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■山下かさね水彩展 (2015年4月27日~5月2日、札幌)

2015年05月08日 01時11分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 北大出身の女性らしい、ということ以外に、まったく何の手がかりも無い山下かさねさんの、札幌時計台ギャラリーでの個展も、これが3度目。
 筆者は2010年の個展を拝見していないので、これが2度目。いずれのときも、会場には誰もいらっしゃらなかった。

 20号か30号ぐらいの水彩画が20点。
 額には入れず、無造作にピンで壁にとめてある。しかし、どの絵も、端がすこし折れ曲がっていて、額装されていた作なのに、わざわざ額から外して会場に持ってきたようにも見える。そして、ピンの跡も複数あり、何度か別の壁面に陳列していたようにうかがえる。

 2008年のときにくらべ、風景画が減って、人物画が増えたような印象がある。
 人物も、精緻な描きこみはやや影を潜めた感じだ。もっとも、ていねいな仕上げや、陰影が全く欠如しているといった特徴は変わっていない。
 一見、ものすごくリアルである。
 「夫」は、和室にすわって、うつむいてスマートフォンをいじっている男性の姿だが、まずこういう絵は、あまり描く人はいないだろうと思う。
 「妹」は、母と姉妹を描いているが、母が抱いている赤子を見ると、こんなに平べったい赤ちゃんっているのかなと思う。

 「桂岡にて」は、紫色の服を身に着けた女性がモティーフだが、そもそも人物の絵に地名をつけるのが変わっていておもしろい。

 不思議な印象を残すのは、やはり風景を描いた絵のほう。
 「朝」は、2008年の「王子」を思わせる、民家やビルがごちゃごちゃと並んだ風景なのだが、或るビルの屋上から大きな煙のようなものがあがって空中に浮かんでいる。そして遠景は、送電線がひたすら延びている様子が描写されて、図鑑か博物館の電力の説明ページみたいなのだ。
 「西区」は、街並みに襲い掛かるような巨大な山並みが背景を占める。もっとも、実際の三角山や手稲山の山容とは違うように思う。パラレルワールドの札幌市西区なのか。もっとも、こんなに山が近いのは、南、西、手稲の3区であり、たとえば「厚別区」「清田区」でこういう絵が描かれようがないのも確かである。

 題名のつけ方も、なかなか不思議なのは変わっていない。

 馬を真横から描いた絵がなぜ「銀」なのか。
 風にあおられて泳ぐこいのぼりが、なぜ「吹き流し」となっているのか。

 さらに、題を記す紙だけがピンで留められて、なにも書かれていない作品も1点あった。


 山下さんの絵は、絵画業界の常識から少し外れているところが面白いので、ぜひ「ふつうのうまい絵を描こう」などと思わないで、このままの路線というか、自分の目に見えるままの世界を描き続けてもらいたいと思う。
 第三者の勝手なお願いではありますが。


2015年4月27日(月)~5月2日(土)午前10時~午後6時
札幌時計台ギャラリー(札幌市中央区北1西3)

山下かさね展 (2008、画像なし)


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