(カメラ不調のため、スマートフォンで撮影しています。いつにも増して写真の出来が悪いですが、なにとぞご容赦ください。また、アップが会期中に間に合わず、すみません)
北海道美術工芸協会が主催する「美工展」は、年1度開かれ、工芸部門だけの団体公募展としては道内唯一です。
道展、全道展、道美展には工芸部門がありますが、もちろん絵画など他の部門もあります。
美工展は、組紐や和紙絵といった、他の団体公募展ではあまり見られない種類の工芸もあるのが特徴です。
たとえば、ペーパークラフトも、美工展ならではの種類だと思います。
画像の手前は、昨年の協会賞に輝いた佐藤隆之さん(札幌)の「コーチン」。
ニワトリの一種です。あいかわらず精緻なつくりですが、それに加えて、佐藤さんの作品としてはこれまでになく量感をたたえているのが特徴だと思います。
ことばを変えれば、ずっしりとしているのです。
奥の額装の作品は、新人賞を受賞した最上怜香さん(札幌)「水奏」。
最上さんは札幌の劇団の舞台に立つかたわら、カッターナイフを使わずはさみで切り絵を作っています。
金魚の泳ぐなまめかしい様子を表現しています。
ここで、例年のように種別の出品数を紹介します。
組紐 8
織 8
染色 5
ペーパークラフト 5
陶芸 4
木工 4
ガラス 4(3人)
和紙絵 3
押花 2
刺繍 2
皮革 2
金工 1
籐 1
人形 1
ボビンレース 1
木彫 1
その他 10(6人)
織が昨年に続き2年連続の首位。
組紐が同率で、初の首位になりました。
ちなみに、第42回では、染色12、木工9、押花7がトップスリーで、ジャンルごとの消長はけっこう激しいようです。
七宝など、出品が途絶えてしまった分野もあります。
目を引くのが「その他」。
美工展が想定していなかったような作品が登場しているということです。これは悪いことではないでしょう。
たとえば、この永井郁美さんの大作「楽園」。
カモが花々の間を泳いでいる絵柄で、じゅうたんのようにも見えますが、これは「ダネラ」と呼ばれるデンマークの刺繍なのだそうです。
昭和というか、少し古い時代の感覚が、かえって新鮮です。
また、和紙絵と似ていますが、着彩した布片を配して風景画にしている作品もありました。
今年は、最高賞である「協会賞」の該当は、ありませんでした。
これは、美工展の歴史では、よくあることです。
ただし会員推挙もゼロというのは、珍しいと思います。
会友推挙は4人。
押花の進藤ノヱさん(札幌)、織の池田葉子さん(同)と大野詩朋さん(同)、籐の生田笑子さん(同)です。
先の画像の、池田さんの「往還」は、空き缶のリングプルや、ナット、ねじなどを織り込んである異色の作品です。
ぱっと見では、それらはさほど目立たないのですが…。
また、新人賞については先に触れましたが、もうひとり、織の杉本光子さん(同)が「育む大地」で新人賞を得ています。
佳作賞は大野詩朋さんの「鼓動」。
血のように鮮烈な赤が印象に残る大作です。
また、会友の中から選ばれる奨励賞には、高橋良平さん(同)の皮革「渇き」が選ばれました。
旱魃でひび割れた大地を思わせる、力強くてシンプルな作品です。
そのほか、個人的には、扇形をいくつも連ねた、佐藤美智子さん(同)の大作「藍の舞」や、茶系のほか赤をまじえて複雑な景色を表現した山谷智子さん(同)の「還 -replay-」、気品ある端正な木の箱を作った笠原幸義さん(函館)の「小箱(楓縮杢)」などが目に入りました。
最後の画像は、ベテランの木工作家、羽賀隆さん(江別)「KAGUYA」。
かぐや姫が竹取物語で竹の中から生まれる情景なのでしょうか。
内側から光で充たされる情景は、もともと多くの作家や画家に描かれてきていますが、中にあかりが仕込んでいることもあって、どこか宗教的な崇高さを感じさせます。気品の高い一品です。
2019年4月17日(水)~21日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
□美工展 https://sites.google.com/view/hokkaidoubikouten
□最上怜香 http://mogami.top/
関連記事へのリンク
■第45回記念美工展 (2018、写真なし)
■第44回 美工展 (2017) ■続き
■美工展会員展(2016)
■第44回 ■続き (2017)
■第43回 美工展(2016、画像なし)
■第42回(画像なし)
【告知】第42回美工展
■第37回 美工展 ■続き (2010)
■第36回 美工展
■第35回 美工展
■第34回 美工展(画像なし)
■第33回 美工展
■第31回 美工展(画像なし)
■第8回美工展会員展(2003年)
■第30回 美工展(画像なし)
■第29回 美工展
■第28回 美工展(画像なし)
■第6回 群青 -2週間10部屋の展覧会- 【後期】(2019)
■さっぽろ雪像彫刻展 (2019年1月)
■New Point vol.15
■第6回有限会社ナカジプリンツ (2018)
■第45回記念美工展 (2018)=画像なし
■第44回 美工展 (2017)
■500m美術館 (2007)
=佐藤隆之さん出品
北海道美術工芸協会が主催する「美工展」は、年1度開かれ、工芸部門だけの団体公募展としては道内唯一です。
道展、全道展、道美展には工芸部門がありますが、もちろん絵画など他の部門もあります。
美工展は、組紐や和紙絵といった、他の団体公募展ではあまり見られない種類の工芸もあるのが特徴です。
たとえば、ペーパークラフトも、美工展ならではの種類だと思います。
画像の手前は、昨年の協会賞に輝いた佐藤隆之さん(札幌)の「コーチン」。
ニワトリの一種です。あいかわらず精緻なつくりですが、それに加えて、佐藤さんの作品としてはこれまでになく量感をたたえているのが特徴だと思います。
ことばを変えれば、ずっしりとしているのです。
奥の額装の作品は、新人賞を受賞した最上怜香さん(札幌)「水奏」。
最上さんは札幌の劇団の舞台に立つかたわら、カッターナイフを使わずはさみで切り絵を作っています。
金魚の泳ぐなまめかしい様子を表現しています。
ここで、例年のように種別の出品数を紹介します。
組紐 8
織 8
染色 5
ペーパークラフト 5
陶芸 4
木工 4
ガラス 4(3人)
和紙絵 3
押花 2
刺繍 2
皮革 2
金工 1
籐 1
人形 1
ボビンレース 1
木彫 1
その他 10(6人)
織が昨年に続き2年連続の首位。
組紐が同率で、初の首位になりました。
ちなみに、第42回では、染色12、木工9、押花7がトップスリーで、ジャンルごとの消長はけっこう激しいようです。
七宝など、出品が途絶えてしまった分野もあります。
目を引くのが「その他」。
美工展が想定していなかったような作品が登場しているということです。これは悪いことではないでしょう。
たとえば、この永井郁美さんの大作「楽園」。
カモが花々の間を泳いでいる絵柄で、じゅうたんのようにも見えますが、これは「ダネラ」と呼ばれるデンマークの刺繍なのだそうです。
昭和というか、少し古い時代の感覚が、かえって新鮮です。
また、和紙絵と似ていますが、着彩した布片を配して風景画にしている作品もありました。
今年は、最高賞である「協会賞」の該当は、ありませんでした。
これは、美工展の歴史では、よくあることです。
ただし会員推挙もゼロというのは、珍しいと思います。
会友推挙は4人。
押花の進藤ノヱさん(札幌)、織の池田葉子さん(同)と大野詩朋さん(同)、籐の生田笑子さん(同)です。
先の画像の、池田さんの「往還」は、空き缶のリングプルや、ナット、ねじなどを織り込んである異色の作品です。
ぱっと見では、それらはさほど目立たないのですが…。
また、新人賞については先に触れましたが、もうひとり、織の杉本光子さん(同)が「育む大地」で新人賞を得ています。
佳作賞は大野詩朋さんの「鼓動」。
血のように鮮烈な赤が印象に残る大作です。
また、会友の中から選ばれる奨励賞には、高橋良平さん(同)の皮革「渇き」が選ばれました。
旱魃でひび割れた大地を思わせる、力強くてシンプルな作品です。
そのほか、個人的には、扇形をいくつも連ねた、佐藤美智子さん(同)の大作「藍の舞」や、茶系のほか赤をまじえて複雑な景色を表現した山谷智子さん(同)の「還 -replay-」、気品ある端正な木の箱を作った笠原幸義さん(函館)の「小箱(楓縮杢)」などが目に入りました。
最後の画像は、ベテランの木工作家、羽賀隆さん(江別)「KAGUYA」。
かぐや姫が竹取物語で竹の中から生まれる情景なのでしょうか。
内側から光で充たされる情景は、もともと多くの作家や画家に描かれてきていますが、中にあかりが仕込んでいることもあって、どこか宗教的な崇高さを感じさせます。気品の高い一品です。
2019年4月17日(水)~21日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
□美工展 https://sites.google.com/view/hokkaidoubikouten
□最上怜香 http://mogami.top/
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■第43回 美工展(2016、画像なし)
■第42回(画像なし)
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■第28回 美工展(画像なし)
■第6回 群青 -2週間10部屋の展覧会- 【後期】(2019)
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■第6回有限会社ナカジプリンツ (2018)
■第45回記念美工展 (2018)=画像なし
■第44回 美工展 (2017)
■500m美術館 (2007)
=佐藤隆之さん出品
美工展にご来場、また、丁寧なご講評ありがとうございます。
私の作品にも言及いただき、お礼いたします。
展示作品は一時期に比べてまだまだ少ないのですが、
入選したり会友になったばかりの、20代、30代、40代といった若い世代の皆さんが、
お互いに知り合い、会場や懇親会などで盛り上がっていました。
美工展の将来に明るい材料です。
一方、ペーパークラフトの小林ちほさんが、活動の場所を中央に移すとして退会しました。
私自身、小林さんのような緻密な作品は、日本どころか世界でこそより評価されると、
思ったり言ったりしていましたが、実際に美工展からいなくなってしまうのは少し寂しいものです。
それはともかく、小林さんの今後の活躍を楽しみにしたいと思います。
美工展を長年にわたり見守っていただいた、美術ジャーナリストの五十嵐恒さんが亡くなられ、
まだ1か月経っていませんが、この場を借りて改めてお悔やみとお礼を申し上げます。
きっと梁井さんともあちこちで出会っていたと思いますが、飄々としてダンディーな方でした。
梁井さんもどうぞご自愛ください。
また、いつも丁重なご案内をいただき、美工展の皆様には以前から感謝しております。
小林ちほさん、ついこないだ栗山のイベントで切り絵の講師をなさっていたと思いますが…。
技術がすごいという人はいっぱいいるでしょうから、プラスアルファの何かを得て、羽ばたいてくれることを祈っています。
五十嵐さんは、羽賀さんのおっしゃる通りあちこちでお会いしました。
フロンティアタイムスにも、美工展の記事が載っていましたよね。
さびしくなります。
羽賀さんもどうか、ご自愛ください。
いつも丁寧に鑑賞され、ブログで発信いただき感謝しています。また、私自身拝読するのが楽しみです。
梁井さんに展示種別に触れていただいているとおり、最近は、陶芸、押花、木工などは少ないですが、ペーパークラフトは、入賞が続き、これから先が楽しみの分野です。また、「その他」として展示している作品も美工展をきっかけに、この先どんどん変化してくれたらなと思っています。
私も、作品や作家さんとの交流でたくさんの刺激を受けました。やっぱり、美工展は、楽しいです!
来年に向け、さらに、頑張らなければと思います。年一回の美工展を楽しみにしてくださるご来場者のためにも。
もうすぐ10連休!
梁井さんは、何カ所展覧会を巡るのでしょうか?ブログは楽しみにしていますが、寒暖差は激しいようですので、ご自愛ください。
アップが遅れてしまい、その上写真もいまひとつで、自分としては「なんだか申し訳ないなあ」という気持ちです。
いろいろな、予想もしていなかったようなタイプの作品が集まってくるのはおもしろいですよね。
ジャンルによって消長はありますが、新しい顔ぶれが出てくるのが美工展のおもしろさだと思います。
来年も楽しみにしています。
新聞は5月7日以来、毎日発行するので、編集局では10連休すべて休める人は少ないようです。私も2日間ほど出ます。
前半は北見に行きます。
山谷さんもご自愛しつつ楽しい連休をお過ごしください。