一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『「命令違反」が組織を伸ばす』

2008-10-01 | 乱読日記
図らずも本書の内容を地で行くような出来事が続いてます。


人間の能力には限界があり、その中能力の中で合理的な意思決定をするために、結果として不合理な意思決定をしてしまうという行動経済学の観点から、太平洋戦争において「非合理的」と言われた日本軍の作戦について、それらの行動は当事者にとっては合理的な行動であった、ということを解き明かします。
そして組織としての不条理な意思決定を回避するために実際に起こった「命令違反」の事例をもとに、「よい命令違反」と「悪い命令違反」のありかたについて語った本です。

本書では主に、
プロスペクト理論:人間は意思決定に当たり「参照点」を中心に心理的価値の多寡で判断するが、その心理的価値関数は実際の効用と比例していない(ゆがみがある)ために意思決定者の参照点によって結論にバイアスがかかる

取引コスト理論:全体的にはある取引(変化)をするのが合理的なのに、個人的には取引に係るコストを考慮すると変化しないほうが合理的
を利用しています。

行動経済学は以前紹介した『まぐれ』などでも取り上げられている話ですが、著者はこれを防衛大学校時代に日本軍の行動についての研究に取り入れたもので、そのエッセンスをしんしょにまとめています。

僕自身子供の頃プラモデルに始まり「太平洋戦争もの」に熱中した時期もあり、懐かしさも加わり興味深く読めました。

特に帝国陸軍に比べて合理的と言われていた帝国海軍も、軍艦の喪失を極端に恐れる保全思想のバイアスがかかっていたというあたりの話は新鮮でした。

「インパール作戦」「ガダルカナル島」という言葉にピンとくるものがある方にはお勧めです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする