静岡県立漁業高等学園は、創立50年。一流の漁師になる近道です。

漁師をめざして、がんばっている生徒たち。
30歳までの若者が全国から漁業の街、焼津に集っています。

TPPと国際化

2016年08月17日 14時58分10秒 | 所感

アメリカ大統領選ではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定  Trans-Pacific Partnership)をどうするかが争点の一つとなっています。
漁業と水産加工業を合わせて水産業であることをご紹介しました。
水産の世界では、200海里経済水域の設定などで、遠洋漁業の水揚げが減少する中、水産加工品の原料確保のため輸入を拡大してきました。このため、現在でも国内生産と同じ量の水産物が輸入されています。すでに関税も低く設定され、しかもTPP該当国からの輸入が少ないことから、TPPの影響は受けにくい状況です。

一方で、国内の魚離れ、海外での和食ブームもあり、水産業界では輸出に力を入れています。遠洋漁業も単に「遠い海で操業する漁業」から、国際市場や国際情勢と連関した「国際漁業」に変貌しています。さらに、外国人船員の増加や、腕の良い漁労長が外国船に引き抜かれるなど、人材面の国際化も進んでいます。

この動きは沿岸漁業も同様です。干しナマコのように、明らかに海外の方が値段が高い水産物は輸出に動いています。遠洋漁業のように人材面では外国人はいませんが、漁村の過疎化が著しい中、外国人の沿岸漁業者が増えるのも時間の問題かもしれません。

つまり、TPPの直接的な影響はともかく、国際化の波は漁業にも間違いなく来ています。
変動する社会に適応できる人材が必要とされます。
そんな状況も見据えて、新世代の漁業者育成に取り組んでいるところです。

さて、明日はいよいよオープンキャンパスです。
学園に入学希望の皆さん、お会いするのが楽しみです。
準備もばっちりです。

【水産物の関税】
主要な農水産物の関税率はこちらでわかります。
 主要輸入農林水産物の関税率
 http://www.maff.go.jp/e/tokei/kikaku/nenji_e/87nenji/pdf/n699.pdf

また、このように書かれているホームページもあり、輸入水産物が国内漁業を圧迫している面はあります。
 こども水産学概論 いま日本の漁業は
 http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/JSFS-kids/daigaku.html

しかし、静岡県の漁業は優秀な人材により、国際競争力のある水産物を供給することで振興していくことは変わりありません。

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就職率、離職率

2016年08月16日 15時06分34秒 | 所感

当学園のように就職に直結する学校、専門学校や職業訓練校、
あるいは実業高校などで、入学者の人気にかかる大きな要素が卒業後の就職率です。
同種の学校がたくさんあったり、求人が極めて少ない業種では、就職率が決め手です。

 さて、就職率が目を引く中で、本当に大事なのは離職率の方です。
離職者が多い企業は、求人も多くなります。
極端な話、ブラック企業への就職が多くても喜べません。

どの分野でも本当のプロになるには何年もかかります。
会社側も、それを見越して新規採用者を育てようとしますが、すぐに辞めてしまっては投資が無駄になります。一方で、辞める若者も、理由があってのことでしょうから、双方にとって不幸なことです。

漁船への就業はどうでしょう。
一人前の漁師になるには10年掛かると言われています。
ブラックではないですが、漁船ならではの辛い仕事もあります。
漁労長なども若い人を育てようとしますが、そこは漁師ですから「腫れ物に触るように」扱ってくれる訳ではありません。
学園では、授業や実習の合間合間に「先輩漁師とうまくやっていくコツ」も教えています。

学園の卒業生も、若者の漁業就業者が不足している状況で就職率は100%です。
しかし、せっかく漁師になったのに辞めてしまう人もいます。
卒業生の離職率の数字はつかめていません。
それでも、学園のベテランスタッフに聞くと、辞めてしまう人の傾向はあると思います。
簡単に言うと、学園で頑張れなかった人です。

 決められた仕事をキッチリできるか
 先生の指示を素直に聞けるか
 仕事ぶりがまじめか
 協調性があるか

これらが出来る人は先輩漁師に認められ「ムダに怒られる」こともなくなります。
仕事が楽になる訳ではありませんが、回りから認められれば、「辛い仕事もやりがいに変わっていく」と思います。

この写真は、ブログの内容と関係ありません。夏休み中で、だんだん写真が苦しくなってきました...

【七五三現象】
就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職する現象のことです。
ウィキペディアによると、2010年卒の離職率は、中卒6割、高卒4割、大卒3割と若干減少してそうです。
いずれにしても、学園卒業生の離職率は、もっと低いと思います。
この離職率を限りなくゼロにするためには、どうすれば良いか?
我々学園スタッフの大きな課題です。

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学園でとる資格

2016年08月15日 07時20分44秒 | 研修・見学

生徒募集のパンフレットにも書かれていますが、学園での1年間で海技士、小型船舶操縦士、第二級海上特殊無線士、溶接、ダイビングなどの資格を取ります。
中でも海技士は1級から6級までのありますが、
「5級から4級までの筆記試験合格を目指す」
と書かれています。

これは、学園の生徒は自力で筆記試験を合格しなければならないと言うことでもあります。
一方、海技短大を卒業すると4級海技士の筆記試験は免除になり、乗船履歴もつきます。
後は卒業後に口述試験に合格すれば4級海技士を取得です。
「国の学校は優遇されている」と思うところです。

一方で大事なのは資格自体より、本当の力量があるかどうかです。
例えば、1級の機関海技士資格があろうと、実際の漁船でエンジンを故障なく管理することが出来なくては意味がありません。
資格というのは、最低限の知識を保証するものでしかないからです。

ですから、学園で自分の努力で筆記試験を合格することは、筆記試験免除で取得するより大きな意味があります。
もっと意味があるのは、試験に合格することよりも、しっかりと理論を身につけることです。
理論を理解せず、試験だけ合格することも可能ですが、それでは「役立たず」です。

今年の47期生、あるいは学園の入学を考えている皆さん。
まずは授業でしっかりと勉強することが大事です。

実際には授業をまじめに受けず、「試験だけ合格」なんて人はいません。
学園は実習が多いですが、8時限のうち5時限は学科授業です。
優秀な漁船員になるために必須です。学科授業もがんばってください。

【学園での授業】
7月29日のブログで学園の授業科目などをご紹介しました。
学園での勉強は、中学、高校でやった内容とは別のものです。
全員がゼロからのスタートですから、中学や高校で勉強が苦手だった人でも心配ありません。
学園に来てから、まじめに勉強してください。

ただ、工業高校出身者は機関の科目は理解しやすいそうです。
それでも、学園で勉強しなくて良いと言うことではなく、同じ説明をしても理解が早いということです。

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漁師のリーダー

2016年08月12日 09時12分18秒 | 所感

沿岸漁業でも、遠洋漁業でも漁師のリーダーがいます。
例えば、県から漁業者に話をする場合、全漁業者を集めるのは簡単ではないので、リーダー的人物に話をします。
沿岸漁業の場合、昔のように各漁村(あるいは各浜)に漁協があった時代は組合長がリーダーでした。
今は漁協の合併が進み、一つの漁協が広域であったり、漁協内に漁業種別組合があったりするので複雑です。
しかし、
 ○○地区のシラス漁のことならAさん。
 ××地区のキンメダイ漁ならBさん。
などの実質的なリーダーがいるので、その人に話をすれば、地域を取りまとめてくれます。
地区をまとめる力量のある人物がリーダーになっている訳です。

遠洋漁業の大型漁船なら、船単位で一つのコミュニティーです。
漁労長であったり、船長が、あるいは機関長や甲板長がリーダーです。

リーダーには漁師としての腕も大事ですが、本当に大事なのは人格です。
「この人のことなら従おう」
と回りの漁師に思ってもらえるかどうかです。

漁業に限らず、日本の一次産業には厳しい時代です。
だからこそ、新たな一歩を踏み出せる人材が必要です。
日頃、生徒の皆さんには
「人にやらせられるのではなく、自分からやることが大事」
と言っています。
自ら一歩を踏み出し、新しい漁業の世界を創る人に育って欲しいと思っています。

【漁業士会】
県では漁業士という制度があり、各地区のリーダーとなる人材を青年漁業士、指導漁業士に知事が認定しています。
各地区の漁業士で組織する漁業士会があり、この漁業士会により地域を越えたネットワークが作られています。
漁業士を経験した、漁協の組合長も多いため、他地区との連携もしやすくなります。
学園から沿岸漁業に進む生徒には、ぜひ漁業士となって地域の漁業を盛り上げて欲しいと思います。

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学園に入学する年齢

2016年08月10日 13時42分42秒 | 学園紹介

学園は15歳から30歳が入学対象です。
今年度も中卒者、高卒者、大卒者が同じ授業を受けています。
それでは、学園を卒業し漁師になれば、みんな同じでしょうか?

同じと言えば同じだし、違うと言えば違います。

まず、同じ点。
・学園で学ぶことは、全員未経験。
・海技士などを資格を取れるか、あるいは実技の習得は本人の努力次第。
・大事な要素である協調性、まじめさ、積極性などは年齢に関係ない。
・漁師の仕事は甲板員からのゼロスタート。

そして、違う点。
・工業高校、理系大出身者は特に機関などの習得が早い
・年齢が高いほど、職場で自分に何を求めているかを理解できる
・基礎学力に優れていれば、上級資格が取得しやすい
・大学や就職の経験から、漁業以外の世界を知っている

学園に30歳で入学しても、就職したら初めはヒラの甲板員です。
年齢が高いだけに、早く幹部になり、肉体労働から知的労働中心に移行する必要があります。
そこで、上級資格を持っていたり、学園生活で「幹部漁船員に求められるもの」をしっかりと学んでいるかが重要です。
今年はまじめに努力する生徒が多いですが、中でも年齢の高い人は学園に入学した意義を理解して、この1年間を有効に使おうとする姿勢が見受けられます。

逆に学園卒業後、16歳で漁船員になったら体力の必要な甲板員を長く出来ます。
ただし、いつまでも若い肉体でいられないので、幹部になっていく努力は必要です。

学園の卒業から始まる漁師生活。
学園では、漁師生活で必要な最低限のアイテム(技術、資格など)を授けます。
そのアイテムをどう使いこなすかは、あなた次第です。
年齢、学歴に関係なく意欲のある方は大歓迎です。

写真は今年の入学式。今年の47期生は、15歳から歳まで、さまざまです。

【漁師と体力】
ホームページの「卒業生は今」にもあるように、学園の卒業生も魚を運んだりの力を使う仕事では苦労することが多いようです。
特に新米は、力を使う仕事が多いので体力やスタミナは大事です。
ただし、最初は体力仕事が中心ですが、だんだんと高度な仕事を要求されていきます。
それが出来て、幹部になっていく訳です。
ただし、これは漁師の世界に限ったことではありません。
体力が衰えたときに「自分には体力しかない」と唖然としないよう、将来を見据えておくことが大事です。

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