一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

周回遅れ

2009-05-18 | あきなひ

クライスラー、GMの命運を握るUAW 「労組がオーナー」の矛盾
(日経ビジネス 2009年5月15日号) 

・・・次は5月末に期限が迫るGMの番である。それまでに徹底的なリストラ計画を策定し、すべての債権者から債務圧縮の合意を取りつけなければならない。既に4月27日に追加再建計画を発表済みで、ブランド廃止、工場閉鎖、賃金引き下げ、ディーラー削減、人員削減など広範囲にわたる思い切ったリストラ策を打ち出している。  
 最大のポイントは、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)による負債の大幅削減を打ち出したことである。そのスキームは米政府(財務省)からの融資とUAWが運営する医療保険基金の拠出義務のそれぞれ半分を株式に転換するというもの。クライスラーも同様の手法を取る方針。米メディアの報道によれば、クライスラーの場合はUAWが55%と過半を占めることになる。GMの場合は米政府の比率が50%で「ガバメントモーターズ」と皮肉られるほどだが、UAWの株主構成比率も39%と高い。この資本構成は、破産法適用の場合でも、回避した場合でもほぼ変わりがないと見られる。  

 UAW代表が取締役や経営陣に名を連ねても不思議ではない。だが、労働者の権利を守る労組と、企業の所有者として最大利益を追求するという株主の目的が相反してしまう。カール・マルクスとアダム・スミスを一度に信奉するようなものである。 バンク・オブ・アメリカに対する労組の抗議デモ(ニューヨーク) もっと卑近に言えば、組合員は今後ストライキを打つのか? 打てば所有する会社にオーナー自身がストを打つという奇妙なことになる、すると労組の意義は何なのか…。そういった矛盾や疑問が次々にわいてくる。  

マルクスとスミスを対比させるのが経済学史的に正しいのか?という疑問はありますがその辺は詳しくないので割愛。

国が半数の株を持ち、つぎの大株主が労働組合となると想起されるのが最後の社会主義大国である中国です。

「中国国有企業改革とコーポレート・ガバナンス」によると  

国有企業改革とそれにともなうコーポレート・ガバナンスの変化に関して考察を行うには、まず改革以前のガバナンス構造を把握しておく必要がある。なかでも、企業内党委員会、職工代表大会(従業員代表大会)、工会(労働組合)は、近年、現代企業制度(有限会社と株式会社)を導入した企業においても「老三会」として依然として影響力を持っている。  

①職工代表大会を母体とする職工民主評議制度の機能強化が多くの企業ではかられており、それにより能力のない経営者が罷免を含めた降格人事を多数受けていること、②経営者が、企業の生産管理や経営管理に関する重要問題、および従業員の直接的な利害に結びつく問題などを職工代表大会などを通じて常時公開し監督を受けるという廠務公開制度も多くの企業で導入されてきており、一部の企業では経営状況の改善に結びついたこと、③職工代表大会の持つ民主管理の機能は、「工会法」の改正によっても強化がはかられていること、  

また、昨年施行された労働契約法では

「雇用単位は、労働報酬、労働時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険福利、教育訓練、労働紀律及び労働ノルマ管理等の労働者の密接な利益に直接関わる規則制度や重大事項を制定、修正若しくは決定する場合、従業員代表大会または従業員全員の討論を経て、方案と意見をまとめて、工会または従業員代表と平等に協議して決定しなければならない」

とされています。


経済発展を見るか「資本主義の発展形としての社会主義」を主張するかでどちらが周回遅れなのかは議論があるでしょうが、アメリカと中国はいまや似たようなところを走っているようなので、いっそのこと中国に教えを請うたらどうでしょうか。

コメント
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