真田由美子さんは、札幌の全道展画家水野スミ子さんの教室にいた人です。
水野教室は、ギャラリー大通美術館で毎年ひらいている「千展」や「そらいろ展」で、型破りのパワフルな絵画大作をどしどし展示しています。
今回のは、およそ25年前に、アートギャラリーさいとう(現さいとうギャラリー)の隣室どうしで個展をひらいた吉井光子さんと、ふたたびとなりで開くことになった展覧会。
「千展」のときとはちょっと異なり、人間のこころというか精神というか、そういうものにねざした絵だという印象を持ちました。
会場の入り口に、こんなふうに記された紙が貼ってありました(「つつく」は原文は「突付く」)。
ここに真田さんの思いは凝縮されているように思えます。
いつか見たシーンです
母鳥は、生んだ卵がやっと孵化する時に
なぜか時期を悟り、懸命に殻をつつきはじめる
すると中の親鳥もそれを便りに内から衝き
やっと誕生となった その場面が
この作品たちの出発点なのです
制作は、私の中にいる私をつつくこと
私の属す家族、社会を思う
私の属す地球、宇宙を感じる
どれもが内と外を持つ
内+外=ひとつ そのひとつを守っていきたい
そんな事を考えながら描いていると
こんな弧や円が生まれました
「心音1」=左=と「心音2」。
シンプルなカーブです。
近づいてみると、意外に表面がでこぼこしています。
こうして見ると、造形性よりも、作者の思いが全面に感じられます。
また「線に思いを込める」というのは、書のあり方と共通するものがありますね。
「無限大の記号(∞)が好きなんです」
と真田さん。
そこになにかを感じるのでしょうか。
手前の作品の支持体は段ボールです。その上にカーテン地の布をのせた作品もあります。
ここらへんは「千展」っぽい。
「波動」。古いキャンバスの絵をアクリル絵の具でつぶし、木のへらのようなものでこすりとって線描をほどこしたユニークな作品。
線に迷いがないので、見ていて楽しいです。
出品作は次の通り。
波動
外からノックが聞こえ
地を見ると 2
内+外 在る
地を見ると 1
心音1
心音2
包(ほう)
微音(かすかなおと)
呼気1
呼気2
深く、浅く
内↔外 認める合図
孵化
内+外
2009年5月28日(木)-6月2日(火)10:00-19:00(最終日-17:00)
道新ぎゃらりー(中央区大通西3 北海道新聞社北一条館 道新プラザ内 地図A)
■第8回千展 流動…… (2008年3月)
■第19回そらいろ展(2007年)
■第7回 千展(2007年)
■第6回 千展(2006年)