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■青森県立美術館「冬のコレクション展」(その2)

2010年03月03日 23時43分56秒 | 道外で見た展覧会
承前

 冒頭の画像は、開館当時かなり話題を呼んだので、ご存じの方も多いと思うが、ここだけ写真撮影がOKとなっている奈良美智の「あおもり犬」。

 館内では、奈良のドローイングは壁に展示するのではなく、館内に木造の小屋があって、その中に貼られている。観覧者は、小屋をのぞき込んで、見ることになる。
 これって、武田浩志さん(札幌)の「Takeda System」シリーズに似てるよなあ。武田さんの方が先だ。それと、中に立ち入れるという点が違うのだけど。

 あと、気になった作品などについて。

 首藤晃「アンビヴァレント・オブジェクツ -両義的な物体」というコーナーができていた。
 木と金属を組み合わせ、架空の動物を作っている。
 カブトガニのような、アルマジロのような、ふしぎな群れが、二部屋にまたがって置かれていたり、気をつけてあたりを見渡さないと分からないような高い壁に掛かっていたりするのがおもしろい。
 「深海」などは、車輪とエビと舟をくっつけたような、ユニークな造形だ。

 首藤さんは1969年江別市生まれ、現在は青森市在住。
 北網圏北見文化センターやTemporary space(札幌)でも個展を開いている。

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RELATION リレーション夕張2002


 日本画家の工藤甲人「荊棘」もおもしろい。
 工藤は1915年生まれの大ベテラン。「荊棘」は1962年の作だが、イバラというよりは巻きビシみたいな形が画面を覆っている。
 戦後の洋画壇を席捲した抽象画に対して、日本画からの「アンサーソング」といわれたのが、福田平八郎「雨」であるが(まあ、いろんな見方は可能だと思うけど)、この作品もそうなんじゃないか。
 抽象画でありながらも日本画であり、具体的なモティーフを描いているというところが、すごいなあと思う。

 「小坂圭二・小野忠弘 祈りのかたち、瞑想の造形」
というコーナーにも心打たれた。
 とくに小坂圭二の「世界の破れを担うキリスト」「ガダルカナルの落日」といった彫刻は、第二次世界大戦の従軍経験を踏まえて制作されたものというが、人間の精神の危機を真っ正面からとらえた作として感動的だ。やっぱり生死のふちをさまよった人の作品は、すごい。
 浜田知明の版画「初年兵哀歌(歩哨)」を思い出す。

 …と思ったら「版画による人物表現」のコーナーに、この名作が展示されていた。

 でも、すごい作品が生まれなくてもいいから、戦争はごめんだな。


次項で、青森の旅シリーズは最後の予定


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