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■坂元輝行風景画展 (2015年1月27日~2月1日、札幌)

2015年02月03日 21時44分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌の坂元輝行さんは1936年生まれ。教諭を退職後、本格的に絵筆を執り、北大くろゆりOB会に出品しているほか、毎年個展を開いている。団体公募展には出品していない。個展には、10号ぐらいの風景画を大量に展示する。
 かつては油彩、水彩あわせて300点も並べることがあった。今年は50点、すべて小樽を描いた水彩画だ。5室在るギャラリーの全室を使用している。
 いつもは、札幌や四国、東京など、いろいろな土地を描いた絵を出品しており、今回のように、対象をひとつの都市に絞った展示は珍しい。
 また、冬の絵がこれまでになく多い。

 坂元輝行さんの絵の特質は、線のスピード感にあると思う。
 迷いのない線が走っているのを見るのは心地よい。
 聞くと、現場で描いているのではなく、スケッチをもとに(写真も撮る)、3種類のペンを駆使して仕上げているのだという。アジサイなど植物の枝で自作したペン、インクの無くなりかけたマジックインキ系のペンなどだ。
 もちろん、現実そのままではない。そこで、現実や写真の像にこだわると、描写に勢いがなくなってしまうだろう。
「写真だとどうしても手前が大きくなりすぎたり、(広角レンズの場合は)端の建物がゆがんだりしてしまう。そういうのをそのまま描いても仕方ないからね」
 坂元さんの説明は、明快だ。
 足しげく通ったように見えるが、小樽には数回行っただけだとのこと。




 手前は「おたる散策」シリーズの中の「古い家屋」。
 稲穂地区に残る木造の家がモティーフ。
 羽目板の壁、高い煙突、冬の間窓に張り渡す板、煙突掃除などで使うはしご。そういった懐かしいものを、的確に、しかし細かすぎずに描き入れている。

 昔は小樽はこんな家ばかりだったが、いつの間にか少なくなってしまった。
 ただ、坂元さんはやたらと古いものばかりにこだわるのではなく、高層住宅でも新しい建物でもどしどし描いて行く。

 左は「運河とホテル」シリーズ。
 ほとんど同じ地点からの定点観測になっている。
 左手の北海製缶工場。中央の、灰色の空や建物をうつす運河の水面。そして右手のホテルなどの建物。おなじみの光景を、坂元さんは何度も繰り返して描くのだ。 
 遠くには山が望まれ、空からは雪が舞い降りる。

 写真を撮る人からは「花園タイムズスクエア」と呼ばれていた、JR函館線の高架に近い三角形の建物もあった。むろん、この建物は現存しない。

 たしかに運河の絵が多い。堺町の絵も入れると半数を超えるだろう。だが、そればかりに目を向けているのではないのだ。南小樽、手宮、旧手宮線、レインボータウン、入船、船見坂…。なにげない街角が、坂元さんの絵の魅力だとあらためて思う。

 個展をしめくくるのは「雪ふりしきる」。
 東山魁夷の「京洛四季」もそうだったが、一連の絵画を締めくくるには、雪が静かに降る作品がふさわしいのかもしれないと思った。


2015年1月27日(火)~2月1日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後4時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)


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