一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

シッコウ違い

2008-10-21 | あきなひ

「野村(ネット証券)炎上」 という夕刊紙の大見出しに思わずつられて買いそうになちました。

野村ホールディングスの子会社のネット証券会社であるジョインベスト証券のこの話のようです。
「詐欺だ」…野村系ネット証券、顧客トラブルで大炎上--買い注文処理できず損させる

事の顛末は以下のとおり。 

日経平均株価が1171円高となり、過去最大の上昇率(14.15%)を記録した10月14日に、ジョインベスト証券の顧客がストップ高買い気配のまま取引を終了した銘柄の比例配分を狙って買い注文を入れたところ、端末の取引画面には、取引不成立を示す「失効」が表示された。 
これは、ジョインベスト証券が、普段であれば比例配分が行われる注文についてはその日のうちに約定(注文成立)の通知を出しているのだが、この日はストップ高になる銘柄が続出したため処理が遅延したため、とりあえず「失効」のメッセージを顧客に送ったあとで比例配分の処理を行い、株を割当てられた顧客には改めて注文が成立したことを通知することにした。 
しかし、この日は大量のストップ高のため比例配分の処理に人手が足りず、大幅な遅れが発生。やっと顧客に「比例配分の対象となっている銘柄がある」との通知が送られ14日終値で売買が成立したことの通知がされたのが翌日の立会い終了後の15日の夜だった。 
さらに悪いことに翌16日の東証はほぼ全面安の展開となり、日経平均株価は前日比1089円安と暴落したため、急騰場面で比例配分を受けた顧客の大半は15日に売却する機会を得られないまま含み損を抱えた。  

ジョインベストは今回の処理について、「金融庁や日本証券業協会にも報告しており、法に触れる処理ではない」として、14日の売買を取り消すなどの措置は取らない方針だ。  

とのことですが、法には触れないとしても約款上はどうなっているんでしょうか。
常識的には一取引日過ぎた後に「成約しました」と言われても困ると思います。
口座の残高管理とかはどうなっていたのでしょうか。

そこでジョインベスト証券の取引約款をみると

総合取引約款
第19 条(免責事項)当社は次に掲げる場合に生じた損害については、その責を負いません。

(8)天災地変、政変、同盟罷業、外貨事情の急変、外国為替市場の閉鎖等、不可抗力と認められる事由により、本約款に定める事項、求められた手続等が遅延し、または不能となったとき
(9)電信または郵便に係る誤謬、遅延または第三者による妨害、侵入もしくは情報改変等、当社の責に帰することのできない事由が生じたとき
(10) 注文を受付け、注文内容を確認した後、相当の時間内に当該注文を執行したとき
(11) 売買注文の取消等の申込を受付け、申込内容を確認した後、相当の時間内に当該申込に対応したとき
(12) インターネット取引約款第11 条各号のいずれかに該当し、当社が売買注文を執行しなかったとき
(13) お客様からの注文が、システム上の制限、エラー、内容の瑕疵等により発注されなかったとき(ただし、当社の重大な過失による場合を除く)
(14) インターネット取引約款第16 条または第17 条が適用されたとき 

インターネット取引約款
第11 条(執行)
当社が本サービスによって受付けた売買注文は、注文内容を確認した後、相当の時間内に金融商品取引所等で執行します。ただし、当社が受付けた注文について、次のいずれかの事由が生じた場合には、あらかじめお客様に連絡することなく当該注文の執行を取り止めることがあります。
(1)注文内容が第5 条(※取引の種類)、第6 条(※取扱銘柄)、第7 条(※取扱数量の範囲)または第9 条(※有効期間)の定めのいずれかに反することとなったとき
(2)指値が金融商品取引所等の値幅制限を超えるとき
(3)公正な価格形成に弊害をもたらすものと当社が判断したとき
(4)前各号に掲げる他、取引の健全性に照らして当社が不適当なものと判断したとき
第16 条(本サービス利用の禁止)
当社は、お客様に本サービスをご利用いただくことが不適当と判断した場合には、本サービスのご利用をお断りすることがあります。
第17 条(サービス内容の変更)
総合取引約款第20 条が適用される場合を除き、当社はお客様に通知することなく、本サービスの内容を変更することがあります。

ちょっと広めに引用しましたが、免責事項に明確に該当する感じではないですね。

また 最良執行方針はつぎのとおり。

(2)システム障害等により、やむを得ず、最良執行方針に基づいて選択する方法とは異なる方法で執行する場合がございます。その場合でも、その時点で最良の条件で執行するよう努めます。最良執行義務は、価格のみならず、例えば、コスト、スピード、執行の確実性等さまざまな要素を総合的に勘案して執行する義務となります。したがって、価格に着目すれば最良でなかった場合でも、それのみで最良執行義務違反となるものではありません。  

結局翌日の夜というのが「相当の時間内に執行」した「コスト、スピード、執行の確実性等さまざまな要素を総合的に勘案して」最良執行義務を果たしたといえるのかどうかの争いになりそうです。
また、「失効」という表示が注文が不成立だったと誤認させるものではなかったかもポイントになると思います(「失効」のはずが「執行」されていたというのは悪いダジャレのようです。)。 
もっとも責任が認められたとしても損害賠償の対象になる実損はどれだけなのか、というところも論点としてはありそうです。  

とはいえ、ジョインベスト証券としては、免責を主張するということは「相場の乱高下の時には注文の執行が翌日夜になるのが普通のネット証券だ」といわば開き直った主張することになるので、営業的な悪影響は大きいと思います。

少なくとも金融庁から指導はくらいそうです。
また、「法に触れる処理ではない」という初期対応のコメント(が実際にされたのだとすると)はもう少し工夫の余地があってもよかったように思います。

コメント
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