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勘野悦子さんのこと

2020年02月21日 08時38分10秒 | 情報・おしらせ
 2020年2月12日北海道新聞おくやみ面の札幌市白石区の項に載っていた「勘野悦子さん(74)」は、水彩連盟北海道札幌支部長を務めたこともある水彩画家の勘野さんのことではないかと思います。9日死去。葬儀は終了しています。

 勘野さんは新道展の図録にも登別の住所を記載していましたし、登別で絵画教室を主宰し、取材などにも室蘭出身、登別在住と答えていました。
 しかし、ご家族の都合で札幌と登別の往復生活を長くおくってきたことを、筆者はご本人から聞いていました。五十嵐恒著「北海道を彩るアーティスト」に記された勘野悦子さんの住所・年齢と、おくやみ面の記載が一致しています。
 残念です。

 上記の本などによると、勘野さんは室蘭の中学校時代に佐久間恭子さん(全道展会員)、室蘭栄高校時代に渡辺眞利さん(国展会員、全道展会員)の指導を受けていました。
 水彩画は、ご主人の転勤により北見にいたとき、松田陽一郎さんとの出会いがきっかけとのこと。松田さんは北網圏北見文化センターなどで水彩画講座を担当していました。


 勘野さんは水彩画家ですが、透明水彩ではなく、アクリルやガッシュなどで、劇的な人物像を描いていました。
 画室でおとなしくいすに座っている人物1人ではなく、複数の人物がポーズをとっていることが多かったです。背景の描写にも力を注ぎ、たとえば2016年の新道展出品作「蘇生のトキ II」などを見ると、背中に羽根をつけた横向きの人物の後ろに、黄色い直線が縦横に入り組んで、抽象画と具象画が合体したような複雑な画面を作り出しています。
 マチエールにも凝っていて、一般的な水彩画の先入観ではとらえきれない、分厚い画肌を現出させていました。

 1997年2月27日の北海道新聞石狩版に次のような記事が出ています。
 筆者が書きました。
 このころまで、新道展には水彩画の出品は少なかったです。勘野さんたちが、透明水彩でもなければ道彩展のフォービズムでもない、新たな水彩画の潮流が道内に広がるきっかけの、すべてではないにしても、ひとつをつくったということはいえると思います。


 【石狩】中学校のPTAで知り合った、市内花川北の主婦五人の合同展「GROUPING 水彩5人展」が、札幌市中央区北一西三の時計台ギャラリーで開かれている。家事の合間に描いた作品は、水彩画では少ない大作中心。いずれも個性的な力作で、来場者の目を楽しませている。

 花川北の大田真紀さん、佐野雅子さん、高橋美津枝さん、古田瑩子さんの四人と、札幌市白石区の勘野悦子さんで、五十-五十六歳。石狩の四人は十年ほど前、子供が通う花川北中のPTA水彩画教室で知り合った。古田さんは「水彩は油彩より、乾きが速く、においも弱いので、忙しい家事の合間に手軽に絵筆を握りやすい」と話す。

 その後、知り合った勘野さんも加わって、お互いに刺激し合いながら創作活動を続けてきた。いまでは古田さんが新道展の会員、大田さんと勘野さん、高橋さんも会友。

(中略)

 作品は社会批評や幻想的な世界、出身地の海、登山など各自の個性を表現した十七点。うち十二点は40-100号の大作。古田さんは「水彩はスケッチなど小品ばかりと思われがちなので、こうした大作に挑戦したかった」と話す。一見すると、油絵と見まちがう重厚なタッチの作品もある。勘野さんは「水彩画の楽しさを感じてほしい」と話している。三月一日まで。



 略年譜にまとめると、次のようになります。

 1995年 新道展で佳作賞(97年も)
 1998年 新道展で会員推挙。古瀬キヨ記念財団北海道女流選抜展(札幌時計台ギャラリー)
 1996年~2000年 Grouping 水彩5人展(4人展)
 2001年 水彩連盟展で奨励賞
  03年 水彩連盟新鋭展(東京・銀座)
  08年 韓国水用性展(韓国大使館文化院)
  09年 個展(室蘭市民美術館)
  12~16年 輝彩会展(室蘭市民美術館)


 Grouping展は、もう20年ほども前のことです。
 この頃は、皆さんほんとうに元気だったなあ。

 勘野さんときいて、まず思い出すのは、この頃の生き生きとした表情と、水彩に取り組む真剣な態度です。

 なんともさびしいかぎりです。


関連記事へのリンク
勘野悦子「懐想」 (2009、画像なし)
第3回水彩連盟北海道札幌支部展(2008年11月、画像なし)
第2回水彩連盟北海道札幌支部展(2007年、画像なし)
第1回水彩連盟北海道札幌支部展(2006年)
勘野悦子と仲間たち展(2006年)
勘野悦子展(2003年)
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