札幌の坂元輝行さんは1936年生まれ。教諭を退職後、本格的に絵筆を執り、北大くろゆりOB会に出品しているほか、毎年個展を開いている。団体公募展には出品していない。個展には、10号ぐらいの風景画を大量に展示する。
かつては油彩、水彩あわせて300点も並べることがあった。今年は50点、すべて小樽を描いた水彩画だ。5室在るギャラリーの全室を使用している。
いつもは、札幌や四国、東京など、いろいろな土地を描いた絵を出品しており、今回のように、対象をひとつの都市に絞った展示は珍しい。
また、冬の絵がこれまでになく多い。
坂元輝行さんの絵の特質は、線のスピード感にあると思う。
迷いのない線が走っているのを見るのは心地よい。
聞くと、現場で描いているのではなく、スケッチをもとに(写真も撮る)、3種類のペンを駆使して仕上げているのだという。アジサイなど植物の枝で自作したペン、インクの無くなりかけたマジックインキ系のペンなどだ。
もちろん、現実そのままではない。そこで、現実や写真の像にこだわると、描写に勢いがなくなってしまうだろう。
「写真だとどうしても手前が大きくなりすぎたり、(広角レンズの場合は)端の建物がゆがんだりしてしまう。そういうのをそのまま描いても仕方ないからね」
坂元さんの説明は、明快だ。
足しげく通ったように見えるが、小樽には数回行っただけだとのこと。
手前は「おたる散策」シリーズの中の「古い家屋」。
稲穂地区に残る木造の家がモティーフ。
羽目板の壁、高い煙突、冬の間窓に張り渡す板、煙突掃除などで使うはしご。そういった懐かしいものを、的確に、しかし細かすぎずに描き入れている。
昔は小樽はこんな家ばかりだったが、いつの間にか少なくなってしまった。
ただ、坂元さんはやたらと古いものばかりにこだわるのではなく、高層住宅でも新しい建物でもどしどし描いて行く。
左は「運河とホテル」シリーズ。
ほとんど同じ地点からの定点観測になっている。
左手の北海製缶工場。中央の、灰色の空や建物をうつす運河の水面。そして右手のホテルなどの建物。おなじみの光景を、坂元さんは何度も繰り返して描くのだ。
遠くには山が望まれ、空からは雪が舞い降りる。
写真を撮る人からは「花園タイムズスクエア」と呼ばれていた、JR函館線の高架に近い三角形の建物もあった。むろん、この建物は現存しない。
たしかに運河の絵が多い。堺町の絵も入れると半数を超えるだろう。だが、そればかりに目を向けているのではないのだ。南小樽、手宮、旧手宮線、レインボータウン、入船、船見坂…。なにげない街角が、坂元さんの絵の魅力だとあらためて思う。
個展をしめくくるのは「雪ふりしきる」。
東山魁夷の「京洛四季」もそうだったが、一連の絵画を締めくくるには、雪が静かに降る作品がふさわしいのかもしれないと思った。
2015年1月27日(火)~2月1日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。パートVII (2010)
■坂元輝行スケッチ展 (2009年11月)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartIV (2009年5月)
■第41回さっぽろくろゆり会展(2008年5月)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartV (2008年5月)
■杉山宏二・坂元輝行・真鍋敏忠・中川幸浩淡彩4人展(2006年)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartIII(2006年)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartⅡ(2004年、画像なし)
■歩く、感じる、描く。坂元輝行 風景画展(2003年)
■坂元輝行淡彩スケッチ展(2002年)
■坂元輝行風景画展 北海道三都めぐり(2001年)
かつては油彩、水彩あわせて300点も並べることがあった。今年は50点、すべて小樽を描いた水彩画だ。5室在るギャラリーの全室を使用している。
いつもは、札幌や四国、東京など、いろいろな土地を描いた絵を出品しており、今回のように、対象をひとつの都市に絞った展示は珍しい。
また、冬の絵がこれまでになく多い。
坂元輝行さんの絵の特質は、線のスピード感にあると思う。
迷いのない線が走っているのを見るのは心地よい。
聞くと、現場で描いているのではなく、スケッチをもとに(写真も撮る)、3種類のペンを駆使して仕上げているのだという。アジサイなど植物の枝で自作したペン、インクの無くなりかけたマジックインキ系のペンなどだ。
もちろん、現実そのままではない。そこで、現実や写真の像にこだわると、描写に勢いがなくなってしまうだろう。
「写真だとどうしても手前が大きくなりすぎたり、(広角レンズの場合は)端の建物がゆがんだりしてしまう。そういうのをそのまま描いても仕方ないからね」
坂元さんの説明は、明快だ。
足しげく通ったように見えるが、小樽には数回行っただけだとのこと。
手前は「おたる散策」シリーズの中の「古い家屋」。
稲穂地区に残る木造の家がモティーフ。
羽目板の壁、高い煙突、冬の間窓に張り渡す板、煙突掃除などで使うはしご。そういった懐かしいものを、的確に、しかし細かすぎずに描き入れている。
昔は小樽はこんな家ばかりだったが、いつの間にか少なくなってしまった。
ただ、坂元さんはやたらと古いものばかりにこだわるのではなく、高層住宅でも新しい建物でもどしどし描いて行く。
左は「運河とホテル」シリーズ。
ほとんど同じ地点からの定点観測になっている。
左手の北海製缶工場。中央の、灰色の空や建物をうつす運河の水面。そして右手のホテルなどの建物。おなじみの光景を、坂元さんは何度も繰り返して描くのだ。
遠くには山が望まれ、空からは雪が舞い降りる。
写真を撮る人からは「花園タイムズスクエア」と呼ばれていた、JR函館線の高架に近い三角形の建物もあった。むろん、この建物は現存しない。
たしかに運河の絵が多い。堺町の絵も入れると半数を超えるだろう。だが、そればかりに目を向けているのではないのだ。南小樽、手宮、旧手宮線、レインボータウン、入船、船見坂…。なにげない街角が、坂元さんの絵の魅力だとあらためて思う。
個展をしめくくるのは「雪ふりしきる」。
東山魁夷の「京洛四季」もそうだったが、一連の絵画を締めくくるには、雪が静かに降る作品がふさわしいのかもしれないと思った。
2015年1月27日(火)~2月1日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。パートVII (2010)
■坂元輝行スケッチ展 (2009年11月)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartIV (2009年5月)
■第41回さっぽろくろゆり会展(2008年5月)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartV (2008年5月)
■杉山宏二・坂元輝行・真鍋敏忠・中川幸浩淡彩4人展(2006年)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartIII(2006年)
■坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartⅡ(2004年、画像なし)
■歩く、感じる、描く。坂元輝行 風景画展(2003年)
■坂元輝行淡彩スケッチ展(2002年)
■坂元輝行風景画展 北海道三都めぐり(2001年)