大城さんの2年ぶりの個展。抽象画と具象画の両刀遣いです。
「どちらかに絞っては」
と周囲から言われるそうですが、ご本人は「両方かいていきたい」と話しておられました。
具象も、春陽会の大ベテラン八木伸子さんを思わせるタッチでまとめた静物画と、風景を描いた比較的大きな作品とがあります。
筆者の個人的好みで言えば、最後のタイプの作品がいちばん好きです。
構図もさることながら、モノトーン中心の色づかいのなかにうまく有彩色が使われ、画面に深みが感じられるからです。
冒頭の作品は、手前が「陽が昇る」、中央が「ある街」、その右が「道東の白い月」です。
「道東の白い月」は、一見釧路湿原のようですが、納沙布岬に行く途中にある、誰も気づかないような湿原がモティーフになっているそうです。
「陽が昇る」は、全体に薄いピンクがまじり、厳しい中にも自然のあたたかみのようなものを感じさせます。
「ある街」は、小樽の裏町をイメージしたという作品。これも、独特の雰囲気が出ています。
左側の「雨雲」も筆者の気に入った1枚。
いまにもふりだしそうなときの空と森の空気感が、微妙な感覚によってとらえられています。この不穏な雲のようすは、たしかに「雨近し」というタイミングのものです。
一方、抽象画は、全国的な公募展である「モダンアート展」に出品するために取り組んでいます。
こちらは、八木伸子さんのご主人の画家、八木保次さんの影響というか薫陶が大きいとのことでした。
大作は「躍」「燃ゆる」「そして明日へ…」の3点。
抽象画が、風景にくらべると弱い感じがするのは、用いられている色が少ないせいかもしれません。
もちろん、色調の統一感はなによりも大事なのですが、隠し味的にほかの系統の色を少し使うと、画面に深まりが出てくるような気がします。素人の意見かもしれませんが、いかがでしょうか。
「燃ゆる」を正面から。
08年7月21日(月)-26日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)