一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ニューシティ・レジデンス投資法人破綻

2008-10-10 | あきなひ

<10/11追記あり>

Jリート法人が初の破綻、不動産市況悪化の荒波かぶる
(2008年10月10日(金)00:27 読売新聞)

東京証券取引所に上場する不動産投資信託(Jリート)のニューシティ・レジデンス投資法人は9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日付で保全命令を受けたと発表した。  
負債総額は1123億円。帝国データバンクによると、Jリートの経営 破綻 ( はたん ) は初めて。  不動産市況の急速な悪化に伴い、借入金の返済資金などの調達が難しくなり、資金繰りに行き詰まった。  
ニューシティによると、投資家は法人も含めて約9000。このうち個人が約8600人を占める。広範な影響が懸念されるため、新たなスポンサーにリートを引き継ぐことや、投資家の救済策を検討するとしている。  
金融庁は9日、ニューシティの資産運用会社シービーアールイー・レジデンシャル・マネジメントに対し、金融商品取引法に基づき、財産保全や投資者保護措置を取るよう業務改善命令を行った。  
東証は同日、ニューシティを11月10日付で上場廃止にすると発表した。

ついに始まった、という感じです。

ポートフォリオの13%に相当する池袋のタワーマンションの取得を昨年12月に決めて(参照)10月の資金繰りができなかった(こちらに「20年10月取得予定」とあります)のが直接の引き金のようです(解除条項などの詳細はわかりませんが)。
12月のリリースでは平成20年3月末までに取得した場合は約1%(といっても125百万円)値引きするという条件がついていたようですが、相手の足元を見たと思ったら自分の足元が崩れてしまったということでしょうか。

そういう意味では、小枝を森に隠す、ではないですが、倒産するにも言い訳ができるタイミングではあるともいえます。

「新たなスポンサーにリートを引き継ぐことや、投資家の救済策を検討するとしている」とありますが、もともと投資法人は時価ベースの取引・90%配当での導管性要件を基本にしているので、新しいスポンサーにとっても自分で物件を取得して立ち上げる以上のメリットがないので、今まで再編がなかったと思うのですが・・・
自分たちも生き残りの道を模索していたはずなので、倒産直後のリップサービスとしてもけっこう無責任な発言のようにも。


<追記>
TBいただいたある経営コンサルタントさんのエントリを拝見してもう少しニューシティの破綻の原因について考えてみたので、そこへのコメントしたものを引用します

J-Reitの場合は投資口の償還がないので借入金は運転資金として元本返済なしでの2~3年のローンで借りていて、物件利回り-期待配当率よりも借入金金利が高ければレバレッジが効くというモデルだと思います。

そこで万が一借入金の借り換えができなくなると、その分を増資で埋めないといけなくなるわけですが、そういうときは一方で投資口価格が下落し(利回りが高騰し)ているため、時価発行すると希釈化して利回りが下がる=そんな増資は誰も引き受け手がない、ということになってしまい、返済期限に借入金を返せなくなってっしまう(のではないかと金融機関が考えなおさら融資に慎重になって・・・)という構造だと思います。

ニューシティの場合は、45億円のコミットメントライン契約
を結んでいたので
http://www.ncrinv.co.jp/ir/topwhats/2008-0418-00002.pdf
リファイナンスだけならしばらくは延命できたと思うのですが、277億円というポートフォリオの13%にもあたる巨額投資の契約を資金調達のリスクを考えずに9ヶ月も前に締結してしまったところに破綻の原因があったと思います。
(契約条項の詳細はわからないのですが、当期利益が24億円程度ですからたとえば違約金が物件価格の1割とかだとアウトですね-ここで9割以上配当という導管性要件が効いてきます)

結局、市場変動のリスクを見誤り、身の丈以上に成長を急ぎすぎたということでしょうか。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイスランドの銀行破たん

2008-10-10 | あきなひ

ここ数日BBCニュースではアイスランドの銀行の経営危機の問題が話題になっています。

一昨日くらいからログインできない状態が続いているそうで、イギリスでもアイスランドのネット銀行の利用者は多く、影響が懸念されています。
(考えてみればネット銀行は取り付けにも行けないんですよね(苦笑))

そこで
アイスランド危機深刻 ロシアから5500億円緊急融資
(2008年10月8日(水)01:37 朝日新聞)

 米国発の金融危機でアイスランド経済が危機に陥っている。議会が全銀行を政府管理下に置く法案を可決したのを受け、政府は大手ランズバンキを国有化。英国民などがネット上に持っていた30万の預金口座が凍結された。同国は通貨をユーロに固定(ペッグ)。危機を乗り切るためロシアに急接近している。  
 アイスランド政府は7日、ランズバンキを管理下においたと発表。ランズバンキのネット銀行に口座を持っていた外国人の口座が凍結されたという。英BBCによると、英国人とオランダ人の口座が計約35万あるという。預金を引き出せなくなり、利用者の間には不安が広がっている。  
 さらに、欧州メディアによると、アイスランドは同国通貨を7日からユーロに固定すると発表した。1ユーロ=131クローナの比率にするという。  
 今後、多額の外貨が必要になることから、アイスランド中央銀行は、ロシアから40億ユーロ(約5500億円)のユーロ建て緊急融資を受けることを明らかにした。  

アイスランドの銀行を救済するのがロシアのお金、というあたりの力関係はよくわからないのですが、イギリスやEU諸国は他国まで面倒を見る余裕はないということでしょうか。  

ところが
アイスランド、最大手銀も国有化
(2008年10月9日(木)23:43 朝日新聞)

アイスランド政府は9日、同国銀行最大手のカウプシングを国有化した。同国ではすでに大手銀行ランズバンキも政府の管理下に入っている。欧州メディアの報道によると、アイスランドは、導入を発表したばかりだった同国通貨の対ユーロ相場固定(ペッグ)制を8日には撤回。大混乱が続いている。

ロシアのMICEX証取所、10月10日まで取引停止(2008年10月8日(水)16:59 ロイター) なんてことがあったりして、(今日は逆に急騰で取引停止だそうです(苦笑)(参照))ロシアからの融資は不調に終わったのでしょうか。  


私は知らなかったのですが、Wikipediaによるとアイスランドはネットバンキングの先進国のようです。 

クレジットカードやインターネットバンキングなどによりキャッシュレス決済が進み、現金決済が著しく少ない(GDP比1%以下)ことで有名である。背景には、1980年代に経済の中心が漁業だったため、水産物の価格に振り回され物価がインフレとなったため、決済が不足気味の現金から小切手へ切り替わっていったことが挙げられる。

産業としては、金融部門の伸びが著しく、金融、不動産がGDPにしめる割合は、26%に達している。  

全体のGDPは少ないが、国民一人当たりでは世界でもトップレベル(2006年時点で世界5位)に位置する。さらに国際競争力も高く、世界4位、ヨーロッパ1位となっており、小国ながら特筆すべき経済力を持っている。

国内経済のボリュームは小さいのでしょうから、外国から預金を集めて海外での運用で利ざやを稼ぐというパターンで大きくなっていったのだと思います。
預金残高でなくGDPが国全体の26%ということは、経済自体が銀行化していたような感じもします。

そうなると、今回の金融危機を国が支えるにしても、国の資金力が続かない可能性もあるかもしれません。

でもこういうことが起こらないためにBISの自己資本規制はあるのだと思うのですが、今回のような急激な市場変動には無力、ということなのでしょうか。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする