと、資金面の問題から攻める側の楽天の方が不利なのではないかと巷間言われてますが、TBSにもそういう兵糧攻めでなく、真っ向からの議論も期待したいところです。
もっともこの程度の兵糧攻めで音を上げてしまうなら、楽天側も買収者として力不足という事なのかもしれませんが・・・

コメント
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