9月初旬に札幌へ行ったおりは、予定が詰まっていてギャラリー回りがほとんどと言っていいほどできなかったが、急いで見たふたつの写真展は、足を運んで良かったと思った。
ひとくちでいうと、写真というジャンルの境界を軽々と飛び越えるような、そんな展覧会だったと思うのだ。
まず、女性5人によるグループ「HAKONIWA(ハコニワ)」。
2002年に結成され、その後一時活動を休んだ時期があったり、メンバーの入れ替えがあったりしているが、この3、4年ほどは「写真グループ」の枠にとどまらない活動を続けている。たとえば、クラブを借り切ってのパーティーの開催であり、今回の写真展でも見られるような、外部メンバーとの協力だろう(下のリンク先を参照)。
今回は、おそらくHAKONIWA史上で最大規模の展示だろう。1点ずつを額装してならべるような一般的な写真展(たとえば写真道展)では、絶対に見られないような作品と展示方法が採られている。
冒頭は、リーダー(略してリダ)の@yumi photolife さんのコーナー。
カラー23枚は、おもに3月に旅したバンコクでのスナップなのだが、街角のごみ箱ややせた犬、風鈴など、およそ異国情緒を感じさせないものが大半なのがおもしろい。
tsuguAugust11さん。
5人の中で最も枚数が多く、フレームなども工夫がされていた。
湖、ランプ、綿毛、赤い壁、陶器など、日常で瞬間的にとらえたスナップが大半だが、鮮やかな色彩のある光景をものにする手腕に、はっとさせられる。
安藤ひろみさんはすべてモノクロで54点。
「SAPPORO FURYOU LEAGUE」という草野球の試合があるらしく、登場する選手たちはピアスしていたりヒゲだらけだったり、高校野球とは正反対の格好をした不良オヤジだちばかり。そのミスマッチ感が愉快。
佐藤さゆりさんが並べている108枚の写真は、絵の具を水にぱっと溶いた瞬間を撮影したもの。これを絵画でやろうとしたらけっこうな手間だと思うが、写真だと、人間の手が引かない線や出さない色がほぼ一瞬にして現出できる。
というか、絵画のことを考えると、「絵の具を写真に撮る」というのはなんだか不思議な行為のように思えて仕方がない。そこには、かたちというか、物体はなくて、純粋に色だけがあるようなものなのだ。
クスミエリカさんのフォトショップ技術は前回の展覧会に比べ格段に向上し、崩壊感覚に満ちた超現実的なイメージがあふれるようになった。
今回の展示では、元ネタとでもいうべき写真も同時に展示している。
廃墟、植物、人間が織りなす光景を、楽園として提示する逆説に、しびれた。
で、先にも書いたけれど、メンバー外の人々の協力を仰いでいるのも今回の展覧会の特徴。
写真スライドショー/映像制作:beatimage (Katsuya Ishida) ツイッターアカウントは @beatimage
HAKONIWA紹介文:ウリュウユウキ @yuukiuryu
会場音楽:kohei sasaki (not/c) @noteandco
会場装飾:こんのあきひと @konno_a
DMデザイン:モンマユウスケ
クスミさんの展示の中央に投影されているのがスライドショー。
右の写真で、薄い布を使ったインスタレーションを展示しているのがこんのあきひとさん。
たぶん、ハコニワのメンバーには
「写真とは、写真展とはこうでなくてはならない」
という固定観念がなくて、その自由さがいい方向に作用しているんだと思う。
札幌圏では、多くの大学に写真部があり、そこで銀塩モノクロに目覚めた学生たちがそれなりの水準の作品を制作・発表しているのだが、ほとんどは卒業とともに制作から遠ざかってしまう。
それを思えば、その手の学生写真とはやや離れた位置でスタートしながら、結成から10年近くたった現在も制作を続けているということだけでもすごいことなのだ。
2011年9月2日(金)~14日(水)午前11時~午後7時(最終日~午後5時) 月曜休廊
ほくせんギャラリーivory (札幌市中央区南2西2 NC HOKUSEN ブロックビル4階 地図B)
http://www.hokusen.jp/regional/ivory.html ツイッターアカウントは @hokusenivory
□http://hknwphoto.blog10.fc2.com/ @hknw_photo
□@yumi photolife @ayumi00848
□route byクスミエリカ @erikakusumi
□tsuguAugust11 @tsuguaugust11
□SAYURI's PHOTO GALLERY @xxSAYURI
■写真グループ「HAKONIWA(ハコニワ)」の巨大写真が地下鉄琴似駅メトロギャラリーに登場(2010年)
■さっぽろフォトステージPart2 (2009年12月)
■HAKONIWA 2008
■2003年 (画像なし)
■2002年(画像なし)