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ほぼ全ての脊椎動物が共有するフェロモン受容体遺伝子を発見

2018-10-13 | 科学・技術
 東京工業大学二階堂雅人准教授と鈴木彦有大学院生(研究当時:博士後期課程、現:日本バイオデータ)、バイオ研究基盤支援総合センター廣田順二准教授、生命理工学院の伊藤武彦教授が中心の研究グループは、115種におよぶ生物種の全ゲノム配列を網羅的に解析して、ほぼ全ての脊椎動物が共有する極めて珍しいタイプのフェロモン受容体遺伝子を発見した。
 一般的に、フェロモンやその受容体は多様性が大きく、異なる種間での共通性は極めて低いことが知られている。しかし、今回新たに発見された遺伝子は、古代魚のポリプテルスからシーラカンス、そしてマウスなどの哺乳類におよぶ広範な脊椎動物で共通であるという驚くべき特徴を備えていた。これは4億年に亘る脊椎動物の進化の歴史において、この受容体が太古の祖先から現在に至るまで高度に保存されてきたことを意味し、フェロモン受容の要となる中心的な機能を担っている可能性を示唆している。この発見はフェロモン受容の進化的起源の謎を解く重要な成果であり、今後はフェロモンの生理機能の解明や、様々な家畜種に共通した繁殖管理技術の開発にもつながると期待される。
 背景と経緯
 V1Rフェロモン受容体は、哺乳類の鋤鼻器(じょびき)に存在する神経細胞(鋤鼻神経細胞)で発現し、様々なフェロモンを受容する。このV1R受容体は多重遺伝子族を形成し、種間での遺伝子数やレパートリーが非常に多様であることが分かっている。異なる種間ではフェロモンやV1R受容体の種類が異なっており、このことが種に特異的な行動の誘導や、同種内のみでの繁殖を可能にしていると考えられている。また、鋤鼻器には多くの神経細胞が存在するが、個々の神経細胞は数あるV1R遺伝子の中からただ1種類のみを選択して発現するという「1細胞-1受容体」ルールが存在する。そして、鋤鼻器は発現するV1Rの種類によって異なる多様な個性をもった神経細胞の集団を有することになり、それが様々なフェロモンの受容や識別を可能にしている。
 研究成果
 研究グループは広範な種の脊椎動物計115種の全ゲノム配列を対象に、V1Rフェロモン受容体遺伝子群の網羅的な探索と得られた配列の系統解析を行った。
 結果、ほぼ全ての脊椎動物に共通する例外的なV1R遺伝子が存在することを発見した。V1Rは種間での多様性が大きく、異なる種では同じV1Rを共有していないと考えられてきた。しかし、今回見つかったV1R遺伝子は、古代魚と呼ばれる下位条鰭類のポリプテルスやガー、肉鰭類のシーラカンス、さらにカエルやトカゲ、マウスなどの哺乳類といったほぼ全ての脊椎動物に共通しているという、驚くべき特徴をもっていた。脊椎動物の進化に照らし合わせて考えると、このV1R受容体遺伝子の起源は今から4億年以上前のシルル紀にまで遡ることが分かった。このV1Rはこれまでに見つかっていない新規遺伝子であったため、研究グループはこれをancV1R(ancient:起源が古いという意味を含めた)と名付けた。
 今後の展開
 ancV1Rの分子生物学的な機能の解明は、フェロモン受容に関わる情報伝達系のメカニズムのさらなる理解に欠かせない。本研究グループはすでにancV1Rの欠損マウスの作製に着手しており、今後はその表現型観察から研究を進めていく予定。ancV1Rは進化的に古くから保存された遺伝子であることから、鋤鼻器の起源やその進化的変遷を理解する上で重要な知見を得られると考えらる。
 ancV1Rは、脊椎動物に共通に存在する受容体であるため、多くの家畜動物に対して共通に作用して生殖を促すような化学物質の探索も可能となり、農産業の分野にも大きな意義をもたらすことが期待される。ただし、ヒトancV1R遺伝子はすでに偽遺伝子化してその機能を失っているため、残念ながら今回の発見が私たちの夢みるヒトフェロモンの研究に直接つながることはなさそう。
 ◆フェロモン
 フェロモンは、化学物質である。
 1、同種の他の個体から分泌される
 2、特定の受容器で受容される
 3、その情報は脳神経系で処理される
 4、神経系あるいは内分泌系を介して行動や生理機能に特有の反応を引き起こす
 フェロモンはその作用から、リリーサー(releaser)フェロモンとプライマー(primer)フェロモンに分類される。
 ◆説明
 〇鋤鼻器
 四足動物が持つフェロモン受容に特化した嗅覚器官であり、匂いを感じる主嗅上皮とは独立した器官。発見者の名前にちなんでヤコブソン器官とも呼ばれる。我々ヒトでは鋤鼻器は退化していると考えられている。
 〇多重遺伝子族
 ある1つの遺伝子配列が重複を繰り返すことで作られた遺伝子の集まり。一般的には配列上の相同性も高く機能的にも似たタンパク質をコードする。例えばマウスには187個、ラットには106個、ウシでは40個の機能的なフェロモン受容体遺伝子(V1R遺伝子)が存在している。
 〇「1細胞-1受容体」ルール
 嗅覚受容体の研究により明らかにされた現象で、多数存在する受容体のうちどれか1種類が発現すると他の受容体の発現を抑える負のフィードバックが働くため、1つの嗅神経細胞には1種類の受容体のみが発現する機構。
 〇偽遺伝子
 変異が入ることで、タンパク質をコードしなくなったDNA配列のことを指す。多くの場合はコードするタンパク質が生体にとって役割を失うことで進化的な制約が緩み、偽遺伝子化が起こる。
 〇in situハイブリダイゼーション法
 組織中における目的遺伝子の発現部位を調べる方法。今回は鋤鼻器の凍結組織切片に、ラベルを入れたancV1R遺伝子のmRNA相補鎖を結合させることで、その発現パターンを可視化した

 雲が多く、風も強いが晴れ。気温は最高気温20℃位・・平年並みとか。
 梅田川の支流藤川、土手に”コスモス”が咲いている。”コスモス”の和名はアキザクラ(秋桜)、秋の季語となっている・秋が深まってきた。
 キク科コスモス属には色々な種がある。一般的に”コスモス”と呼んでいるのは、”オオハルシャギク(Cosmos bipinnatus)”。日本に明治20年頃に渡来した外国産(メキシコ産)の花だが、すっかり日本の秋の花となっている。
 因みに、花言葉は、「乙女のまごころ、愛情、たおやかさ」とか。
 コスモス(Cosmos)
 別名:秋桜(あきざくら)
 キク科コスモス属
 一年草
 原産地はメキシコの高原地帯
 明治20年頃に渡来
 開花時期は7月~11月